ゲキテツ大決戦   作:5145/A6M5

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盗難事件 前編

著 ヤマ

 

俺はその日の作業を終えると、格納庫の電気を消し部屋へと向かった。扉を開けるとそこにはイサカとレミが居た、遊びに来ているようだ。

 

ヤマダ

「よっ、レミ」

 

レミ

「おじゃましてますっす〜」

 

そして俺はイサカの横に腰を下ろす。

 

イサカ

「お疲れ様だな。酒とラムネ、どっちにする?」

 

ヤマダ

「ありがとう、ラムネを貰おうかな。」

 

そして俺はイサカにラムネを注いでもらう。一杯飲むとふと気になったことを聞いてみた。

 

ヤマダ

「イサカ、指示書の駐機場所を二機分開けておくようにっていうのはなんだったんだ?」

 

イサカ

「ああ、明日カナリア自警団からアコとシノがこちらに来るんだ。」

 

ヤマダ

「ほえ〜、なるほどな。」

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・翌朝

 

俺はイサカを起こさないようにそっと布団から出ると、格納庫へと降りていった。誰にも見られない必要は無かったのだが、朝からアコとシノが来ることになっていたし早めにコトを済ませておきたかったのだ。そして準備を終え、コトを始めようとすると・・・

 

???

「何をやってるんだ?」

 

ヤマダ

「どわぁっ!!」

 

イサカ

「そんなに驚かなくてもいいだろう・・・?」

 

俺がコソコソしているのに気づいてそっとつけてきたようだ・・・まったくこの子に誤魔化しは効かない。

 

ヤマダ

「ああ・・・ちょっとこいつの試運転をしたくてな。」

 

カバーを剥ぎ取るとその下にはピカピカの栄一二型発動機があった。工廠跡を探索している時に見つけたのだ。

 

イサカ

「これは?」

 

ヤマダ

「ユーハングで製造された栄一二型だ、ほぼ奇跡的だが使えそうな状態で残ってたんだよ。点火プラグとコードをこっちの規格品に交換した以外は完全にオリジナルだぜ?」

 

そこまで言い終え、発動機をテストベンチに組み直そうとクレーンを用意していると滑走路に見慣れた五二型が着陸した。だがどうも音がおかしい、俺はイサカを連れてその五二型が着陸したあたりに走っていった。それはレミの雲塗装の五二型だった。

 

ヤマダ

「レミ!朝早くからどうした!?」

 

レミ

「げっ・・・ヤマダぁ・・・」

 

ヤマダ

「げってなんだ!それより発動機の音がおかしいぞ!?とりあえずあっちの格納庫に入れてくれ!」

 

そしてレミのタキシングを誘導して格納庫に五二型を入れて貰うと、しばらく発動機をアイドリングしてもらった。やはり音がおかしい。

 

ヤマダ

「発動機を一度止めてくれ!」

 

レミ

「了解っす!」

 

そしてレミは操縦席から降りてきた、イサカが汗をかいているレミを見てタオルを取りに行ってくれる。そのうちに俺はレミに色々話を聞いた。

 

ヤマダ

「こっちに遊びに来たのはこのせいだったんだな?」

 

レミ

「そうなんっすよ・・・業者がいいピストンがあるって言うから変えさせてみたら、それからどうも様子がおかしくって・・・出力が出ないっていうか・・・」

 

ヤマダ

「なんでまたそんな業者に・・・」

 

レミ

「ウチのシマのそばにあるちっちゃい会社だったんっす、ちょっとでも経営の助けになればと思って・・・」

 

ヤマダ

「優しいな・・・ただ発動機の音がおかしいとなりゃ大問題だ。もしかしてだがピストンはその業者オリジナル品か?」

 

レミ

「そうらしいっす。見た感じ雑さとかは見えなかったんでつけてもらったんっすけど・・・」

 

ヤマダ

「ふ〜む・・・なんか胡散臭いな、ちょっとカウリング外すぞ!」

 

そして俺はレミとイサカと協力してカウリングを外すと、試しに一番上のシリンダーのヘッドを外してみた。これを外せばピストンが見える。よくよく見てみるとピストンにはあるべき溝が無かった、バルブの逃がしだ。これが無いともし過回転を起こした場合一瞬で発動機がオシャカになる。幸い一番上のシリンダーは問題なかったが、発動機の音がおかしく出力が出ていないということはどこかに問題があるはずだ。それよりもうひとつ気になる点がある

 

ヤマダ

「レミ、こいつに元々着いていたピストンはどうなったんだ?」

 

レミ

「その業者が引き取ったっすね・・・もしかしてまずかったっすか?」

 

ヤマダ

「クソ!!!!」

 

俺はシリンダーヘッドを床に叩きつけた。

 

イサカ

「ど、どうした!?」

 

ヤマダ

「これは・・・これは俺の整備してた発動機じゃない・・・」

 

レミ

「それって・・・!!」

 

ヤマダ

「そうだ、これは栄二一型ではあるが全くの別モンだ!してやられたぜクソッタレ!!」

 

つまりこういうことだ。戦闘機のピストンを変えると言って戦闘機ごと1度預かる、その間に発動機ごと外して別の同じ発動機に換装し依頼主に引き渡すのだ。早い話発動機を盗まれたのだ。

 

レミ

「すまないっす・・・!!アタシが迂闊に預けなければ・・・」

 

ヤマダ

「いや、君は悪くない。善意に漬け込んだこすい犯罪だよ・・・とりあえずこのゴミは取り替えだが・・・」

 

イサカ

「たしか今ここに栄二一型は無かった・・・」

 

ヤマダ

「ふぅ・・・じゃあこいつだな。」

 

そして俺は分解整備中の61-120の栄三一型甲を軽く叩いた。

 

レミ

「それはあんたの61-120のじゃないっすか、そんなのダメっすよ!貰えないっす・・・ 大丈夫っすよ、代わりの発動機が見つかるまで61-121に乗っとくっすから。」

 

ヤマダ

「何言ってんだ、君のその五二型は君の一番の愛機だろう。」

 

レミ

「で・・・でも・・・」

 

ヤマダ

「気にするな、61-120の発動機は一機予備を注文してある。俺はAI-3-102があるからアシにも困らない。」

 

レミ

「それでも・・・ダメっすよ!あんたの愛機の心臓を・・・」

 

ヤマダ

「マフィアにとって使ってるモノは一つのブランドになる、君トレードマークであるこの五二型が使えない事の方がよっぽど不味いんだぜ?それに・・・」

 

イサカ

「任せておけ、もうその業者の建物は特定した。とっとと発動機を載せ替えるぞ、殴り込みだ。」

 

ヤマダ

「よしきた、レミ、そういうことだ。」

 

レミ

「二人とも・・・」

 

そして俺たちは作業にかかった。イサカもレミも何度か作業に立ち合っているので手早く済む、それでもワイワイ話しながらやっているので時間はかなりかかった。発動機を載せ替えて配管類を接続し、プロペラも取り換えて試運転をし問題がないことをしっかりと確認すると三人で一度腰を下ろした。

 

レミ

「悪かったっす・・・二人ともありがとうっす。」

 

ヤマダ

「いいってことよ、それより良かったじゃねーか。」

 

レミ

「何がっすか?」

 

ヤマダ

「俺の61-120の発動機にはセルモーターがあるからな、スクランブルがいくらか楽になるぞ。」

 

すると俺たちの前に見覚えのある人影が映った、するとイサカが耳打ちしてくる。

 

イサカ

「ヤマダ、そういえば今日アコとシノが来るって話していたよな・・・私の完璧な予定が・・・あわわわわ・・・」

 

ヤマダ

「イサカ、落ち着け・・・?」

 

すると一人がこちらに向けて歩いてくる。逆光で顔が見えないが、銀髪にぺたんぬ・・・

 

シノ

「全く・・・なんの出迎えもないとはご挨拶ね?」

ヤマダ

「悪かった、それがかくかくしかじかで・・・」

 

説明中・・・・・・・

 

