謎の匣兵器来る!
返ってきたテストは全部赤点。体育の授業では何も無い所でこける。帰り道では犬に吠えられ追いかけられる。今日も今日とてダメダメライフを送った沢田綱吉ことツナは自宅に帰って来たらまっすぐに自分の部屋に入る。
「はぁ〜あ、今日もまたダメダメライフだった」
虹の代理戦争以降、特に大きな戦いが起きる事もなく、ヴァリアーとのボンゴレリング争奪戦の時から戻りたかった平和な日常が続いていた。
先日はツナをボンゴレファミリー10代目ボスに教育する為に来た
いつまでもこんな平和な日常が続けば良いなと心から思う。思うのだが………。
(リボーンのスパルタもそうだけど、このテストの事、もうバレてるよな〜…。って事は今日の夜もまたネッチョリスパルタ勉強……嫌だーーーー!!)
そう。今日返却されたテストはいつものように赤点。リボーンがそれを把握していないはずがない。ツナの予想通り、今夜はネッチョリとスパルタ学習が待ち受けているだろう。
「憂鬱だ…」
「なら日頃からちゃんと勉強しやがれ!」
ツナの情けない呟きと同時に背後から重い蹴りが炸裂する。ツナの後頭部にその足の土踏まずが見事にフィットした事でその痛みにツナは悶える。
犯人は当然リボーンである。ツナのテストの点はやはり把握していたようで呆れながら腕組みをして倒れるツナを見下ろす。
「いででで…!!」
「そんな情けないお前には夜と言わず今からネッチョリ勉強させてやるぞ」
「ね、ネッチョリやだあぁぁぁっ!!」
リボーンに服の襟を掴まれ引き摺られるツナ。ネッチョリから逃れようとジタバタともがくが勝てる訳もなくズルズルと引き摺られ、足が通学鞄にぶつかり、倒れて中身がドサドサと出て来る。そしてその中に見慣れない…しかし見覚えのある立方体が紛れていた。
「……あれ?」
「どうしたツナ?」
その立方体に気付いたツナはもがくのを辞めてそちらに視線を向ける。リボーンもツナの様子に気付き、引き摺るのを辞めて手を離す。
解放されたツナは鞄…そこから出て来た立方体を手に取った。
「これ…
匣兵器ーーーそれは以前ツナ達が10年後の未来に行った際に知り、手に入れた武器。リングから出した死ぬ気の炎を注入する事で開く事が出来る兵器で詳細は省くがパラレルワールドの自分と意識などを共有出来る白蘭の能力によって生み出されたものだ。
この匣兵器は10年後の世界でこそ、マフィア界などで流通しているが、それは10年後の話。この時代ではまだ殆ど出回ってはいないものだ。もしかしたら元アルコバレーノであり、匣兵器の開発者の一人であるヴェルデが既に開発し、流通させている可能性も無くはないが。
ツナ自身、未来での戦いで匣兵器を手に入れ、ミルフィオーレファミリーとの戦いで活用したが、この時代に帰る際に未来のヴェルデの技術によってそれは“アニマルリング”なるコンパクトな形で持ち帰った。そしてそのアニマルリングはシモンファミリーとの一件でボンゴレ
つまりツナは今、匣兵器を持ってはいないのだ。ましてや彼の鞄からそんなものが出て来るはずがない。
「どうしてこんなものが……」
「この時代でも未来の記憶を手に入れたヴェルデの手で匣兵器は作られてそんなに数は多くはねえが出回ってはいる。ヴァリアーなんかもそれを元にタルボに頼んでリングを作ったみてーだしな」
「……獄寺君のかな?それが間違って俺の鞄に入っちゃったとか」
真っ先に挙げられた可能性はツナの親友の一人であり、右腕を自称する嵐の守護者、獄寺隼人が何らかのルートで手に入れたものが、何かの拍子にツナの鞄に混入してしまったのではないかというものだ。
「取り敢えず開けてみたらどうだ」
「えぇ!?まだ獄寺君のかも分からないし、そんな勝手に…」
「獄寺ならお前が開けても怒らねーだろ」
「そういう問題じゃないだろ!?それに何が入ってるかも分からないし……」
