書きたくなったので、書きました。
では、どうぞ。
とりあえず端末を一通りながめた後に勇者へと変身をして、準備を整えたのち、壁がある方角に足を走らせる。
『えぇっと、一、二、三……何匹いるんだよ?とにかくたくさんいるってことしかわからないなー』
いざついて対面してみると、とんでもない数いるというのが目に見えてわかる。
まあ、壁が壊されているから当然なんだけどね。開けられた風穴から白いのがうようよと入ってくる。
……もしかしたら僕の考えすぎで、美森ちゃんじゃない何者かが穴を開けたのかもしれない。…本人に聞いてみればわかる。
「あ、翔助!!」
「え?翔助君!?」
『やあ、二人共。』
後ろから夏凛ちゃん、友奈ちゃんの順番で声をかけてくる。
友奈ちゃん、そんなに驚かなくても、、別にちょっと内臓が使えなくて、成長しない
だけの、普通の中学生だぜ?
「……翔助君がいるのはびっくりしたけどとりあえず東郷さんの所に行こう」
「……えぇ、そうね。」
三人で端末を見ながら、美森ちゃんがいるであろう場所に走る。
「東郷さん!!」
「東郷!!」
「友奈ちゃん、夏凛ちゃん、翔助君」
美森ちゃんの場所にたどり着いて、二人が声をかけると、美森ちゃんは悲しそうな表情でこちらに顔を向けてくる。
穴からは白い生き物が相変わらず湧き出てしまっている。
『……できれば、僕の勘違いであって欲しかったんだけどね。』
「……みんなが思ってる通り、壁を壊したのは私よ。」
「…東郷さん、、何で、、?」
「…もう、だれも傷ついている姿を見たくないの、、だからよ」
「……東郷、あんた、、」
・・どうやら彼女の決意は固く決まっているようだ。友奈ちゃんと夏凛ちゃんが問いかけるが、美森ちゃんは首を振る。
「…私はやらなくちゃならないの!みんなのためにも!!」
「っ!東郷!待ちなさいよ!」
「東郷さん!夏凛ちゃん!待って!」
『・・・・』
美森ちゃんがそう叫び、跳び去るのを夏凛ちゃんが追いかけて、友奈ちゃんもそれに続いていったので僕は無言でついていく
すると、景色が変わった。
一面が赤い炎で囲まれていて、地獄と言われても違和感がないぐらいの光景。
「……何よ、、これ?」
夏凛ちゃんが絶句しているのを横目で見た後に、美森ちゃんに目を向ける。
『…知っちゃったんだね、美森ちゃん』
「…えぇ、私達が過ごしていた四国以外の世界はもう滅んでいることも。延々と現れるバーテックスを私達が止め続けないといけないことも。」
そう話しながら、白い生き物が合体して大きなバーテックスになっているのを指さしていた。
「……そのことを知った私は決めたの。このまま果てのない苦しみを味わって大切な記憶も、大事だった友達のことも忘れてしまうくらいなら、、」
「この無限の苦しみからみんなを救うために、『世界を滅ぼそう』って。」
…なるほど、確かにそういう考え方があるのも当然だろうね。
終身刑として長く苦しみを味わうくらいなら、死刑になって一瞬で苦しみなく死にたいという感じだろう。
そりゃあ、みんなで永遠に続く苦痛に苦しむぐらいなら直ぐに終わらせたいだろう
でも、、それって『逃げ』じゃないか?
そう考えていると美森ちゃんが僕達に泣きながら銃口を向けてくる。
普通なら危なくて焦る場面だが、美森ちゃんの表情の方が痛々しくて、気になる。
「……東郷さん…」
「……だから、、」
「お願いだから、、邪魔しないで!」
「……できるわけないでしょ!」
「…必死に考えたのよ。でもこれしかなかったの!だから、止めないで!」
「……っ。それでもあたしは大赦の勇者だから、そうはいかないわよ、、」
「大赦はあなたの事を道具として扱っているのよ!!それでもやるの!?」
「……ふ、二人共、、」
三人が会話している中でも白いバーテックスの合体は進行している。
そして、ついに合体し終わったバーテックスが爆弾を放出してくる
『そうは問屋がおろさんぜ?』
それら全てを槌で打ち返しつつ、夏凛ちゃんに話しかける。
『美森ちゃんを止めたいのもやまやまだけど、状況が悪いぜ夏凛ちゃん。』
「……っ、、そうね。とりあえず一旦引くわよ!友奈!」
「で、でも……東郷さんが、、」
逃げようとする二人に再び爆弾が放出されてくる。……さっきよりも多いな。
同じように捌こうとするが、いかんせん数が多いため一部捌ききれないものがでてくるので、二人に直撃しないよう庇う。
「翔助!!」 「翔助君!!」
『ひゅ~効くね~。でも大丈夫だよ、バリアがあるから僕も直撃ではないから、以前問題無しだよっと。』
とりあえず二人を地面に着地させる。
するといきなり友奈ちゃんが泣き出した
「私なんて、友達失格だ、、」
「ゆ、友奈?どうしたのよ?」
「私、東郷さんが辛い思いをしているのに気付けなかった!そんなの、、友達じゃないよ。だから、、」
そう友奈ちゃんが話していると、勇者服が解けていつもの友奈ちゃんに戻った。
「変身が解けた、、?」
「え?……あれ、どうして変身できないの?何で、、?」
困惑している二人を見て、勇者へと変身するための条件を思いだした。