アコ

「こちらでも被害が出ましたか・・・」

 

イサカ

「どういうことだ?」

 

アコ

「私たちは今被害が急増している部品窃盗のことを伝えようと思ってこちらに来たんです。電話だと回線傍聴で向こうに聞かれる可能性があるので直接出向いたのですが、遅かったようですね・・・」

 

ヤマダ

「ちょっと待て、被害が急増?じゃあほかの場所でも?」

 

シノ

「ええ、私たちが確認しただけでもイヅルマ、ラハマ、カイチ、アレシマ、イケスカ、ドルハで・・・」

 

レミ

「そんなに派手に動いてたら、どっかで尻尾くらいつかめてるんじゃないんっすか?」

 

アコ

「それが、どこも交換されて不調が出てから気づくことが多いらしくて・・・そのころには交換された工場はもぬけの殻・・・」

 

ヤマダ

「はぁ・・?あんなゴミに乗せ換えられて誰も気づかないのか?」

 

シノ

「あんたがおかしいのよ・・・」

 

イサカ

「待て、それならなおのこと急いだほうがいい。レミの五二型の発動機を盗り終わったんだ、もぬけの殻になるのも時間の問題だ!」

 

ヤマダ

「そういうと思ったよ、レミ!」

 

レミ

「どうしたっすか!?」

 

ヤマダ

「試験飛行が出来てないから何が起こるかわからない、十分注意するんだぞ。」

 

レミ

「了解っす!」

 

そして俺たちは戦闘機のほうに駆けていく、イサカはAI-1-129ではなく波塗装の二一型のほうに行った。ここは俺たちのシマだ、久々にこいつの出番が来たってことだな。

 

イサカ

「整備員前離れ!メインスイッチオフ、エナーシャ回せ!!」

 

エナーシャハンドルを掛け金に突っ込み力いっぱい回す。回転数を上げるとハンドルを引き抜くと俺は叫ぶ。

 

ヤマダ

「コンタクトーー!!」

 

二一型のプロペラの回転が安定したのを見届けると、ステップを押し戻して俺はレミの五二型の方へといった。セルモーター始動なのでもう既に発動機は回っている。

 

ヤマダ

「不調はないか!?」

 

レミ

「完璧っすよ!感謝するっす!」

 

ヤマダ

「OK!!」

 

そしてアコとシノのほうに走っていく、アコの紫電の発動機はシノがエナーシャを回して回っていたがシノの紫電はエナーシャを回す人間がいないからだ。

 

ヤマダ

「シノ!乗れ!」

 

シノ

「ええ!」

 

そしてハンドルを掛け金に突っ込む、シノの合図を待った。

 

シノ

「スイッチオフ!回せーっ!!」

 

ヤマダ

「コンタクト―――!!」

 

紫電のエナーシャは重い、プロペラの回転が安定すると、俺はAI-1-129のほうへと走った。ステップを押し戻す人間がいないので操縦席に手早く飛び乗ると、計器類を確認してカウルフラップを開け発動機を回した。しばらく暖気運転をするとすでに滑走路に出て待って居る4人の後ろにつくと、皆で離陸した。

 しばらく飛んでいると、事前にイサカが調べてくれた建物が見えてくる。が、あんな小さな建物では戦闘機全体を整備することなど到底不可能だ。やはりそもそもが盗難目的だったのだろう。

 

イサカ

「すぐそばに平地がある!そこに降りるぞ!」

 

一同

「了解!」

 

俺は上空警戒をして、全員が着陸したのを確認してから俺も着陸する。

 

イサカ

「相手は窃盗団だ、何をしてくるかわからない・・・用心しろよ。」

 

レミ

「こういうのはアタシの得意分野っすよ・・・こっちっす。」

 

工場のような建物の裏手に回ると、鍵のかかっている扉をけ破った。

 

ヤマダ

「うらぁっ!」

 

全員で中に乗り込むが・・・もう既に部品や戦闘機はなくもぬけの殻だった。

 

イサカ

「クソ・・・してやられたか。」

 

アコ

「何か証拠が無いか探してみましょう・・・」

 

そして俺たちは散り散りに工場内を散策する。めぼしいパーツはすべて持っていかれていたようだったが、俺は隅っこのほうであるものを見つけた。

 

ヤマダ

「このビス・・・メートル規格でもクーリル規格でもねえぞ・・・」

 

レミ

「それってつまり?」

 

ヤマダ

「少なくともユーハングの戦闘機の部品じゃない。窃盗団は自分たちの戦闘機を仕上げるために部品を窃盗するんじゃなくて、売りさばくか全く別の戦闘機を仕上げるために部品を窃盗しているんだろう。」

 

アコ

「待ってください、それだとレミさんの五二型の発動機は・・・」

 

ヤマダ

「もう売りさばかれてる可能性も・・・十分ある。」

 

レミ

「そんな・・・」

 

ヤマダ

「辛気臭くなっても仕方ねえ、とりあえず探せるだけ証拠をかき集めるぞ。」

 

そして俺は別の区画に足を進め、そこで気になる写真をみつけた。

 

ヤマダ

「これは・・・」

 

イサカ

「ヤマダ!!危ない!」

 

ヤマダ

「えっ・・」

 

ザンッ・・・・

 

「ぐうっ・・・」

 

俺の目の前には、腰から血を流すイサカが映っていた・・・・ 犯人は舌打ちをして逃げて行くが今の俺にそんな事はどうでもよかった。

 

ヤマダ

「おい・・・イサカ!!!」

 

倒れるイサカを支え、傷口を手で押さえつける。内臓までは達していないようだが傷口が広い・・・出血が止まらなかった。

 

ヤマダ

「レミ!!ヘアバンドを!!ヘアバンドを貸してくれ!!!」

 

レミ

「どうしたんっすか~そんなに慌てて・・・イサカ!?」

 

ヤマダ

「早く!!」

 

シノ

「貸して!!ヤマダ、イサカを地面におろして!!アコ、早く帰りの機体の準備をして!!」

 

アコ

「は、はい!!」

 

シノ

「ヤマダ、あんたはイサカを呼び続けて!!意識がなくなったら終わりよ!」

 

ヤマダ

「イサカ!!しっかりしろ!なんでこんなことを・・・」

 

イサカ

「ふふ・・・この事件だと私よりお前のほうが重要だろう・・・絶対に犯人を見つけてくれ・・・」

 

ヤマダ

「だからって・・・俺が切られてりゃよかったんだ!死ぬなよ!!イサカ!!」

 

イサカ

「ああ・・・かはっ!!」

 

シノ

「イサカ!もう喋らないで!!ヤマダ、紫電に運ぶわよ!!」

 

ヤマダ

「わかった・・・イサカ!!おい!しっかりしろ!!」

 

シノはレミのヘアバンドをイサカの傷口に当て、自分の上着できつく縛り付けた。幸い出血はそれで抑えられた・・・だが早く傷口をふさがないといけない。

 

レミ

「ヤマダ!アコ!シノの紫電を援護してくださいっす!あたしは先に戻って医者をよんどくっすから!!」

 

ヤマダ

「恩に着る!」

 

そしてイサカをシノの紫電へ運び込むと、アコの紫電のエナーシャを回し俺はAI-1-129に飛び乗った。発動機を回し先に離陸して上空警戒をする。すぐにアコも上がってきた。

 

アコ

「ヤマダさん!機影です!!」

 

ヤマダ

「なっ・・・」

 

その機影はグラマンF6F ヘルキャットだった。この戦闘機を使っているのなら落ちていたビスがインチ規格であったことにも合点が行く。俺は高度を取った。

 

アコ

「ヤマダさん!来ます!!」

 

ダイブしてきたF6Fはアコの紫電やシノとイサカの乗った紫電には目もくれず、俺だけに照準を合わせM2ブローニングを発射した。

 

ヤマダ

「狙いは俺だけってか!?」

 

機体を滑らせて射線から逃げる、下に離脱していったF6Fはその勢いで俺の後ろを取ろうと旋回してきた。

 

ヤマダ

「俺の妻に牙向けて・・・」

 

F6Fの主翼から曳光弾が光る、その瞬間操縦桿を前に倒しこんで逆G旋回に入った。一気に頭に血が上り視界が真っ赤になる。

 

ヤマダ

「俺が大切に整備した戦闘機から部品盗んで・・・」

 

F6Fは俺を追おうと機体を裏返し旋回してくる、速度が乗っている状態だとF6Fは結構な旋回を見せるが幾度かの空戦機動を繰り返して速度が落ちたF6Fは大回りで旋回をする。それを見た俺は下の頂点に達した瞬間スロットルを絞り機体を失速させる、F6Fが勢い余って俺をオーバーシュートしたのを見た瞬間、操縦桿を倒しこんで失速から回復するとスロットルを全開にしF6Fの後ろについた。

 

ヤマダ

「タダで帰れると思うなクソ野郎が!!!」

 

ダダダダッ!!! ドォン・・・!!

