afnすとーりー:キツネノボタンとの日々   作:hiden456

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からくりのちからってすげー!
前の続きです。キツネノボタンとお風呂の前に茶をしばくだけ


ブラッシング2

「そう言えば団長、お風呂は見なくて良いの?」

紅茶を2つのカップに交互に注ぐキツネノボタンにそう聞かれる。

便利なもので、沸かしっぱなしの風呂はいいぐらいの温度になったら止まるような仕掛けが施してある。なので心配は無用だ。一応ちゃんと止まっているか後で見に行くつもりだが。

「わかった。あと、お茶菓子、何かある? 用意、忘れてた」

そう言われ、コンペイを膝から下ろし、棚を開ける。ビスケットならあるのだが……きっとぽろぽろこぼれるからキツネノボタンは気に入らないだろう。

「他のがあるならそっちの方が良い」

では、この間ベルガモットバレーで買ったちょっと高級な金平糖にしよう。

「! 団長、それ、わたしに隠してた!」

キツネノボタンものすごく不満そうにポットをぶんぶん振る。ラストドリップを絞っているのか、ただ憤慨しているのか微妙な所である。

てっきり知っていると思っていた。

「うう、団長の薄情者……」

そんなに悲しかったのか。高級そうな包み紙に覆われた金平糖を袋ごと彼女に差し出す。

「……それでわたしの機嫌、治ると思ってる?」

拗ねたように頬を膨らますキツネノボタン。だがしっかりちゃっかりと金平糖は受け取ってくれた。

物で釣るつもりはないが、未開封なのは見てくれたら分かると思う。

「ん、ほんとだ」

キツネノボタンと一緒に食べようと思って置いておいたのだ。

それに、言い訳する訳じゃないが、同じ騎士団にヒメリュウキンカやステラも居る、それにコデマリも居る。

「うん、みんな良い花騎士」

彼女らも、この金平糖のことは知らない。

「まぁ、知ってたら残ってないよね」

納得するしかないメンバーを挙げたとは言え、これで納得される彼女らもどうかと思うのだが。

とにかく、そういう事だ。だから機嫌を直してくれ。

「むう、しょうがない。団長がこんなお宝を隠してた事にも、気づいて盗んであげられなかった事も不満だけど、許してあげる」

なんとか機嫌を戻したキツネノボタンは金平糖を開け、皿にころころと何粒か出した。

「おー、なんか変な色、金色みたい」

和三盆を使った金平糖だそうだ。色や透明感を重視する花騎士からの受けは悪そうな気もするが、最近は変わり種の金平糖も増えているらしい。

「これは団長の分。コンペイの分は……」

言われて、別の棚から犬猫のお供用のおやつを取り出して差し出す。スパイスや塩分を使ってない干し肉であって、古くなってさえいなければ人が食べても問題無いものらしい。大分スキラの猫やイヌタデの妹に食べられたのだが、まだそこそこ残っている。

だがキツネノボタンは

「金平糖より出て来るの、早かった」

と少し不服そうに言った。

自分のオトモ相手に嫉妬する彼女がなにやらおかしくてふきだしてしまい、せっかく直してくれた機嫌がまた斜めになる。

「団長、ひどい。これは立場の再確認、お仕置きが必要」

そう言って彼女はコンペイのおやつをひったくり、こちらに尻尾を向けた。

彼女の自分に対するお仕置きは尻尾で挟む事である。

素直に尻尾の間に顔を差し出す。

もふりと両側から挟まれ、ふわふわで心地よい感触と、任務に行った後でお風呂にまだ入っていない彼女の香り、そして抜けたであろう毛に顔を包まれる。やはりこれはお仕置きにならないのではないかと思うが、言ったら今後して貰えなくなりそうなので、黙っておく。

「反省した?」

コンペイの分のおやつも別の皿に開けた彼女にそう問われる。

すまなかった、許してくれ。そう答えると

「むふふ」

満足そうに尻尾からこちらの顔を開放し、こちらに向き直るキツネノボタン。

その手にはさっき団長用と言われたて出していたのよりかなり多めの金平糖が盛られた皿が持たれており

「お茶、入った」

そう告げた。

ちなみに口に少し抜けた毛が入った……。

 

