ゲキテツ大決戦   作:5145/A6M5

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飛行甲板

著 ヤマ

 

「ヤマダァ!!起きろ!いったいどこで寝ているんだ!!」

 

その声で俺は飛び起きた。その瞬間に体はバランスを崩し零戦の主翼から地面に転落する。全身が痛い。

 

イサカ

「何をやってるんだ馬鹿者・・・」

 

ヤマダ

「ぐええ・・・61-120を全バラして疲れてんだよ・・・」

 

イサカ

「だからって二一型の主翼の上で寝ることは無いだろう。それより、仕上げたのか・・・この二一型。」

 

ヤマダ

「ああ。見ての通り零戦二一型、塗装は中島第5153号機 尾翼番号AI-3-102、第一航空艦隊第五航空戦隊空母『瑞鳳』所属機だ。」

 

今回の機体の出どころは少し面白い。イジツで生産された零戦ではなくユーハングの工廠跡で放置されていた零戦なのだ。だから瑞鳳所属機「仕様」ではなく、本当に瑞鳳元所属機なのである。俺が工廠跡に探索(まあ火事場泥棒のようなものだが・・・)に行ったとき、建物の奥の部屋で埃をかぶって眠っていた。

 

イサカ

「もう問題なく飛べるのか?」

 

ヤマダ

「ああ、もう何の問題もない。」

 

イサカ

「そうか、お疲れさまだな。」

 

工廠跡から引っ張ってきたときは、外観こそまともだったが中身はひどいありさまだった。どうやら三点着陸に失敗してドカンと降りたらしく主脚はゆがんで動作せず、尾輪のオレオも故障していたのだ。その修理で工廠に入ったのだろうが何らかの原因でそのままにされ放置されていたのだろう。

 

イサカ

「結局どこを修理したんだ?」

 

ヤマダ

「ああ、とりあえず主脚と尾輪。外板の張り直しと錆が入っていた主桁の交換だな。主桁の強度が危うい状態で飛ばすわけにはいかない。」

 

イサカ

「発動機は大丈夫だったのか?」

 

ヤマダ

「いや、流石に再稼働はできなかった。ながいこと湿気たイジツの気候にさらされてたおかげで全体に錆が回ってたんだ。だから発動機はイジツで製造された栄一二型に乗せ換えたよ。」

 

イサカ

「そうか・・・」

 

ヤマダ

「あ、でも気化器は原型機のやつを使ってるぞ。なるべく原型の機体部品を使ってやらないともったいないからな~ せっかくだし乗ってみるか?」

 

イサカ

「いいのか?」

 

ヤマダ

「ああ。もちろんさ。とりあえずAI-1-129も引っ張り出してくる、先に乗って待っててくれ。エナーシャは俺が回すよ。」

 

イサカ

「ああ、頼んだぞ。」

 

そう言って俺は格納庫からAI-1-129を押してゆきAI-3-102の横に並べる。イサカが操縦席で準備を終えたのを確認すると、右主脚に立てかけてあるエナーシャハンドルを取り出し機首下に立った。

 

イサカ

「整備員前離れ!メインスイッチオフ!エナーシャ回せ!」

 

ハンドル先の金具を機体の金具にかみ合わせ両手でハンドルを力いっぱい回す。

 

キィィィィィン・・・・!

 

毎分80回転を超えたところでハンドルを引き抜く。

 

ヤマダ

「コンタクトーーッ!!!」

 

操縦席内でイサカが接続索を引きクランクシャフトとエナーシャを連結する。プロペラがゆっくりと回り出し、聞こえる音はエナーシャ回転音から乾いた爆発音へと変わった。俺はAI-3-102の主翼へと昇る。プロペラ後流に吹き飛ばされないよう踏ん張りながらイサカに話しかけた。

 

ヤマダ

「調子はどうだ?調整はちゃんとやったんだが」

 

イサカ

「油温が少し高い気もするがすぐに収まるだろう。大丈夫だ。」

 

ヤマダ

「了解、不調があれば何なりと言ってくれ。」

 

イサカ

「ふふ、そう心配するな。」

 

そして俺は主翼から飛び降り、AI-1-129に乗り込むと発動機を回した。こいつは発動機が栄じゃないから計器類も普通の零戦とは違う。それをそつなく乗りこなしたイサカはやはり流石だ。イサカの手信号を確認すると、滑走を始めるイサカにあわせて俺もスロットルを開けた。

 

 

 