 

目の前で飛ぶF6Fに俺はありったけの弾を叩き込んだ。20ミリが命中したF6Fは木っ端微塵に爆発四散した。

 

アコ

「ヤマダさん・・・話を聞かなくてもよかったんですか?」

 

ヤマダ

「・・・・・・」

 

タネガシに戻ると、イサカはすぐに医務室に運ばれた。サダクニさんが俺の方へ歩いてくる。

 

サダクニ

「ヤマダ・・・組長はお前を庇ったそうだな。」

 

ヤマダ

「はい・・・すみません!!俺がもっと注意してりゃ・・・俺が切られてりゃよかったんです!!」

 

サダクニ

「馬鹿者!!」

 

俺はサダクニさんに胸ぐらをつかまれた。

 

サダクニ

「お前が切られていたら・・組長はどれだけ悲しむか!!組長はお前を恨んでいると思うのか!!」

 

ヤマダ

「・・・・・」

 

サダクニ

「早く窃盗団を見つけろ・・・私からはそれだけだ。」

 

ヤマダ

「はい・・・」

 

サダクニさんは建物の中に戻っていく、俺は医務室に駆けこんだ。

 

レミ

「ヤマダ!!」

 

ヤマダ

「レミ!イサカは・・・イサカは大丈夫なのか!?」

 

レミ

「安心してくださいっす、あんたが最初に傷口を抑えたおかげで出血多量にはならなかった、少なくともあんたが機銃弾ブチ込まれた時よりは軽いっすよ。8針は縫ったっすけどね・・・」

 

イサカ

「ヤ・・・ヤマダ・・・・」

 

ヤマダ

「イサカ!!起きるな!傷口が開くぞ!!」

 

イサカ

「ふふ・・・あの時お前は・・・何を見たんだ?」

 

ヤマダ

「俺の・・・俺の61-120だ。」

 

レミ

「それって・・!!」

 

ヤマダ

「ああ、恐らく今まで盗まれた戦闘機の部品も零戦に限るもののはずだ。」

 

シノ

「さっき電話で確認したわ、確かに被害にあっていたのは零戦の部品だけだったわ。」

 

レミ

「じゃあ・・・窃盗団はヤマダの61-120を模倣しようとしてる・・・?いったい何のために?」

 

ヤマダ

「恐らくだが・・・レミやニコの五二型をまねるとすぐにばれる。君たちはかなりの頻度で飛び回っているからな。」

 

イサカ

「確かに・・・ヤマダは普段から飛んでるわけじゃない。だが時たま目立ったことをするから名前はそこそこ知れてる。ゲキテツ一家とのつながりを持たせたままある程度目立たず好き放題やれるのは・・・ヤマダの61-120が適役って事だろう。」

 

レミ

「せこい手考えるっすね・・・」

 

ヤマダ

「とりあえずこういうことはそういう業界の人間に聞くのが手っ取り早いぜ・・・イサカ、傷が完全に治るまで安静にしててくれ。本当に済まない。」

 

イサカ

「私だって・・明日にでも・・・!」

 

ヤマダ

「頼む・・・!俺は自分の妻っである君すら守れなかったんだ。せめて傷が治るまでの間くらい絶対安全な場所に居てくれ・・・頼む!!」

 

俺は自分が情けなかった。自分の一番大切な人すら守れなかったのだ・・・

 

レミ

「ヤマダ・・・あんたは十分にイサカを守ってるっすよ。でも、アタシもイサカが傷が治らないうちに出撃するのは反対っす。」

 

イサカ

「だが・・・」

 

レミ

「大丈夫っすよ、ヤマダがなんかしでかしそうになったらアタシとクロで止めるっすから。」

 

イサカ

「頼んだぞ・・・ヤマダは熱くなると何をするかわからないからな・・・」

 

レミ

「わかってるっすよ~。じゃ、あたしは出ていくんで二人でごゆっくりっす~」

 

レミは俺だけを残して部屋から出ていく。俺はイサカに話しかけた。

 

ヤマダ

「イサカ・・・大丈夫か?」

 

イサカ

「心配するな。麻酔が効いて痛みはもうほとんどない、血も止まった。」

 

ヤマダ

「そうか・・・本当にすまない、俺がぼさっとしていたばっかりに・・・本当にすまない。」

 

イサカ

「私は何度もお前に助けてもらった・・・ふふ、これでチャラだぞ?」

 

そう言ってイサカは俺の方を向いて笑う。

 

ヤマダ

「ああ・・・ああ・・・!!」

 

イサカ

「おいっ泣くな!くっつくな!!おいっ!!」

 

 

 

 

 

 

そして俺は格納庫に降りて行った。調べないといけないことがある。

 

レミ

「ねっ?イサカ元気だったでしょ?」

 

ヤマダ

「ああ、そんなことよりすまないな。君のヘアバンド・・・ってもう復活してる・・・?」

 

レミ

「あったりまえっすよ、常にストックは確保済みっす!」

 

クロ

「うそつけ、持ってこさせたくせに。」

 

レミ

「えっへへ・・・」

 

シノ

「それよりヤマダ、レミがイサカに何をしたか知ってる?」

 

ヤマダ

「いや?」

 

レミ

「シノサン・・・ダメっす・・・」

 

シノ

「傷口の消毒が必要になったとき、たまたま手元に消毒液が無かったのよ。だからこの子、酒を口に含んで傷口にかけたのよ。」

 

アコ

「かなり痛がってましたよね・・・第一どれだけ強い度数のお酒を飲んでたらあんな傷口にしみるんですか・・・」

 

ヤマダ

「レ~ミ~??」

 

レミ

「緊急事態だったんっすよ~!!」

 

クロ

「ちなみに消毒液はレミが酒を置いていた棚の下にあったぜ。」

 

レミ

「クロぉ~~」

 

ヤマダ

「ふぅ・・・皆、本当にありがとう。」

 

俺は首にかけた飛行眼鏡を取り、頭を下げた。

 

シノ

「頭を上げなさい、私たちは当然のことをしたまでよ。」

 

アコ

「そうですよ!それに奥さんのことをここまで想えるのも素敵だと思いますよ。」

 

レミ

「あんたはいつも自分を追い込みすぎなんっすよ、ほら、頭上げてくださいっす。」

 

クロ

「お前はほんとに・・・頭を上げろ、馬鹿野郎。」

 

ヤマダ

「ほんとにあんたらは・・・」

 

そして俺はレミの五二型からおろした栄二一型を持ってきた。

 

レミ

「これって・・」

 

ヤマダ

「ああ、すげかえられた栄二一型だ。なにか手掛かりがあるかもしれないからな。」

 

そして俺は分解し始める、過給機を外しシリンダーを分解してゆくが、すでに嫌な雰囲気満載だ。最初に見たようにピストンにバルブの「逃がし」が無いうえにシリンダーが傷だらけ、アルミ鋳造のシリンダーブロックは加工精度の低さゆえか表面がザラザラだった。

 

ヤマダ

「見れば見るほどゴミだぜこれ・・・」

 

レミ

「まあ・・・過給機を変速するときも違和感あったっす。何か手掛かりはあったっすか?」

 

ヤマダ

「全くない、この辺の部品は複製品とかじゃなくて廉価版の市販品だ。これはほんとにいろんな意味で『ただのゴミ』だな。」

 

そして俺は電話のもとに行くと、ある人物に電話をかけた。

 

ヤマダ

「もしもし?」

 

???

