ゲキテツ大決戦   作:5145/A6M5

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零戦のすべて

著 ヤマ

 

「無い・・・か、すまない。わざわざ探してくれてありがとう。」

 

私は電話の受話器を置く、タネガシ中の本屋に電話したが無い。仕方ないだろう、もう10年も前に出版されたユーハングの経済学書の写し・・・そんな骨とう品をいまだに扱っている本屋などイジツ中どこを探しても。そうしてそのまま仕事に戻った。いつもの飛行眼鏡と違う普通の眼鏡をかけフロント企業の支出収入を計算し計算機に打ち込む、相も変わらず部屋での仕事は景色の代わり映えもなく・・・そうしていると目も痛くなる。眼鏡を外しハンカチで頬の汗を拭いた。すると部屋の戸を叩く音がした

 

「イサカ、入っていいか?」

 

「ああ、」

 

「目が赤いぞ・・?大丈夫か?」

 

「少し長く書類仕事をしすぎた・・少し休めば治る。気にするな。」

 

「そうか・・? そうだ、これ。」

 

ヤマダはそう言って小包を差し出した。私はそれを受け取る。

 

「なんだ、これ?」

 

「開けてみな。この前ポロッカに五二型の修理をしに行ったときに見つけたんだ。」

 

私は小包の封を切り中身を取り出す、それはつい先ほど私が探していた経済学書だった。ところどころに破れがあるが仕方ないだろう。

 

「ヤマダ・・これ・・!」

 

「ポロッカでたまたま寄った本屋にあったんだ。多少傷があるが・・・」

 

「いいんだ・・・ありがとう。」

 

「ああ、ちなみにそれはどういう本なんだ?」

 

「タイトル通り経済学だ。読んでみるか?」

 

「いや、遠慮しとくよ・・・ん?」

 

そう言ってヤマダは窓の外を見た、私も席から立ち上がり外を見ると滑走路に人だかりができている。

 

「しまった、一一型を直してる格納庫の扉が開けっ放しなんだ・・・ちょっと行ってくる。」

 

「私も行く、今日の仕事はほぼ終えたからな。」

 

私とヤマダが格納庫へ下りていくと、一一型の周りの整備班のやつたちが一斉に話しかけてきた。

 

「ヤマさん!こんな極上の一一型どこで見つけたんです?」

 

「こりゃ骨とう品ですよ・・・」

 

そういう言葉をさえぎってヤマダが言う

 

「ほ~ら散れ散れ!各自作業に戻る!」

 

「発動機回してくださいよ!一回だけ!」

 

「だ~め~だ!まだ作業が残ってるだろ!」

 

「ちぇ~・・・」

 

組員たちが作業用の格納庫に戻ったのを見て、私はヤマダに話しかけた。

 

「私も久しぶりに一一型の音を聞いてみたいんだが・・・」

 

「じゃ、ちょっとだけ作業を手伝ってくれないか?」

 

「ああ・・・!」

 

私はヤマダについて格納庫に入った、いつも私たちの戦闘機を整備しているのは組員たちの戦闘機を整備をしている格納庫とは違い、ヤマダの趣味の場だ。私やサダクニ、来た時だけだがレミやニコ、クロの機体もヤマダはこの格納庫で整備してくれている。こっちに中に入ると少し乾燥した空気が肌を触る。金属が錆びないように乾燥した空気になっているのだ。

 

「のどが乾いたら遠慮なくいってくれよ。」

 

「ああ、ところで作業っていうのはなんだ?」

 

「奥の六四型を整備するんだ。」

 

「あのカウリング・・・まさかラプトルのか?」

 

「違う違う、前にも言ったろ?ラプのやつは五四型だって。これはケンザキ一家が中継地点にしてた空の駅にたまたまあったんだよ。空の駅のオーナーに話を聞いたら、調子がよくないが動く。ずっとここに置いてても使わないから持って行ってくれって言われてな。うれしくって持って帰っちまった。」

 

「そうなのか・・・こいつはどこが悪いんだ?」

 

「それがな・・・オイルを変えたら途端に調子がよくなってよ・・・」

 

「なんだそれ・・」

 

「こっちがびっくりだ、とりあえず一一型とロクヨンを洗いたいから二機とも外に出そう。」

 

