afnすとーりー:キツネノボタンとの日々 作:hiden456
「あ、いい所に来た。ご褒美をあげる」
朝、人気のない廊下でこちらを見つけたキツネノボタンが駆け寄ってくる。ご褒美、と言われても、特に何かした覚えは無いのだが。
「団長はいつも頑張ってる。だからご褒美」
ありがとう、何をくれるんだろう。
「団長、ちゅーして良い」
その前と後にキツネノボタンのつばが飲みたいと言ったら飲ませてくれるのだろうか。
「ひょっとしてお疲れ? 元気にして欲しい?」
そう言って首を傾げるキツネノボタン。耳ごと揺れるその仕草はどこか蠱惑的だ。
しかし疲れているかと聞かれればそうかもしれない。今日もこの後何の進展も無さそうな会議で、その後は討伐任務だ。
「でも団長、その会議って別に副団長や花騎士が出席しても良いやつだったよね」
それこそ無駄の極みだ。ただでさえ建設性の欠片もない上に花騎士が出る必要性も無い会議に、何が悲しくてうちの団員の貴重な時間を使わせなければならないのやら。
「ふふ、団長優しい。やっぱりご褒美あげにきて良かった」
そう言ってキツネノボタンがきょろきょろと周りを見回し、誰も居ない事を確認した後に、こちらを見つめて黙る。
ほっぺたが少し膨らんでいるのはきっと唾液を溜めてくれているのだろう。
何となく無言のまま彼女の頭をぽふぽふと撫でる。
「んー」
キツネノボタンも手を伸ばしてこちらを撫でようとしてくる。屈んで彼女より目線を下げる。
「むふー」
こちらをわしわしと撫でながら満足げなキツネノボタンの顔を眺めながら彼女の唾液が溜まるのを待つ。もうこれだけで会議を乗り切れそうなほどだ。
「ん」
キツネノボタンが唇を突き出して目を閉じる。溜まったらしい。
彼女の背中に手を回し、こぼさないようにそっと下からキスをする。
「ん、んんっ」
とろりとした彼女の唾液を口移しされる。量そのものは口にいっぱいとまでは行かないが、結構な量だ。
そして、その唾液が触れた端から身体が異常を検知する。口に含んだ彼女の唾液から立ち上る魔力と彼女の香り、その両方にクラクラ来る。
「ぷは、団長、味わって飲んでね」
そう笑顔でこちらに微笑みかけるキツネノボタン。意を決して口の中で彼女の唾液を拡げる。
舌の上から舌の舌や上あご、外側の歯茎まで、彼女の唾液が広がると共に砂糖の詰まった頭陀袋で全身を殴打されたかのような暴力的な多幸感と、心の底から活力がみなぎってくるのを感じる。正直効き目が強すぎるのではないか。
「団長、飲みなさい」
そう促され、まずは一口。食道と胃を通り越して尻まで痺れるような錯覚を覚える。二口目、頭の奥が痺れる。彼女の赤い瞳を見つめながら三口目、痺れの全てがクリアになり残ったのは幸福と愛しい彼女への想いだけだ。こっちを見つめる彼女と改めて目を合わせ、自らが正気である事を確認する。耳まで熱いがおそらく大丈夫、理性を奪われたり魔力に酔ったり狂わされたりはしていない。少なくとも主観では。
「美味しかった?」
最高だ、これで晩まで頑張れる。夕食はいなりずしにしよう。
そう言ってキツネノボタンをぎゅーっと抱きしめる。
「当然わたしも一緒だよね」
当たり前だ。さて、会議に行ってくる。
「おー。いってらっしゃーい」
笑顔の彼女に見送られ、騎士団長としての生活に戻るのだった。