「もしもし?あらヤマダじゃない、どうしたのよ?」

 

ヤマダ

「突然すまんなロイグ、最近そっちの方の仕事で新顔が出てきたって話を聞いたりしてないか?」

 

ロイグ

「そいつらを直接見たわけじゃないけど、最近零戦の部品盗難が増えてるそうじゃない?もしかしてそれかしら?」

 

ヤマダ

「まさにそれだぜ、インノの方でもあったのか?」

 

ロイグ

「ええ、ただあいにくあんなコソ泥私たちは興味がなくってねえ・・・そういえば一機、発動機を盗まれた二二型がうちのアジトのそばに転がってるわよ。邪魔でしょうがないわ・・・」

 

ヤマダ

「その二二型、機体の状態はどんなだった?」

 

ロイグ

「う~ん・・・ちょっと待っててね?ベッグ~!!」

 

・・・・・数分後

 

ロイグ

「お待たせ。今ベッグと軽く確認してきたけど機体自体の状態はそんなに悪くないわよ。持ち主はどーも新しい機体を買ったようでねぇ・・・計器類は全くないけど・・・」

 

ヤマダ

「機体がしっかりしてりゃ十分だ、その二二型こっちに送ってくれないか?」

 

ロイグ

「しっかたないわね~ 輸送機を手配するのにちょっと時間かかるから届けるのは明日くらいになっちゃうけどそれでもいい?」

 

ヤマダ

「明日届きゃ十分だ、ありがとう。」

 

ロイグ

「了解、じゃあまた明日ね~」

 

ふう・・・ある意味ラッキーな収穫である。おそらくこれからは窃盗団捜査で夜間行動も増えるだろう、集合排気管の機体は重要になってくる。

 

レミ

「ヤマダ、なんで二二型をわざわざ?ここにいる全員戦闘機はあるっすよ?」

 

ヤマダ

「五二型、紫電は推力式単排気管だろう?おそらくこれからは夜に動くことが多くなる、そうなると単排気管はまずいんだ。」

 

シノ

「何が問題なのよ?」

 

ヤマダ

「排気管の長さが短いから、全速運転をした時に排気炎がモロに出る。夜だと自機の位置を知らせているようなもんだ。」

 

アコ

「確かに単排気管の出口部分に炎がある事はありますね・・・」

 

ヤマダ

「そういう事だ、場合によってはアコとシノにも集合排気管の機体に乗ってもらうことになる。あいつらは俺の妻を傷付けたんだ、絶対に許さない・・・」

 

レミ

「気持ちはわかるっすけど・・・冷静に頼むっすよ?」

 

ヤマダ

「すぅっ・・・はぁ〜・・・そうだな、悪い。とりあえず今日は寝るか、アコ、シノ、レミ、君たちは泊まっていきな。」

 

アコ

「ありがとうございます!」

 

シノ

「あら、ありがとう。」

 

ヤマダ

「ただ、君たちはわざわざ協力せず明日にでも帰ってくれてもいいんだぞ。マフィアと自警団が手を組むのはまずいんじゃないのか?」

 

シノ

「どうせ乗りかかった船よ、最後まで付き合ってやるわ。」

 

アコ

「気になさらないでください。全力で協力させていただきます!」

 

ヤマダ

「恩に着る。ありがとう。」

 

レミ

「そういや寝るのはまたいつもの部屋っすか?」

 

ヤマダ

「いや、今日は俺の布団を使いな。」

 

レミ

「ヤマダはどうす・・・ああ、わかったっす。」

 

そして俺たちはシャワーを浴びて服を着替えた。シャワー室では隣から「おっぱいなんて飾りなんだから〜!!」とかなんとか聞こえてきたが俺は気にしない・・・気にしない!俺はそのままイサカの病室に行った。

 

「イサカ、入るぞ。」

 

「ああ、入れ。」

 

そして俺はイサカの隣の椅子に腰かける。来る途中に冷蔵庫から取ってきたラムネをグラスについでイサカに渡した。

 

「ありがとう。」

 

「本当にキズは痛まないのか?大丈夫か?」

 

「ふふ、心配しすぎだ。もう痛みは無い、あと二日も安静にしていれば抜糸できるそうだ。」

 

「そうか・・・良かった。」

 

「レミが言っていただろう、お前が傷口を直ぐに押えてくれたから血が止まるのも早かった。結局私はお前に助けられた訳だな・・・ふふ、マフィアの幹部ともあろう人間が情けないな。」

 

「助けられたのは俺の方だ、君は何も情けなくない。本当にありがとう・・・」

 

「ヤマダ、こっちに来い。」

 

そう言って手招きするイサカの方に体をちかづけると、俺はイサカに抱きしめられた。彼女の手は力強かった。

 

「イサカぁ・・・!!」

 

「全くお前は・・・早く犯人を捕まえろ、いいな?」

 

「ああ・・・勿論だ。」

 

「お前なら約束は守る・・・私はそう信じている。さあ、早く自分の部屋に戻って寝ろ。」

 

「俺の布団はレミに貸してきたんだ、今日の俺は君の付き添いだよ。」

 

「全く・・・馬鹿者が・・・」

 

そして俺はイサカが寝たのを確認すると、壁にもたれかかって毛布だけを膝にかけ眠りについた。

 

 

 

・・・・・・翌朝

 

ガンッ!!

 

「ほぐぅっ!?」

 

俺は椅子の上でバランスを崩し、後頭部を強打して目が覚めた。やはり背もたれも何もない丸椅子で寝るのは無理があったようだ、横ではイサカが寝ていた。俺はそっと毛布を整えると、二二型に搭載する発動機を整備するために部屋から出ようとした。

 

「えぐっ・・・ううっ・・・」

 

イサカの声だった。俺はベッドの横に戻った。

 

「こんな大事な時に・・・私は何もできない・・・」

 

「いいから・・・もういいから・・・」

 

大事な時にけがで何もできないのは本当に悔しい。俺だって機銃弾ブチ込まれた時はその状態だった。

 

「ヤマダぁ・・・すまない・・・本当にすまない・・・」

 

「謝るのは俺の方だ、君は怪我が治るまでは安静にしていてくれ・・・怪我が治ったらまた一緒に飛ぼう。な?」

 

「・・・うん。約束だぞ!絶対だぞ!」

 

「ああ、もちろんだ。」

 

 

 

そして俺は格納庫へと降りていくと、格納庫の奥に眠らせてあった発動機を出してきた。作業場にもっていくとカバーを剥ぐ。

 

レミ

「それ、二二型に乗せる発動機っすか?」

 

ヤマダ

「ああ、排気管が長いから切り詰めないといけないがそれ以外は仕上がってる。」

 

レミ

「ていうかこれって・・・・」

 

ヤマダ

「ああ、P&W R1830-75 ツインワスプ AI-1-129に乗せたのと同じ発動機だ。」

 

レミ

「なんでこんなのがこっちにもあるんっすか・・・」

 

ヤマダ

「ダグラスDC-3は双発輸送機だからな、一機から二機ぶんどれるぜ。」

 

レミ

「何馬力出てるんっすか~こいつ。」

 

ヤマダ

「離昇出力1350馬力だな。」

 

レミ

「栄二一型からさらに200馬力上乗せっすか・・・」

 

ヤマダ

「ああ、あの工場のそばで襲ってきた戦闘機はグラマンF6F ヘルキャット だった。P&W R2800 ダブルワスプ搭載で2000馬力級の機体だからこっちの発動機の出力も少しでもある方がいい。」

 

レミ

「2000馬力・・・うらやましいっす・・・」

 