そうして私とヤマダは二機を押して外にもっていった。零戦はブレーキさえかかっていなければ人力で押すことが可能なのだ。二人だと少々厳しいが、空戦をしている人間の腕力があれば不可能ではない。二機を外で並べると、ヤマダがホースと洗剤、そしてスポンジを持ってきた。

 

「ついでに私のA-I-I-129も洗っていいか?」

 

「それじゃ俺の61-120も洗うか。」

 

また二人で二機を外に運び出す、一時的にではあるが一一型・二一型・五二型・六四型が並んでいるのだ。圧巻である。上着を脱ぎワイシャツの腕をまくると、ホースで機体に水をかけ、洗剤をつけたスポンジで機体を洗ってやる。排気管の後ろや機銃口、主脚周りなんかは特に汚いので念入りにこすってオイルやすすを落としてやるのだ。ある程度汚れを落とし終わり、泡を水で洗い流しているとき。ヤマダはじっと機銃を見ていた。

 

「何を見ているんだ?」

 

「いや。この六四型、機銃の中心がずれているように見える・・・洗い終わったら他の機体を直して試射してみるか。ついでに明日試験飛行もしてみよう。」

 

「私も乗っていいか?」

 

「ああぜひ乗ってくれ、前のときは横で見てただけだったもんな。」

 

そうして洗い終えた機体を格納庫に戻し、ロクヨンを滑走路に移動させる。私が特徴的なカウリングを眺めているとヤマダが急に主翼の上に寝転んだ。

 

「あらよっと」

 

「何やってるんだ・・・」

 

「機銃がどっち向いてるのか大雑把に見てるんだ。前はコンクリの壁・・・撃っちゃうか。」

 

「え?」

 

そういうが早いかヤマダは外部電源をバッテリにつなぎ、機銃カバーを外した。そして操縦席に飛び乗りトリガーを引く。

 

ダダダダッ!!

 

「ぎゃあああっ!」

 

壁間際から悲鳴が聞こえてきた。

 

「誰だ!?」

 

「あたしっすよ!急にぶっ放すなんて何考えてるんっすか!?」

 

「わるいわるい・・・お詫びに乗せてやるからさ・・・な?」

 

「ロクヨンにっすか?」

 

「ああ、」

 

「仕方ないから許してあげるっす。」

 

そうするとヤマダはコンクリの壁についた弾痕を見に行くと、何かをメモしてこちらに戻ってきた。

 

「機銃、ズレてなかった・・・」

 

「良かったじゃないか。ゲホッゲホッ!」

 

「イサカ、風邪か?」

 

「さっき戦闘機を洗ってた時に濡れたからな・・・大丈夫だ。」

 

「ダメだ、ほら上着着て。レミ、本当にすまないが俺の部屋で布団を敷いておいてくれないか?」

 

「仕方ないっすね〜」

 

私はヤマダに上着を着せられた、心配そうな眼差しをこちらに向けるヤマダを見て。私は何かすごい安心感を覚えた。すると・・・

 

「イサカ、ほら。」

 

「なんだ? ゲホッ!」

 

「部屋までおぶってってやるよ。ほら、早く。」

 

「そこまでしてもらわなくても大丈夫だぞ・・・」

 

「だーめーだ。ほら、病人は黙って言うこと聞く!」

 

「ヤマダのくせに・・・」

 

私はヤマダにおぶわれて部屋に向かう、ヤマダの背中は大きく、とても暖かかった。

 

 

 

 

 

 

 

俺はイサカをおぶって部屋に行く、部屋に行くと既にレミが布団を敷き終えていた。

 

「イサカ、下ろすぞ。」

 

「ん・・?・・ああ、ありがとう。無理させたな。」

 

「そんなことはないさ、ほら。」

 

イサカを布団に下ろし、飛行眼鏡と上着を預かる。ひとまず風呂まではスーツのままで寝てもらうことになるが・・・仕方ない。まずはレミに礼を言う。

 

「レミ、急にすまなかったな。わざわざありがとう。」

 

「気にしないでくださいっす。ほかに何かすることはあるっすか?」

 

「いや、特にないさ。ところで、なんで今日はうちに来たんだい?」

 

「ああ!忘れてたっす。イサカに頼まれてあんた宛の荷物を持ってきたんっすけど・・・イサカ寝ちゃったっすね」

 

「すー・・すー・・・」

 

