最弱先輩に憧れて   作:@深夜

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少し日が空きました、深夜です。

まずは本編をどうぞ。


その8

 

「にっしー!?」

 

「翔助?……どうしたのよ、その服」

 

風先輩のその指摘によって、自分の今の服装について気づかされる。

…そういえば、僕血まみれだったな。

 

「あーいや、この赤い染みは…」

 

「え?赤い染みって?」

 

「…ん?いや、風先輩が服って、、」

 

「いやあたしが言ったのは、長い時間会わなかったのに、そのわりにはやけに服が新しいなってことよ」

 

「新しい?」

 

風先輩の目線をたどり自分の服へと目を向けると、確かに『まるで新品』のようにきれいな制服があった。

 

・・あんなに血まみれだったのに……能力が知らない間に作動したのか?

 

「気のせいじゃないですか?特に何にもなかったですし、心当たりもありませんよ?僕には」

 

「そうなの?ならいいのだけど……」

 

困惑の感情が出てくるのを必死に押し殺して、とりあえず苦し紛れの言葉だが風先輩達を誤魔化すのに成功させる。

 

「みんなも僕に色々と聞きたい事があるかもしれないけど、、まず今は飲み込んでくれるとありがたいな」

 

「・・えぇ、わかったわ翔助君。今はそれどころじゃないものね」

 

「何かあったら全てが終わった後に聞くからさ、それまでは…ごめんね」

 

「いいんよ~にっしー」

 

「ありがとう…おっと」

 

僕らが話している間当然あのモヤと樹木が争いの手を止めるわけもなく、木の破片が飛ばされてきたため、紙一重で避ける

 

「大丈夫!?翔助……っ!風が強くてぜんぜん話しどころじゃないわね!」

 

僕は恐らく能力によって風の影響を受けないでいるが、彼女達はさっきから風の効果を強く受けているので、先ほどからまともに動けずにいるのだろう。

 

 

「……早くしないと、友奈ちゃんが…」

 

「・・美森ちゃん。友奈ちゃんに何かあったのかい?」

 

美森ちゃんの小さく漏らした聞き捨てならないその言葉をしっかりと聞き取り、具体的内容について追及する。

…最初に声をかけた時からの不安そうな美森ちゃんの表情から嫌な気はしていたけど…友奈ちゃんがらみか、、

 

「実は・・友奈ちゃんが今後の世界の為の犠牲に、、神樹様に選ばれて……」

 

「・・オーケー、もうわかったよ。だからもう喋らなくていい…ごめんね、辛いこと言わせちゃって」

 

「……大丈夫よ翔助君、私は」

 

美森ちゃんが辛そうに話し始めていたので、おおよそわかったあたりで止める。

涙を流すまではいっていないあたり、美森ちゃんの心も成長してるみたいだけど……それでも声が震えていた所を見るに、かなりヤバい状況らしいな。

 

「要するに、友奈ちゃんが世界の存続のための何らかの儀式の生け贄になって、その儀式を阻止しようと天の神…あのモヤが神樹様と争い合っていると……そういうことだろう?」

 

「…さすが。話が早いな、翔助」

 

「その儀式はあとどれぐらいで行われるか、大体検討はついてるのかい?」

 

「あたし達も詳しくはわからないけど……さっき友奈が樹木の奥に歩いて行ったから、そろそろ頃合いかも…」

 

「なるほど…確かにそれならそろそろかもしれませんね……」

 

だとすると、、まずいな。急がないと間に合わなくなるかもしれない

かと言って能力を使おうにも、うまく作動してくれるかどうか、、

 

 

 

「・・・友奈ちゃん、、」

 

 

 

 

・・バカかよ、僕は

 

迷ってる暇なんて無い。こんな優しい女の子達を辛い目になんかあわせておけないんだからさ。

 

 

『作動してくれるか』じゃない、

『作動させるんだ』。

 

彼女達を支えるはずの僕が不安がってどうするんだよ、まったく。

 

 

「……ふぅ、、よし…行きますか」

 

「……いきなり頬を叩いたりしてどうしたの翔助君?それに行くっていったいどこへ…?」

 

「あはは、別に大したことじゃないよ?ただ、ちょっと…」

 

 

 

 

「色々な事を、済ませに行ってくるだけさ」

 

 

ちょっと世界と、世話のかかる友達を救いに行ってくるだけの簡単なお仕事だよ

 

「!翔助、あんたそれって!」

 

「……気づいちゃいましたか、風先輩」

 

「まさか、、一人で行く気!?そんなことあたしが許すわけないでしょ!!」

 

「にっしー!一人だけでなんて、いくらなんでも無茶苦茶なんよ!」

 

「アタシでもさすがに見逃せないぞ!」

 

「そうですよ翔助先輩!行くならみんなで行きましょうよ!」

 

「・・みんな…」

 

僕の言葉に声を荒げて反意を示すみんなの優しさが身にしみて、自分の中で罪悪感が湧き出そうになるがそれを振り払う

 