すると格納庫の前の滑走路に巨大なコンテナを吊り下げたB-17が降りた。そこの操縦席から降りてきたのはロイグだった。コンテナを先に滑走路に設置させ切り離すと、そのすぐ前にB-17が降りた。もはや曲芸である。

 

ロイグ

「お待たせ~」

 

ヤマダ

「待て待て待て、こっちのB-17のほうが気になるわ!」

 

ロイグ

「盗みに入ったところで駐機してあったからついでにいただいてたのよ。零戦って前後しか分解できないじゃない?ユーハングの輸送機だと機体がすっぽり入らないのよ、ほかのやつにならそのまま吊って持って行ってやるんだけどあんただとそれじゃまずいでしょ?」

 

ヤマダ

「わざわざわりぃな・・・」

 

ロイグ

「ところでイサカは?あんたたち大体一緒にいるじゃない?」

 

ヤマダ

「それがよ・・・」

 

説明中・・・・

 

ヤマダ

「ってわけなんだ、ほんっと情けねえよ・・・」

 

ロイグ

「なるほどねぇ・・・そんなに気にしちゃダメよ、あんたは悪くないわ。イサカに顔を見せてきてもいいかしら?」

 

ヤマダ

「ああ、そこの扉から入って左手だ。」

 

ロイグ

「ありがと、二二型はもう勝手に下ろしてくれていいわよ。」

 

ヤマダ

「おお、ありがとな。」

 

そして俺はレミと二人でコンテナの後ろに回ると、鎖を切って後ろの扉を開けた。そこには二分割された二二型の胴体がぴっちり詰められていた。

 

レミ

「うわぁ・・・こんなふうにコンテナに突っ込むんっすね。」

 

ヤマダ

「普通は胴体だけくれなんていう奴いないからな・・・」

 

そして俺たちはアコとシノ、整備班数人で機体を格納庫の中に運ぶとコンテナを滑走路からどかした。

 

レミ

「これだけ見たら二一型と二二型の区別付かないっすね・・・」

 

ヤマダ

「結構違うもんだぞ?いやまあAI-1-129だとエルロンとラダーに二二型のを使ったからあいつは例外だが・・・」

 

ロイグ

「とりあえずイサカにはお土産でラムネを置いてきたわ。じゃ私は帰るわね?」

 

ヤマダ

「ああ、すまないないろいろ面倒ばっかり。」

 

ロイグ

「いいのよ、その代わりたまにはこっちにも遊びに着て頂戴。」

 

ヤマダ

「仕事の手伝いは勘弁してくれよ?」

 

ロイグ

「やっぱだめかぁ~」

 

ヤマダ

「あたりめ~だろ、まあ珍しい機体とかの情報がありゃそっちに流してやるよ。」

 

ロイグ

「さっすがヤマダ!よろしくね~」

 

ヤマダ

「はいはい・・・」

 

そしてロイグは飛び立っていた。俺たちは格納庫に戻る。

 

ヤマダ

「とりあえず見てみるか・・・」

 

ぐるっと機体を見てみるが、つい最近まで使われてた機体というのは本当のようですこぶる状態がよかった。カウリングごと持っていかれているようだがどうせR1830を載せればカウリングは使えないのであまりが出なくてラッキーぐらいのものだ。

 

レミ

「そういえばヤマダ、たしかAI-1-129って二一型だからアップドラフト式っすよね?」

 

ヤマダ

「ああ、そうだな。」

 

レミ

「けどこの前ダグラスDC-3を見たんっすけど見た感じダウンドラフト式だったんっすよ。で、さっき見てたR1830もダウンドラフト式だったじゃないっすか。もしかして気化器かえてるんっすか?」

 

ヤマダ

「鋭いな、AI-1-129はF6Fの気化器をアダプタかませて使ってるんだよ。ダブルワスプはアップドラフト式だからな。」

 

レミ

「ちょっと待ってくださいっす、じゃあまさかここにR2800 ダブルワスプがあるんっすか?」

 

ヤマダ

「あるぞ?」

 

シノ

「話に全くついていけないわ・・・」

 

アコ

「あの人たちはプロですから・・・」

 

ヤマダ

「悪い悪い・・・ところで二人は紫電以外に乗ったことあるか?昼の行動なら紫電でもいいんだがさっき言ったように夜には集合排気管の機体に乗ってもらうことになる。それに空の駅が無い方面に行くなら自動的に航続距離の長い機体で出てもらうことになるかもしれない。もちろん君たちが慣れた機体でないといけないから無理にとは言わないが。」

 

アコ

「私はないですね・・・自警団に入ってからはずっと紫電でした。」

 

シノ

「私もないわね・・・」

 

ヤマダ

「まあ仕方ないか・・・OK、宣伝効果もあるだろうしカナリア自警団の紫電で出てくれ。なに、俺たちは日の丸の機体で出るからゲキテツ一家と行動ってのはばれねーよ。」

 

そして俺はR1830を持ってきた。今回は栄二一型に戻す気はないので発動機懸架台もR1830専用のものを使う。カウリングももちろんワンオフ品だ。

 

レミ

「なんでそんなのあるんっすか・・・普通零戦の発動機を乗せ換えるなんて考えないっすよ。」

 

ヤマダ

「まあ最近ユーハングのじゃない戦闘機もちらほら出てきてるしな・・・栄発動機は確かに素晴らしいがそういう戦闘機を相手にするには馬力が足りない。もしもに備えて予防線は張っておきたいんだよ。」

 

レミ

「あんたも抜け目ないっすね~」

 

ヤマダ

「まああくまで予防策だよ、とっとと作業始めるぞ~」

 

俺たちは分割されていた機体を組みなおすと、ジャッキアップした。外装の塗装はよくわからないマーキングが施されていたので、シノとアコに頼んで塗装をすべて剥ぎ落してもらった。その間に俺は補助のオイルポンプと重心位置適正化用の燃料タンクを胴体内に設置した。補助のオイルポンプを設置するのは、もし発動機についているオイルポンプが破損してもフラップの上下と主脚の展開が出来るようにである。増設燃料タンクの緊急燃料排出口を機体の外に取りまわすと、やぐらを組んで発動機を機体に取り付けた。

 

レミ

「ひゃ~っ、朝からやってたはずなのにもう4:00っすよ。」

 

ヤマダ

「マジか!とんでもねえな・・・」

 

レミ

「とっとと試運転しちゃいましょ~」

 

ヤマダ

「あとは計器類の取り付けだけだからな・・・ちょっとだけ待ってくれよ。」

 

そして銀一色になった機体の操縦席に乗り込むと、操縦席に引っ張ってきた配線・配管と計器類を接続する。とりあえず発動機を回してみないことにはカウリングも取り付けられないし機体の塗装もできない。俺たち四人で銀色の二二型を滑走路に引っ張り出した。

 

???

「一日でここまで仕上げたのか。」

 

レミ

「イサカ!?」

 

ヤマダ

「何!?」

 

イサカ

「流石だな。ヤマダ」

 

ヤマダ

「馬鹿!寝てなきゃダメだろ!!」

 

イサカ

「こんなのを見ておとなしくしてる方が無理だろう、幸い痛みはない。少しでも動かないと体がなまってしまうからな。」

 

ヤマダ

「だからって・・・本当に大丈夫なのか?」

 

イサカ

「ああ、そんなことより早く発動機を回してくれ、な?」

 

ヤマダ

「・・・ああ!」

 

レミに頼んで格納庫から外付けバッテリを持ってきてもらってる間、操縦席で配線や配管の接続をもう一度確認しておく。スロットルレバーを前後させ燃料配管に圧力をかけ、オイルの手動ポンプを動作させオイルラインにオイルを満たすと一度操縦席から降りる。

 

イサカ

「プロペラ、回そうか?」

 

ヤマダ

「だめだめ、怪我人は安静にだ。」

 

イサカ

「ふふっ、そうか。」

 