めも カイチで零戦を撃墜したヤマカゼ飛行隊、ヤマダの仕上げた零戦と仕様が近似していたことからヤマダがウッズ社長に呼び出されカイチに向かう速度が上がり、操縦桿を軽く引くと二機の零戦は離陸した。しばらく高度を取ってから俺は無線で確認を取る。

 

ヤマダ

「どうだ?油温は下がったか?」

 

イサカ

「ああ、問題ない。空戦機動をしても問題なさそうか?」

 

ヤマダ

「主桁は交換して外板も張り替えた、もう新品並みの強度がある。気にせずぶん回せ!」

 

イサカ

「じゃあ遠慮無くっ!」

 

そういうが早いかイサカはスナップロールで機体を横転させ急旋回に入る、こちらの後ろを取ろうとしているがそうはいかない。俺は左旋回で迫るイサカを見ながら後ろギリギリまで引き付けると、零戦の苦手な右へ機体を横転させ右旋回で逃げる。案の定イサカはワンテンポ遅れた。

 

イサカ

「少しくらいは後ろにつけると思ったんだがな・・・」

 

ヤマダ

「まあこっちのほうが馬力高いし、何より補助翼修正舵があるからな。普通の二一型よりかはロールが早いぞ。」

 

イサカ

「ロール速度が違うなというのは私の勘違いじゃなかったか。」

 

ヤマダ

「ああ、乗り比べると確実にそっちのほうがロールは遅いだろうし操縦桿もそっちのほうが重いだろうな。」

 

イサカ

「ちょっと悔しい・・・」

 

ヤマダ

「なんだそりゃ・・・そろそろ降りるか。」

 

イサカ

「ああ。」

 

そして俺たちは滑走路に降り立つ。プラグのススを飛ばし発動機を止めると、サダクニさんが焦った表情でこちらに向けて走ってきた。

 

サダクニ

「組長!大変です!」

 

イサカ

「落ち着け、どうしたんだ?」

 

サダクニ

「ガデン商会、ウッズ社長から電話があったのですが・・・撃墜した空賊の零戦がヤマダの整備した零戦の特徴と似ている。至急確認に来てくれ、とのことです。」

 

ヤマダ

「はぁ!?俺は空賊の零戦を整備した覚えはないですよ!」

 

サダクニ

「そんなことは分かっている、だが少しでも疑いをかけられている以上行って確認しないとこちらとしても顔が立たん。」

 

ヤマダ

「分かってますが・・・クソ腹立つ・・」

 

イサカ

「ウッズ社長からは他に何か言われているか?」

 

サダクニ

「はい。普通の滑走路に着陸されると面倒なことになるのでガデン商会の屋根、ひこうかんぱん・・?に着陸しろとのことです。」

 

ヤマダ

「飛行甲板です、それって余計目立つんじゃ・・・」

 

イサカ

「まあ向こうの言うことだ、何か考えあってのことだろう。」

 

サダクニ

「組長が会合を行う予定だった企業や組合にはすでに連絡をつけ予定を開けてあります。ヤマダと一緒に行ってやってください。」

 

イサカ

「助かる、ありがとう。ヤマダ、早く準備していくぞ。」

 

ヤマダ

「ああ、すまないな。」

 

そう言って俺たちは準備を整え、タネガシからカイチに飛んだ。61-120は完全分解して整備中なのでイサカはAI-1-129で、俺はAI-3-102で向かう。目立たない・・・といえばある意味目立たないが、ユーハングの日の丸は付けてる機体は少ないのである意味目立つ。

 

イサカ

「ヤマダ、気を落とすなよ。絶対にお前が関与してるわけがないんだからな。」

 

ヤマダ

「そう言ってくれると心強いよ・・・はぁ」

 

イサカ

「向こうもこちらを呼ぶということはあくまでヤマダの零戦じゃないというていで考えているんだろう。何かあれば私も説明してやる、気をしっかり持て。」

 

ヤマダ

「ああ、ありがとう・・・」

 

そうして俺たちはカイチ上空に到着した、指定された座標を見ると確かに飛行甲板がある。

 

イサカ

「どうする?お前が先に着艦するか?」

 

ヤマダ

「じゃあお言葉に甘えてそうさせてもらおうかな。」

 

