仮面ライダーディケイド オウへの旅路   作:茶々様

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プロローグ

 

 

 

 

 ーーこの胸に…… 永遠に刻み込んでおく

 

     ーー人間の自由のために戦っているのだと

 

  ーー悪を倒すためならどんなに汚れた泥でもかぶる

 

    ーーこの世界を救えるのは…… 君だけだ

 

 ーー『    』の物語はここから始まる

 

 

 

 

 

 カシャッ

 トイカメラのシャッター音が人混みの中を小さく鳴り響く。

 人気の多い広い公園。

 園内を散歩したり家族や友人と遊ぶ人々をふてぶてしい顔で見まわす男が一人。

 首にトイカメラをぶらさげた男は特に許可を撮るわけでもなく写真を撮影していく。

 

「やはりこの町も俺に撮られたくはないらしいな」

 

 行き交う人々。飛び交う野生の鳥。風に吹かれる葉っぱやゴミでさえもカメラのレンズ、いや男を避けている。

 何となくではあるが男はそう感じ、つまらなそうにするもシャッターを押し続けた。

 レンズを覗き込んでいると人の波を映していた光景を太めの女性の姿が遮った。

 

「ちょっとアンタ!」

 

 女性は厳つい顔で男にいきなり怒鳴り声を上げた。

 しかし男は涼しい顔で答える。

 

「なんだ? 写真を撮ってほしいのなら構わないぞ。最高の写真を提供してやる」

 

「なにバカなこと言ってるのよ! あんた今、私を盗撮したでしょうが!」

 

 女性の言葉に男は意味がわからないと片眉を上げると、直ぐにああそうかと納得したように頷く。

 

「なんだ。ただの当たり屋か。悪いが俺にはお前に慰謝料を払うほどの金はないぞ」

 

「だ、誰が当たり屋よ! さっきから許可を得るわけでもなく写真を撮っているのはあんたでしょ!」

 

 女性は顔を真っ赤に染め上げて金切り声を上げた。

 男本人としては女性のことなど興味もなかったが、相手からしてはそんなことはどうでもいい。とにかく勝手に撮影されたということが気にくわなかった。

 

「とにかく! 警察につきだしてやるわ。さあ来なさいよ!」

 

「すっ、ストップ! ストッープ!」

 

 女性が男の腕を掴もうとする。しかしそこに遮るように間に一人の少女が割って入ってきた。

 突然の少女の乱入に女性は驚き目を丸くする。思わず出していた手も引っ込めていた。

 少女は走っていたのか息を荒らくし、手に膝をついていた。

 ゼーゼーと呼吸をしながら顔を上げる。

 

「あ、あの、うちの士が何かやらかしたんですか……」

 

「ひっ!?」

 

 女性は少女の顔を見ると低い悲鳴を漏らした。

 茶色の瞳に特徴的なアホ毛の目立つ橙色のセミショートヘアー。歳は高校生位だろうか。

 整った顔立ちに小柄な体型は小動物は愛らしく感じる……

が、それらのイメージを吹き飛ばす程に少女の目は血走り、女性に鋭い眼光を向けていた。

 

「もし何か、はあはあ…… ご迷惑をおかけしたのなら、はあはあ、お詫びしますので…… どうか……」

 

「も、もういいわよ! それじゃあ!」

 

 少女の鬼気迫る表情に女性は恐れをなしたのかそそくさとその場を離れていった。

 しかし女性がどうして離れていったかなど知るよしもない少女は呼吸を落ち着かせると額から垂れた汗を拭いほっとする。

 

「はあ、よかった〰️。謝っただけで許してもらえて」

 

「いや今のはお前のその顔のせいだと思うぞ……」 

 

 流石に男、士と呼ばれた彼も少女を見て頬をひきつらせる。

 

「ちょっと士! どうして貴方はいっつも問題を起こすのさ! 家に居候しはじめてから一体何度目?」

 

「俺は起こしてるつもりはないんだけどな。向こうから勝手にやってくるんだ。仕方がないだろ。そんなことよりもリツカ。お前はなんだってそんな汗だくなんだ?」

 

 少女、リツカは士の物言いに顔を真っ赤にする。

 

「なんでって…… ! 士が変なこと言い出したと思ったら急にいなくなったからじゃん! だから私は士を探して走り回って……」

 

「ああ、大体わかった」

 

「あ、ちょっと!」

 

 士はそれだけ言うと立夏から背を向けて歩き始めた。リツカは慌ててその背を追う。

 

「もう、また勝手に行かないでよ!」

 

「放っとけばいいだろ。俺のことは」

 

「そうなんだけど…… なんか放っとけないの!」

 

 実際何故、士のことを放っとけないのか。リツカにはよくはわからなかった。

 ある日、腹が減ったとふらりと現れたかと思えばいつの間にか家に住み着き、共に過ごしていた男、門矢士。

 名前以外の記憶がないらしく身分を証明する物もない。怪しさ満点の男ではあるものの料理の腕前が中々であることを知ると母親は気を良くし何時までも居ていいなとど言ってしまった。

