最弱先輩に憧れて   作:@深夜

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誤字報告ありがとうございます!

一応書いた後に見直したりしてはいるのですが、見落としがやはりできてしまっているんですよね、、




その弐拾一

 

 

旅館の部屋で朝を迎える。

数日ぶりに普通のベッドで寝たよ~病室のベッドは少し大きくて、硬いのであまり落ち着かないんだよなー。

まあ、とりあえず布団を丁寧に畳んで、しまっておかないとね。

 

片付けがとりあえず終わったので、旅館の女将さんに一言お礼を言ってから旅館を後にして、散歩に出る。

 

 

 

「あははー!待て待て~!」

 

「捕まるもんか!やーい」

 

・・こんな平和に見える風景の裏に勇者なんてものがなかったら良かったのに。

皆の笑顔を脳裏に浮かべる。

 

友奈ちゃんも、美森ちゃんも、風先輩も、樹ちゃんも、園子ちゃんも、銀ちゃんも

みんな笑顔が可愛い純粋な女の子なんだ

 

それが今じゃあ、辛い顔をしている光景の方が思い浮かんでしまうよ。

 

 

 

代償を捧げて夢のための『声』を失った樹ちゃん。

 

人間の三大欲求の一つである食事の『味覚』を奪われた友奈ちゃん。

 

人が持つ五感のうちの『視覚の半分』を失った風先輩。

 

人によっては命の次に大事だと言う人がいるくらい、かけがえのない『記憶』を失った美森ちゃん。

 

そして身体のあらゆるところ失って、あげくには病室に祀られ、『人としての生活』を失った銀ちゃんと園子ちゃん。

 

 

『勇者』なんて言えば聞こえはいいが、中学生には荷が重いなんてレベルじゃない

見たことあるかい?中学生が身体の機能を失いながらも戦い続ける所なんてさ。

・・戦争の時代の日本かよ?徴兵令よりきついじゃないか。

 

「あー!!翔助兄ちゃんじゃん!」

 

「え!?……本当だ翔助お兄ちゃん!」

 

そうマイナスな事を考えていたら小さい子達に話かけられた。

…あの時のみんなだったのか。随分と忙しくて会わない間に見違えたな~

 

『おぉ~久しぶりだね、みんな。』

 

「本当ですよ~!翔助さんがいない間の小さい子達の面倒を見るの大変だったんですよ~?」

 

「あぁ。翔助兄さんのすごさがよくわかったよ、、本当にね、、」

 

『あはは、迷惑かけたね?』

 

なにかあったんだろうか、遠い目をしているこの中で最年長の二人に申し訳なくなってくるね。みんな元気だから大変だっただろうね、面倒を見るのは。

 

みんなの顔ぶれを確認してそう昔のことを振り返っていると、違和感を感じた。

……まさか

 

『…一人いないよな、、?」

 

「……涼君のことだよね。あの子は半年前に病気にかかっちゃって、、亡くなっちゃったんだ、、」

 

「……最後に涼のやつ、いつもは素直じゃなかったのに、翔助兄さんに会いたいって何回も言ってたんだぜ?」

 

小さい子達に話が聞こえないよう小さく気になった事を二人に訪ねる。

あの涼くんがね、、悪いことしたな。

現実世界の影響の対象が涼君に及ぶとは、思ってもいなかった。

 

・・身内が死んだのにも関わらず、あまり悲しみがない自分が嫌になる。

 

『…そうかい。悪いことしたな、、涼君に会わせる顔がないよ』

 

本当に会わせる顔がない。

まともに身内の子の死を悲しめない僕なんかじゃあ、余計にだ。

 

「兄ちゃん達大丈夫~?」

 

少し暗い表情をしている僕達を心配してくれたのか、一人の男の子が話かけてくる

 

『大丈夫だよ、ありがとうね?』

 

「ん、、えへへ~!」

 

『二人もね、ありがとう。みんなの世話をしてくれて助かったよ。だから、そんな暗い顔をしないでくれよ?』

 

「翔助兄さん、、」 「翔助さん、、」

 

悲しそうな表情をしているみんなの頭を撫でながらお礼を言う。頼むから君達までそんな悲しそうな顔をしないでくれよ。

 

 

 

ちなみにその後、他の子達が「ずるい!」って言い出し、みんなの頭を撫でまくったのだが、、いかんせん手が疲れた。

 

 

みんなと分かれ、ぶらぶら歩きながら最近の嫌な予感についてまた考える。

 

何か身内で、何か大変な事が起こりそうな気がするんだよなぁ~。

そう大雑把にはわかっているので、身内の中で言い方は悪いが、問題を起こしそうな子について考えてみる。

 

友奈ちゃんと樹ちゃんはないな。そんな事あの二人が出来そうにない。

 

風先輩は、この前暴れた事によってみんなへの申し訳なさがあり、学校ではたぶん勇者部のみんなに謝って回っているぐらいだろうから、候補から外す。

 

夏凛ちゃんは他人に当たるというより、自分に劣等感を感じて、抱えこむタイプだと思うのでこれまた違うだろう。

 

 

……美森ちゃんは?

 

 

あの子は昔から責任感が強かったし、行動力も中々あったはずだ。それに誰かに話したりせず、一人で抱えこむだろう。

そして何よりもあの子はいつも年不相応に真面目で、しっかりしているが

 

 

 

 

『心』は誰よりも年相応のもので、脆い

 

 

 

 

そんな彼女がもしバーテックスの真実、、壁の外を見たりなんかしたら?

 

 

 

そう深く思考に没頭していると、ポケットに入れていた端末からアラームが鳴り響いたのち、白い光に包まれて、懐かしい樹海へと降り立った。

 

端末を見ると、壁が抉られており、そこから白い物体がわんさかと湧き出ていた。

さらに壁側に目をやると、見知った人物が表示されていた。

 

『・・美森ちゃん、、君がやったのか』

 

紛れもない、『東郷美森』の姿だった。

 





はい。いかがでしたかね?

今日はリアルで通っている学校が、大雪により休みになりましたので除雪や勉強の合間に書いてみました。
今回は少し暗めかもしれませんね。

除雪は疲れますね、やっぱり。

ではまた。

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