イサカはいつもと変わらない寝顔だった。だが少し耳と頬が赤い、俺は後輩に頼んだ氷水を張った桶と小さなタオルを受け取った。しっかりと布団をかけてやりイサカの枕元に腰を下ろした。レミにも布団の横に座るように促し、二人でイサカの寝ている蒲団の横で胡坐をかいた。

 

「すー・・すー・・・ヤマラァ・・・レミィ・・・サダクニィ・・・もうたべれない・・・」

 

「どんな夢見てんだよ・・・あーもう、手を握るなって・・・仕方ねえな・・」

 

タオルを氷水につけて片手できつく絞り、イサカのでこに置く。心なしかイサカの頬が涼しくなった気がした。

 

「そうだ、ヤマダ。イサカから預かってた荷物なんっすけど・・・」

 

「持っててくれ、多分イサカはサプライズしてくれるつもりだったんだよ・・・どうせあと数十分でご飯の時間だ。いつもはイサカが作ってくれてるんだが、今日は俺が飯を作るよ。俺が作りに行ってるうちに渡しておいてやってくれ。」

 

「わかったっす。」

 

そうして俺は台所でおかゆを作り、卵焼きを作った。おかゆにこぶを載せてお盆に乗せると、二人のところへと運んだ。

 

「お待たせ~」

 

「おっ、噂をすればきたっすよ。ヤ~マダ~」

 

「噂されてたんかい・・・ほらっ、俺にゃこんなくらいしかしてやれねえが・・・おかゆと卵焼きだ。」

 

「この前飲ませてくれたあの酒はないんっすか~?」

 

「病人の前で出せるわきゃねーだろ・・・あーでも、レミ、ちょいとその酒瓶借りるぜ」

 

「え?ええ、いい・・っすけど?」

 

俺は酒瓶の酒を少し長めの蒸しタオルにしみこませ、固く絞った。そしてそれをイサカの首に巻きつけ軽く結んだ。

 

「ヤマダ、これは?」

 

「へへ、喉風邪の時はこれがきくんだぜ?」

 

「おしゃけ・・・おしゃけ・・・あたしの・・・」

 

「明日ちゃんといいの買ってやるからさ・・・」

 

「やくそくっすよ・・・?」

 

「わかったわかった・・・」

 

「ヤマダ・・・ちょっと喉が楽になったよ。」

 

「そうかい?ほら、冷めないうちにおかゆも食っちまいな。」

 

「ああ、ありがとう。」

 

そうして三人でおかゆと卵焼きをほおばり、急須の茶も飲み終えた。すると、イサカが手元から小包を取り出した。

 

「ヤマダ、これ・・・」

 

「おお、これは?」

 

「開けてみてくれ。」

 

封を切り箱を開けると、飛行眼鏡が入っていた。俺が前から使っていたのとまったく同じものだった。

 

「飛行眼鏡じゃないか!いいのかい!?」

 

「ああ、あの時お前に借りた飛行眼鏡、結構汚れてたからな・・・」

 

「ふふ、そんなの気にしなくてよかったのによ。」

 

「それでその・・・もしよければお前のあの飛行眼鏡、もらってもいいか?」

 

「あんなのでいいのか?」

 

「ああ、」

 

「いいよ、あんなので良けりゃ使ってやってくれ。」

 

「ありがとう・・・!」

 

すると、レミが物言いたげな表情でこちらを見ている。

 

「レミ、どうした?」

 

「なんで二人だけで良い感じになってるんっすかー」

 

「わ、悪い・・・」

 

「ぶー、じゃあアタシ、一回ヤマダに聞きたかったんっすけど、それ応えてもらってもいいっすか?」

 

「あ、ああ。いいぜ?」

 

「じゃあ、零戦の各型の特徴を教えて欲しいんっすよ。アタシ自分の五二型しかほとんど乗ったことないから・・・知識としても、お願いするっす。」

 

「それは私からも聞きたいな。ヤマダは各々の型を詳しく説明してくれたことは無いからな・・・」

 

「わかったよ・・・じゃあ一一型からな?」

 

 

 

・・・・・・・・

 

零戦一一型

こいつは正確には十二試艦上戦闘機の増加試作機なんだ。まだ試作して問題点を洗い出さないといけない栄一二型を搭載した十二試艦上戦闘機を中国戦線に送り、そこで正式採用して

 

零式一號艦上戦闘機一型

 

になったんだ。まだ型式を数字ふたつで表すことが決定される前だったから変な名前だろ?そんで、中国戦線で採用されたこいつらには課題が残ってた。

 