『……勇者へと変身するためには、戦う意思を見せないといけない。今の友奈ちゃんはそれに心が不安定なのも相まって、変身できないんじゃないかな?』
「……そ、そんな、、」
僕がそう友奈ちゃんに伝えると、ますます悲しそうな表情をする。
・・本当の事とは言え、なんかごめんね
その後も変身できない友奈ちゃんを守るために、夏凛ちゃんと一緒になってバーテックスの攻撃を凌ぐ。
俯いて座っている友奈ちゃんを見かねて、夏凛ちゃんがため息をつきながらも、声を掛ける。……素直じゃないなぁ~
「…友達に失格もなにもないっての」
「…でも、私は、、」
夏凛ちゃんに言われてもなお、まだ暗い顔をしている友奈ちゃん。
しかしまぁ、友奈ちゃんも頑固だね。
……本当に仕方ない子だな~
「……んっ、、翔助君?」
『君が友達失格って言ってるのは、東郷さんの思いに気付けなかった自分が許せない
とそうだろう?』
頭を撫でながら、個人的に問う。
本当はもっと色々と細かな理由があるのだろうけど、省略するとそうだろう
念のため友奈ちゃんに確認する
「う、うん。そうだけど、、」
『なら、大丈夫だよ。』
「……え?」
『そう考えてるんなら君は友達失格なんかじゃあないよ。』
本当に友達失格な子は、その『元』友達の
事なんて気にもとめないはずだ。
なぜならその子とはもう『友人』という
見知った関係ではなくただの『他人』という関係に成り下がっているからね。
「そ、そんなこと!」
『じゃあ、聞くけどさ。君は美森ちゃんをどうしたいんだい?』
「そんなの一つだよ…助けたいよ!東郷さんを!だって…世界がなくなったら東郷さんとも、翔助君とも、みんなとも一緒にいられないから、、」
とても友達失格の子の言葉じゃないぜ?
そう思い、おもわず苦笑してしまう。
『あはは、大丈夫。そう思えるなら君は友達失格なんかじゃあないよ。それに美森ちゃんを助けたいのは、僕も、みんなも同じさ。それに、、君ならできるよきっと』
「……あっ」
『……無責任な言葉かもしれない。でも、僕は友奈ちゃんならすぐに立ち上がれると思うよ、いつだってそうだったしね。』
頭を撫でていた手を言葉と共に離して、友奈ちゃんの前に出る。
すると、夏凛ちゃんも前に出てきて肩が僕とぶつかる。
「ねぇ、友奈、翔助。…あたし大赦の勇者でいるのをやめるわ。…これからは勇者部の一部員として戦っていく。」
『え?』
「……友奈が泣いている姿を見るのも、翔助が辛いめに合っているのを見るのも、嫌だからね、、」
そう言いながら、夏凛ちゃんが樹海の上へと走っていってしまう。
……彼女は、彼女なりの居場所を見つけれたんだね。
僕もすぐに追っていきたいが、、少しおまじないをしてあげないとね。
『友奈ちゃん。』
ギュッ
「……えっ?」
『まだ自分に美森ちゃんが助けられるか不安。って表情してたぜ?』
両手を優しく握りながらそう問いかけると、友奈ちゃんは少し僕と目を合わせたあとに無言で少し首を頷かせた。
『・・勇者部五箇条その五。【なせば大抵なんとかなる】だぜ?友奈ちゃん。』
『応援してるよ、友奈ちゃん。……いや、【友奈】。』
「!……うん!」
そう言いながら夏凛ちゃんの後を追う。
『夏凛ちゃん。』
「……何で来たのよ翔助。」
『そりゃあ、女の子に辛い思いさせるわけにはいかないからね。』
「…あっそ。」
少し顔を赤くしてそっぽを向かれる。
そんな彼女に訪ねる。
『……ついに自分の居場所を見つけられたみたいだね。…今の君の表情は昔と比べて見違えたよ。』
「別に表情は変わったりなんかしてないわよ。…でも、そうね、、」
短剣を静かにうじゃうじゃいるバーテックスに向け、微笑みを浮かべながら話す。
「勇者部にいると心地いいし、そんな勇者部を守るために今は自分の力をふるいたいって思ってるわよ。」
その言葉を聞いて、思わず自分の頬が緩むのを感じる。
『・・そっか、、なら僕も君に置いていかれないように気を引き締めないとね。』
「さてっと。ちゃっちゃと片付けて、東郷を探しに行くわよ!翔助!」
《しょぎょうむじょうー》
『あぁ、そうだね。…おいで【陽炎】』
《らじゃー!!》
夏凛ちゃんは息を大きく吸うと、気合いを入れるためだろう。大きく声をあげた。
「さぁさぁ!ここからが大見せ場!遠からん者は音に聞けぇ!近くばよって目にも見よ!これが讃州中学二年、勇者部部員!三好夏凛の実力だぁぁぁ!!!」
その声と共にバーテックスに突撃する夏凛ちゃんを見届けて、僕も足をすすめる。
『情熱、熱血、完全燃焼!熱き勇気、炎の未来と共に!同じく讃州中学二年、勇者部部員!『大嘘憑き』新倉翔助!いざ!』
数が多いから、力を温存している暇はないよな。最初っから全力で行ったほうが明らかに得策だろう。
夏凛ちゃんと目を合わせると、あちらは大きく頷いていた。
・・なるべくみんなには満開をさせたくないのだけど、夏凛ちゃんは覚悟を決めているんだ。…心配は逆に失礼だろう。
僕も頷くと二人揃えて口を開く。
「『満開!』」
その時に咲いた二つの花は、とてもきれいで、儚く見えた。
主人公も夏凛ちゃんも、ここからが本当に大見せ場です。
次回は戦闘回です。
では、また。