afnすとーりー:キツネノボタンとの日々   作:hiden456

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ホワイトデーのお返しを作って配るだけのお話。


ダークモンドホワイトデー:大所帯

白黒の稲荷寿司。丁寧に油抜きをした後、白いものはうすくち醤油を使い揚げの色を薄く仕上げ、黒いものは黒砂糖をたっぷり使って黒糖稲荷に。

 

今日は厨房を占拠して第一副団長にホワイトデーのお返しを作っている。

と言っても自分が使える厨房などどこにでもある訳ではなく、またブロッサムヒルの家(物置と化したセーフハウス)に帰るほどでも無いと思って騎士団の厨房を借りているのだが、物好きな花騎士達にかわるがわる観察される事になってしまった。正直恥ずかしい。

「団長、何作ってるんですか」

「おいなりさんなの」

ふらっとやって来たエノテラに、割と早いうちからこちらを観察していたウサギゴケが説明の手間を省いてくれる。

そろそろ自分もできればおしゃべりに参加したいのだが。黙々と油揚げに酢飯や具を詰め込むのに少し飽きて来た。少し気合を入れすぎて、何故か1人分どころかちょっとした遠征部隊の1食分ほどの量を作っている。

「だんちょー、私の分はー?」

すでに酔っ払っているホップに、具に使った枝豆の残りを指さす。

「やったー! おつまみだぁー! これでもっとお酒を……ひっく」

ホップはそれで良いのだろうか。そして、コデマリあたりが来たらどうやって我慢してもらえば良いのだろう。そんな事を考えてながら、ひたすら揚げに米を詰め込む。 いくら作っている数に余裕があるとは言え、第一副団長のために作っている以上、一番に完成品を渡すのはやはり第一副団長ではならない気がする。ちなみに、普通に花騎士皆のためのお返しは別で用意してあるし、第一副団長のためのお菓子もまた別で用意しているのだが。

 

「後輩、立場の確立、困難。ヘナ、身をもって経験」

「アニソドンテアさんは気にしてないみたいだけど、トリトニア調査隊もそういうのってあるの? 大変、大変」

「クコとヘナ、仲良し。トリトニア調査隊、家族。でも、周囲、関係誤る。ヘナの事、お姉さん呼称。クコ、ぷんすか……なの」

ヘナとキツネノボタンと言う微妙に珍しい組み合わせの二人組がこちらにやってくる。

「くんくん……甘辛く煮た油揚げとお酢の匂い……! 団長、いなり寿司作ってる!」

「にぃに、料理中?」

とうとう第一副団長のキツネノボタンに見つかってしまった。ヘナの分もちゃんとある。

「そっか、ホワイトデー、今日だった。団長、流石。分かってる」

「にぃにの手料理、ワイルド希望!」

ではヘナの分は肉の手巻きにでもしようか。

それはそれとして、キツネノボタン。そう、第一副団長に呼び掛ける。

「なぁに、団長」

次に自分が何を言うか、完全に分かり切った、余裕の笑顔。

ハッピーホワイトデー。そう言って、白黒の稲荷寿司を盛りつけた皿を差し出した。

 

「えへへ、ありがと。皆の前で渡されるとは思って無かったけど、嬉しい、嬉しい」

それは良かった。すぐにキツネノボタンにが見つからなかった時のために弁当箱も用意していたのだが、洗い物が減ったと思っておこう。

「食べて良い?」

もちろんだとも。むしろ、そうしないと他の花騎士へのホワイトデーのお返しが解禁できない。まぁこのあたりは気分的なものなのだが。

「ふふ、じゃあ、いただきます。でもその前に手洗う」

そう言い、流し台で蛇口を捻るキツネノボタン。

さて、あと少し稲荷揚げと寿司飯が残っている。

これを詰めてヘナに肉を用意したら自分もいったん休憩にして、他の花騎士へのホワイトデーのお返しを解禁しよう。

「メラメラ、団長に一番にホワイトデーのお返しを貰えるなんて、嫉妬してしまいます」

「ほぇ? 私はもう貰ったよー?」

枝豆を詰め込む酔っ払ったホップと多分もうすぐ酔っ払いになるエノテラがが何か言っている。

副団長クラスのホワイトデーのプレゼントは全部鞄に詰めて持ち込んでいるので実はすぐ渡せるのだが。

と言うか一人ずつ訪問したり呼び出したりするようなものでも無いのですぐ渡せるように準備していたと言う方が正しい。

「にぃにの鞄、パンパン?」

そしてそのはち切れそうなかばんをヘナがしゃがみこんでつついている。……多分はじけたりはしないと思うが、少し怖い。

「ヘナ、承知」

そう言いつつくのをやめるヘナのため、薄く切った肉に塩コショウを振り、コンロで炙ったフライパンに油を引く。なんだかこっちの方がメインディッシュっぽくなってしまったのは気のせいなのだろうか。