・Gがかかった時に主脚が飛び出す。

 

・同じくGがかかった時に20ミリ機銃が出なくなる。

 

・空戦時に筒音、シリンダーの温度が過剰に高くなり発動機が焼き付く。

 

これらの不具合は入念なテスト飛行を重ねて改善が行われた。それから出撃したところで大戦果を挙げ、いわゆる零戦無敗伝説ってのが始まったんだ。

 

一一型の外観上の特徴は、

 

・第四カウルフラップから突き出た集合排気管

(7号機と27号機以降の型では二一型と同様のものになっている。)

 

・着艦フック、クルシー式無線帰投方位測定器が未装備

(7号機と27号機以降では装備、もしくは装備可能に準備工事がされている。)

 

・二一型以降の翼端折畳み機構も無い

 

・ブレーキへのオイルパイプの取り回しが異なる

 

・操縦席への空気採り入れ口の形状が異なる

 

・20ミリ機銃のカバー開口部が角型

 

と言う四点だ、それと勘違いしてる人間が多いんだが、零戦一一型は艦上戦闘機じゃなくて局地戦闘機として作られたんだよ。

 

 

 

零戦二一型

 

こいつも採用された当初は、零式一號艦上戦闘機二型って名称だったんだ。命名規則が変わってから二一型になったんだ。そして二一型になってから、零戦の特に大きな問題点が露呈したんだ・・・

 

・急降下するとフラッターが発生し、動翼が吹き飛んだあと機体が空中分解してしまう。

 

・127号機からは動翼の操作を用意にするために修正舵を取り付けていたが、それの取り付け強度が弱く急降下するとそれがちぎれ飛び主翼の外板がもげる。

 

・エルロンの前後重量不均等によりエルロンに異常な振動が発生しエルロンがもげる。

 

どれも零戦の極限まで切り詰められた強度設計が祟ったんだ。

・一つ目の問題点は機体の構造強化で解決した、機体の強度が高くなればフラッターも起きにくくなるからな。

 

・ 二つ目の問題は、既に製造されている機体は修正舵取り付け部分の構造強化で、その後の機体は今まで通りのトリムタブに戻すことで解決した。

・三つ目の問題は、既に製造されている機体は突出型マスバランスを増設して、その後の機体はエルロン内部のマスバランスを大型化して前後重量を適正化したんだ。

 

 

そして二一型の外観上の特徴だな。

 

・着艦フック、クルシー式無線帰投方位測定器、翼端折畳み機構の艦上戦闘機に必要な装備品の追加

 

・排気管が第五カウルフラップに移動

 

・ブレーキへのオイルパイプの取り回しが以降の形に

 

これはまず、三菱の二一型の特徴だ。二一型は長い事生産されたから小さな違いが沢山ある。

 

 

次は中島でライセンス生産された初期と中期の二一型の特徴だ。

 

・プロペラスピンナーが三菱の物に比べて細長い

 

・計器版上部の形状が若干違う

 

・機体側面のステンシル(機体の情報が表記されている)に製造年月日の欄がある。

 

・中期〜の二一型の特徴、20ミリ機銃が三二型〜二二型無印まで搭載された携行弾数100発で短銃身の九九式一号二型機銃に変更された。

 

 

以上だ、最後は中期〜後期に中島で製造された二一型の特徴だ。

 

・中期の二一型はプロペラスピンナーが中島の五二型無印・甲と同様の若干大型の物になっている

 

・後期の二一型はプロペラスピンナーが五二型乙以降のものと同じ大型の物になっている。

 

・無線アンテナが五二型以降の短い物と同様の物になっている

 

・濃緑色と明灰白色の塗り分けが水平尾翼まで切れ上がっている

 

・一部の機体のみであるが二二型甲以降に搭載された九九式二号三型機銃を搭載した。

 

以上だ、二一型は俺が好きな零戦の型なんだよ。あのカウリングの気化器空気採り入れ口、かっこいいだろ?・・・悪ぃ、脱線した。次は三二型だな。

 

 

 

零戦三二型

 

こいつが開発された理由は、零戦二一型以前の型で問題になっていた事の解決のためだ。零式二號艦上戦闘機一型の名称で開発が進められていたがその途中で命名規則が変更されたため、正式名称された時は零式艦上戦闘機三二型となったんだ。それと面白いことに、零戦三二型として海軍に正式採用されたのは機体の生産が全て終了してからなんだ。