俺は適度に高度を下げると飛行甲板と並行に飛び風防を開けて座席位置を高くする、スロットルを絞り拘捉鈎(着艦フック)と脚を出した。これは「着艦ス」の合図となる。甲板上に整備員らしき人影がいるのを確認すると、プロペラピッチを低ピッチに固定するとスロットルを慎重に操作し速度を70キロクーリル程度に保ちながら「敵意ナシ」の合図として大きくバンクを振る。ぐるりと旋回し甲板に正対するとフラップを下げ高度をさらに下げた。程よい速度まで下がると零戦は風と重力に負けて勝手に高度が下がりだす、その状態になれば失速しないように注意しつつ操縦桿をほんの少しだけ引き機首を上げるのだ。飛行甲板の端に三点で着陸をすると、直ぐに制動索を拘捉鈎がつかんだ。

 

ヤマダ

「ぐええっ」

 

40キロクーリルほどから急に停止させられるので体は前に投げ出されるような衝撃がかかる。対気速度の速い飛行船に着艦するのとはわけが違うのだ。だがここでゆっくりはしていられない、イサカを待たせているので甲板上に居た黒髪の少女の手旗に従いエレベータまでタキシングし発動機を止め拘捉鈎を機体に巻き上げると、機体から降りて車止めを置くと翼端を折りたたんだ。

 

ヤマダ

「OKです、エレベータ下げれます!」

 

???

「はい!」

 

エレベーターが下がり下の格納庫らしきところに降りると、機体を奥に押してゆく。

 

???

「貴方がヤマダさんですね?」

 

ヤマダ

「はい、失礼ですが貴女は?」

 

エリカ

「ハルカゼ飛行隊のエリカです。」

 

ヤマダ

「エリカさんですね。よろしくお願いします。」

 

エリカ

「こちらこそ、もう一人の方の着艦誘導を手伝っていただいてもいいですか?」

 

ヤマダ

「もちろんです。」

 

そういって俺とエリカはエレベーターに乗ると甲板上に戻った、俺は首にかけていたタオルを広げて合図をする。イサカが着艦コースに入りゆっくりと降下してきた。一つ目の制動索はつかめなかったが二つ目の制動索をつかんで停止した。エリカが手旗でエレベーターまで誘導すると、俺は車止めを置き翼端を折りたたんだ。

 

ヤマダ

「イサカ、着艦はどうだった?」

 

イサカ

「狭い上に失速ギリギリで飛ばないといけないからなかなか難しかったぞ・・・やはり普通の飛行場が楽だな。」

 

ヤマダ

「ははは・・まあそれには同意するよ。」

 

エリカ

「こんにちは、イサカさんですね?」

 

イサカ

「ああ、そうだ。」

 

エリカ

「では社長のところにご案内いたします。」

 

エリカに連れられてガデン商会の中を歩いてゆく、部屋の前を横切ったときにゴミでも見るような目線を部屋にいた飛行隊から浴びせられた。まあ仕方あるまい。

 

エリカ

「こちらです。社長、連れてきました。」

 

社長室に入ると目の前には大柄な男がいた。ガデン商会と仕事をしたことは無く社長の顔を俺は知らないが、これが社長ならなかなかいかつい社長である。

 

ウッズ

「お前がヤマダか。」

 

ヤマダ

「はい、今回は空賊の零戦が俺が整備した零戦に似ていたと?」

 

ウッズ

「そう早まるな。お前のことはルゥルゥから聞いている。そんなことをする奴だとは思っちゃないがきちんと調べてみないとこちらとしても示しがつかない。だから呼んだだけだ。そう心配するな。」

 

イサカ

「だから言っただろう?」

 

ヤマダ

「はぁ~・・・死ぬかと思ったぜ・・・」

 

そうして俺たちはウッズ社長と少し話をすると、残骸を保管している場所まではハルカゼ飛行隊が案内を引き継いでくれると言うことになった。ウッズ社長と別れハルカゼ飛行隊と合流する。

 

ユーカ

「よろしくお願いします!ハルカゼのユーカでっす!」

 

ヤマダ

「よろしくお願いします。」

 

イサカ

「よろしく頼む。」

 

ベル

「ひとまず私たちが、撃墜した残骸のところまでご案内させていただきます。」

 

ヤマダ

「お願いします。私としても自分の名に泥を塗られたままでは納得いきませんので。」

 

そして俺たちはガデン商会から少し離れた倉庫まで案内された。その道中

 

イサカ

「ヤマダ・・・あそこのでか耳頭巾・・」

 

ヤマダ

「どうした、見覚えがあるのか?」

 

イサカ

「ああ、エアショーで見たときから気になってはいたんだが・・・あれはルワイ組の跡継ぎだ。確か名前は・・・ガーベラ」

 

