最弱先輩に憧れて   作:@深夜

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おはようございます。
ふと思いついたので書きます。

どうぞ。


その弐拾四

どうやら彼女の思いは固まったらしい

 

『やぁ、友奈ちゃん。』

 

「……翔助君、私決めたよ。東郷さんも、みんなも、世界も、、全部私が守る!」

 

僕が声をかけると、友奈ちゃんは真っ直ぐ僕を見て、自分の覚悟を伝えてくる。

それは結構なんだけど……一つ気に入らない言葉があるな~。

 

「……ふぇ?翔助君?」

 

『『私』じゃないよ。『私達』だよ?』

 

『みんなで一緒に世界を守るんだよ』

 

友奈ちゃんの頭を優しくポンポンとたたきながらそう言い聞かせるよう話すと、友奈ちゃんはうれしそうに笑みを浮かべる

 

「・・うん!」

 

『よし、いい子だ。…一緒に美森ちゃんを助けよう!』

 

 

そう二人で話したのち、大型バーテックスを倒そうとするが、いいところで美森ちゃんの邪魔が入ってしまい倒すまでに至れないということが続いていた。

このままではまずいと友奈ちゃんが美森ちゃんに向かって叫ぶ

 

「東郷さん、、何も知らずに過ごしている人たちもいるんだよ?私たちが世界を救うことを諦めたらダメだよ!」

 

「…だからって私達が生け贄にならないといけないの?……我慢して犠牲になれっていうの!?」

 

「……っ!」

 

しかし、美森ちゃんだって世界を終わらせることを選ぶほどの決断をしたんだ、そう簡単には説得できないのは当然だ。

怯む友奈ちゃんに向けて美森ちゃんがさらに続けて叫ぶ。

 

「他の人なんか……関係ないよ!そうやって守り続けた末に大切な人達との記憶や存在を忘れてしまうのなら…世界を守る意味も…勇者になる意味も存在しない!!」

 

「……東郷さん、、」

 

美森ちゃんはそう叫びながらも、僕の方を

見て悲しそうな表情をする。

…どこで知ったのかはわからないが、僕のことを知っちゃったのか。

 

「…翔助君のことも忘れていたのよね…もう私は……誰も忘れたくないの!」

 

「それにこの生き地獄は終わらない……戦いも終わらず、最後には全部失うの!…だから、、あきらめて!!」

 

そういいながらビームを僕達に乱射してくる。バーテックスを御霊まで追い込んだのだが、美森ちゃんの邪魔のせいで破壊できず、御霊は引っ込んでしまった。

 

 

……やっぱり彼女は普通の少女なんだね。

辛かっただろう、苦しかっただろう。それに戦いはずっと続くなどの真実を知って、

世界を壊すしか選択肢がなかったからみんなのためにそれを選択したのかな。

 

「…東郷さん!……っ!」

 

友奈ちゃんが美森ちゃんに呼び掛けようとするが、ビームが当たり後ずさる

その間にバーテックスは再生を完全に終えて、火球を放とうとしていた。

 

「…そう、それでいいの。…早く撃ってきなさい。それで終わる、、」

 

美森ちゃんがバーテックスの前に出て話しかけるように話す。

 

 

 

・・この世界は優しいようで、優しくないくて、美森ちゃんの言うとおり苦しむなら壊したほうがいいのかもしれない。

 

 

……でも、僕はこの世界に来てはじめて

 

 

 

 

 

 

生きてて『楽しい』って思えたんだ。

 

 

 

『させるかよ。』

 

ネジを素早くバーテックスに突き刺して、その攻撃をキャンセルさせる。

 

「!?……翔助君!邪魔しないで!もう全て終わらせましょう!」

 

『……僕はさっきまでのバーテックス戦で満開したせいで目がよく見えないんだ』

 

「……いきなり何を、、」

 

『そんな僕でもわかるぐらい、君は辛そうな顔をしてるぜ?…そんな友達を放っておけるかよ。』

 

「・・・・」

 

結構ぼやけて見えるが、そんな状態でも美森ちゃんが辛そうな顔をしているのはよくわかる。…君も辛いんだろ?美森ちゃん

 

「…それでも!このまま世界を守って戦いを続ければ何もかもを忘れてしまう!……それを仕方ないの一言で終わらせたくないの!……だから!」

 

さすがに頑固だなぁ、美森ちゃんは。

そういうところは昔から変わってないよ、須美ちゃんの頃からね。

 