ローテーブルに並べられたお茶を持ち上げ、まずは香りを楽しむ。そしてふーと息で冷まし、一口口に運んだ。

紅茶自体にあまりこだわりは無いのだが、貴族や紅茶好きの花騎士に出す事もあって一応一通りの道具に、そこまで悪くない茶葉は用意しては居たのだが、それを紅茶に親しみがある程度には育ちの良いキツネノボタンが、丹念に入れてくれただけあって、自分で入れた紅茶より美味しく感じる。

「どう? 美味しい?」

そう自信満々の顔でこちらを見上げるように聞いて来る。ああ、うまい。そう答える。

「当然、だってキツネノボタンが淹れたから」

そう渾身のドヤ顔をしながらソファーの隣に腰掛けるキツネノボタン。

こんな紅茶が飲めるならサンドイッチも作ってティーパーティーをしても良いかも知れない。

「サンドイッチ……! 団長、作ってくれる?」

ああ、時間が取れるかは分からないし、誰を誘えるか、あるいは二人きりかは分からないが、やろう。

キツネノボタンはいなり寿司のほかにサンドイッチも好きらしい。いなり寿司は比較的分かりやすいが、サンドイッチには何を挟んだら良いのだろう。

「団長が作ってくれるなら何でも嬉しい、でもお茶会なら胡瓜。あとハムや卵も良い、わたしのために作ってくれるの、楽しみ、楽しみ」

そう興奮したように言って、紅茶を口に運ぶキツネノボタン。

「ん、美味しい」

干し肉と格闘するコンペイを眺めながら彼女がこちらにしなだれかかってくる。

カップをソーサーに置き、彼女の頭頂部と耳に頬ずりをする。

「ふふ、団長甘えん坊さんだ」

カップを片手で持ち、もう片方の手でこちらに抱き着いて来るキツネノボタン。

別に良いではないか。他の花騎士が居る前ではあまりこんな事もできないのだから。

「わたしは別に気にしないけど。だって団長はわたしのものだし」

示しが付かない、と言う事もあるのだ。キツネノボタンだって、ワルナスビに弟子入りできた暁には皆にかっこいい怪盗として見られたいだろう。

「それもそうか。別に他の花騎士にどう思われても気にしないし、団長はわたしだけのものだけど、皆の団長だもんね」

そういう事だ。その代わり、2人っきりの時はキツネノボタンも好きなだけ甘えてくれて良い。

「そう? じゃあ、ここはキツネノボタンだけの場所。コンペイにもあげない」

そう言ってこちらの膝の上にだらっと腹這いになるキツネノボタン。

呼ばれたのかと思って顔を上げたコンペイだったがそうではないと分かるとすぐに干し肉に戻る。

キツネノボタンの上にこぼしては危ないのでこれでは紅茶が飲めないのだがな。そんな事を言いながら彼女の背中や尻尾をさわさわと撫でた。

「むふー、団長に撫でられるの、好き、好き。気持ちいい、しかも団長の膝を独り占め、最高……♪」

それは良かった。こちらも実はキツネノボタンの柔らかい身体がふとももに当たっているのは気持ち良いのだが、それも言わないでおく。

「今度は団長の何処を独り占めしようかな。あ、団長、金平糖取って?」

お行儀が悪いぞ、そう言いながらも一粒金平糖を摘まみ、彼女の顔に近づける。

彼女はそれをはむっとこちらの指から口で受け取り

「はむ、ん、こっちも美味しい。でも、団長に食べさせてもらうと、もっと美味しい。」

と言ってくれた。こちらも一粒取り、口に放り込む。普通の砂糖より風味深いのにどこかさっぱりとした、不思議な味わいだ。和三盆と言うと粉のきめ細かさも売りだと思っていたが、溶かすからあまり関係無いのだろうか。

「団長、砂糖の事も詳しいの?」

ほとんどアズキやコムギの受け売りだ。

そんな事を言っていると風呂場から風鈴のようなちりんと言うベルが鳴る。

「お風呂、湧いたみたい」

そのようだ。ちょっと見て来るので膝の上から降りてくれないだろうか。

「やだ♪」

何故か笑顔でそう拒否された。

湯沸かし止まって無かったら熱湯風呂になるのだが。

「んむぅ、紅茶、冷める」

不服そうにこちらの膝から降りるキツネノボタン。

風呂の湯沸かしがきちんと止まっている事を確認したら戻ってくる。

「そっか、ならいい。さっさと行って来なさい」

膝の上から降りる事を渋った割には投げやりなその態度に苦笑しながら風呂場を見に行くのだった。

 




(風呂に入るどころかブラッシングにたどり着けない)
つづく!
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