励みになります!
最後を少し変更。
□□□アクセル近郊□□□
「────────ね!」
「いや!────────って!」
ターニャの意識は酷く混濁していた。
その齢故に、起床時にしばらく意識がハッキリとしないことは、たまにあるが、それでも軽い判断なら出来るほどであり、これほどまでに酷いものでは無い。
そんな意識が混濁している中でも、ターニャはあることに気がつく。
少々、周りの話し声が騒がしいことに。
戦時中のため、怒号が飛び交うことはしばしばあるが、そのような場合は、往々にして非常時か緊急事態である。
だからこそ、ターニャは直感的に失態だと感じる。
なぜならば、非常時の場合、本来であれば、上官である自分がいち早く詳細を把握し、対処せねばならないからだ。
ターニャは、これ以上失態を重ねないためにも、意識回復に務めつつ、出来る限り聞こえてくる声を聞き取ろうとする。
「まさ───てくる───リニートね!」
「だ─────だって!」
ターニャは聞き慣れない単語に少し困惑する。
「reneet」とは一体何を意味するのか。
自分に聞かされていない、コードか、はたまた暗号か。
ただターニャ自身、いくら参謀本部直轄の部隊とはいえ、自分に知らされていないものなど、珍しくもないだろうと判断し、続きに耳を傾ける。
「────ない──した」
「わた───なっ─ぞ」
「さす──し──擁護───せん」
「だか───いって──だろ!────ゆんゆん──い─んだ?」
「た──まとおり────ゆんゆんが────撃退──てくれ──んだ」
「そ──たすかったよ」
聞き取れた部分が少なく、状況を把握しかねているターニャだが、「reneet」に続き、「yunyun」というまたしても聞きなれない言葉に少し困惑する。
しかしすぐに、「撃退」と聞こえたのを思い出し、「yunyun」というのは、帝国軍の新たな部隊コードのようなものでは無いかと推察する。
フェアリーやピクシーなどと付けられ、辟易としたこともあったが、「yunyun」よりかはマシだな、などと考えているうちに意識がクリアになってきているのを感じ、次の瞬間には、瞼が少し開く。
少し開いた瞼から差し込む光で加速度的に意識がハッキリとしていき、すぐに視界が明瞭となる。
だがしかし、視界が明瞭になったが故に、ターニャはさらに混乱することとなる。
ターニャが目にしたのは、木々の緑、そしてその上に広がる澄んだ空。
一見普通とも思えるが、そうではない。
ライン戦線は、その戦闘の苛烈さ故、緑は失われ、空も硝煙が立ち昇り、一面灰色の世界なのだ。
ではここは一体どこなのか。
それを考え始めたターニャの思考は、声をかけられることによって遮られた。
「良かった、目が覚めたようだな」
ターニャは自分の置かれている状況に困惑しつつも、あくまで冷静さは保っていた。
魔道大隊の大隊長を務める実力は伊達ではなく、並大抵のことでは冷静さを失うことは無い。
しかしながら、声をかけてきた者を確認するために上体を起こし、その者を目視すると同時に、自分の中で保っていた冷静さが失われるのを感じた。
あるのは困惑のみ。
自分は今、祖国の存亡をかけ、他国と銃器、大砲、戦車、航空機、更には戦艦を用いて、戦争をしていたはず。
だと言うのに、目の前の金髪の女性は鎧に剣と、まさに女騎士と称するに相応しい格好をしているではないか。
時代錯誤もいいところだ。
一体何世代前のパラダイムを生きているのだ?
「あっちにいる男に何かされませんでしたか?」
女騎士の存在だけでも冷静さを失い、困惑していたターニャだが、次に話しかけてきた者の格好を見ると、困惑の度合いはさらに増してしまった。
女騎士の次は、魔法使いか。
とんがり帽子に片手には杖。
魔法使いと言わずして、なんと言うことができるだろうか。
まるでファンタジーの世界だな。
「この子どうしたのでしょうか?」
「ふむ、突然のことでまだ混乱してるのやもしれんな」
そこでターニャは、自分のことを案じて声をかけてきた2人のことを、困惑のあまり無視していたことに気づく。
未だに状況を掴めていないが、おそらく介抱してくれたと思われる人達には、お礼を言わねばとターニャが口を開こうとした瞬間、それは3人目の者がやってきたことで阻まれた。
「いや、そいつそんな年相応の神経してないから大丈夫だと思うぞ。さっきも話したけど、天界でのこいつ本当にやばかったんだからな?」
「なんだ、まだこの幼い女の子が“じゅう”なる武器をエリス様に突きつけたと言うのか?にわかには信じ難い話だ。それにエリス様がお前にこの女の子を預けたというが、本当に預かったのか?やはりどこからか攫ってきたのではないだろうな?」
「だから違うって言ってるだろ!誰が好き好んでこんな可愛げのない幼女を攫うかよ!お前からも説明してくれよ……っておい!」
そう呼びかける男の声はターニャには、届いてはいなかった。