・・やっぱりこういう時は彼女の親友の力を借りるに限るよな。親しい人の言葉は感じる力が違うだろうからね。

 

『……友奈ちゃん!僕がバーテックスの相手をするから、美森ちゃんをよろしく頼んでもいいかい?』

 

「……え?一人であの大きさのバーテックスは無理だよ!!」

 

そう友奈ちゃんに言われ、前にいる大型のバーテックスを改めて眺める。

確かにたくさんのバーテックスが集まってできたゆえにかなり強いだろうね。

さっきの火球もチャージ中にキャンセルできたから良かったが、もしあれを撃たれていたら無傷では済まないだろう。

……でも。

 

 

 

 

『それでもみんなが明日笑うためになら、へらへら笑ってやってやるよ。』

 

 

 

 

「翔助君!!」

 

『……本当は僕も説得したいけど、、美森ちゃんの事は任せたぜ?』

 

『『大嘘憑き』バーテックスとの距離を【なかったこと】にするのと加えて、僕の負傷も【なかったこと】にする。』

 

美森ちゃんを説得したいのはやまやまなのだが、友奈ちゃんなら安心して任せられるので僕は彼女が説得している間にバーテックスが邪魔しないよう足止めに行く。

 

 

『やぁ、バーテックス君。強いからと言って足下見ると、痛い目見るぜ?』

 

『おいで、【五月雨】』

《出番だ、出番だ!》

 

そうバーテックスに話しながら、武器を槍へと切り替えて、『五月雨』を呼びつつ槍をバーテックスに向けて構える。

 

 

 

『『過負荷』のしつこさってのを見せてやるよ。『頂点』さん?』

 

 

 

『満開』

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数分ぐらいたった後に、後ろから僕を呼ぶ声が僅かに聞こえた。

 

「翔助君!!大丈夫!?」

 

「助太刀にきたわ!翔助君!」

 

後ろを振り向くと、友奈ちゃんと美森ちゃんが心配そうに僕を見ていた。

 

……良かった、無事説得できたんだね

 

『ありがとうね、二人共。・・そしてお帰りなさい、美森ちゃん。』

 

「……っ!…えぇ、ただいま。」

 

「…ふふっ。」

 

三人でいつものように微笑ましく会話をしていると、後ろから違和感を感じた。

急いで振り向くと、大型バーテックスが太陽のように大きな、一纏まりの火の玉へと変わっていた。

 

 

……目を離しすぎたか、、

 

 

そうたった少しでも相手の力を溜める時間を与えてしまった事に後悔していると、友奈ちゃん達が火の玉に向かって行き、火の玉を止めようとしていたが、友奈ちゃんは途中で満開がきれて落下していた。

 

『・・一反木綿。友奈ちゃんを頼むよ』

 

すかさず一反木綿にフォローをさせて、安全なことを確認すると一反木綿が頷いていたので、一言お礼を言ってバーテックスに向き直ると風先輩達も合流していた

 

「後輩達ばっかりにいい格好させるわけにはいかないわよ!」

 

「風先輩……あの、、」

 

「…いいのよ。お帰り!東郷!!」

 

「………はい!」

 

「よーし。樹!東郷!行くわよー!」

 

「!!」

 

…だが、まだ足りない

動きが少し鈍くはなっているが、まだ止めるには足りない。

ある一人の叫び声が聞こえてくる

 

「勇者部の力をなめるなぁぁー!!」

 

「夏凛!?ナイスよ!!!」

 

まさかの視覚と聴覚を失ったはずの夏凛ちゃんがやってきていた。

……まさか感だけで場所を当てるとは

 

しかし相手のバーテックスも、負けじと力をあげて押しきろうとしていたため、まだ足りない。

 

「っ……まだ足りないっていうの!?」

 

そう叫んでいる風先輩を見ながら大きく深呼吸をする。

 

・・僕は精霊の力を借りる時一匹ずつしかやっていないので、まとめて複数匹から借りることはやったことがない。

でも、試してみる価値はあるよな、、

 

満開で少し失ってしまった感覚。

神経を研ぎ澄ませて意識を鮮明にしながら呟く。

 

『清き勇気・熱き勇気・癒やせし勇気・大きな勇気。…みんなおいで、【五月雨】【陽炎】【疾風】【轟山】。』

 

《出番だー!》

 

《やってやんよー!》

 

《全力で!行きます!》

 

《・・主人。四人同時は、、大丈夫?》

 

