最弱先輩に憧れて   作:@深夜

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こんにちは。
二十三話です、どうぞ。




その弐拾三

「吹き飛べぇぇー!」

 

夏凛ちゃんが叫びながら放った一撃によって白いバーテックスは消え去るが、まだバーテックスは残っている。

満開こそしたがやはり数が多いため、少し長びいてしまっていた。

 

 

『おっと、危ないぜ夏凛ちゃん?』

 

バーテックスがこっそり夏凛ちゃんの背後に回って攻撃しようとしていたので、剣の炎を使って凪ぎ払う。

 

「っと。ありがと、翔助。」

 

『お礼を言うのは全部終わった後、、ってヤバいぜ?上。』

 

「…え?……ヤバ!」

 

矢を構えたバーテックスを見て、夏凛ちゃんにも存在を教えて回避に移る。

 

……後ろにもいるな、板のやつかな?

 

 

『そうはいかないよ、、『陽炎』』

 

《……侵掠すること火の如く。燃えよ》

 

そう言い、陽炎に呼び掛けると。いつもの可愛らしさがあった声ではなく、やや迫力がある真剣な声で話した。

すると、ただでさえ強かった炎の勢いがより増してバーテックスを矢ごと焼く。

……満開してるとは言え、すごい威力だ

 

「ナイス、翔助!・・って、大丈夫?」

 

『あぁ、大丈夫だよ?ほんの少しやけどしちゃっただけさ、すぐ治るよ。』

 

実は轟山以外の精霊は、特訓したことがないんだよなー。轟山は最初からいた精霊なので、直接借りるということはしなくても

武器を通して間接的に借りてはいた。

昔に槌を投げ飛ばした後、高く跳べたのもそのおかげだ。

 

それに僕に情熱の炎は似合わないと思い、陽炎はそもそもあまり呼んだためしがなかったので、少しやけどしてしまった。

 

まあ、そんなもの大嘘憑きで治せるからどうでもいい。バーテックス達も二人でどんどん消しとばしてはいるが、まだ蠍座や射手座の等といったでかいやつはいる。

 

「…翔助……やってやるわよ絶対に…」

 

でもどうやら彼女はやる気満々のようだ。

状況は決して有利というわけではないのに彼女の折れない心はまさに『勇者』だ。でも、、

 

 

 

『夏凛ちゃん。』

 

「えっ。…何すんのよ、翔助。」

 

 

・・僕を忘れてもらっちゃあ困るな。

 

まったく、、先代の赤も、近代の赤も、どっちも一人で複数のバーテックスに挑もうとするんだから困ったものだ。

そう思いながら夏凛ちゃんの手をとり、その上にそっと僕の手を重ねる。少し困惑気味な彼女と目を合わせて口を開く。

 

 

『勇者部を守りたい、勇者部部員は君だけじゃあないんだぜ?』

 

「・・・・」

 

『一人で行こうとしないでくれよ。確かに昔の君は一人だったかもしれない。でも今は違うよ』

 

 

 

 

『僕達がいる』

 

 

 

僕の言葉を聞いて最初は呆然としていた夏凛ちゃんだったが、少し時間を置くと目を瞑り、再び目を開かせるとその表情にはきれいな微笑みを浮かべていた。

 

「…ええ、そうね。私達は讃州中学勇者部所属の『仲間』だったわね。」

 

『…そうだよ。忘れないでくれよ~?』

 

・・『仲間』か。まさか夏凛ちゃんからそんな言葉を聞けるとはね。

ついつい僕も微笑みを浮かべてしまいながら、夏凛ちゃんの言葉を肯定する。

 

 

 

 

 

「……よし!こっから気合い入れてガンガンいくわよ!」

 

『了解!』

 

夏凛ちゃんのその言葉を皮切りにバーテックスへと突撃する。ちっちゃくて白い有象無象を蹴散らしながらもスピードは一切緩めずになお突進する。

 

 

「すぅ~!勇者部五ヶ条!!ひとつ!!なるべく!諦めない!!」

 

空気を大きく吸い込みそう叫びながらバーテックスに攻撃を繰り出す。

 

そんな夏凛ちゃんを尻目に見ながら目の前に来た青&黄のバーテックスの方を見る

・・執念深すぎない?この星座達。

 

そう思いながらも長剣を構え、夏凛ちゃんに続いて勇者部五箇条の続きを叫ぶ。

 

『勇者部五ヶ条一つ!よく寝て!よく食べる!』

 

《モーニング!!バーニング!!》

 

心なしか叫んでいると、気分が上がって来たのか、陽炎も大きめな声で喋る。

射手座の矢をかわしながら、蠍座のしっぽを焼き尽くす。

それと同時に満開が解けた。

…右足の感覚がないことを確認しながら、再び満開を行う。夏凛ちゃんも同じようで

再び満開をしながらまた叫んでいた。

 