ヤマダ

「ルワイ組!?なんでそんなのがここに・・・?」

 

イサカ

「わからない・・・」

 

ヤマダ

「うーん・・だがこっちに敵意があるようには見えないし、それまではこっちも普通に接しよう。変な疑いをかけても失礼だしな。」

 

イサカ

「ああ、確かにそうだな。」

 

そうして俺たちは倉庫の前についた。青髪の高身長の少女とユーカが倉庫の扉を開けた。

 

ユーカ

「いくよ、ダリア!」

 

ダリア

「ばっちこい!」

 

大きな扉が開くと、そこの真ん中には日の丸が描かれた一機の零戦の残骸があった。ぐしゃぐしゃにつぶれてはいるが燃えてはいなかったようで塗装ははっきりと確認できる。

 

エリカ

「自由に見てもらって構いません。調べてみてください、不正をしていないことは私たちが証人となります。」

 

ヤマダ

「助かります。」

 

そして俺とイサカは残骸の前に回った、カウリングはくしゃくしゃになっているが気化器空気取り入れ口が上にある。それに胴体内燃料タンクが小さい。これは三二型か二二型だ。

 

イサカ

「ヤマダ。この機体、翼端折り畳み機構が無いぞ。」

 

ヤマダ

「じゃあ三二型か?」

 

イサカ

「いや、折り畳み機構が無いというか・・・これを見てくれ。」

 

イサカに手招きされて翼端を見に行く、くしゃくしゃになった翼端の形は12mの主翼の形だが・・・主翼折り畳み機構の部分がずさんに溶接されているのだ。強度には問題ないだろうが、俺はこんな修理は絶対にしない。

 

ヤマダ

「これが俺の修理した零戦と似てるだぁ・・・?ケンカ売ってんのか?」

 

イサカ

「ヤマダ、落ち着け。」

 

すると格納庫の外に数人の男が立っている。

 

???

「君だね?僕の手を煩わせた戦闘機を空賊に売ったのは?」

 

ユーカ

「うわっ・・・ヤマカゼ飛行隊のサカキ・・・」

 

サカキ

「空賊の戦闘機を整備するなんてとんだ整備士だねぇ?」

 

アカリ

「なんてこと言うんだよ!この人たちは・・・」

 

サカキ

「じゃあなんでこの零戦に赤い丸が描かれているんだい?このマークを描くのはこの人の整備した戦闘機だけだと言うじゃないか?」

 

イサカ

「貴様言わせておけば!この零戦はヤマダが整備したものじゃない!」

 

ヤマダ

「はぁ~・・・・おいガキ」

 

サカキ

「ガ・・ガキ!?」

 

ヤマダ

「お前は確かこの機体を墜とすのに『手を煩った』んだってな?」

 

サカキ

「いやっまあ・・多少はねぇ?」

 

ヤマダ

「悪いが俺は整備した戦闘機を墜とされたことがないのも自慢でね、こんなのに手を焼くようなパイロットに墜とされるような人間のは請け負ってないつもりだが?」

 

サカキ

「そ・・そりゃあんたの見込み違いなんじゃないのかなぁ?」

 

ヤマダ

「そうか、じゃあ今すぐ俺と模擬空戦でもしてみるか?俺ならあんたなんて7ミリ7機銃ででも墜とせるぜ?」

 

サカキ

「なっ何を根拠に!」

 

ヤマダ

「じゃあ今すぐにでも試してみるかい?」

 

サカキ

「ふ・・ふん!ヤマカゼ飛行隊は整備士となんて空戦しないんだよ!」

 

ヤマダ

「そうかい・・・で?用件はそれだけか?」

 

サカキ

「ッ・・・・」

 

ヤマカゼ飛行隊なる一行はどこかへ歩いてゆく。

 

アカリ

「へっ、明後日の方向に一昨日来やがれっての!」

 

ヤマダ

「はは・・・まあそのくらいにしといてやってください。」

 

そして俺はもう一度機体を見に戻った。しかし、見れば見る程ずさんな整備だ・・・

 

ヤマダ

「お前も大変だったろう・・・ご苦労だな。」

 

イサカ

「どうした・・・いや、聞くまでも無いか。」

 

ヤマダ

「見れば見る程ずさんな管理だよ・・・」

 

そして俺はハルカゼの面々に礼を言うと倉庫から出た。確かに俺が整備した戦闘機では無い、だが確固たる証拠は無いのだ。世の中は人情や主張だけが通る程甘くはない、いくら俺や俺の仲間が証言しても、俺の仲間が証言している以上ここではなんの信用も無いのだ。

