著 ヤマ
「やまらぁ〜しゅきぃ〜 何れいっつももっとくっついてくれないんだぁこの愚か者ぉ〜・・・ひっく 」
「イサカ飲みすぎだ!レミ、なんで俺がトイレに行ってる一瞬の間にこんなに飲ませたんだ!?」
「私じゃないっすよ!?ヤマダが行ったら急にイサカが酒を頼み出したんっすよ!」
「ねぇ〜もっとくっつこうよぉ〜」
「公衆の面前でやるな!」
「やらぁ〜いまがいい〜!ヤマダがいい〜!」
「あーーもう!仕方ねえな!」
俺はインノのエアレースから帰って、行きつけの居酒屋にレミとイサカを連れて飲みに来ていた。その結果がこれだ。俺はイサカの肩に手を置いて引き寄せると、腰に片手を回して頭にもう片手を置きイサカを強く抱き締めた。
「えへへ〜、あったかい・・・」
「なんだかんだやってあげるあたりヤマダも優しいっすね。はい、あんたの好きなカルピスチューハイっすよ。」
「ありがとよ、今無理だからそこに置いといてくれ。」
「はーいっす」
「ねぇ〜ヤマダ、ねぇ〜」
「子供か! どうした?」
「もう怪我痛くないのかぁ〜?」
「ああ、もう大丈夫だ。傷も塞がってきたしな。あと1日もすりゃ傷口は完全に塞がるってサダクニさんに言われたよ。」
「よかったぁ・・・ごめんっ!言い過ぎたっ!ヤマダはすごく頑張ってたのに!うえええん!」
「泣くな泣くな!レミ、助けてくれーー」
「仕方ないっすねぇ〜、ほらイサカ、こっちへおいでっす〜」
「やだっ!ヤマダがいい!」
「て、言ってるっすけど?」
「愛いやつめ・・・」
そうしてなんだかんだしているとイサカは俺の肩に寄りかかって眠ってしまった。おこさないように気をつけながら、鶏皮をつまみに大好物のカルピスチューハイを飲む。
「くっはぁ〜!うめぇー!」
「ほーんと、あたしらと同い年とは思えないくらい趣味嗜好がおっさんっすよね〜」
「悪かったな、おっさんで。」
「別に怒ってないっすけどね。それよりあれを聞かせてくださいよ。」
「あれってどれだよ」
「どーやってこんな大怪我抱えてインノまで飛んだのかをっすよ!すーっごく気になってるんっすから!」
俺はイサカを膝枕して乱れた髪を軽く整えてやり、完全に寝たのを確認してから話し始めた。
「どうもこうも・・・・・・
俺はベッドから、滑走路から飛び立つイサカの一一型を見届けた。寝転び目を瞑ると、さっきまでの疲れがどっと出たのかすぐにぐっすり寝ちまったんだ。そして夜近い時間に目が覚めた、勿論病室にはサダクニさんもイサカも居ない。完全に目が覚めちまって何もすることは無かったからベッドから半身起こしてイサカに貰った万年筆でメモ用紙に落書きしてたな・・・
そしたら急に医務室のドアが空いてよ、誰が入ってきたかわかるか?・・・ん?ちゃうちゃう、なんとニコが入ってきたんだよ。しかも猫を抱いて!びっくりしたぜ?それでそのままニコはベッドの隣のイスに座ったんだ。
「サダクニから連絡を貰った・・・大丈夫か。」
「わざわざ見舞いに来てくれたのか・・・?」
「ああ、特別にねこを触らせてやる・・・早く元気になれ。イサカが心配するぞ。」
にゃ〜ん・・・にゃお、にゃ〜ん
「ふふ、可愛いなこの子。わざわざありがとうな、ニコ。」
「私こそ来るのが遅くなってすまないな、じゃあ仕事の途中でよっただけだから私は帰る。」
「ああ、ありがとう。」
そして俺はニコを見送ってまたベッドに寝転んだんだ。病室での寂しさったらねえぜ・・・そしたらまたすぐに扉が開いたんだ。
「ヤマダ!大丈夫なの!?」
「うわあっ!ローラさん!?」
「イサカを守って撃たれたって!?大丈夫!?」
「落ち着いてください!自分はこのとおり大丈夫ですから!」
「あら、ほんとね・・・あなたほんとに無理しすぎよ!」
「妻の前でくらいカッコつけたかったんすよ・・・体に穴が開きましたけどね。ハハ・・・」
「ハハ、じゃないの!貴方が死んだらイサカがどれだけ悲しむか・・・」
「すみません・・・」
「妻想いも程々にね・・・?」
「そりゃ無理な注文ですよ・・・貴方もフィオさんが大変になっていたら俺と同じことするでしょ?」
「まぁ・・・ねぇ?それと貴方、私に対してももう敬語じゃなくて良いわよ。気を使いすぎてもしんどいでしょう?」
「そうですか・・・ありがとう。ローラ。」
「こちらこそ、家族を体を張って護ってくれてありがとう。あ、あなたとイサカも別の意味での家族だったわね。」
「そう・・・だな。」
「じゃあ、私はお暇するわ。お大事にね?」
「ありがとう。さようなら」
ローラとは意外に長く喋っていたんだな、もう夜もふけてきてさ・・・そろそろ眠いなと思ったんだ。寝転んで布団を被って寝ようとしたんだがその時
ゴトッ・・・パリンッ・・・!