「本当ダメツナだな。中身を確認する意味でも開けろって事だ。獄寺のじゃねーなら、何か他にトラブルの元になるかもしれねー。そういうのはちゃんと把握しろ」
それにツナの大空属性の死ぬ気の炎ならば全ての属性の匣兵器を開匣する事が可能だ。もしかしたら大空の七属性以外ーーー大地の七属性や夜の炎の匣兵器も作られていれば大空の死ぬ気の炎でも開けないかもしれないが。
「わ、分かったよ……」
ツナは自分の
それを考えると、尚更これが獄寺のものとは思えなくなる。
「じゃ、じゃあ開けるよ」
「さっさとやれ」
リングに炎を灯し、ツナは匣へと死ぬ気の炎を注入する。少なくともボンゴレ匣を開匣するには十分な炎圧だ。
そして匣はツナの炎によって開き……
ツナの部屋全体に白く眩い光が行き渡った。
「え?」
「!?」
その光にツナは包まれ、リボーンは圧倒される。開けば強い光を放つ匣兵器など見た事が無い。それを差し引いても懐中電灯の類いの匣ではないのは明らかだった。
その場で開匣を指示したのは間違いだったとリボーンはこの瞬間悟った。
そして光が収まったその後には……
沢田綱吉はもうそこにはいなかった。
当然あの匣兵器もそこにはなく、何故かツナの鞄まで消えている。
「ツナ……!」
一人残されたリボーンは拳を固く握り、己の短慮を呪った。
****
「……来たか。大空のボンゴレリングを持つ者よ」
薄暗い部屋の中、巨大な水槽の中で上下逆さまに浮かぶ『人間』が呟く。そして目の前にいる人間が動こうとすればそれを制止する。
「奪って来る必要は無い。ボンゴレリングは我々には使用は出来ないし、使う必要も無い。
その者の説得が効いたのか、水槽の前に立つ者は立ち止まる。
「まずは
****
上条当麻は不幸な人間だ。彼を知る者の大半は揃ってそう言うだろう。
「暑い……」
夏休み初日の朝はうだるような熱気に包まれた灼熱の部屋で目覚めた。夏だというのに部屋のエアコンは機能していない。
「げっ、エアコン壊れてら。昨日のビリビリの雷のせいか?」
上条はエアコンの壊れ具合を見て原因にアタリを付ける。昨晩のとある不幸な出来事という大きな心当たりが彼にはあった。
そして昨夜の雷で壊れたのはエアコンだけではない。それは冷蔵庫の中身が全滅している事を意味していた。
試しに冷蔵庫を開けて中にあった焼きそばパンの匂いを嗅げば酸っぱく吐き気を催す香りが漂う。
朝食の為に出した非常食のカップ焼きそばを流し台に全てぶちまけてしまい、財布を探している内にキャッシュカードを踏み砕き、担任から「上条ちゃーん、バカだから補習でーす」とラブコール。
「……不幸だ」
補習に向かう為に着替えた上条は気晴らしの為に布団でも干そうとベランダへ向かう。
「空はこんなに青いのにお先は真っ暗。つか、いきなり夕立ちとか降ったりしねぇよな…?」
自身の不幸体質を鑑みれば布団を干した日に限って雨が降ったり、ベランダから布団が落ちて汚れたり……なんて事はザラだ。
不安に駆られながらも意地でも気持ちを入れ替えようと上条は窓を開く。
「うん?もう干してある?」
そして窓を開けた先にあるベランダには、
白い修道服を来た銀髪のシスターと、夏だというのに長袖のワイシャツとセーターを着込んだ茶髪のツンツン頭の少年が並んでそこに干されていた。何故か少年の方の前…ベランダの内側には彼の物と思われる通学鞄が置いてある。
「え?え!?ええぇっ!!?」
驚きのあまり布団をその場に落としてしまい、愕然とする上条。
「女の子に……中学生…?何でこんな所に……?女の子の方の服は……シスターさんか?」
そして驚きの声によって眠っていた意識が刺激されたのか、茶髪の少年が寝苦しそうにしながらその目を開く。
「う…うん……?」
(中学生の方が目を覚ました…。女の子の方は……外国人だよな?茶髪の人!貴方が英語が出来る人だと信じます!)