 

ベル

「私たちは貴方のでは無いと言う考えに賛成ですが・・・どうやって証拠を見つけ出せば良いでしょうか・・・」

 

ヤマダ

「難しい問題ですね・・・極端な話ですが要は私の評判です。空賊なんかを迎え撃てるようなパフォーマンスが出来れば一番いいですが、都合よくそんなことは無いでしょうね。」

 

エリカ

「情報によると赤い丸を描いた零戦はあと四機ほど居たそうです。」

 

イサカ

「四機!?まさかあの機体を撃墜した時、取り逃したのか?」

 

エリカ

「はい、そう聞いています。」

 

ヤマダ

「嫌な予感がしますね・・・」

 

そう言いながら俺たちはガデン商会の建物へと戻る。

 

ウッズ

「どうだった?」

 

ヤマダ

「はい、調べてみましたが確実に私の整備した零戦ではありません。ただ・・・」

 

ウッズ

「ただ、なんだ?」

 

ヤマダ

「空賊の零戦はあと四機ほど生き残っているそうです。そちらを処理できなければまた同じような疑いをかけられる可能性があります・・・」

 

ウッズ

「それで、お前はどうしたいんだ。」

 

ヤマダ

「ここに暫く残ってその空賊を叩きたいのです。当然お仕事の邪魔は致しませんので。」

 

ウッズ

「まあ・・・空賊がこっちに来ているってのは俺らにとっても問題だ。そこのハルカゼを使っていい、しっかりやってくれ。」

 

ヤマダ

「ありがとうございます・・・!」

 

ユーカ

「ウッズ社長〜!お仕事ですか!?」

 

ウッズ

「ああそうだ、金は少し待ってろ。それと無茶するんじゃねえぞ!修理代でマイナスにしたら承知しねえからな!」

 

ユーカ

「はーい!」

 

俺はひとまず機体を納めさせてもらった格納庫に行くと、エレベーターで二機を飛行甲板上にあげた。そしてウエスをつかむとAI-3-102の前に回る。イサカも着いて来た。

 

イサカ

「何をするんだ?」

 

ヤマダ

「オイルの状態を見ときたくてな、外すの手伝ってもらえるか?」

 

イサカ

「ああ、もちろんだ。」

 

イサカがそう言ってスパナを取りに行ったその時

 

バーーーンッッ!!!!!

 

イサカ

「何だ!?敵か!?」

 

ヤマダ

「俺今日で転落二回目だぜ・・・」

 

俺たちが飛行甲板上の扉の方を見るとハルカゼ飛行隊の6人が立っていた。

 

ヤマダ

「どうしました?皆さんお揃いで」

 

エリカ

「何かお手伝いできることがあるかと思って。」

 

ガーベラ

「私達も手伝える事ありますか〜?」

 

ヤマダ

「ありがとうございます。それじゃあユーカさんとガーベラさんは向こうの脚立を、エリカさんとベルさんは工具箱を・・・」

 

ウゥーーーーー・・・!!!!!

 

ユーカ

「空賊!?」

 

ヤマダ

「早速お出ましか・・・ハルカゼの皆さん、発進したら上空で集合です!」

 

ユーカ

「はい!あと、敬語じゃなくて良いですよ。ヤマダさん達年上だし・・・」

 

ヤマダ

「じゃあ君達も敬語じゃなくていい、言い難いだろう。」

 

ユーカ

「うん!よろしくね!」

 

ヤマダ

「ああ!さあ急げ!空賊は待ってくれないぞ!」

 

そう言って俺はAI-1-129の主翼を伸ばした。すると

 

イサカ

「ヤマダ、お前がAI-1-129に乗れ。」

 

ヤマダ

「ええ!?でも・・・」

 

イサカ

「私がエナーシャを回すと時間がかかる、ここは効率優先だ!」

 

ヤマダ

「了解!」

 

そしてイサカが合図をするのを待ちエナーシャで発動機を始動させる。始動を確認すると俺は直ぐにAI-1-129に乗った。セルモーターを回し発動機を回す。準備が出来たことを大きく手を振って知らせると、イサカはスロットルを開けて滑走を始めた。俺はフラップ下げ動作をしながらそれに続く。ハルカゼの隼三型が合流して来た。

 

ヤマダ

「ユーカ、残りの四機の機種はわかるかい?」

 

ユーカ

「えっと・・・二二型が一機、二一型が二機、三二型が一機って聞いた!」

 

