□□□アクセル□□□
彼は走っていた。
走り、そして恐怖していた。
どうしてこなってしまったのかと。
「くそ、全部あいつのせいだ!」
金髪のチンピラ冒険者は一言、悪態をつくとこの状況を変えられるかもしれない、唯一の男の元へむかうのであった。
□□□アクセル・屋敷□□□
俺は考えていた。
考えながら、耳を塞いでいた。
どうすれば、この見てくれだけは良い、ポンコツ2人を黙らすことを出来るだろうかと。
「カズマ、そろそろクエストに行きませんか?」
「そうだぞ、全く家から出ずに、ゴロゴロとしているだけではないか」
たった数日部屋に篭っていただけで、この騒ぎだ。
「かれこれ1週間も部屋に篭もりっきりじゃないですか」
数日ではなく、1週間だったみたいだが、大した差ではない。
それに篭もりっきりではなく、ちゃんと外に出掛けている。
「夜中に屋敷を抜け出して、酒を飲み歩いているのは、出掛けているうちには、はいらないぞ」
一瞬俺の思考が読まれているのかと動揺したが、冷静な俺は平常心を取り戻す。
そして、俺はこの状況を打破すべく、2人の矛先をもう1人のサボり魔に変えるべく、誘導する、
「俺じゃなくてまず、ソファーでずっと寝転がってるアクアを説得しろよ」
しかしながら俺の作戦はすぐに失敗する。
「既に説得済みだ。だが、アクアも頑なに冒険に出ようとせずに困っているのだ。それでカズマの力を借りようとだな」
確かにアクアを動かすためには、テコを持っていくより俺が行った方が早いだろう。
しかし、俺も自分の部屋を出る気はない。
「ターニャがいる間は、あんなに素直に冒険に行っていたのに…。どうしてしまったのですか!?」
「ターニャがいたから、仕方がなく行ってたんだよ!毎日毎日ラッパを吹かれて起こされてたらそりゃ行きたくなくても行くしかないだろ!」
「いきなり怒鳴られるとは………。知らないうちにストレスを抱えていたみたいですね。ね、ダクネス……、ダクネス?」
「はっ、いや、理不尽に怒鳴られるのもいいものだなと…」
若干1名興奮しているやつはおいておき、いきなり怒鳴ってしまったことを後悔しつつも、しかしながら、ラッパで起こされる生活を思い出すと、自分の不満も妥当なものだと納得する。
そんなラッパで起こしてくるターニャが、何やらギルドの仕事を手伝うらしく、住居もギルドが用意してくれたところに移ると言い残し、この屋敷から出ていったのだ。
そして俺は、ラッパで起こされ冒険に無理やり連れていかれた日々の疲れを癒すべく、今に至るのだ。
なので俺はもう暫くは、屋敷を出るつもりはない。
その決意をめぐみん達に伝えようとした時、屋敷の扉を激しく叩く音が聞こえ、すぐに聞きなれた声が聞こえてきた。
「おいカズマ!いるんだろ!?どうにかしてくれ!」
□□□アクセル・ギルド□□□
「ねぇカズマ。私凄く嫌な予感がするんですけど」
そう呟くのは、俺の後ろに隠れてコソコソしているアクアだ。
こいつを屋敷に1人置いてくるのは不安だったので、無理やり連れてきたのだが、いきなりフラグを立てられると、連れてきたことを後悔してしまう。
「カズマ、お前だけが頼りだからな。しっかり頼むぞ」
そして俺の後ろに隠れているやつがもう1人。
「なんでお前まで俺の後ろに隠れてるんだよ!」
「そりゃなんでたって、あいつにみつからないようにだな───」
俺の後ろに隠れているダストが、なにやら説明をしている最中に、さらにその後ろから、聞き覚えのある高い声が聞こえてきた。
「これはこれは、カズマではないか」
その声は聞き間違えることの無い、ターニャの声だった。
俺はその声を聞き振り返る。
すると、俺の後ろにいた2人は瞬時に、振り返った後の俺の後ろに回った。
「よぉ、ターニャ。元気そうだな」
「そういうカズマは、相変わらず屋敷に篭もりっぱなしのようで?」
俺は少し動揺したが、話題を変え、本題に入ることにした。
「そういえば、なんだかギルドがお前のせいで大変な事になってるって聞いたんだが、一体何をしたんだ?」
「大変なこと……?私はあくまで、ルナ殿に頼まれた事を遂行したまで。むしろ今の方がクエスト達成率もあがった。そんなガセを吹聴するのは一体どこのどいつ………あぁ君か、ダストくん」
「ひぃっ!」
ターニャに睨まれたダストは、まさに蛇に睨まれた蛙。
俺を盾にして、背中に隠れる。
どうやらダストも、相当トラウマを植え付けられたみたいだ。
「違うんだカズマ!こいつが来てから、最初は新人冒険者だけだったが、次第に俺の飲み仲間や、ついにはキールまでもが変わっちまったんだ!」
「私は働くことの意義と大切さを教えたにすぎん。そんなことよりもカズマ、その後ろに隠れているやつを私に引き渡してくれ」
「おいカズマ!俺の事を見捨てたりしねぇよな!?」
俺はターニャとダストを交互に見やる。
そして───
「おいカズマ!このやろう!おめぇなんてダチでもなんでもねぇ!」
俺はダストを引き渡し、ギルドを後にした。
「ねぇカズマさん?もし私だったらちゃんと庇ってくれてたわよね?………どうして何も答えてくれないの?ねぇカズマさん?カズマさぁぁん!!!」
隣で喚くアクアを無視しながら、俺はもう暫く屋敷で閉じこもっておこうと決めたのであった。
このすば原作、最新巻にして最終巻が発売されましたね。
昨日気づいて、今朝にはもう2週目を読み始めました。
カズマ達の掛け合いがおもしろすぎて、終始にやけがとまりませんでした、という報告だけ残しておいて、後書きとします。