手でプロペラを回してガタなどが無いかをよく確認する。本来零戦二二型は住友ハミルトン社のプロペラを用いているが、AI-1-129とこの二二型は発動機が違うのでプロペラも違う。零戦のプロペラよりほんの少し直径が大きいのだ。肉眼で見てはっきりわかるような差ではないが・・・

 

イサカ

「今回の二二型も発動機をR1830にしたのか?」

 

ヤマダ

「ああ、なんだかんだで予備部品も流れるようになったしな。とりあえず試運転しねーとな。」

 

イサカ

「私の怪我が治ったら乗ってもいいか?」

 

ヤマダ

「もちろんだ。」

 

そうこうしているとレミがバッテリを持ってやってきた。

 

レミ

「重たいっすね~これ。ジャンパコードの長さこれで足りるっすかね?」

 

ヤマダ

「まあたぶん行けるだろ。よっこらせ」

 

機体の下にもぐってパネルを外し、機体内バッテリにジャンパコードを接続する。これで準備は完了だ。

 

レミ

「アタシが発動機回してみてもいいっすか~?R1830の零戦まだ乗ったことが無いんっすよ~」

 

ヤマダ

「まあ今回の作戦のときはレミにこの二二型を使ってもらおうと思ってたし、別にいいぞ。」

 

そしてレミは二二型の操縦席に乗り込んだ。俺は操縦席の横に立つとレミに油温、回転数、ブースト圧の詳細を伝え(R1830だと栄と適正温度などが違う)主翼から飛び降りた。二二型から十分離れるとレミに合図を送る。

 

ヤマダ

「いいぞーー!!」

 

レミ

「了解っす!!」

カラカラッ・・カラッ・・バンッバンッ・・バラバラバラバラ・・・!!

 

ヤマダ

「よっし・・!!」

 

イサカ

「ふふ・・お前は本当に嬉しそうな顔をするな。」

 

ヤマダ

「そ、そうか・・?」

 

イサカ

「ああ、見てて気分がいいぞ。さあ、私は部屋に戻るかな。」

 

ヤマダ

「付き添うよ。」

 

イサカ

「いや、大丈夫だ。ただ一つだけ頼みがある。」

 

ヤマダ

「なんだ?」

 

イサカ

「また一緒にラムネを飲んでくれ。それだけだ。」

 

ヤマダ

「ああ、もちろんだ。」

 

そうして戻っていくイサカを見届ける、去っていくイサカの足取りは少し弱々しかった。俺は発動機を止めたレミのほうに駆け寄る。

 

ヤマダ

「どうだった?」

 

レミ

「ほんのちょっとだけ油圧が弱い気がするっすけど、ほかはヤマダが伝えてくれた通りだったっす。」

 

ヤマダ

「油圧は補助ポンプを回せば安定するからな、ほかには何かなかったか?」

 

レミ

「操縦桿を動かしてラダーを踏んだっすけど、動作は問題なかったっすね。あとはもう仕上げに入っていいと思うっす。」

 

ヤマダ

「了解、じゃあとりあえず今日は俺のおごりだ。飯を食いに行くか!」

 

アコ

「いいんですか!?」

 

シノ

「いいの?」

 

ヤマダ

「ああ、手伝ってくれてるお礼だ。」

 

その後、酒代と飯代で俺の財布が涼しくなったのは言うまでもない・・・・・

 

 

 

 

「くっそ・・・しこたま喰いやがって・・・」

 

俺は三人と別れると、医務室に向かって歩いて行った。ラムネの瓶をもって扉をノックする。

 

「イサカ、入るぞ。」

 

「ああ、いいぞ。」

 

ラムネをテーブルに置くと俺は隣の椅子に座った。

 

「ふう・・・おつかれだな。」

 

「ありがとう、傷の具合はどうだ?」

 

「明日には抜糸できるそうだ。傷口が思いのほか早く繋がっているらしい」

 

「そうか・・・ほんとによかった。」

 

「ただまあ傷口が完全に塞がったわけじゃないから空戦には出れない・・・すまないな。」

 

「謝ることじゃないさ、ただレミの発動機盗難から窃盗事件の話が全く出てないんだ。恐らく・・・もう完成してる。」

 

「そんな・・・」

 

「あとはもう俺の信用の問題だ、それに・・・」

 

「それにどうした?」

 

「五二型はどうでもいい、問題はF6Fなんだ。」

 

「F6F・・・確か2000馬力級の戦闘機だったな。」

 

「ああ、しかも速度が乗るほど旋回半径が縮む厄介な機体だ。簡単に格闘戦に乗る馬鹿だったらいいんだが・・・」

 

「全く・・・馬鹿者。」

 

イサカが俺の手を握る、温かく細い。だが零戦を振り回すその腕はたくましい。

 

「お前なら負けない、大丈夫だ。もしお前を墜とすとしたら、それは私だ。」

 

「おお、それは聞き捨てならねえな?」

 

「お前が道を踏み外したとき、私はお前を墜とす。だからお前も私が道を踏み外したら・・・撃て。」

 

「・・・ああ。」

 

「だから必ず生きて帰ってこい、いいな。」

 

「・・・・ああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・翌朝

 

ヤマダ

「レミ・・・クロ・・・それにアコとシノ、君らまさか徹夜したのか?」

 

起きて格納庫に降りていくと、錆止め塗装を終えて明灰白色に塗装された二二型があった。まだ完成しているわけではないが、ここまで進んでいれば今日中にでも機体は完成するだろう。

 

レミ

「あぁ・・・ヤマダっすか・・・・どうっすか?いい感じでしょ・・・・へへ」

 

クロ

「塗料の類はお前が机の上にほりだしてあったのと同じのを使った・・・ふあぁ~あ」

 

アコ

「上面塗装用のマスキングもしておきました・・・むにゃむにゃ」

 

シノ

「塗料も作ってあるわ・・・ふぁ・・」

 

ヤマダ

「ありがとう・・・・ありがとう・・・!!」

 

四人の布団を用意して四人を寝させると、俺はまた格納庫に戻った。四人が必死にここまでやってくれたんだ。何としてでも完璧に仕上げなければならない。スプレーガンに塗料をいれて準備をしていると、聞き覚えのある声がした。

 

サダクニ

「私も手伝おう。」

 

ヤマダ

「サダクニさん!?」

 

サダクニ

「少しでも早くこいつを完成させないといけないんだろう?」

 

ヤマダ

「はい。」

 

サダクニ

「なら早く手を動かせ。私は警戒帯と部隊標識用の塗料を作っておく。」

 

ヤマダ

「感謝します・・・」

 

一時間ほどで機体上面の濃緑色を吹き付けると、塗漏れやムラが無いことをよく確認する。半渇きの状態でもう一層吹き重ねてマスキングをはがし乾燥を待つ。すべての作業を終えたころにはまた夕方になっていた。連日医務室の堅い椅子で寝たからか、俺も疲れがたまっていた。

 

???

「起きろ、こんなところで寝るな馬鹿者。」

 

ヤマダ

「あ・・あぁ・・・サダクニさん・・・」

 

???

「サダクニならとっくに仕事に戻っている、気になってきてみればやっぱりだこの大馬鹿者。」

 

ヤマダ

「え・・・えぇ・・・?」

 

???

