とりあえずを本編どうぞ。
「おはよう東郷さん。…友奈ちゃんと翔助君はまだ来てないの?」
「おはよう美奈さん・・二人はまだ来てないみたいなのよ。」
「そっか、気になるね……とりあえず私日直の仕事があるからまたね東郷さん」
「えぇ、また。」
クラスメイトの美奈さんとの会話を終え、席について、二人について考える。
翔助君がいない理由は明確なのだけれど、、友奈ちゃんはあのパーティーから数日後に突然姿を眩ませたのだ。
・・まさか、、誘拐?
そう私が不安がっていても時間は待ってくれない、校舎のチャイムが鳴り、話しを楽しんでいた皆もそれぞれの席につく
――おはよう!東郷さん!――
――おはよう美森ちゃん――
「・・翔助君だけじゃなくて、友奈ちゃんまで居なくなったら……私どうしたらいいの?」
そんな私の呟きはチャイムによってかき消され、空気に混じって無意味に消えた
「まったく……翔助といい、うちの部員は部長の知らないところで何やってんのよ、本当に……」
「風先輩……」
「お姉ちゃん……」
放課後になり部室に行って友奈ちゃんについての情報を共有するが、特にこれといった情報もなく、風先輩がそう愚痴をこぼしてしまうのも仕方ない。
風先輩の悲痛な顔を見ているとこちらもより辛くなってくる。
「・・風。元気出しなさいよ……というか銀と園子はどこ行ったのよ?」
「あ、そういえば確かに居ませんね?東郷先輩は何か知りませんか?」
「いえ、私も特に聞いてないわ」
樹ちゃんの問いにそう返し、今いない二人の事を考える。あの二人は部活をむやみにサボったりしない筈なのだけど、、
そう二人の不在について考え、頭に疑問符を浮かべていると、部室の扉が開く。
「フーミン先輩、遅れました~」
「アタシも遅れてすみません。」
「銀!そのっち!一体何やって――」
何をやっていたのか二人に訪ねようとすると、二人の後ろに一つ人影が見えた。
「失礼するわね、東郷さん」
「あ、安芸先生!?」
その人影の正体が安芸先生だということが分かり、思わず大声を出してしまう。
何で安芸先生が、、?
「私たちが連れてきたんよ。」
「その人って確か大赦の関係者よね?」
「そうですよ。安芸先生に友奈がいないことについて聞いてみたら何か知ってるらしくて、連れてきたってわけっす」
「そうなんですか?安芸先生?」
「えぇ。確証はないのだけれどね」
「・・この際確証は無くてもいいです。教えてください。」
「もちろんよ風さん。そのためにここにきたのだから、、それじゃあ私が知っている事を全部話すわね」
「―という事です。私が知ってるのは」
「・・そんな……」
安芸先生が話した内容は酷い物だった
神樹様の寿命が少なくなっていること、天の神によって人類の終わりが近づいてきていることなど良いものではなかった。
その人類の終わりを止めるための対抗策がもちろんあるのだが、、
「・・『神婚』ですか……」
その対抗策の一つが『神婚』というもので、名前の通り神と選ばれた聖なる乙女が結合することで世界の安寧を確かにすると言うものだ。早い話が神様と選ばれた女の子が結婚することによって、人々は新たな力を得て無事生きることができる。
ここまで聞くといい話に聞こえるのだけれど、、もちろんこの話にも裏がある。
さっき『人々は無事生きられる』と言ったけれど、それはあくまで神様との婚約者以外の人達の話だ。
神様との神婚相手の子の存在は神界に移行するため、人間界に接触することはできなくなる……ようするに神婚が成立すると、婚約者の子は、、【死ぬ】。
その神婚がなぜ友奈ちゃんに関係あるのか?それはつまり――
「・・友奈ちゃんがその神婚の相手に選ばれた、ということですよね安芸先生」
「確証はないけど、結城さんは今までの勇者の中で一番適正値が高かったの。だからそう考えていいと思うわ、、」
「友奈が犠牲にならないと世界は終わる……でも、、仲間が死ぬのを黙って見ていろって言うの?」
夏凛ちゃんのその言葉でみんな顔を伏せて部室が沈黙に包まれる。
「いえ、まだ方法はあります」
安芸先生のその言葉を聞き、みんなで顔を上げて先生の方を見る。
「先生!本当ですか!?」
「えぇ。…でもその方法が成功する確証なんて一切ありません……むしろ失敗する要素の方が圧倒的に多い、非現実的な確率のものです。」
「・・それでもいいです。だから、、教えてください安芸先生」
私がそう聞くと安芸先生はゆっくりと口を開いて、たった一つの方法を告げた。
「・・問題の根源……『天の神を倒す』ということです。」