ヤマダ

「了解、君たちは二二型と二一型を頼んでもいいか?」

 

ユーカ

「わかりました!」

 

イサカ

「ヤマダ!」

 

ヤマダ

「どうした?」

 

イサカ

「後ろは・・・任せたぞ?」

 

ヤマダ

「任せとけ。行くぞ!」

 

ユーカ

「よーし、ハルカゼ飛行隊!一機団結!」

 

そして俺たちは左右に散開する、俺たちが機首を立て直した瞬間前からダイブしてきた四機の零戦が俺たちの間を通り過ぎて行った。

 

ヤマダ

「イサカ!!三二型だけを狙うぞ!」

 

イサカ

「了解だ!」

 

反転してきた三二型の後ろにイサカがつくと機銃を打つ、命中弾はなかったが三二型は速度を失う。

 

イサカ

「ヤマダ!いまだ!」

 

そう言ってイサカは機体を滑らせ俺の射線からずれる。俺は照準器いっぱいに広がった三二型の主翼に向けて機銃を叩き込んだ。

 

ダダダダッ!! バキッ・・・!

 

三二型の主翼が吹き飛んだ、イサカの後ろにつきハルカゼ達のほうをめざす。すると空賊の二一型が俺の前に躍り出た、イサカを撃とうとしたのだろうが俺がいることに気付き回避を始める。こいつを追っていたユーカとエリカは高度を取るため離脱して上昇している途中だったのだ、二一型は緊急ブーストで俺から逃げようと左にロールした。まあ普通の零戦同士ならそれで振り切れるだろうが・・・

 

ヤマダ

「逃げれると思うな!!」

 

こちらもブースト引手を引きラダーを踏み操縦桿を倒してスナップロールで二一型を追う。このAI-1-129が搭載しているR1830は1450馬力、栄一二型の1.5倍の出力があるのだ。操縦桿を引きながら二一型の後ろぎりぎりに接近する。確かに主翼には日の丸が書いてあった。

 

ヤマダ

「じゃあな!」

 

ダダダダッダダッ!!!

 

二一型は機体中央で真っ二つに砕けた、流石二十ミリである。

 

エリカ

「ありがとうございます!」

 

ヤマダ

「どうってこたないさ。さあ、残りの二機のところに行こう!」

 

イサカ

「ヤマダ、あと3分でケリをつけるぞ。」

 

ヤマダ

「何かあるのか?」

 

イサカ

「向こうの雲の濃さと風向きから考えて五分後には雨が降る。着艦が難しくなるぞ。」

 

ヤマダ

「流石イサカだな、了解!!」

 

ユーカ

「ヤマダさん!私とエリカはダリアとガーベラのほうに行くから、ベルとアカリのほうは頼むね!」

 

ヤマダ

「あいよ!」

 

そして俺はイサカを前にして編隊を組みなおすと、100クーリルほど先で空戦をしているベル、アカリ、二二型を見据えた。すると次の瞬間イサカが機体を裏返しダイブしていった。俺も当然それに続く、アカリたちは二二型ともつれていた。すると少し離れて追っていたベルから無線が入った。

 

ベル

「ヤマダさん!イサカさん!アカリにはまた別で指示を出します、安心してダイブしてきてください!」

 

イサカ

「了解だ!ヤマダ、遅れるなよ?」

 

ヤマダ

「任せろ、行くぜ!」

 

イサカはスロットルを開けパワーダイブに移った、二二型がぐんぐん近づいてくる。だがアカリの隼はに二型の後ろから離れようとしない、

 

ヤマダ

「ベル!アカリはなんで離脱しない!?」

 

ベル

「アカリ!上!上!!」

 

間一髪アカリはダイブしていったイサカをよける、だがイサカもアカリをよけた為に射撃位置につけなかった。

 

イサカ

「くっ・・・!ヤマダ、頼んだ!!」

 

ヤマダ

「頼まれた!」

 

下に離脱していったイサカの位置に俺が滑り込む、パワーダイブでイサカに追いつかないようにするため少し絞っていたスロットルを全開位置にしてギリギリまで近づく。二二型にも確かに日の丸が書いてあった。

 

ヤマダ

「俺の機体を真似したのが運のツキだ!」

 

ダダダダダダッッ!!! ドォン!!