俺の枕元に置いてあったイサカのくれたラムネが落ちて割れたんだ、その時に凄い胸騒ぎがしてな・・・。1回は気にしないで寝ようとしたんだが、居てもたってもいられなくなって俺はベッドから飛び起きて自室に戻って服を着替えた。飛行眼鏡はイサカに貸していたからな、予備の飛行眼鏡を取って格納庫におりてAI-I-129に増槽をつけた
「ちょ、ちょっと待ってくださいっす。飛ぶ以前にその一連の動作で傷は痛まなかったんっすか?」
「めちゃめちゃ痛かったぞ。ちゃんと傷がふさがってないから包帯が傷に触れるし・・・」
「はぁ・・・良くやったっすね・・・」
で、結局そのまま飛んだんだが・・・離陸のとき操縦桿引いたらGが下にかかるだろ?あのときに傷口が痛くてな・・・まあ結局そのあとはいつもの長距離飛行と一緒だけどな・・・
・・・・って具合だよ。」
「じゃあじゃあ、ベッグやレンジ達を助けたときはどうやったんっすか?」
「いやそりゃいつも通りの空戦だぜ?」
「でも、ヤマダってあたしらと違って人一倍多く飛ぶじゃないっすか~ なんか面白い話ないんっすか~?」
「面白い話っつったってなぁ・・・」
すると、カウンター席から居酒屋の店長の声が聞こえてきた。どうやら酔った客に絡まれているらしい。ここの店長とは顔なじみだ、助け舟を出してやるか・・・
「レミ、ちょっと行ってくる。イサカを頼む。」
「ここはイサカ組だからイサカが対応しないといけないんっすけどね・・・」
そうしてイサカをレミに任せると、カウンター席へと歩いて行った。
「店長、一杯くれ。」
「ああ、ヤマダさん・・・」
「何ならお前!俺は今その店長と話をしてるんだよ!」
「だから奥の戦闘機は売れないと言ったでしょう!?」
「俺は金は出すっつってんだ!何が問題なんだ!?ええ!?」
奥の戦闘機・・・俺がよく面倒を見ている紫電改だ、
「あれは妻との思い出が詰まった戦闘機です!何と言われても売れません!!」
「あぁ!?」
酔った客は店長につかみかかろうとしている。俺は止めに入る。
「やめろ、」
「なんじゃ!?」
「こっちの台詞だ。このよそモンが、人が大切にしてるもんをカネではたこうとしやがって。」
「お前に関係なかろうが!?ええ加減にせんと痛い目見るで?」
「もういっぺん言うぞ、やめろ。」
「やめんわ!お前表出ろや!」
「ヤマダさん!いけんです、こんな酔っ払い気にしないで!」
「店長、あんたこそいけんよ。こいつがいると酒がまずくなるぜ?」
そう言って俺は酔っ払い客のほうを振り向く、すると男は急に殴りかかってきた。
「死ねやぁ!!」
「ふん!」
ドサッ・・・・
「しばらく寝てろ、」
そうして男を店の外につまみ出すと、俺は席に戻った。
「すまんな、レミ。」
「いいんっすよ~ ていうか、早く聞かせてくださいよ!」
「だ~か~ら~話すことなんて無いって言うとろうに・・・」
「じゃあじゃあ、何でもいいから面白い話してくださいっす!」
「面白い話ぃ・・?」
何か言おうとしたとき、俺の視界に黒いものが入った。
ゴンっ・・・
「ごはっ・・・」
イサカの頭だった。目を覚ましたのだ。
「頭が痛い・・・ヤマダ、何をやっているんだ?」
「いたい・・・」
「何やってんすか・・・」
そのあとは結局愚痴を言い合いながら酒を飲み交わした。久々の平和な夜であった。
完