「・・翔助君…お願い、一人だけで抱えこまないで。昔言ってくれたじゃない、『困った時は相談』って」

 

「・・・・」

 

「だから、、みんなで行きましょう?一人よりもみんなで……お願いよ…翔助君」

 

そう言いながら、美森ちゃんが僕の手を優しく彼女の手で包みこんでくる。

…昔、僕が彼女にやったように

 

 

ハァー、、まったく、本当に良い子達ばっかりだよ、この勇者部は。

 

 

 

でも……こればっかりは譲れない。

 

 

 

「ごめん、、美森ちゃん…みんな」

 

「っ……翔助君!!」

 

「僕の身勝手なわがままを……許してくれ、、みんな」

 

美森ちゃんの手を優しく引き剥がし、樹木とモヤの方へと走って向かう。

後ろからみんなの僕を呼ぶ声が聞こえるが、夢中になって走っていると、やがて聞こえなくなっていた。

 

 

 

「・・だいぶ走ったけど、、運動が苦手な僕なのにも関わらず、全然疲れてないぞ?能力のせいかな?」

 

まったくバテらず走ってこれた事に若干疑問を抱きつつも、先へと進む。

 

さらにしばらく走って進んでいると、一つ人影らしき物を発見したので、ゆっくりと近づき確認する。

 

「友奈ちゃん!」

 

「翔助君!?…何でここに?」

 

その人影が友奈ちゃんだったことがわかり、ホッと胸を撫で下ろす。どうやらまだ儀式は行い終わってないらしい

 

「決まってるだろう?君を連れ戻しにきたんだよ」

 

「だめだよ!これは私じゃないと駄目なんだから…私が犠牲にならないと、世界が…みんなが滅んじゃうんだよ!」

 

美森ちゃんの話からも聞いていた通りならば、確かに友奈ちゃんの言う通り、彼女が犠牲にならないと世界は終わるのだろう

 

「私は誰かが……勇者部のみんなが苦しむ所なんて見たくない!世界が終わったら、みんないつもみたいにみんな笑顔でいられなくなっちゃうんだ、、だから!私一人が犠牲になることによってみんながいつも通りの生活を送れるなら、、誰も苦しまずに済むのなら……」

 

 

「私はそれでいいの!だから翔助君!お願いだから諦めて戻って!」

 

 

 

・・へー。

友奈ちゃんがいなくなることによって、『いつも通りの生活を送れる』…『みんな笑顔でいられる』、、なるほどね……

 

 

 

 

「それのどこがいいんだい?」

 

 

 

 

「・・え?」

 

「いや、友奈ちゃんは自分が犠牲になることによって、周りに幸せになって欲しいという気持ちはよく伝わったよ…でもさ」

 

「『結城友奈がいない勇者部の生活』は、果たして本当に『いつも通りの勇者部の生活』って言えるのかな?」

 

「・・・・」

 

「『みんな笑顔でいられる』……誰かを犠牲にしてまで手に入れた生活は、笑顔で生きれないんじゃない?少なくとも、勇者部と友奈ちゃんの家族の人は絶対に笑顔ではいられないだろうね」

 

「・・なら、東郷さんの時みたいに、みんなの中から私の記憶を…」

 

「例えそんな事されても、僕は絶対に忘れないよ。美森ちゃんの時も君にヒントをあげただろう?」

 

「・・・・」

 

「そして何より、そんなことされて送る日常なんて、美森ちゃん達がうれしがると思うかい?」

 

「・・それでも!私は、みんなに生きて欲しいの!」

 

「君がいない人生を?…僕は嫌だね。友達の犠牲で成り立つ暮らしなんて、それじゃあまるで犯罪者の生活だよ」

 

「・・・・」

 

「一つ聞きたい。友奈ちゃん……君自身の気持ちを教えてくれ、僕とか、君以外の人の事なんか考えなくていいから」

 

 

「君はまだ『生きていたいか』、それとも勇者部のみんなとお別れするように『死にたいか』……どっちだい?」

 

 

 

「そんなの・・生きていたいよ!まだみんなと楽しく勇者部の活動していたいよ私だって!…でもダメなんだ、、」

 

 

 

 

「・・勇者部五箇条、その五。『成せば大抵なんとかなる』」

 

「……翔助君?」

 

「誰か一人でも欠けていたら駄目なんだ…だから生きるならみんな一緒じゃないと、誰も心からなんて笑えないよ?」

 

「それでも!私が犠牲にならないと…」

 

「大丈夫。要するに、君が世界のために消える必要がなくなればいいんだろ?」

 

「でもどうやって、、」

 

「事の根本、天の神を打ち倒せばいいんだよ。そうすれば全部まるっと解決だ」

 

「そんなこと……」

 

「あはは、、やる前からできないって思ってたら何もできなくなるぜ?…勇者部五箇条その二、『なるべく諦めない』だよ」

 

「そうだけど、、いくらなんでも無茶だよ……だって、相手は神様なんだよ?今までのバーテックス達よりも全然比べものにならないんだよ?」

 