 父親にいたっては士の掴み所のない性格と士の撮る写真を気に入り話の相手に丁度いいと完全に受け入れてしまっている。  

 こうして士は藤丸リツカの家族の一員として共に今日まで過ごしてきた。

 なのだが、今日の朝になって突然『ここは俺の世界じゃない』等と言い出し出ていってしまった。

 士は飄々としていて掴み所のない男だ。いつも軽口を叩き冗談を言っていつもはリツカも頬を膨らませるのだが、今回ばかりは冗談の気がしなかった。

 狼狽える両親に迷惑ばかりの居候などいなくなった方がいいと立夏は言い放ったが当の本人がどうにも気になってしまい町中を探し回ったのだった。

 

(でも…… どうしてこんなにも士のことが気になるのだろう)

 

 リツカも青春真っ盛り。花の女子高生だ。顔立ちもよく何気にスペックの高い士に実は自分も惚れてしまっているのではないかと一瞬危惧するが、それも違うとリツカは首を横にふる。いや…… 確かに気が無いわけではないのだが…… 

 士は、この男は絶対に一人にはしていけない。

 まるで誰かにそう刷り込まれたのかのような。どうしてたがそんな気がして仕方がない。特にあんな言葉を聞いた後では。

 

「いいから子供はさっさと帰れ。俺と関わると録なことがないぞ」

 

「自覚あるんだ…… いや、急になんでそんなこと言うのさ」

 

「決まってんだろ。なにせ俺はいい男だからな。いい男に危険はつきものだ」

 

「そういう冗談はいいから! なんか嫌なことでもあったのかって聞いてるの」

 

 心配する自分のことなの知らず、相変わらずふざけた態度をとる士にリツカは思わず声を荒らげた。 

 それでも士は涼しい顔を崩すことなく、

 

「ここも俺の世界じゃない。だから町を離れることにした」

 

「俺の世界って…… 今朝も言ってたけど、それどういうこと?」

 

「俺の写真のこと知ってるだろ」

 

 士は立ち止まり、リツカにカメラを向ける。

 

「まあ…… うちは喫茶店だけどお父さんの趣味で写真の現像もしてるし。士のあのひど…… 個性的な写真についてはよくわかってるけど」

 

「お前酷いって言いかけたな」

 

 藤丸家は喫茶店を経営している。しかし父親の趣味は写真であり、普段から自分で撮影しては現像していた。

 ある日、友人の写真もついでに現像を、とやっていたらいつの間にか多くの人間の写真を請け負うことになり本業の喫茶店よりも熱中するようになっていた。

 そこに現れた士。彼の撮影する写真はかなり独特なものだった。人も動物も建物のも、光でさえもが歪み、良く言えば芸術的な写真を作り出していた。 

 父親はそれを気に入り士を受け入れたのだ。父親以外からはあまりにも不評で金を取られた客からは訴訟されかけたが。

 

「世界は俺に撮られたがっていない。だからこの世界は俺の世界じゃないんだ」

 

 シャッターを押し、リツカの姿を撮影する。 

 リツカは士を避けるつもりはない。それでも写真は酷く歪んでしまうのだろう。

 だとしても……

 

「私は…… 撮られたいよ。士のこと…… あ、いやっ、士の写真はまあ嫌いじゃないし」

 

 リツカは危うく口走りかけた台詞を慌てて止めた。顔を赤らめ背け、また士にからかわれると横目で睨むが士は呆けた顔でリツカの頭上を見つめていた。

 

「え、なに?」

 

 リツカは士の視線の先へと目を向ける。

 陽の元を雲を背に飛ぶヘリが一機。それだけならばなんてことない普段の風景。

 だがその風景を乱す異常な存在が、この日はあった。

  

 ーーーーガアァァァァァ!!

 

 ヘリどころか鳥でも虫でもない。恐竜を思わせる翼の生えたトカゲがここにまで聞こえてくる巨大な雄叫びを上げていた。

 やがて恐竜擬きはヘリの回転する翼に目もくれず突進する。

 結果は当然。トカゲ擬きは鱗を砕かれ、ヘリは空中で爆発する。

 トカゲ擬きの死体とヘリの破片が落下し町中に轟音を響かせた。

  

「キャアアア!!」

 

 誰かの悲鳴が聞こえてきた。

 人々は次々に駆け出していく。

 

「え? ちょっと、なにこれ。嘘でしょ!?」

 

「っ! おいリツカ!」

 

 士がリツカの腕を握る。今すぐこの場から離れなければならない。

 そう判断したからこその動きだった。

 そして士の判断は正しいということが直ぐにわかった。

 青空に銀色に鈍く輝くオーロラのようなものが現れる。

 オーロラはユラユラと波を起こし、そこから次々に先程のトカゲ擬きの大群が出現した。

 中には、巨大な鳥やトカゲ擬きよりも巨大なドラゴン。多種多様な怪物がいた。

 

 日常が壊れる。世界が破壊される。

 リツカはただただ、終末を傍観するほかなかったーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「かくして、門矢士の歴史は、物語はこれで完結となるのです」

 

 マフラーを首に巻き、本を片手に男は一人語る。

 

「おっと、申し訳ありません。どうやらこの物語には続きがあるようだ」

 

 男は懐からもう一冊、本を取り出した。

 

「この本によれば、門矢士はこの世界の藤丸リツカと…… おっといけない。これ以上は皆さんにとってはまだ先のお話しでしたね」

 

 ネタバレ厳禁。男は人差し指を口に当てて、そう呟いた。

 

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