afnすとーりー:キツネノボタンとの日々 作:hiden456
執務室に戻ってくると、キツネノボタンが一人、金平糖を食べていた。
「ん、あむ、ぽりぽり、しゃくしゃくしゃく」
一粒放り投げた金平糖が重力に従い一瞬静止した後に、彼女のかわいらしい口に収まる。
しばらく眺めて居たら、彼女と目が合った。
「ん、団長、おかえりおかえりー」
こっちを向いたキツネノボタンはすぐに金平糖に戻ってしまうかと思われたが、そのままこう切り出す。
「団長も食べる?」
もらえるのなら。そう言って手を差し出したが、キツネノボタンは一粒摘まんだ金平糖をこちらに渡そうとしない。
「団長、お口、開けなさい」
それは恥ずかしいのだが。
「はやく、あーんする」
有無を言わさず、こちらに身を乗り出すように手を伸ばして来るキツネノボタン。
恥ずかしい以外に断る理由も無い。仕方なく口を開けると、そこに金平糖が一粒放り込まれた。
「むふふ」
何故か得意気なキツネノボタンを眺めながら口の中で金平糖を転がす。
「美味しい?」
痛いほどではないがとげとげした金平糖の舌触り。小さくない表面積から感じるのは素材の甘み。
甘いだけと言えばそうなのだがどうしてなかなか悪くない。
「団長、噛んで食べないんだ」
せっかく彼女に貰えたのだから、味わって舐めているだけだ。…舐めながら喋るのもあまり行儀は良くない気もするが。
「なるほどなるほど…。団長、金平糖、今から返してって言ったら怒る?」
別に怒りはしないが、まだあるのだからそちらを食べれば良いのでは無いだろうか。
「団長で味付けした金平糖、食べさせて」
そう言って彼女はこちらの返答も聞かずキスをして来た。
さっきまで金平糖を噛んで食べていた彼女の唾液も舌も、驚くほど甘い。
「ん、んちゅ…らんちょー…こっちに渡しなさい」
突き入れられた舌がこちらの口を弄るように蠢き、彼女の舌と唾液に溶け残った金平糖のしゃりしゃりした甘味がこちらの舌を覆っていく。
たとえ漏れ出る魔力が無かったとしても長く抵抗はできなかっただろう。
別に渡すのが嫌だった訳ではないが、舌の下に隠したそれを暴かれるのにほとんど時間はかからなかった。
「はむっ見つけた、見つけた。おとらしく寄こしらさい」
そのまま彼女に口の中から金平糖を強奪され、唇と舌が離れた後も、魔力の残滓かじーんと口が腫れたように熱い。
「団長から奪った、怪盗キツネが盗んじゃった」
こちらを見ながら満面の笑みを浮かべるキツネノボタン。全く、敵わない。
この小さな怪盗に心まで盗まれてしまった団長はいったいどうすれば良いのだろう。そんな事を思いながら、荷物を片付け始めるのだった。
強盗キツネ