ターニャは、先刻その男が口にした「天界」という言葉を聞き、そこから何か大事なことを思い出せるのではと、思考を巡らせていたのだ。
自分が置かれているこの訳の分からない状況を全て説明出来る、何か大事なことがあるはずだと。
そしてすぐに頭の中でパズルのピースがはまったかのような感覚と共に、全てを思い出す。
そうだ、自分はいつの間にか天界に飛ばされ、そこで存在Xと思しき存在と対峙していたのだと。
しかし不意をつかれ、そこにいる男と共に……
ターニャは自分の迂闊さに呆れつつも、どうにかしてあの場所に戻ることを決意する。
そうと決まれば、ターニャのとるべき行動は1つ。
同じくあの場にいた、そこの男から、何をしてでもあの場所への行き方を聞き出す。
そう何をしてでもだ。
まぁあのような腑抜けた顔をした男であれば、銃を突きつけてやれば、とそこまで思考していたターニャはあることに気がつく。
銃がない。
天界では所持していたはずの、短機関銃も拳銃すらなくなっていた。
おそらく気絶している間に奪われたのであろう。
優しい顔をしつつ、武器はしっかりと奪うとは強かなやつらだ。
幸いなことに演算宝珠は奪われてはいなかったので、術式を発現させることはできそうだが、やはり武器がほしいところである。
ここは慎重に行動せねばなるまい。
「貴殿らには私が気絶していた所を助けられたようだな、感謝する」
「ダクネス!この子が立ちましたよ!」
「おお!立ったな!それに言葉遣いもしっかりとした子だな!」
「だからこいつなら大丈夫だっていってるだろ」
なんだろうか。
私は馬鹿にされているのだろうか。
確かに見た目は幼女で、その身体能力も年相応のものなのだが。
ターニャは見た目のコンプレックス故、少々苛立ちを覚えるが、ぐっと堪えて平常を装う。
「ええと、私の持ち物があったと思うのだが、それをお返し願えないだろうか?」
「あぁ、銃のことか?起きた途端にまた銃を構えられたらたまったもんじゃないから一応外しておいたんだけど、その様子だと大丈夫そうか」
そう言うと男は、後ろにいる別の女性2人の元へ向かう。
しかし直ぐにその男の様子が変わり、2人の女性のうち、青髪の女性が、慌てたような反応をしていた。
その様子が気になり、ターニャもそちらに行くことに。
「待ってカズマ!これにはふかーいふかーい訳があるの!」
「私は触らない方がいいって止めたんですけど、アクアさんが大丈夫だって……」
「ゆんゆんは悪くない。悪いのは全部こいつだ!お前これどうすんだよ!」
「どうかしたのか………ね……」
そこでターニャが目にしたのは、バラバラに分解された短機関銃だった。
メンテナンスのために分解することは、よくあるのだが、分解するには専門の工具が必要であり、また、魔導師用の銃故に、精密なパーツも多く、間違ってもこんな野原で分解して良いものではない。
「こっちのちっちゃい方は何もしてないから!これで許して!ね?」
青髪の女性は、私が来たことに気づくと、そう言いながら、あまり悪びれた様子もなく分解されずにすんだ拳銃を私に差し出した。
開いた口が塞がらないとはこのことか、と自分の中で理解出来てしまうほど、驚きのあまり口を開けて固まってしまった。
ターニャはそれ程までに、目の前の光景を理解出来ずにいた。
いや、理解したくなかった。
なぜ目の前の女は、人の物を壊しておいて、このような態度をとることができるのか。
ターニャはアクアの悪びれない態度を見れば見るほど、腹の底からフツフツと込上げてくる怒りの感情を抑えることが出来ずになり、直に頭の中でプツンと何かが切れた。
「き、貴様!!貴様は一体何をしたのか分かっているのか!?何なのだその態度は!貴様のその腐りきった根性を、今から私が叩き直してやる!そこになおれ!!」
アクアはそのターニャの怒気のこもった言葉を聞き、「へ?」と顔を引き攣らせていただけだったが、次にターニャが、「さっさとなおらんか!」と言い放った瞬間、地べたの上で、正座になる。
その後、ターニャによる説教がしばらく続いたが、カズマ達は黙ってそれを眺めるだけだった。
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(おまけ)
ターニャが目を覚ますまでの会話
「やっぱりカズマさんはロリコンだったのね!」
「いや!ロリコンじゃないって!」
「まさか、天界から幼女を連れてくるなんて、さすがロリニートね!」
「だから違うんだって!」
「見損ないました」
「私も見損なったぞ」
「さすがの私も擁護できません」
「だから誤解だっていってるだろ!ていうか、なんでゆんゆんがいるんだ?」
「たまたま通りかかったゆんゆんが、魔物達を撃退してくれたんだ」
「そうだったのか、助かったよ」
異世界かるてっと2が、もうすぐ放送開始ですね
私も楽しみで楽しみで笑
あ、ただ、既にお気づきと思いますが、この作品は異世界かるてっととは無関係、カズマとターニャは初対面の設定ですので、悪しからず