 

そして、二一型以前の型で問題になった点は、

 

・一段一速過給器搭載の栄一二型に起因する高高度性能の劣悪さ。二一型の飛行可能高度上限は10000mであるが、プラスブーストでカタログ出力を発揮できるのは5000mまでであり、空線で有利に立回ることが出来るのはさらに低い3000m程であった。

 

・水平飛行時の速度の遅さ。

 

・20ミリ機銃の命中率の劣悪さと携行弾数の少なさ。零戦一一型、二一型が搭載していた九九式一号一型機銃は発射速度が遅く重力に負けて弾道が放物線を描いてしまい命中率が非常に悪かった。そして一艇につき60発しか携行出来なかった。

 

・12mもある長い翼に起因する横転性能の悪さ。仕方ない部分もあるが、反トルクに逆らって機体を傾ける右ロール動作が特に遅かった。

 

だ、これらを解決する為にされた対策は

 

・発動機を一段二速過給器を搭載する栄二一型へ換装。高度約3500mで一速から二速へ過給器を変速することでインペラーの回転速度が変化し、空気をより圧縮出来る。その他にも気化器の変更などにより出力が向上したため、水平速度も若干向上した。

 

・翼内機銃を九九式一号一型機銃から一号二型に変更し携行弾数が100発に向上した。

 

・翼端を片側50cmずつ切り落とし11mとし角型に整形、横転性能と生産性の向上を図った。

 

なんだ、まず結論から言ってしまうとこれらの改良は高高度性能以外大きな改善にはならなかった。

 

・翼端を切り落としたことによって横転性能が上がったが、角型の翼端というのは航空力学的に良くない形であり、当初期待したほどの速度は得られず、そして格闘戦性能も低下した。だが海軍はある程度の速度向上がなせていたことを見込み、正式採用した。戦局が優勢であったという条件もある。

 

・九九式一号二型機銃は携行弾数こそ増えていたものの、それでも新人搭乗員は一斉射で撃ち尽してしまい、ベテラン搭乗員でも5斉射程度もたせるのが限界であった。そして銃身が伸びた訳ではなかったため発射速度は低いままであり放物線を描く弾道は変わらなかった、苦肉の策として機銃本体の取り付け角度を少し上にすることで対策したが、それでも大きな改善にはならなかった。

 

てな具合だ、それでも速度と高高度性能、横転性能の向上を高く評価する現場の声もあり最初はそこまで不遇ではなかった。だがその後始まったラバウル→ガダルカナル上空への超長距離飛行で弱点が露呈したんだ。栄二一型換装によって胴体内燃料タンクが小さくなり航続距離が減少した、これのせいで三二型はガダルカナルへ飛行することが出来なかったため、新型機であるにも関わらず本土練習航空隊の練習機に回されてしまったんだ。その後ガダルカナルにより近いブーゲンビル島ラエに基地が完成したがその頃には三二型の生産は終了していたうえ、戦局が揺らいでいたためにほとんど利用されることは無かった。

 

次は三二型の外観とその他の特徴だな。

 

・角形に成型され短くなった主翼、三二型の一番の特徴。

 

・発動機変更に伴ってプロペラ直径が大きくなった。

 

・九九式一号二型機銃に変更された事による主翼パネルラインの変更及び大型化したドラム弾倉を覆うための涙滴状のフェアリングの追加。

 

・発動機換装によるカウリングの全面設計変更。気化器空気採り入れ口が上方に移動し全長が長くなり、絞込みが強くなった。

 

・エルロンがリブ(骨組み)一つ分短縮され、フラップとリブ一つ分隙間が空いた。

 

・計器版のブーストメーターと筒温計の位置が逆転した。

 

だな、あと三二型には数機だけだが30ミリ機銃を搭載した型や、二二型以降に搭載された長銃身の九九式二号三型機銃を搭載した型も極小数存在するぜ。ユーハングに唯一残っている三二型は主翼の機銃を九九式二号三型機銃に換装した非常に貴重な型なんだ。

 

 

 

二二型無印・二二型甲・一二型

 

まず二二型は三二型で問題となった航続距離の低下を回復させる為に発動機は栄二一型そのまま主翼を零戦二一型と同じに戻して翼端折畳み機構も復活、翼内燃料タンクを増設して航続距離を回復させた型だ。主翼以外に三二型との違いはほとんどないが、強いて特徴をあげるとするなら

