うまくまとまるまで色々書いていた結果、
少し長めになりました。
どうぞ。
海で遊んだ後に大赦に用意してもらった部屋へと浴衣に着替えて戻ると、刺身やら蟹やらと豪華料理が運ばれてきた。
「あの、部屋間違えてませんか?あたし達には少し豪華すぎません、、?」
「いえいえ、そんなことありませんよ」
風先輩が心配するのも無理ないだろう。
友奈ちゃんは逆にテンションが高くなってるけど、僕はあまり良い気分じゃない
純粋に蟹とかなんてご対面したことないし
刺身なども同じ理由で戸惑ってる。
こんな贔屓にされるのはいくらなんでもおかしいから、裏があるという僕の予想が信憑性を帯びてきたよな~。
しかし、まさかここまで豪華な料理を出してくれるとは思わなかったので正直びっくりしてます。
微笑みながら風先輩の言葉に首を振る女将さんに目を向けて見る。
・・きれいな人だな~とても微笑んだ姿が様になってるし。
「あらあら、うふふ。ありがとうございますね?」
『・・え?声に出てました?』
「はい。きれいな人だな~の所から」
全部じゃないですかやだ~
何か口説いてしまったみたいで、申し訳なくなってくる。
『あはは、すみません。これじゃあ口説いてるみたいですね。』
「いえいえ。私よりも周りの方を気にしたほうがいいですよ?」
『え?』
そういえば何か視線を感じるな。
周りを見て見ると、何故か皆ジト目でこちらを見ていた。さっきまで料理に興奮していた友奈ちゃんまでもがだ。
・・・何か少し温度が下がったような?
『……少しトイレに行ってくるから、皆で先に食べ始めちゃってていいよ~?』
このままこの場にいたら、病院の時の二の舞になりそうなのでとんずらさせてもらいましょう。
誰かに何か言われる前に急いで部屋を出て
トイレ、、ではなく、外に出る。
外に出て、ふと空を見上げる。
『天の神』って言うぐらいだから、天にいるんだよな?
天の神様と神樹様ってどちらが強いのだろうかね。『○○が強い』なんてのは子供ならではの比較したがりな考え方だけど、やっぱり気になるよね~
まぁ天の神様だろうね。そもそも神樹様のほうが強いのならこんな防戦みたいなことしなくていいだろうしね。
ふとポケットから一本のネジを取り出す
『大嘘憑き』が【なかったこと】にできるのは『現実』(リアル)だけだ。
詳しく言うと、因果を消滅させることで現象・事象・概念の結果を【なかったこと】にしている。
改めて考えると少し注意点はあるとは言え
やっぱりチート級だと思う。
何でこんなに強い能力を持っているのにあの先輩は負け続けるのだろうか。
まぁ、僕はあの先輩に憧れたのは正直言って能力なんかではない。
あの人の決意の強さに憧れたんだ。
といってもあの人には良いところばっかりじゃない。むしろ悪い所のほうが多いぐらいだけど、それでもやっぱり
『僕はあの人がいい。』
部屋に戻ると、みんな既に食べすすめていたが、律儀にも僕の分を残してくれていたのは彼女達らしいと言えるだろうか。
「あら、随分と遅かったわね?何かあったの?」
『いえ。ほんの少し夜風に当たってただけですよ~。』
「そう、、ん?あんた手に血がついてるわよ!?」
そう風先輩に言われてふと手を見てみると
手に血が少しついていた。
あらら、考えている時に思わずネジを強く握ってしまっていたらしい。
『実は、少し暗くて転んでしまいまして、
あ、でも、もしもの時のための絆創膏を常に持ち歩いているので大丈夫ですよ。』
[用意が良いですよね、翔助先輩は]
『用心深い性格なだけだよ?僕はね』
本当は前世の時のなごりが残っているだけなのだけどね。
「取りあえず位置的に私がお母さんをやっているから、翔助君もご飯のおかわりをする時には言ってね?」
『美森ちゃんがお母さん、、なんか厳しそうだね~。』
「翔助、、それわたしが言ったわ。」
『ありゃ、そうなの?美森ちゃんだったら門限を破ったら柱に磔られそうだね』
「さすが、翔助君。もちろんよ」
『胸を張って言うことじゃないぜ?美森ちゃん?』
そんなやり取りをしつつ、勇者部で団らんをしながら食べた夕食は温度関係なく、暖かかった。
豪華な夕飯を食べた後はみんなと別れて旅館の広い温泉に浸かっていた。
『しかし、、何か虚しいなー。』
広いが故に、一人だけだといかんせん虚しい物があるよね。
暇だな~歌でも歌えれば楽しくなるのだろうが、僕が知っている歌などまったくないためそれは無理だ。
「ひゃあああ!?」
・・また何かやってるよあの子達は。
声からしてあれは夏凜ちゃんだろうが、、何やってんだかね~みんなはー?