「私だ!!寝ぼけすぎだ!」

 

ヤマダ

「イ・・・イサカ!?」

 

イサカ

「そうだ、ほら起きろ・・・」

 

俺は目をこすりながら立ち上がる、目の前にはイサカが居た。

 

イサカ

「綺麗に仕上げたじゃないか・・・『X-133』」

 

ヤマダ

「へへ・・・あとはカウリングをつけるだけだぜ。」

 

イサカ

「手伝おう、」

 

ヤマダ

「大丈夫なのか?」

 

イサカ

「今朝抜糸してな・・・こんな具合だ。」

 

イサカがシャツの裾をめくりあげ、傷口を見せた。はっきりと跡が残ってしまっている。

 

ヤマダ

「イサカ・・・この跡・・・」

 

イサカ

「消えないらしい、まあ仕方あるまいさ。」

 

ヤマダ

「本当にすまない・・・・君にこんな・・」

 

次の瞬間イサカは俺を抱きしめた。

 

イサカ

「私は知ってるぞ・・・お前も体は傷だらけだろう。」

 

ヤマダ

「俺はいいんだよ・・・だが君は・・・」

 

イサカ

「私の体をお前以外が見ることは無い・・・そうだろう?」

 

ヤマダ

「だからって・・・すまない・・・本当にすまない・・・!」

 

イサカ

「いいんだ、いいんだ・・・・」

 

そして俺はイサカと二人でカウリングを固定した。R1830の気化器は栄よりも導入口が立っているのでカウリングは少し大きくなるが、そこは腕の見せ所である。特徴的な切り立った形の空気取り入れ口も再現した。

 

イサカ

「直径が74ミリ太くなっているとは言えなかなか格好はいいものだな?」

 

ヤマダ

「そこは俺の腕の見せ所だぜ?」

 

イサカ

「フフ、確かにそうだな。」

 

サダクニ

「組長ーーー!!抜糸してから一日は動いてはいけないと言ったでしょう!!戻りますよ!」

 

イサカ

「しまった!そういうことだ、あとは頼んだぞ!!ヤマダ!!」

 

ヤマダ

「ああ・・・ああ!!任せておいてくれ!」

 

 

 

 

 

 

そして俺は機体を格納庫の外に出すと。操縦席に飛び乗った、レミたちは夕ご飯を食べているのでこっそりと試験飛行だ。

 

「油圧よし、燃圧よし、プロペラピッチ動作よし、カウルフラップ開、オイルクーラーシャッタ開、エルロン動作よし、ラダー動作よし、エレベーター動作よし、プロペラピッチロー・・・・・整備員前離れ!メインスイッチオフ!!」

 

ウィィィィィン・・・・カラカラカラ・・・

 

セルモーターで発動機のクランクシャフトが回る。メインスイッチを[両]へ移動させる、それと同時にスロットルを押して燃料を送る。

 

バラッバラッバラ・・・バラバラバラバラ・・!!!!

 

「よっし!!よし!!」

 

プラグスイッチを切り替えて磁石発電機の動作を確認すると、ブレーキを解除しタキシングで滑走路に出る。スロットルを開けて離陸した。主脚とフラップを上げて混合気を調節すると次はプロペラピッチをフリーにしてスロットルを操作し回転数が上下しないことを確認する、零戦はプロペラにかかる負荷が大きくなるとプロペラピッチが深く変化し発動機の回転数を一定に保つのだ。これがプロペラピッチフリーのときにスロットルを増速しても発動機の回転数が増加せず速度のみが変化する理由である。ふと下を見ると医務室の窓からイサカがこちらに敬礼をしている。滑走路ではレミ、クロ、アコ、シノ、サダクニさんがタオルを振っていた。

 

「みんな・・・・ありがとう!!ありがとう!!!」

 

俺は大きくバンクを振ってそれに気づいているという合図を送る。そしてプロペラピッチを低に固定するとスナップロール、宙返りなどの一通りの高負荷機動をして異常が無いことを確認する。最後にフラップと脚を出して着陸した。

 

レミ

「抜けがけとはずるいっすよ〜」

 

クロ

「しっかり仕上がったようだな。」

 

アコ

「あんな状態だった機体がここまで・・・凄いですね。」

 

シノ

「よくやるもんね・・・ここに運ばれて来た機体は幸せ者だわ。」

 

ヤマダ

「みんなのおかげだ。ありがとう。」

 

 

 

 

すると突然格納庫の電話が鳴った、ここの電話にかけてくるのは俺の知り合いに限られている・・・まさか!

 

ヤマダ

「もしもし!?」

 

キリエ

「あ、ヤマダだ!みんな〜!ヤマダは格納庫に居るよ!」

 

ヤマダ

「キリエ!まさか61-120か!?」

 

キリエ

「何で知ってるの!?そーなんだよ、61-120って書いてある五二型が空賊を追い払ったあとの私達を襲ってきたんだ!ついさっきだよ!みんな疑うもんだからヤマダに直接かけようって事になってさ〜」

 

ヤマダ

「大丈夫だったか!?」

 

キリエ

「私達は大丈夫だけど・・・ヤマダまさか61-120盗まれたりした!?」

 

ヤマダ

「いや、そいつァ偽モンだ。61-120は今分解整備中なんだよ!とにかく気をつけてくれ!」

 

キリエ

「わかった、みんなにもしっかり説明しとくから安心して!」

 

ヤマダ

「ありがとう、恩に着るぜ!今度パンケーキ食いに行こうな。」

 

キリエ

「やったーー!約束ね!」

 

ヤマダ

「ああ!」

 

そして受話器を置くとまたすぐに電話が鳴る。

 

ヤマダ

「もしもし!」

 

???

「小隊長!今何しとるとですか?」

 

ヤマダ

「イトウさん!」

 

イトウ

「お久しぶりです!さっきF6Fの大軍を率いてる五二型が横を通ったとですが、尾翼に61-120があったもんで・・・」

 

ヤマダ

「そいつは偽物です・・・実際に襲ったっていう情報もあるので十分注意してください。そいつらはどっちのほうに向かいましたか?」

 

イトウ

「了解です。そいつらはカイチのほうに向かいました。小隊長もお気をつけて・・・」

 

ヤマダ

「ありがとうございます。」

 

俺は受話器を置くと四人に言った。

 

ヤマダ

「カイチに行くぞ!ニセモンが動き出した!」

 

レミ

「了解っす!」

 

俺はAI-1-129とX-133に増槽を取り付けた。そして格納庫の奥から五二型丙以降用の四点支持増槽を引っ張り出すと、アコとシノの紫電に取り付けた。カイチ方面に向かったということはカイチに降りているわけではない、空の駅で給油しているときに襲われてはたまったもんじゃないのだ。先にアコとシノの紫電の発動機を回して滑走路で待機してもらい、俺はAI-1-129に、レミはX-133に飛び乗って発動機を回し滑走路に出る。

 

アコ

「先に出ます!」

 

ヤマダ

「了解!」

 

二人の紫電が離陸したのを確認すると、俺はレミに手信号で合図し離陸した。二一型と二二型は本来発動機が違い最高速度や加速性も違うため編隊飛行には向かないが、今回はどちらもR1830なのでスペックはほぼ同等(アップドラフト式・ダウンドラフト式の違いやカウリング形状により微妙な差異はある)なのでスロットルをそろえて綺麗な編隊が組める。

 

ヤマダ

「ちゃんと試運転はしたが、調子はどうだ?」

 

レミ

「問題ないっす、にしてもこれ馬力があるっすね~」

 

ヤマダ

「栄二一型・栄三一型甲は離昇/最高出力1130馬力だからおおよそ200馬力上乗せだ、体感的には結構大きいだろーな。」

 

レミ

「けどアタシ翼端が長い二一型とか二二型苦手なんっすよ~ 前一一型に乗ったっすけど、ロールが遅いじゃないっすか?」

 

ヤマダ

「ったく・・・ロールしてみな。」

 

レミ

「へ?」

 

ヤマダ

「いいからロールしてみな。」

 

レミは二二型をロールさせる。ここで二二型のロールがなぜ改善されているかを説明しておこう。二二型のエルロンにはバランス・タブがついている。例えば操縦桿を右に倒し右エルロンが上に動くと、操縦桿の動作ワイヤの動きがエルロン内部でロッドによって変換されバランスタブは下向きに動く。するとバランスタブはエルロン本体が動こうとする方向にエルロンを押すのだ。これによってエルロンの動作が軽くなり操作がしやすくなることで結果としてロールが早くなる。つまり操作が軽くなっているだけで厳密には動作が早くなっているわけではない。当然主翼自体が短縮されている三二型や五二型には敵わないので、そこは注意だ。

 

レミ

「すごいっすねこれ、動作が軽いっす!」

 

ヤマダ

「まあ五二型とかには敵わねーけどな・・・逆に一一型、二一型、二二型は縦旋回が優秀なんだ。」

 