精霊のみんなが最初から十分に力を使えるように、呪文を唱えてあげると轟山をのぞいてハイテンションで出てきた。

心配してくれている轟山の頭を軍服越しに優しくなでてあげて問題無いと伝える

 

『大丈夫だよ。心配してくれてありがとうね、轟山。』

 

《・・ん。主人がそう言うなら、、》

 

《みんな行くぞー!》

 

《おー!》 《おー!》 《・・おー》

 

 

そう喋った後に、力がいつもの倍以上沸いてくるのがわかる。

しかし四人同時に力を借りた影響か、体が少し重くなった。

 

『……グズグズ言ってないで、早く行かないとね、、どっっせい!』

 

急いで槌を取り出し、火の玉へと向かって力を入れ、高く跳んで両手で押さえる

 

『遅くなりました!』

 

「翔助もナイスよ!みんな行くわよ~!勇者部ファイトォォォー!!!」

 

「「『ファイトォォォー!!』」」

 

 

火の玉の進行を完全に止めたところで、友奈ちゃんがバーテックスに向かって飛んで

いっている姿をみんなで見た。

 

「「「「友奈!!」」」」

 

「私は!讃州中学勇者部!!」

 

 

 

「勇者!結城友奈!!!」

 

 

そう叫びながら轟音と共にバーテックスを打ち破っていた友奈ちゃんは以前にも言ったが、まさしく、、

 

 

 

『【勇者】だね。』

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数日が経った。

今僕は病院にて、友奈ちゃんの横にあるベッドに腰掛けていた。

 

内容は散華によるものではない。

むしろ散華に関しては、代償が全て戻ってきたぐらいだ。

 

……友奈ちゃんが目を覚まさないのだ

そのお見舞いのために今日は僕が来たというわけである。

 

『……友奈ちゃん。みんな元気になったんだぜ?…だから後は君だけだ。』

 

そう魂が抜けたような表情をしている友奈ちゃんに話しかけていると、病室のドアが開かれて、美森ちゃんが入ってくる。

 

『おや、美森ちゃん。昨日も行ってたって聞いたけど、、大丈夫かい?』

 

「翔助君、、いいのよ。……だいいちに私があんなことをしなければ、みんなも、友奈ちゃんも…」

 

『はいストップ~。…それ以上は禁句だって、風先輩にも、夏凛ちゃんにも言われてただろう?』

 

まったく、責任感が強いのも考え物だね

美森ちゃんは自分のやったことに負い目を感じているらしく、何回も友奈ちゃんのもとを訪ねているらしい。

 

「でも!」

 

『……友奈ちゃんが喜ぶと思うかい?そんなに自分をボロボロにする東郷さんを見たらなんて言うかな~?』

 

「・・・・」

 

『大丈夫、君は悪くない。どちらかというと真実を隠してた僕のほうが悪いよ』

 

声を出そうとする美森ちゃんをそう、咎めつつ頭を撫でてあげる。

 

肩をもっているわけではない。

本当に『君は悪くない』。ただ少し不安になりすぎて、選択を誤っただけだ

そう考えながら頭を撫でていると、段々美森ちゃんの目が潤んでいった。

 

「……っ!…翔助君!友奈ちゃん!ごめんなさい、、ごめんなさい!」

 

『おーよしよし、、辛かっただろう。』

 

 

そういいながら再び美森ちゃんをなだめようと手を動かそうとすると、暖かい感触を感じた。

 

まさかと思い、ふと前を見ると、、

 

 

「泣かないで、、東郷さん、、」

 

 

涙をながしながら、こちらを見ていた友奈ちゃんの姿があった。

 

「……友奈ちゃん!!」

 

「……ただいま、東郷さん、翔助君。」

 

『お帰り、友奈ちゃん。随分と長い間お眠りしていたね~』

 

「…えへへ、、ごめんね心配かけて。」

 

「グスッ…いいのよ友奈ちゃん」

 

「東郷さん、、」

 

「お帰りなさい!友奈ちゃん!」

 

「…うん!」

 

 

二人の少女が涙をながしながらもうれしそうに会話しているのを見て、僕はやっと帰ってきたいつも通りをしみじみと感じていたのだった。

 

 




はい、どこで区切ればいいかわからず、長くなりました。

勇者としての能力+大嘘憑きを稼働。
『却本作り』は前回使ってしまいましたので、使えておりません。

次回はほのぼのですかね?
ではまた、

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