 

・現用飴色と緑迷彩採用の過渡期に製造されていたので応急迷彩仕様が多い。

 

くらいだ。

次は二二型甲な、これもまた一つだけだが大きな変更点がある。

 

・二二型無印までの九九式一号一型・二型機銃から、銃身を延長し発射速度を高めた九九式二号三型機銃に変更、これにより主翼の点検口等のパネルラインが変化し銃身が主翼から前に大きく突き出した。

 

これだな、九九式二号三型機銃は発射速度が改善されて以前と比べて格段に命中させやすくなった。これは現場の搭乗員にも好評だったそうだ。だが携行弾数はドラム弾倉であるがゆえ100発から変更が無く、弾不足感は解消できなかった。

 

次に一二型な、これは二二型甲の最終生産機10機ほどに充てられた型式だ、陸上基地で運用するための言うなれば一一型の機体に栄二一型を搭載した型だな。ただし一二型として正式採用された訳ではなく二二型と区別するために三菱が暫定的に着けていた名称である可能性が高い。海軍の公文書には二二型・二二型甲の文字しかないからな。一二型の特徴は

 

・翼端折畳み機構、着艦フックの撤廃、ただし翼端は短縮された訳ではなく一一型の主翼に戻ったと言うのが適正か。

 

これだ、外観を見るだけだと違いは全く分からない。しかも二二型・二二型甲が空母に搭載された事は稀で、ほとんどがラバウルやその他陸上基地で運用されたために翼端折畳み機構や着艦フックを使った事すらない機体がほとんどだ。

 

そして最後に二二型シリーズの少しマニアックな特徴だが、

 

・エルロントリムタブ(補助翼修正舵)が復活した。

 

これもあるな。

二一型以来の復活だったが次の五二型では翼が再度短くなったからか元に戻されてる。さて、次はお待ちかねの五二型無印・甲・乙・丙だな。

 

 

 

 

五二型無印・五二型甲・五二型乙・五二型丙

 

まずは五二型無印な。これは当然だが以前の型からの速度向上、横転性能向上を主目的として設計されたこの後の五二型の元祖となる型だ。まずは変更点だが

 

・排気管を環状集合式排気管から推力式単排気管へ変更。

(ただしごく初期の実戦評価機体(仮称五二型とは別)は量産品の排気管の生産が間に合わず三二型と同じ排気管とカウルフラップ・カウリングとなった。)

 

・排気管の変更に伴うカウルフラップの完全再設計。エンジンカウリングは気化器空気取り入れ口左右に補強材が追加。

 

・主翼を再度11mへと短縮。ただし三二型と違い翼端は円形に成形されたためエルロンが翼端まで達した。これに伴って急降下制限速度が667km/hに引き上げられた。

 

・リブ一つ分エルロンが再度延長されフラップとの隙間がなくなった。(二一型とエルロンのリブの数が同じとなった。)

 

・発動機への消火装置が廃止され、主翼燃料タンクに炭酸ガス噴射式自動消火装置が追加された。それに伴って操縦席後部の酸素ビンの隣に炭酸ガスビンが追加された。

 

・無線機が三式空一号無線電話に変更され、それに伴ってアンテナが短くなった。

 

・機体によるが、部品不足のためクルシー式無線帰投方位測定器が省略された。

 

・後部機体内部への防腐塗装が省略された。

 

・着艦フックが省略された型が存在する。

 

 これらの改修が施された仮称零式艦上戦闘機五二型(二二型甲第904号機を改造)はテスト飛行で最高速度565㎞/hを叩き出したんだ。これは同じ発動機を積み、重量で54㎏軽かった三二型からは20km/h、二二型からは25km/hの速度向上であり、大きな成功といえるだろう。当然のように航続力と水平面での格闘戦性能は低下したが、このころになってくると格闘戦性能はさして重要な項目とはなっていなかったんだ。このテスト結果を聞いた海軍は五二型として正式採用した。すぐに三菱に量産を命じ、中島にも準備を整え次第量産に入るように命令した。中島で作られた零戦は二一型、五二型無印、後述するが五二型甲、五二型丙、六二型ってことだな。

 

三菱で生産された五二型無印の特徴は

 

・機体上面色は暗緑色、下面色は明灰白色。

 

・塗分けは底のパネルラインに沿って一直線となっており、真横からよく見る、または真下から見ないと明灰白色が確認できない。

 