 

二十ミリの弾倉に命中したようで機体は大爆発を起こす、破片にぶつからないように離脱するとイサカの後ろに戻る。ユーカ達も二一型を撃墜し終えたところだった。

 

ヤマダ

「皆無事かい?」

 

ユーカ

「ハルカゼは無事だよ〜」

 

イサカ

「私も大丈夫だ。」

 

ヤマダ

「了解、帰ろうか〜」

 

俺とイサカは来た時と同じように甲板に着艦した。まあ空賊の機体は撃墜できたのですぐに帰っても良かったのだが暗かったのでウッズ社長の計らいで部屋を用意してもらい、一晩泊まることになった。俺は着艦した機体を格納庫の中に下ろしハルカゼ達にとりあえず休む事を伝えると、イサカと二人で社長が用意してくれた部屋に入った。

 

イサカ

「ふう、偽物がどうのこうので大変だったな。」

 

ヤマダ

「ああ、なんか無駄に疲れた気がするよ。空賊のくだらないお遊びで良かった。」

 

イサカ

「ふふ、お前の機体を完全に模倣できる人間なんて居ないだろう?」

 

ヤマダ

「まあな、さあ、もう寝ようぜ・・・」

 

イサカ

「ああ、おやすみ。」

 

ヤマダ

「おやすみ。」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・翌朝

 

俺たちはさっさと準備を整え、カイチを立つことにした。空賊を処理し終えた以上あまり長居する理由もないし、イサカは今日の午後にパーティに呼ばれているそうなのだ。一応向こうの企業からの依頼で行先を言ってはいけないらしく言って貰え無かったが、まあイサカのことだから下手なミスはしないだろう。

 

アカリ

「イサカさん、昨日はすみませんでした。すぐに謝りたかったんだけど・・・」

 

イサカ

「どうして避け無かったんだ?」

 

アカリ

「追うのに夢中で無線を聞いていなかったんです・・・」

 

イサカ

「なるほどな・・・良いか?空戦の基本は状況判断だ、無線、自分の目、音、全てに感覚を研ぎ澄ませて敵を探し味方との連携をいかにうまく取るかが勝利に繋がる。」

 

アカリ

「はい・・・」

 

イサカ

「ふふ、そう固くなるな。別に怒っている訳では無い。お前の空戦の腕は悪くなかった、これからも頑張れ。」

 

アカリ

「・・・ありがとう!!」

 

そして俺たちはハルカゼとウッズ社長に別れを告げると、機体に乗りタネガシへの帰路に着いた。偽物の事はウッズ社長が説明してくれる事になった。願ったり叶ったりである。タネガシに付くとイサカは戦闘機を変え直ぐにパーティに向かうそうだった、用意をしているうちに俺の方でもイサカの戦闘機の準備を終えておく。

 

イサカ

「じゃあ行ってくる、私がいない間サダクニと一緒にシマのことを頼む。」

 

ヤマダ

「任せとけ、気を付けてな。」

 

イサカ

「ああ。じゃあエナーシャを頼む。」

 

そして俺はイサカの乗った波模様の零戦の機首下に回る。

 

イサカ

「整備員前離れ!メインスイッチオフ、エナーシャ回せ!!!」

 

キィーーーーーン・・・

回転数が上がるとハンドルを引き抜いて叫ぶ

 

ヤマダ

「コンターク!!!」

 

プロペラが回転を始める。シリンダー内で爆発が始まるとプロペラの回転は加速し安定する。滑走路へタキシングするイサカを誘導すると、俺は首に巻いているタオルを頭の上で大きく手を振りイサカを見送った。

 

ヤマダ

「さて、イサカに頼まれた書類の処理するかぁ・・・」

 

 

 

数時間後

 

ヤマダ

「ああああああああ!!目が痛い!! イサカぁ・・・いくらなんでも量多いぜ・・・サダクニさんはシマの見回りだし、レミは宴会だっつうし・・・俺零戦いじりてえよ〜!!!」

 

束になった書類を片っ端から確認し数値をまとめハンコを押してゆく。すると机の上の電話が鳴った。

 

ヤマダ

「はい、イサカ組事務所。」

 

???

「ヤマダさんですね?」

 

特に要件も言わず、電話に出た声をすぐ俺だと認識した。どうやら普通の「お客様」じゃ無さそうだ。

 

ヤマダ

「はい、失礼ですが貴方は?」

 

???

「イサカさんをパーティに招待した者です。貴方は戦闘機の整備技術に長けているそうですね?」

 

イサカをパーティに誘った人間・・・

 

ヤマダ

「まあ人並み以上の技術はあるだろうが・・・」

 

???