そう思いにふけている風先輩の声が聞こえてきた。
「おーい!翔助~?あんたってどんなタイプが好みなのー?」
今聞くことかね?それ。
好きなタイプねぇ~、、ふと少し前まで、
一緒にやっていた三人を思い浮かべる。
ん~彼女達と僕じゃ釣り合ってなさすぎるよな。勇者部の子達も同じだなー
将来僕なんかよりもいい男の人と一緒にいるみんなは想像すると、少しの寂しさもあるが、うれしさのほうが大きいな。
いやいや、そうじゃない。
好きなタイプ、、特にないよなー
『特にないですよ~』
「えぇーつまんないわねぇ~」
『そんな事言われましても、、っと。先に上がってますね~?』
「はーい。」
お風呂から上がったみんなと合流して部屋に戻ると、布団が男女で分けられていない光景を確認してしまった。
……うん。デジャブだね。
『中学生なのに男女水いらずってわけにもいかないだろうに、、何故?』
「まぁまぁ、あたしも正直言って恥ずかしいっちゃ恥ずかしいけど、翔助ならまだいいわよ?」
「わ、わたしも、だ、大丈夫だよ?」
『信頼されているのはうれしいですが、風先輩はもうちょっと危機感を持ってください。友奈ちゃんは言葉を安定させてから物を言ってくれると良かったな。』
「ま、まぁ。私もあんたの事は信頼してるし?あんたなら別にいいかなって、、」
「私も翔助君なら別に、、」
[私も皆さんと同意見です。]
『ハァー。みんな可愛いんだから気をつけなよ?男は狼なんだから、悪い人に捕まらないようにね?』
ため息をつきつつ、仕方なく布団に入る
席はくじ引きで決まった
僕は端で隣が友奈ちゃんとなった。
「よ、よろしくね?」
『そんな改まらなくていいんだよ?むしろ寝るんだから、リラックスリラックス』
ガッチガチのロボットみたいになった友奈ちゃんを見て思わず苦笑してしまう。
みんなが布団に入ったのを確認して風先輩が話をきりだす。
「せっかくだから寝る前に少し話しましょう?・・やっぱり定番のあれよね?」
「訓練で何がきつかったとか?」
「夏凜違う、そうじゃあない。」
まぁ、どうせ恋ばなとかだろ?
これも昔に見た光景だしね。
「やはり、日本の今後についての在り方をですね、、」
「東郷、それも違うわ。」
[コイバナとか?]
「そう、それ!さすが、わが妹ね~」
ですよね。というか同性しかいない時にやってくれよ、と言おうかと思ったが、多分聞き入れてくれないので黙っておこう
「あたしの恋ばなはね、昔チアリーダーのあたしに惚れた男がいたんだけど―」
『告白されてもふったんですよね?確か理由は子供っぽいからって。』
「ちょっ、話させてよあたしに。」
「・・同年代の男子ってそんなもんじゃないの?普通」
「いや~でも子供っぽく見えるのよね。女の人の写真見てニヤニヤしてたりとかしてるからさー」
『男の子ってそういう物ですよ?中学生に大人っぽさを求めるのは少し酷では?』
「それもそうなんだけど、あんたがいるから余計子供っぽく見えるのよ。」
え?僕のせいなの?
とんだ濡れ衣だなー
「他のみんなは何かないの?特に翔助」
『え?何で僕なんですか?』
何故?しかも『特に』って何?
「あんたはまったく恋ばなとか想像できないの。だから気になるのよね。」
そういうもんなのか?
まぁ、恋なんか昔も言った通り前世じゃあする暇なんかなかったし、今世でもそういうのは縁遠いものだなー。
みんなはお風呂の時も言った通りつり合って無さすぎで、そもそも恋愛感情なんか恐れおおくて沸かない。
あれ?僕ってつまんなくね?