レミ

「あー、確かにそうっすね。一回イサカと模擬空戦をしたんっすよ、アタシが後ろを取ったらイサカは縦旋回で逃げるんっす。で、その縦旋回について行ったら二周くらいでイサカと反航戦になっちゃうんっすよ。けど逆にイサカがアタシの後ろを取ったときはロールで逃げてシザースに持ち込むとイサカはアタシの切り返しにはついてこれないんっすよ。」

 

ヤマダ

「敵を知り己を知れば百選危うからず・・・イサカも君も、よく分かってるな。」

 

レミ

「えへへ・・・けど結局決着ついたことないんっすけどね~」

 

ヤマダ

「そうなのか?」

 

レミ

「後ろにつく、偏差とる前に射線からずれる、の繰り返しでなかなか・・・へへ」

 

ヤマダ

「なるほどな~」

 

そうこうしているとカイチ付近の空域に差し掛かった。遠くに町が見えるがそちらの方では特に異常はないようだった。月明かりの中で空戦をするのは好かない、できることなら完全に暗くなってしまう前に安全な場所に着陸するか決着をつけたい。目を凝らして索敵をする。

 

シノ

「二時方向下に敵機!!」

 

ヤマダ

「確認した!F6Fが5機の前に五二型が一機・・・似せるなら仲間の機体もせめて似せろよ・・・」

 

レミ

「そういう問題じゃないっすよね!? どうするんっすか?生きたまま引っ張ります?」

 

ヤマダ

「いや、いい。」

 

アコ

「いいんですか?動機も何も聞けないですよ?」

 

ヤマダ

「ああ、今まであの偽物がおこした事件を片っ端から調べてたが全て目的はない。愉快犯なんだ。」

 

レミ

「じゃあ61-120を模倣したのは・・・」

 

ヤマダ

「恐らくまったくの偶然、都合がよかっただけだろう。」

 

レミ

「こりゃぁ・・・ねえ?」

 

ヤマダ

「ああ、遠慮なく後ろからぶっ放せるってこった!」

 

アコとシノは速度を載せた一撃離脱をかけるために機首を向けて高度を上げる、俺とレミは増槽を捨てると雲に紛れて緩降下で速度を稼ぎ編隊の上に忍び寄る。

 

ヤマダ

「レミ!行くぞ!」

 

レミ

「了解っす!」

 

機体をひっくり返して急降下する、五二型はどうでもいいとして馬力で負けているF6Fに対して速度有利で仕掛けないのは愚策である。速度が死ぬ前にできる限りF6Fを片付けなければならない。雲を挟んで照準器に薄く映るF6Fの主翼めがけて7ミリ7機銃と20ミリを叩き込んだ。

 

ダダダダッダダッ!!!

 

二機のF6Fは火を噴いて落ちてゆく、固いF6Fも真上から20ミリを食らえばひとたまりもない。

 

レミ

「一機もらったっす!!」

 

ヤマダ

「後ろの三機はアコとシノに任せる、五二型に行くぜ!」

 

レミ

「了解!!」

 

逃げる五二型を追う、どうも零戦にはなれていないのか機動性を生かし切れていない。あっと言う間に後ろにつけた。

 

ヤマダ

「出直してきやがれ!!」

 

偏差も何もいらない距離まで詰めると機銃を撃つ、ダダダダッ!!!といういつもの発射音のあと、五二型は爆散した。アコとシノもF6Fを片付けたようだ。

 

レミ

「あっけなかったっすね・・・」

 

ヤマダ

「日の丸ひっさげた零戦のるなら俺に顔出せってんだ。ははは!」

 

空戦で時間がかかることは無い、一瞬の射撃機会も逃すことはしないのでよほど実力が拮抗していたり防弾能力に差が無い限りは一瞬で終わる。

 

ヤマダ

「レミ、シノ、アコ、ありがとうな。先に帰っててくれ。」

 

レミ

「ヤマダどっか行くんっすか?」

 

ヤマダ

「カイチでイサカにラムネ買って帰ってやろうと思ってな。」

 

レミ

「そういうことっすか~、わかったっす。お気をつけて。」

 

ヤマダ

「ああ、また後でな。」

 

 

 

 

そして俺はカイチに降りるとラムネを買う、その他の買い物と燃料補給を済ませたころにはもう暗くなっていた。機体に乗って発動機を回し夜空に飛び立つ。月明かりに助けてもらうために雲の上まで上がるとプロペラピッチをフリーに設定しスロットルを絞って巡航速度にした。

 

「もうすぐ帰れるからな・・・イサカ・・・」

 

俺は朝からの疲れでうとうとしていた。戦闘機の長距離飛行でたちが悪いのは、両手を放してもトリムさえしっかり設定していれば飛べてしまうことだ。

 

ゴオォォォォォ・・・・・

 

この音は恐らく爆撃機・・・?おそらく輸送任務か何かだろう。何も気にせず飛んでいたが・・・

 

ダダダダッ!!ビシュッ・・・・

 

「・・・・!?」

 

俺の太ももに衝撃が走った。俺が爆撃機のルートと交差するように飛んでいたからなのだろうか、防護機銃を撃ちやがったのだ。太ももを貫いた一発の銃弾は操縦席を貫き機体内に転がった。7ミリ7機銃の徹甲弾だったからよかったものの、出血が止まらない。激痛も襲ってきた。

 

「ああああ!!!!」

 

痛みに耐えるため、意識を失わないために大声で叫んで気を保つ。ここの周りには空の駅が無い、何とかしてタネガシまで飛ぶしかない。

 

「こんなとこで死ねるか・・・・」

 

首のタオルを外して左手で太ももを縛り付ける。だがそれでも出血が止まらない、目の焦点が定まらなくなってきた・・・

 

「クソが・・・・俺は約束したんだ・・・必ず帰るって・・・・」

 

そこでふと俺はあることを思いついた、零戦は電熱服を着たときにそれを動作させるための電極がある。これに金属の針金を刺してショートさせタオルに火をつけて傷口を焼いてふさぐのだ。グズグズしていると血が足りなくなって何もできなくなる。

 

「やるしかねえか・・・」

 

電極に針金を突っ込み自分の手前に持ってくると、太ももからタオルを外し血で濡れていない部分を針金にかぶせショートさせる。

 

バチバチバチッ・・・ボッ・・!!

 

火はついた、まずは左手で傷口を無理やり密着させる。そこに火を当てた。

 

「ぐぅっ・・・ぎゃあああ!!!!」

 

痛みと熱さが同時に襲う、二/三度意識が飛びかけたが、ここでくたばればイサカとの約束も果たせない。何としてでも生きなければならない・・・

 

「ああっ!!・・・はぁっ・・はぁっ・・・」

 

上の傷口は何とか塞いだ、抜けた側の穴をふさぐのは物理的に不可能なのでタオルを風防の外で振って火を消し、畳んで傷口の下に敷き自分の体重で止血できるようにする。だが問題は着陸だ。横風が吹いていればラダーを踏んで機首を安定させないといけないがこの脚じゃもうラダーは踏めない。トリムタブで必死にバランスを取りつつ飛びそうな意識を無理やり引き戻してタネガシへと飛ぶ。滑走路が見えた。

 

「よし・・・あとは着陸・・・」

 

着陸ルートに乗っている余裕などない、前から離陸の戦闘機が来ないことを祈りつつフラップと脚を下げて着陸態勢に入る。減速して揚力が減ると地面に向けて引っ張られる力が強くなる、するとまた傷口に激痛が走る。

 

「ぐぅっ・・・あぁ・・・っ!!」

 

速度を見誤ったか機体を地面にたたきつけるような着陸になる。最後にありったけに力を振り絞ってブレーキを踏む。スロットルを絞って燃料をカットし発動機を止めると、風防を開けて立ち上がろうとした、だが足に力が入らない。俺の名を呼ぶ声がしたのが聞こえたが俺は答えられず、意識は遠のいていった・・・・・・・

 

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