キャロルちゃんといっしょ!   作:鹿頭

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GX編
奇跡の■■■


──燃える。

───燃える。

────焼き尽くす。

 

 全てを燃やすあの業火。

 あの悍ましく、消えてしまえば良い想い出を、否が応でも眼前に突きつけられて。

 

 少女はただ、泣いていた。

 

「そんな所に居たら危ないよ!?」

 

 快活な声が背中にぶつけられ、キャロルは現実に引き戻された。

 声の主は、シンフォギア装者、立花響だった。

 

「チッ…!」

 

「パパとママと逸れちゃったのかな? そこに居たら危ないから、お姉───」

 

 この子、何処かで会った様な───ふとした拍子に、既視感に襲われる。

「黙れ」

 

 一言そう吐き捨てたキャロルは、腕をぐるりと回し、幾重にも重なる翠色の方陣を映出する。

 

「───!」

 

「キャロル・マールス・ディーンハイムの錬金術は──世界を壊し、万象黙示録を完成させる」

 

「世界を…!?」

 

「オレが奇跡を殺すと言っている」

 

 その言葉に立花響が驚くのも束の間。

 響に向けられた翠の竜巻が荒れ狂い、響を中心として、無残に大地を抉った。

 

「何故シンフォギアを纏おうとしない。何故戦おうとしない」

 

「闘うよりも───」

 

 ふらつきながらも立ち上がり。

 

「わかり合いたいっ!」

 

 そして、目の前の少女を見据える。

 

「それにキャロルちゃん! わたしたち、何処かで会ったりしてないかな?」

 

「…………」

 

「きっと、何処かで会った事あると思うんだ、わたしたち。だって、初めて会った気がしないんだ」

 

 ───認めたくないが、事実だった。

 

 キャロルの体躯の大きさが今と違うとは言え、一瞬とは言え、彼女達は出会っている。

 

 そしてその事実は、キャロルにとって大きな不都合となる。

 

「───だったら」

 

 足元に土の魔法陣を創出。

 続け様に両腕を振り上げ、頭上高くにも展開する。

 敵を粉砕する為に。

 

「だったら戦ってみせろっ! 立花響ッ!」

 

「それにっ! ……さっきのキャロルちゃん、泣いてた」

 

「!」

 

「だったら、闘うよりも先にその訳を聞かせてよ!」

 

「お前が……!」

 

 逆鱗に触れられたキャロルは、怒りに任せ指を弾き、法陣に土の元素の概念を付与し展開。

 

「お前如きが踏み込むなぁぁぁぁ!!!」

 

 大地ごと抉り砕き、響を吹き飛ばす───!

 

「父親に託された命題だ。お前にだってあるはずだ」

 

 キャロルは、説いた。

 世界を滅ぼすのは、この為だと。

 

 ────だが。

 

 

「───うん、あるよ」

 

 土煙の中、立ち上がりしっかりと大地を踏む。

 

「!」

 

「ちょっと頼りないけど……お父さんから託された想いは、ちゃんとこの胸にある」

 

 あくまで、キャロルと向き合おうとするガングニールの()()()である、立花響は───

 

「だからね、聞かせて欲しい。本当に、キャロルちゃんのパパは、そんな事を願ったのかな」

 

 辿()()()()()()()()()()()

 

「ッッッ!!!」

 

 キャロルは奥歯が噛み砕けそうな程に怒った。

 忿怒した。

 激怒した。

 憤怒した。

 憤激した。

 血が頭に登る様な感覚───

 コイツだけは生かしては置けないと、そう思った。

 

 例え今、呪われた譜面が無くとも、立花響(コイツ)だけは今ここで───!

 

 左手を虚空に向けて水平に伸ばした、その時。

 

「ちょーっと遊び過ぎじゃありません? みっともないですよ、マスター?」

 

 従者が冷や水をかける。

 余りに加熱し過ぎた主の冷静さを取り戻しに来たのだ。

 

「………ガリィか」

 

「はぁい、貴女のガリィちゃんでーす」

 

 けらけらと笑う彼女の様子は、微塵もそうは感じさせない。

 だが間違いなく彼女は主の事を思うて動いていた。

 

「相変わらず良くも回る舌だ……採集はどうだ」

 

「ミカちゃんを動かすにはあとちょっとですかねぇ。ま、順調ですよぉ」

 

「そうか。起動出来る最低限で良い。……帰るぞ」

 

 主の言葉を聞いたガリィは懐からテレポートジェムを取り出すと、自らの足元へ落とす。

 すると足元に、明るい紫色の、幾何学めいた紋様が浮かび上がり、姿が掻き消えた。

 

 それを確認したキャロルも、また後に続く。

 

「───次は、ちゃんと聞かせて」

 

 不快な雑音を耳にしながら。

 

 

 

「クソっ!!!!!」

 

 玉座の間に戻るなりキャロルは叫んだ。

 

「……随分荒れてるね」

 

「うるさいっっっ!!!」

 

 心配そうな声を一喝すると、そのまま腕を強引に引っ張り、自分の玉座に腰を力づくで降ろさせると、自分はその膝の上へと座った。

 

「………オレは今気分が悪い」

 

 他者の温もりに、幾分か冷静となり、キャロルは自らを客観視できるまでに落ち着いた。

 

「そっか」

 

「アイツに……立花響にオレの心を土足で踏みにじられた」

 

 いや、記憶の限りではあんな覚悟決まってなかった筈だけど──

 なんて事を考えていたが、流石に、今のキャロルに言えなかった。

 

「……ガリィはミカの起動を最優先に。ファラとレイアは適度に装者共を突きつつ、後は好きにしろ。ダインスレイフの準備が出来るまでは、な」

 

 エルフナインがダインスレイフの欠片を手に此処を出奔したまでは順調。

 後は向こうのイグナイトモジュールの完成を待つばかりとなる。

 

「オレは少し寝る……お前も寝て良いぞ」

 

「いやあの、すみません。背もたれめっさ硬いんですけど」

 

「知らんな……」

 

 そうして、キャロルは微睡みの中へ誘われた。

 

 

 




パーフェクトビッキー
ツヴァイウィングのライブ以降からノイズと戦う装者。
色々と二課が手を回した為、虐めは早々に収束し、家庭環境が良好。
奏さんから(勝手に)受け継いだ思いとギアを胸に今日もみんなと手を繋ぐためにたたかうぞ!
手を握らない奴は開かせるまで!
でも戦いたくない!とか抜かす世紀末覇者。
おかしい。

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