・プロペラスピンナーが短い。

 

・初期の機体は排気管後部の耐熱板が無く、下面にある四本の排気管が長い。

 

・中島製の機体に比べると耐熱板が小さい。

 

・防腐塗装である青竹色が省略された。

 

・操縦席内部の塗装が濃い緑

 

・機体側面に描かれる製造番号などのステンシルから製造年月日の項目が消去された。

 

こんなもんだ、写真で見ると塗分けが全く違うからすぐわかるぞ。

次に中島で生産された五二型の特徴だな。

 

・基本的に機体上面色は濃緑色、下面色は明灰緑色。

 

・側面から見ると下面色が水平尾翼に向けて切れ上がり、テールコーンに向けてなだらかに落ちている。かっこいい

 

・プロペラスピンナーが若干長い。かっこいい

 

・比較的中期生産型まで下面の排気管は長いものが用いられていた。

 

・主脚格納庫内部へは青竹色が塗布されたが、フラップ裏側への青竹色塗装が省略された。だが末期生産型になるとすべての青竹色塗装が省略された。

 

・操縦席内部はごくごく薄い黄緑色。

 

こんな具合だな。ちなみに俺が使ってる61-120と決戦の時に作ったレミの61-121、ニコの61-130は中島塗装な。

 

 そしてこれは大きな特徴なんだが、ユーハングの暦で昭和19年4月以降に製造された中島の五二型無印(三菱では既に生産終了していた)には「栄二一型」じゃなくて「栄三一型甲/乙」に発動機が変更されてる。詳しい機体番号はわからないが、少なくとも中島第5357号機ではシリアルナンバー31262、栄三一型甲が搭載されているので5300番台以降の五二型シリーズとそれ以降はすべて栄三一型甲/乙が搭載されていると考えてもらって差し支えない。

 

 

次に五二型甲、こいつは急降下制限速度のさらなる引き上げに成功した型だ。特徴は

 

・三菱製の五二型甲は主翼機銃が九九式二号四型機銃に変更された。これは給弾方式がベルト式に変更されたものだった。これによって携行弾数が125発になり、主翼の銃身根元にフェアリングが追加された。

 

・機銃変更に伴い、三菱製五二型甲は主翼下面のドラム弾倉を覆っていたフェアリングが無くなりパネルラインも変化した。

 

・機体外板パネルが0.2ミリ分厚くなり0.7ミリとなった。これによって急降下制限速度が740km/hに引き上げられた。

 

・前述のとおり発動機が栄三一型甲・乙に。

 

以上だ。

 

機銃の項目で三菱製はっていう注脚を入れたのは、中島製の五二型甲は機銃の変更がなく九九式二号三型機銃のまま生産されたからなんだ。というのも、最初に海軍が開発したベルト給弾の機構がGで弾が詰まるっている使い物にならない品物で、急遽三菱が開発したのを用いたんだがそれを大量生産する間がほとんどなかったからなんだ。グズグズしてる間に五二型丙まで改修が進み、そのタイミングでようやく中島にも二号四型機銃がいきわたるようになったって感じだな。だから中島製の五二型甲は外板が分厚くなっただけで外観からは全く違いが判らないんだ。

 

 

次に五二型乙、これは三菱でしか作られていない。特徴は

 

・機首向かって左側の7.7ミリ機銃を撤去し13.2ミリ機銃に変更。それに伴って弾薬補給口とガス抜き穴の形状が変化。

この13.2ミリ機銃はアメリカのブローニングM2機関銃を無断コピーしたものだったが意外に性能がよかった。

 

・それに伴ってカウリング向かって左の機銃発射口が大きくなった。

 

・プロペラのカウンターウェイトが円柱形から扇形に変更されたためプロペラスピンナーがさらに大型化。

 

・風防正面硝子に45ミリ防弾硝子追加

 

・左右主翼下面に150リットル増槽を一つづつ懸吊出来るように燃料配管引き通し。これは改造で五二型無印・甲の一部にも施された。

 

・栄三一型発動機に対応するためカウリングの天地寸法が増加

 

こんな感じだな。たまに中島製の五二型乙ってのを聞くが、あれは中島で後期に生産された五二型甲で風防正面硝子の防弾ガラスはあるが13.2ミリ機銃が搭載されていないんだ。

 

 

五二型シリーズでは最後だな、五二型丙だ。こいつの特徴は

 