ごもっともな意見だ。

神に人が挑むなど愚の骨頂、そんなことは百も承知だ。実際にそういう神様のおかげで僕は今、二度目の人生を送れているんだから、なおさら神の力量は認知している

 

 

でも、、僕の気持ちは決まっている

まっすぐ友奈ちゃんの瞳を見ながら、ゆっくりと一言一言を大事に話す。

 

 

「・・僕さ、本当に前…勇者のみんなに出会う前、ずっと一人だったんだ」

 

「親からも愛されなければ、仲のいい友達もいない…なんならいじめられてたぐらいなんだ。当然親からの虐待もあったよ」

 

「毎日暴力を受けたよ。家でも、学校でもさ……身体に傷がつかない日なんかないくらいだった」

 

「・・翔助君」

 

「・・そんな僕でもさ、勇者のみんなに出会ってから、、生きてて楽しいって思えたんだ。……だから、そんなみんなの」

 

 

 

「『幸せ』を守りたいんだ。例え無謀でも、愚かと言われようとも、僕は行く」

 

 

 

「・・・・」

 

「あそこにいるモヤと樹木だよね、天の神と神樹様は……うわ、、バーテックスもいるじゃん」

 

「翔助君!!だめ!!」

 

「・・大丈夫だって。僕は絶対生きて帰るからさ、、だから君は信じて待っててくれよ……『友奈』」

 

「……待って!!せめて、、行くなら私も!!」

 

走って向かおうとする僕の腕を強く掴んで引き留めようとする友奈ちゃんに苦笑を浮かべて、美森ちゃんの時のように優しく引き剥がしそう告げる。

自分も行くと友奈ちゃんが言うのに対して無言で首を横にふり、反意を示したのちにモヤと樹木に向かって走る。

 

 

 

 

ある程度走って、天の神と神樹様がいる位置にまでたどり着くことができた。しかし、二人は上空にいるため、このままだと勝つ勝たない以前に戦うことすらかなわないんだよな……

 

「ここまで来て、何もできずに終わるとかごめんだぞ?……能力で重力をなかったことにした」

 

そう呟くと本当に身体が軽くなり、試しにその場で跳んでみると、そのままふわふわと浮遊することができた。

 

「よし、やっと100%自分の意思で発動できた……僕の覚悟はもうできてる。だから力を貸してくれよ?」

 

そう言いながら空へと飛ぶする。

浮遊している中でも飛んでくる木の破片や白い小型のバーテックスの攻撃をかわしたりしたため気は抜けない。

 

 

「・・あらら、勢ぞろいだね?バーテックスさん達は」

 

ある程度進むと、蟹座や魚座、射手座天秤座など、「黄道十二星座」が全員揃って、なおかつ大量の白い小型バーテックス達が僕の行く手を阻んでいた。

 

「困ったな、、君達に構ってる時間なんて無いんだけど」

 

今は一分一秒すらも惜しい状況で、黄道十二星座級達を相手にしてる余裕は無い

 

そんなこと考えていても、もちろんバーテックスは突っ込んでくるので、それに対して迎撃しようとネジを投げつけた。

 

「よっと……あれ?消えた?…」

 

ネジが蠍座に刺さった瞬間、なぜか蠍座がいなくなるという不思議な現象を目撃して困惑していると、神様が僕の能力について言っていたことを思い出した。

 

「確か、、『仮想もなかったことにできる』みたいなこと言ってたよな…バーテックスもいけるのか?」

 

試しに目の前まで回転して来ていた天秤座にネジを突き刺してみると、蠍座と同じように消えたので、本当に仮想の生物や概念も【なかったこと】にできるらしい。

 

「『大嘘憑き』の弱点の一つを克服してるって…どんだけ強いんだよ、、でも今はありがたい。時間が惜しいからね」

 

時間の経過をなかったことにして、残ったバーテックスを最速で片付ける。

 

・・しかしこの能力もやっと馴染んでくれて、発動しやすくなったが、それでもやっぱり謎ばかりだ。

先ほどのバーテックスをなかったことにする際も、ネジを彼らに刺した瞬間『自動的』になかったことになっていた。

またもや、僕の意思関係なくだ。

 

「保持者の僕でも不確定要素がまだ多いんだけど…戸惑っている時間は無い。危険を承知で使っていくしかないか、、」

 

そう言いながら再び天の神と神樹様が争っている場所まで飛んでいく。

 

「しかし、、何でこんなに危ない能力が僕の手にあるんだろうか…」

 

 

その問いに答えれる者は誰もいない

 

 




いかがでしたか?

はい、結構空きましたね、
お待たせしました。…果たして待ってくれていた人がいたのかはわかりませんが

文を書くたんびに何か違うような気がして全然進んでおらず、今回はいつも以上に駄文注意でございます。
証拠は文字数の多さです

ホワイトデーにチョコあげるから、誰か文才くれないかなぁ……

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