安芸先生の方法は言うだけなら簡単だが、要するに『神を人が打ち倒す』という事のため、確かに非現実的な方法だろう。
「天の神を倒す、、確かにそれしか世界を守る方法はないよな……」
「・・300年もの間成し遂げれなかったことを、私達ができるの、、?」
やっと解決法が見つかったと思ったら、それが神と戦うなんて……
勇者部の中で再び沈黙が訪れる。
各々が神との戦いについて考え、悩んでいると、小さな光が窓から入ってきた。
《・・そんな弱気でいいの?》
光からそんな声が聞こえたため、みんなで驚いて光の方を見る。
・・この声どこかで、、
「しゃ、喋った!?」
「何この光!?」
「アンビリーバボーだね~」
「・・でもこの声どこかで聞いたことあるような気が、、」
それぞれが光に反応を示す中、光の声は変わらず同じ口調で私達に語りかける。
《・・みんな、そんな弱気でいいの?》
「弱気、、?」
《・・うん。もちろんみんな完全に同じ事を考えてるわけじゃないけど、みんな『神に私達が勝てるのかな』って考えてる》
「この光、なんで私達の考えてることなんかわかるのよ?」
「・・わからないけど、、でも確かに弱気になっているのは合ってるわ」
《・・そんな弱気に物事を考えてたら、何にもできないよ?》
《・・『私達にはできない』、『現実的じゃない』…そんなこと考えてたらどんなこともできなくなっちゃうよ》
冷静に淡々とそう告げる声はまるで、泣き虫の子供に言い聞かせるようだった。
「・・じゃあ、どうしろって言うのよ?どうすれば私達はいいの?」
少しムッとした顔で夏凛ちゃんが光へ、どうすればいいのか問う。
すると光は少し間を空けた後、さっきまでと違い優しくゆっくりと言葉を発した。
《・・簡単だよ》
《・・『私達はできる』って自信を持って行動すればいいんだよ》
「自信……?」
《・・うん。……僕の主人が前、僕と一緒に寝る時言ってたよ?》
《『成せば大抵なんとかなる。気の持ちようで、成果が変わることも少なくないのさ』ってね》
「!…その声、話し方、、あなたってもしかして、翔助君の精霊の……?」
《・・うん。『轟』く『山』と書いて『轟山』だよ、東郷さん。》
「翔助の精霊、、あれ?光が小さくなっていってるわよ?」
《・・ついに消える時間か…嫌だなぁ》
徐々に光が小さくなっていく。
慌てて光に手を伸ばすが、掴んだりすることはできず、私の手は空を切る。
「え、、掴めない?」
《・・私は光としてみんなの目に見えてるだけで、実体はないからね》
「き、消えるって、、何で?」
《・・ちょっと諸事情でね…もうすぐ消えちゃうんだ》
「・・翔助君に何かあったの?」
《・・うん、そんなところだよ。》
《・・とりあえず消えてなくなっちゃう前にもう一回言うね》
《・・『自分に自信を持って』。確かに相手は神様で、今までの間だれも打ち倒せなかった強大な敵だよ?でも……》
《みなさんならきっとできる。少なくとも私はそう確信しています》
そう言って光は完全に消えていった。
「・・安芸先生、、私やります。天の神と戦います。」
「東郷……」
「東郷さん……」
「相手は確かに神様。…しかも長い年月の間打倒を成し遂げられていないというぐらいで現実的じゃありません。でも…」
「このまま世界が、大事な友達が傷つくのを黙って見ていたくないんです。」
「私も同じなんよ~わっしー」
「そのっち…」
「よく言った美森!勇者は根性!黙って見ていられないよな!」
「えぇ、そうね銀」
「まったく…立派な部員を持ってうれしい限りよ本当に」
「部長の面子が立たないわね?風?」
「あはは…私もおんなじ気持ちですよ!東郷先輩!」
「風先輩、夏凛ちゃん、樹ちゃん…」
みんなが私の言葉に賛同して、声をあげてくれてうれしく思ってしまう。
「・・みなさんの気持ちはもう固まっているみたいですね。」
少し辛そうな表情を浮かべながら微笑んでいる安芸先生の方を向いて、私達の気持ちを伝える。
「はい。私達の気持ちは決まりました」
「・・大人としてみんなを送り出すのは少し辛いけれど、、わかりました。私が連絡を入れておくので、私達大赦も全力でサポートいたします。」
「安芸先生……ありがとうございます」
友奈ちゃん、翔助君。
二人に今まで助けてもらったんだから今度は……私が…
「助ける番よね…待ってて、二人共」
新型コロナウィルスが問題になっている中、インフルにかかった深夜です。
今回の話は治ったばっかりの時に書いたものなので、少し表現などがおかしいかも知れませんが、その時は教えていただけるとありがたいです。
・・みなさんお体にはお気をつけて。
では、また。