「勇者部五ヶ条!一つ!!悩んだら!!相談!!」

 

星座を殲滅していく夏凛ちゃん。

…こちらも早く終わらせないとな。

 

『いくよ、陽炎。…【影舞】』

 

そう言いながら炎を身に纏って跳び、まるで踊っているかのようにステップを刻み蠍座と射手座を共に切り刻んで殲滅する。

着地した後に、魚みたいなバーテックスが襲いかかってくるがそれをかわしつつ切り刻むと、消えていった。

 

夏凛ちゃんの方をふと見ると、最後の一匹であろうバーテックスと白い化け物達に向かっていっていた。

 

しかし、そんな夏凛ちゃんにバーテックスが攻撃しようとしていたので懐にいれておいたネジを一本とり出して、先を尖らせてバーテックスに投げつけ、突き刺す。

 

『・・【却本作り】。そのネジが刺さったものは、み~んな【僕と同じになる】』

 

そう呟くのと同時にバーテックスの攻撃スピードがみるみるうちに下がっていく。

自慢じゃないが僕の身体能力はとてつもなく低いため、あのバーテックスはもはや、『頂点』ではなく、『最底辺』の生き物となった。それに続けて気づかれないよう夏凛ちゃんにもネジを一本刺す。

 

『…【大嘘憑き】。夏凛ちゃんの今まで戦闘の疲れを【なかったこと】にした。』

 

これで思う存分にやれるだろう。

ちなみに刺した時の痛みと、外的損傷は疲れをなかったことにしたのと同時にやっていたので、まったく気づいてない。

 

「勇者部五ヶ条!!ひとぉぉつ!!!なせば大抵!!なんとかなるぅぅ!!」

 

そう夏凛ちゃんが叫びながら最後の一匹を殲滅し終える。

満開が解けて、落下しながら夏凛ちゃんが最後に大きく叫ぶ。

 

「見たか!!勇者部の力を!!」

 

……かっこいいぜ、夏凛ちゃん。

 

『…おいで、一反木綿(いったんもめん)。

夏凛ちゃんを安全なところまで運んであげてくれよ。』

 

あのまま落下させるわけにはいかないので

精霊の『一反木綿』に呼び掛け、救助に行ってもらう。この子は戦闘能力は皆無だが

代わりにサポート性能が高い。

かなりの長さまで伸びるので、大体の救助は間に合うだろうからね。

 

『…良く頑張ったよ。……おつかれさま、夏凛ちゃん。後は任せてよ』

 

 

とてもそんな僕の呟きなんか聞こえる距離ではないのに、そう呟くと夏凛ちゃんが少し笑みを浮かべていた気がした。

 

 

『……散華は、、なるほどね』

 

とりあえず自分の散華を確認しようとすると、異変はすぐにわかった。

 

『……目が見えないな。それに匂いもまったくしないし、右耳も聞こえない。』

 

まさか一度に目を両方奪われるとは、、それに鼻と右耳か、、五感のうち嗅覚と視覚を完全に奪われ、聴覚も少しやられたか。

とりあえず能力でカバーするが、本当に応急措置なのでたいして変わらない。

 

『まあ、何か体に不備があるのは慣れっこだから問題ない。…それよりも美森ちゃんのもとに急ごう。』

 

さすがにいつも通りとはいかないが、前世では毎日体のどこかがうまく使えなくなくなっていた日も少なくなかった。

 

耳を強く叩かれて一月ほど聴覚を失ったり、目の近くをおもいっきり殴られて視覚を失ったりした経験があるので、たぶん大丈夫だろう。

 

そう自分の中で結論づけて、大嘘憑きで壁までテレポートする。

 

 

 

 

 

テレポートしてみると、友奈ちゃんが大型バーテックスの放った火球をなぐりとばしている光景がうっすらと見えた。

 

「勇者パァァーンチ!!」

 

状況を確認するために周りを見渡すと、倒れている風先輩達と満開姿の美森ちゃん。そして、、

 

 

 

 

「私が東郷さんを、みんなを助ける!」

 

 

 

 

いつもの心強い彼女に戻った、

『結城友奈』がいた。

 

 




やっと『却本作り』(ブックメーカー)
を主人公が使う時が来ました。

正直却本作りは相手を倒すというより、相手を妨害するっていうサポートに向いていると思うんですよね。
主人公の翔助君は頭がいいかわりに、身体能力は球磨川先輩にすら劣ってます。


あとついに他の精霊も出しました。
一反木綿は主人公も言った通り、能力はサポートに全振りしています。


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