「団長、タオルちょうだい」

そう言うキツネノボタンに片手で手ぬぐいを渡したのち、適当に温めたフライパンに肉を載せる。じゅわーと良い音がする。

「ウーちゃんもお腹すいたの」

フライパンをじっと見つめるウサギゴケ。当然ウサギゴケの分もある。が、もう少しだけ待ってくれ。

「ひょっとして、わたしの事待ってる?」

すっかり大所帯になってしまった群がる花騎士たちを見まわし、お皿を手に困ったように首をかしげるキツネノボタン。まぁ大体そんな感じである。

 

「むぅ。見られながらだと、味分からない……」

普段はマイペースで、そう言う照れとは無縁そうな彼女が赤面しながら白い方の稲荷寿司を一つ持ち上げ、口に運ぶ。

「ん、あむあむ……ん、上品な味。悪くない。次はこっち」

次に黒糖稲荷に手を付けるキツネノボタン。

「むふふ、甘い。ちょっとベタだけど、嫌いじゃない」

そう、こちらを見上げ、言葉の上ではそんなでもないが、嬉しそうに感想を言ってくれた。

「もう良いですか? エノテラはおつまみを要求します」

横から首を突っ込んできた自由人。とりあえず焼けた肉を海苔と酢飯で巻き、手巻き寿司にする。

手巻き寿司と稲荷寿司は一応今この場に居る花騎士の分くらいはありそうだ。エノテラにそれと稲荷寿司を数個盛り付けた皿と、はち切れそうな鞄から取り出した袋も手渡す。

「なんですかこれ」

一応こっちが本来のホワイトデーのお返しだ。

「そうですか。ありがたく受け取っておきます」

ちなみに中身はワインの小瓶とマカロンである。

「あ、全部わたしのじゃないんだ」

そう稲荷寿司を見ながらキツネノボタンが少し残念そうな声を出す。また作ってあげるのでそんな声出さないでくれ。

「団長団長、ウーちゃんお腹ぺこぺこなの」

そう言ってきたウサギゴケにエノテラと同じように盛り付けた皿と、鞄から取り出した袋を渡した。

「ありがとうなの」

そのままヘナと枝豆片手に爆笑していたホップにも寿司とホワイトデーのお返しを配ったところで、

「団長、よく考えたら、わたしの分、少なく無い?」

そう不服そうにキツネノボタンが言ってきた。確かにそう思うのも不思議はないだろう、彼女だけ鞄から取り出した分のお返しは貰えていないのだから。だが、それもちゃんと用意している。

持って来た時より幾分萎んだ鞄から、キツネノボタンのためのお菓子を取り出す。中身はワインで有名な葡萄の産地で売っていた葡萄味の金平糖だ。ちなみに、矢鱈すっぱかったりはしない事は味見済みである。

「おー、団長ありがと」

後手巻きも食べるだろうか。

「一応貰う。でも、キツネノボタンは団長の特別。だからみんなと同じなのは、ちょっと足りない」

そんな事は無い。その証拠に皆を見るように言う。

「んぅ?」

こちらを見て首をかしげるヘナが食べているのは、白いヨーグルト味のマカロンだ。

皆に配った「お菓子」は、特に苦手の無い限りマカロンで統一している。

「知ってる、その意味は確か、特別な存在、だったよね」

少なくとも騎士団の花騎士は、とりわけ副団長を任せられる花騎士は皆特別だ。だがキツネノボタンだけはプレゼントが金平糖。金平糖をキャンディーの仲間ととらえた場合、その意味は、まぁ察してくれると助かる。

「キャンディーの意味は……そっか、なるほどなるほど」

まあそういう訳なので、この場であまり追及されるとこちらも恥ずかしいから、これをもって許してくれ。

「どうしよっか」

すっかい機嫌の良くなった笑顔で、だがどこかもったいぶるように悪戯っぽく笑うキツネノボタン。

「団長も飲みましょう。後片づけなんてポイです」

「そーそー、今日は出撃も無いしさー、もう宴会にしよーよー」

そう言ってグラスを押し付けて来るエノテラとホップを見て、キツネノボタンは

「そういう事なら、浮気しない限りは許してあげよう。でも、あんまり羽目を外したら……いろいろわからせてあげる♪」

そう言いながら金平糖の袋を開けるのだった。




3倍返しを、と思うとまだ2倍。
不足分はどうやって返そうか
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