『ご想像の通り、そんな浮わついた話しは持ち合わせてないですね、、代わりと言ってはなんですが、クラスの男友達の澤口君の恋ばなを話しましょうか?』
「それ勝手に言っていいの、、?」
『彼には僕がクラスの女の子と喋るたんびに腕をつねられたりしているので、その事についてのささやかな仕返しですよ』
本当に澤口ちゃんは困ったものだ。
女の子と僕が話してる姿を見るたんびに嫉妬や憎悪の視線で見てくるからね。
後ですごい愚痴だとか言われるし、、
少しぐらいやり返してもいいだろう。
「そうなのね、、あたしはいいや。」
「私も遠慮させていただくわね。」
「私もいいわ」
「わ、わたしもいいかな。」
[みなさんと同じく大丈夫です]
澤口ちゃん、、興味ないってよ。
ドンマイ。
その後美森ちゃんが怪談話をした後に、ちょうど消灯の時間になったのでみんな震えながらも、寝床についていた。
私こと結城友奈はただいま、恥ずかしいことに東郷さんの怪談話を聞いてしまったおかげで、どうしても目が冴えて眠れない
しかもそんな時にお花摘みに行きたくなってしまうという最悪コンボである。
うぅ、、とてもこの暗闇の中一人で行くなんて無理だよ、、
ふと静かに寝息をたてている隣の男の子に目をやってみる。
翔助君の位置にちょうど月明かりがかぶっているため、中性的な寝顔が良く見える
・・悪いけど、付いてきてもらおう。
そう申し訳なく思いつつ、彼の肩に手をかけようとすると、誰かの手と重なった。
「「あっ」」
誰かと思い、重なった手の先の人物を確認するため視線を前にずらすと、よく見知った人物がいた。
「と、東郷さん!?」
「ゆ、友奈ちゃん!?」
驚きの声を二人揃ってあげてしまう。
な、なぜ東郷さんが?
そう疑問に思っていると、彼の身体がもぞもぞと動き出した。
『んぅ?…友奈ちゃんと、美森ちゃん?どうしたの?こんな夜にいったい?』
「あ、、ごめんね、起こしちゃって」
「私からもごめんなさい。」
『んん。いや、大丈夫だけど、、二人共怪談で眠れなかったのかい?』
「えぇ。恥ずかしいことに、自分で話したのにも関わらず、怖くなっちゃって。」
なるほど、あの怪談はかなり怖かったから仕方ないよね。
……私の用を言いたいけど、いざ言うとなると、やっぱり恥ずかしいな。
「あの、私は、、」
『ん?・・いいよ、行こうか。』
私が言葉を濁しているのを見て察してくれたのか、彼は微笑んでゆっくりと布団を起き上がり優しく手を引っ張ってくれた。
用を足して、後は二人と一緒にもとの部屋へと帰るだけとなった。
「ごめんね、二人共来てもらって」
「私は構わないわよ。友奈ちゃんのためですもの、これぐらい。」
『美森ちゃん?もともと友奈ちゃんが怖がった原因の怪談を喋ったのは君だぜ?』
「うっ。それを言われると辛いわ、、」
二人に謝ると、東郷さんは気にしてないように胸を張り、翔助君はそんな東郷さんに突っ込みを入れていた。
二人の優しさがよく見えて、少しうれしく思い、頬が少しゆるむのを感じながら部屋へと戻った。
「うぅ。やっぱり眠れない。」
さっきまでは二人がいたから怖くなかったものの、やっぱりいざ一人になると怖くなってしまう。
ふとさっきまで一緒にいた男の子を見ると手が布団からはみ出していた。
・・少しだけ、、いいよね。
その手を握ると、手を引っ張ってくれた時と同じぬくもりを感じる。
少し恥ずかしいけど、落ち着くなぁ。
『何してるんだい?友奈ちゃん?』
「ひゃ!?」
急に声をかけられてびっくりしてしまい変な声を出してしまった。
ゆっくりと前を向くと、いつの間にか身体をこちらへと向いて私を見ていた。
翔助君と目が合い、さっきまでの自分の行動を振り返り、頬が熱くなるのを感じる
「あ、あの翔助君、、これは、、」
弁解しようと試みるが、いかんせん羞恥心で頭が一杯になり、思考が回らない。
どうしようかと悩んでいる内にだんだん涙目になってきてしまう。
そんな私に少したったあと頭から暖かい感触が伝わってきた。
「・・翔助君?」
すぐに私は彼に撫でられているんだと理解できた。
とても暖かくて、優しい撫で方だ。
『まだ寝られないんだろう?・・僕は大丈夫だよ、他のみんなにも言いふらしたりしないからさ、力抜きなよ?』
そう私に優しく言い聞かせるように彼は話してくれた。
……だんだん力が抜けて、さっきまでの開いていた瞼が、嘘のように閉じていく。
『いつも君は頑張ってるんだからさ、たまには人に甘えてもいいんだよ。だから』
『おやすみ。【友奈】』
完全に瞼を閉じる前に見た彼はいつにも増して優しく微笑んでおり、彼にいつものちゃん付けを外されて呼ばれた時、心身ともにとても暖かく、心地良かった。
自分的にはほのぼの増し増しで書いたんですけど、どうですかね。
最後主人公が友奈ちゃんのちゃんを外しましたが、括弧はまだ外してません。
だからって主人公は適当に言ってるわけではありませんのでご安心を。