・機首向かって右側の7.7ミリ機銃が撤去

 

・主翼20ミリ機銃の外側に13.2ミリ機銃を増設。それに伴って主翼上下面のパネルラインやフェアリングの位置と数が大きく変化した。

 

・主翼下面にロケット弾懸吊レール追加

 

・増槽を紫電や雷電などと同様の四点支持式に変更したため懸吊架や振れ止め金具の大きさと位置が変化

 

・着艦フック・クルシーがほとんどの機体で省略

 

・操縦席の座席が変化

 

・45ミリ防弾ガラスが後ろにも装備

 

・20ミリ防弾鋼鈑が背中部分に追加。

 

てな具合だ、これだけ聞けば防弾も武装も強化された型に聞こえるが・・・発動機の出力は一切向上していないんだ。なのに全備重量で+300kgされたもんだから運動性能はがた落ち。岩本哲三氏や谷水竹雄氏が強化された武装やロケット弾を駆使して戦果を挙げていたが大きな性能低下は隠せなかったんだ。機動性を少しでも生き返らせようと13.2ミリ機銃や防弾板を外して出撃した機体も多い。

 

ここでちょっと補足として栄三一型発動機の説明をするぜ。

 栄三一型は栄二一型に水メタノール噴射装置を取り付けたうえでカムを誉との共通品に変更し、プロペラ減速比を変更した発動機で、五二型丙に搭載されて零戦五三型となる予定だったんだ。けどこの発動機を五二型無印に搭載して速度を計測したところ最高速度が5km/hしか向上しておらず、またプロペラ減速室やクランクシャフトの故障が頻発したために急遽水メタノール噴射装置を取り除いたものが栄三一型甲、甲のプロペラ減速比を栄二一型と共通化したのが栄三一型乙として採用された。結局水メタノール噴射装置搭載は失敗に終わり、出力向上が必須だったはずの五二型丙以降の重武装の零戦は以前までと同じ1000馬力少々の栄で飛ばざるを得なくなったんだ。

 

 

 

六二型(六三型)

 

次は零戦六二型だな。こいつは戦闘爆撃機として運用するための改修が施された零戦最後の量産型だ。ちなみになんだが零戦六二型ってのは仮称なんだ。海軍で兵器として正式採用されていないんだよ。こいつの特徴は

 

・爆弾懸吊架が機体に埋め込まれた。これに伴い爆弾懸吊フックと増槽用燃料ホースが露出し爆弾振れ止め金具が追加された。

 

・クルシー、着艦フック、防腐塗装が完全に省略

 

・一部に木製部品を使用

 

・急降下爆撃のために、水平尾翼の構造強化

 

こんな感じだ。ただし振れ止め金具や懸吊架埋め込みは現地改造でほかの型の零戦にも行われているから一概に言えないな。この型になってもついに発動機の出力向上はなかったんだ。零戦は、重い重い250キロ爆弾や500キロ爆弾を抱きかかえて飛び立っていったんだよ。

 

 

 

五四型(六四型)

 

これは有名だな、栄発動機を捨てて金星発動機に交換し起死回生を狙った零戦だ。特徴は

 

・金星発動機搭載によるカウリングの完全設計変更

 

・それに伴うプロペラとプロペラスピンナーの変更。これらは彗星三三型から流用された。

 

以上だ、ちなみに五二型丙の機体に金星を搭載した試作一号機・二号機が五四型と呼称され。量産する際は六二型の機体に金星を搭載し六四型とする予定だったそうだ。この機体は完全に不足していた栄の出力を補い、五二型並みの空戦性能を呼び戻した。だが結局はすべてが遅すぎた・・・そのころには金星発動機の生産ラインは爆撃され壊滅し、量産に入る前に終戦を迎えたんだ。

 

 

 

 

・・・・・・・

 

「こんなもんでいいか?」

 

「ああ、とても貴重な話を聞けたが・・・レミが寝てしまったな。」

 

「だな・・・五二型シリーズの話聞いてから満足して寝ちまったんだな。」

 

「どうする?おこすか?」

 

「いや、俺が布団持ってくるわ。クロにも連絡しとくよ。」

 

「すまないな、」

 

「気にすんな。風呂は・・今日は辞めといたほうがよさそうだな。パジャマもついでに取って来るな。」

 

「ありがとう。」

 

そうして俺は立ち上がり、部屋を後にした。

 

 

 

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