「ヤマダさん、貴方なら今の状況を理解出来るでしょう?私と取引をしませんか?」

 

してやられた、イサカは今この電話の相手のパーティに居る、人質に取られたわけだ・・・だが俺はこの声と喋り方に聞き覚えがあった。零戦を操る人間なら一度は耳にした事がある伝説の空賊の一人、「零戦胡蝶」・・・その娘だ、イサカが住民への護身武器の輸送で何度か取り引きしていた「ミヤビ興業」だ。

 

ヤマダ

「失礼だが、貴方はミヤビ氏か?」

 

???

「・・・・・・」

 

ヤマダ

「どうなんだ?」

 

???

「答える義理はありません。取り引きをするかしないか・・・あなたの選べる答えは1つしかないはずです。」

 

ヤマダ

「ひとまず内容を言え・・・」

 

???

「私の戦闘機の整備をして頂きたいのです。」

 

ミヤビ興業・・・そして戦闘機、間違いない。ユーハングで製造された「零戦五二型」、零戦胡蝶の愛機の事だ。ミヤビ興業は裏で空賊行為をしている噂がある。別にミヤビ興業が本当にそれをしているかはわからないが・・・もし本当だった場合、俺は伝説の空賊の戦闘機を整備したことになってしまう。

 

ヤマダ

「断る。」

 

???

「あら、良いのですか?イサカさんは今私の居る隣の大部屋で食事を楽しんでおられます。」

 

ヤマダ

「待て、そもそも妻は関係無いだろう。頼むなら直接来て俺に言え!!」

 

???

「貴方は自分の身内とシマの住民の機体しか整備はしないと聞きます・・・少々荒っぽいですが、これが確実であると判断したまでです。私とてイサカさんを手に掛けたくはありませんよ?」

 

ヤマダ

「くっ・・・卑怯者めが・・・」

 

???

「お好きにお言いなさい。さあ、ではもう一度貴方にチャンスを与えましょう。引き受けますか?引き受けませんか?」

 

どうする・・・ここで引き受けなければイサカがどうなるか・・・だが・・・っ!!

 

ヤマダ

「・・・断る。整備士として、俺の機体を正しい事に使ってくれている人への敬意として。空賊行為をしている可能性がある人間の戦闘機を手にかける事は出来ない・・・」

 

???

「そうですか・・・残念です。ふふふ・・・貴方、またイサカさんに会えればいいですね。」

 

ヤマダ

「クソっっ・・・妻に手を出すな!!」

 

???

「私は貴方にチャンスは与えたつもりですが?ふふ・・・彼女の顔が苦痛に歪む姿、あなたは想像出来ますか?」

 

ヤマダ

「やめろ・・・やめてくれ、俺の大切な妻なんだ・・!!殺すなら俺を殺せ・・・!!!たった一人の俺の妻なんだ!!!!!」

 

???

「ふふふ・・・ふふふ・・・ん? 失礼、こちらで少し余計な事をした人間がいましたようで、ひとまずイサカさんは・・」

 

ヤマダ

「おい待て、話はまだ・・・」

 

ガチャッ・・・ツーーーツーーー

 

 

ヤマダ

「クソ!!!!!」

 

俺は壁を思い切り殴り付けた。

 

ヤマダ

「クソ・・・イサカ・・・」

 

俺はすぐに格納庫へ駆けおり、零戦に飛び乗った・・・だが肝心の場所がわからない。AI-1-129の操縦席にある地図を開くと、二一型の最大行動範囲をコンパスで引く。飛んで言った方向を思い出し扇形に絞る、だがそこには食事ができるような施設どころか街すらない。こうなればしらみつぶしだ、扇形の中をブロックに分けて空の駅を点で示し航路に線を引く。全ての準備と燃料補給を終え、今すぐにでも滑走路に出ようとしたその時

 

イサカ

「何やってるんだ・・・?」

 

俺は操縦席から転がり落ちるように出ると、その声の方に走っていった。

 

イサカ

「うわっ、どうした?」

 

ヤマダ

「イサカ!」

 

そして俺はイサカに抱き着いた、

 

イサカ

「なんだなんだ!」

 

ヤマダ

「何でもない・・・なんでもねえよ!」

 

俺はイサカを強く強く抱きしめた。それにしてもミヤビ興業・・・とんでもないことを考えやがる。そして俺にふっかけたあれが失敗した以上、第二第三の手を下してくることも考えられる・・・ミヤビ興業とおおっぴらに取引をしているイサカに今言う訳には行かないが、俺だけでも警戒しておかないといけない。

 

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