□□□アクセル・近郊□□□
塩漬けクエストを選びそうだった馬鹿どもをギリギリで止めることができた俺は、ターニャもいるということで、初心に帰ることにした。
つまり、カエルの討伐である。
カエル、もといジャイアントトードは、その巨体故に人すら丸呑みしてしまうが、金属類を嫌うため、鎧を着ていれば食べられることも無く、比較的安全に討伐できるため、初心者向けのクエストなのだ。
「よしじゃあ今からカエルの討伐をするけど、今回ターニャは少し離れた所で俺達の動きを見ておいてくれ」
「見学ということか。本来であれば、そのような配慮は無用だと言いたいところだが……、私も冒険者としては教えを乞う立場だ。従うとしよう」
「そうしてくれ。一撃熊を倒せるとは言え、それは拳銃を使ってだろ?ウィザードとしては初心者だし、うちに魔法使い職がいないせいで、俺の初級魔法しか習得できてないしな」
「今少し聞き捨てならないことを言いませんでしたか?このパーティには、私というアーク・ウィザードがちゃんといるじゃありませんか」
「お前はただの爆裂魔だろ」
「そうですか!ではその爆裂魔の凄さをたっぷりと味あわせてあげますよ!」
「おまっ!ちょ、イタタタタ!」
「私はとりあえずあちらに向かっておくぞー」
めぐみんが俺に飛びかかってくる中、ターニャは俺の指示通り、少し離れた丘へ向かう。
俺はめぐみんに飛びかかられながら、ターニャともう1人丘へ行こうとする人影を見つけた。
「おいアクア。お前何しれっとターニャについて行こうとしてるんだ?お前はこっちだろ?」
「…………」
俺の問いかけに、アクアは無言の微笑みを返してくる。
「何言ってんだこいつ、みたいな顔をしても無駄だぞ。お前はこっちに来て一緒に討伐するんだよ!」
めぐみんが空気を読んで、どいてくれたおかげで、動けるようになった俺は、アクアの元まで行き、首元を掴んで無理やり引きずる。
「いーやーよ!いや!なんだかとても嫌な予感がするの!また食べられて粘液まみれになりそうな気がするの!」
アクアは、今まで黙っていたのが嘘かのように暴れだし、抵抗を始めた。
しかし俺は問答無用でアクアを引きずる。
「少し確認したいのだが、今から討伐するのは、弱い魔物ではなかったのか?」
アクアの異常な抵抗を目にしたターニャが、不思議に思ったのかそのような質問をしてきた。
確かに、こんな嫌がり方をしていれば、不思議に思うのも無理はない。
「あぁ、初心者向けの魔物だよ。だから安心して見ていてくれて大丈夫だぞ」
「そうか。悪い、手間を取らせた」
そう言うと、ターニャは一人、少し離れた丘へ再び歩みを進める。
さて、ここからは俺らの見せどころである。
「それでカズマ、今回はどのような作戦でいくのだ?」
「正直、カエル相手に作戦も何も必要ないと思うんだが……。そうだな、まずめぐみん、向こうで集まってる三匹を爆裂魔法で頼めるか?」
「お安い御用です!カズマが爆裂魔呼ばわりしたその威力をとくと見せてあげますよ!」
「おう頼んだぞ!ダクネスは、めぐみんが詠唱している間、念の為カエルが寄らないように注意しておいてくれ」
「いつも通り盾役という訳だな。必要とあらばこの身を盾に………」
「……とりあえず任せた。アクア、お前はめぐみんの近くで待機だ。それから爆裂魔法を放っためぐみんの回収な」
「それだけでいいの?てっきりカズマさんのことだから、囮でもやれ!って言い出すと思ってたんですけど」
「さすがにそんな鬼じゃねぇよ。俺は少し離れたところで、周りを俯瞰しつつ、弓でサポートでもするから。じゃ各自位置についてくれ」
俺のその言葉で、めぐみんは詠唱の準備に、ダクネスはカエルとめぐみんの間に立ち、アクアはめぐみんの少し後ろに向かう。
そして俺は、全体が見えるように少し離れた場所へ。
俺が位置に着いた頃には、めぐみんの詠唱が終わったようで、杖を目的のカエル三匹に構えていた。
「『エクスプロージョン』─────ッッッ!!!」
めぐみんがそう唱えると同時に、カエルを中心として爆発が起こった。
上空に爆炎が立ち上り、爆風が駆け抜ける。
カエルが標的だったとは言え、今回の爆裂は中々のものじゃないだろうか。
95点はあげてもいいかもしれない。
「どうです!?カズマ!今の爆裂は!」
「良かったんじゃないかー」
「そうでしょう、そうでしょう。カエルなんて私の相手にならないのです。さぁアクア、早く私を回収して下さい。…………アクア?」
めぐみんは、爆裂魔法を放ち、魔力切れで倒れているせいで、状況が分かっていないらしい。
親切な俺は状況を教えてあげることにした。
「アクアなら、お前の爆裂魔法の衝撃で、土から出てきたカエルに食べられたぞ」
「な!?」
俺の位置からは、しっかりとアクアの真後ろからカエルが出てきて、アクアが一言も声を出す間もなく、食べられるところがみえていた。
「ダクネス!ダクネスはどこですか!?」
「ダクネスなら、剣を捨ててカエルを追いかけまわしてるよ」
俺の位置からは、しっかりとダクネスがカエルに相手にされずに、剣まで捨てて追いかけている様子がみえていた。
「カズマ!早く私を!すぐ後ろにカエルが迫っている気がします!そんなところに───ムグッ」
「俺が食べられたら、誰がお前達を助けるんだよ。ってもう聞こえてないか」
そう、これは全て計画通り。
めぐみんの爆裂魔法につられて、新手のカエルが出てくるなんて何度も経験したことだ。
幸いカエルは、食べている時は動きが止まるため、そこをついて倒す。
新手も三匹だけなので、アイツらが足止め……、まぁ一匹は追いかけ回されているが、当分こちらにはこないだろう。
その間にアクアとめぐみんを食べているカエルを討伐するとしよう。
「カズマ、少し聞きたいのだが、これが普通の冒険者なのか?」
そう尋ねるのは、いつの間にか俺の近くまで来ていたターニャ。
あまりの惨状に不安になったのかもしれない。
まぁ誰でもこんな状況は、普通には見えないだろう。
「まぁ、俺達にとってはいつも通りかな」
「なるほど、俺達にとっては、か。ならば最後まで見届けるとしよう」
そう言い残すと、ターニャはもといた場所に戻り、俺はアクアとめぐみんを食べているカエルの下へと向かっていくのであった。