取り敢えず彼らが何者なのか云々は置いといて、シスターの方とどう話せば良いのか分からなかった上条はもう一方の干されていた少年に希望を見出す。
そんな上条の切実な願いなど知る由もない彼は意識を覚醒させると腹部にのし掛かる圧迫感に対し、苦しそうに顔を歪める。
「……ここは?」
腹部への圧迫感に苦しみながら少年ーーー沢田綱吉は前方を見た。そこにはベランダ前で愕然とする上条が立っていた。
そしてツナは下を見て横を見る。見た所今自分がいる場所はベランダなのは分かった。そして今自分は布団のように干されている事も。
「「………」」
暫くの沈黙。
「あの……どうしてそんな所に干してあるのか聞いても?」
「いやその……俺に聞かれても……」
当事者なのだから答えて欲しい。そう思った上条は間違っていないだろう。一方ツナもこの状況を良く分かっていないので、彼を責める事も出来ない。
だがふと我に返る。今自分はどのような状況にいるのか。
恐る恐る後ろを見てみれば真下に道路が広がっている。七階建てのマンションのベランダにツナは引っかかっているのだ。
「ひいいぃぃぃぃぃぃっ!!!」
「うおっ!?ど、どうしたいきなり!?」
我に返ったツナは当然ビビる。一歩間違えれば地面に真っ逆さま。潰れたグロデスクなトマトの出来上がりの一歩手前だ。
高い場所から落ちる恐怖でツナはジタバタともがく。パニックになってそれが潰れたトマトへの道だという事に気付いていない。
「た、助けて!落ちる!落ちちゃう!!」
泣きながら目の前にいる上条に助けを求めるツナ。パニくるツナを見て、その言葉を聞いて、上条はフリーズしていた思考が漸く動き出す。下手すればこのまま落ちて死んでしまう状況にあると気付いたのだ。
上条はどうにかジタバタするツナの手を掴んで引っ張り、ベランダへと上げる。
「だ、大丈夫か……?」
「ゼェ…ゼェ……あ、ありがとう…。死ぬかと思った……!」
本気で怖かったのだろう。ツナはまだベランダに干されていた経緯を語れる状態ではないようだ。ツナから話を聞くのは後にしようと考えた上条はシスターの方へと視線を向ける。
するとシスターの方もみっともなく喚いたツナの叫び声で目覚めていたのかじっと上条を見ていた。そして上条がこちらを見たら口を開いた。
「おなかへった」
「……は?」
「おなかへった」
「もしもし?」
「おなかへったって……言ってるんだよ?」
外国人なのに思いっきり日本語を話している事に驚きつつも、ベランダに干された状態での第一声がこれである事に更に驚く上条。ツナはまだツッコミを入れる程の余裕は無く、頼りにならない。
「えっと…あなたはひょっとして、この状況で自分は行き倒れですとか…仰りやがるつもりでせうか?」
「倒れ死にとも言う」
「……」
対応に困っているとシスターは上条に可愛らしい笑顔で話を続ける。
「ねえ!お腹いっぱいご飯を食べさせてくれると嬉しいな!」
(……この子には何処か遠い所で幸せになって貰おう)
面倒事の気配を何となくキャッチした上条は先程冷蔵庫から取り出して投げた……腐った焼きそばパンを取り出す。いつの間にか復活していたらしいツナは一目でそれが腐ったものだと理解したのか、上条に口を挟もうとする。
「え、あの…まさかそんな明らかに腐ったものを食べさせる気じゃ…「ありがとう!そしていただきます!」」
ツナの言葉は最後まで続かなかった。言い終える前にシスターが焼きそばパンにかぶり付いたからだ。上条の手諸共。
数秒後、青空に上条の悲鳴が響き渡ったが、不幸でも何でもなく自業自得だった。
****
「はぐっ…あむっ…美味しー!」
それから暫く。上条の部屋に上げて貰ったシスターとツナ。シスターは先程の焼きそばパンでは足りなかったようなので、上条に野菜炒めをご馳走になっており、ツナは何故か一緒にあった自分の鞄の中身を確認していた。
(
取り敢えずいきなり戦闘に巻き込まれてもちゃんと戦える準備だけはある。常日頃からリボーンに持ち歩くように言われていたのがここに来て幸いした。
(あの匣兵器は見当たらないけど……)
はっきり言えばツナは今すぐにでも帰って寝たかった。しかしここに来た原因と思われるあの匣兵器が無い為に帰れない。
「美味しい!美味しいよこれ!」
「そ、そうですか…」
因みに上条が彼女に食べさせているのは冷蔵庫が壊れた事で全滅した野菜をヤケクソで適当にぶち込んだ野菜炒め
「アレだよね!さり気なく疲労回復の為に酸っぱい味付けしてるとこがニクいよね!」
「酸っぱい味付け…?」
「うぐっ…!無理してこんな不味そうなものを全部食べなくても……」
「不味そうなんかじゃないよ!私の為に無償で作ってくれたご飯だもん!美味しくないはずがないんだよ!」
キラキラと純真無垢な瞳でそんな事を言われては上条の顔はどんどん青くなってしまう。そんな上条の気持ちを超直感で察してしまったツナは何とも言えない表情になってしまう。それが更に上条の罪悪感を刺激する。
罪悪感に耐え切れなくなった上条はシスターから皿を掻っ攫い、野菜炒めモドキを一気に平らげた。そして倒れた。
閑話休題。
「でさ、何でウチの部屋のベランダに干されてたわけ?お前ら」
「落ちたんだよ。本当は屋上から屋上へ飛び移るつもりだったんだけど」
上条は漸く本題に入った。何故彼らはベランダに干されていたのか。その問いに対し、ツナより先にシスターが答えた。
「飛び移る!?」
「ここ八階建てだぜ!?」
「仕方が無かったんだよ。追われてたからね」
追われていた。そう聞いた瞬間、ツナも上条も息を呑んだ。彼女にもただならぬ事情があるのだと分かってしまった。そんな二人の様子を気にする事なくシスターは続ける。
「そんな事より自己紹介しなきゃね!私の名前はね、インデックスって言うんだよ?」
「インデックス?ってどう聞いても偽名じゃねーか。なんだインデックスって!目次かお前は!」
(…え!?インデックス?目次?どういう事なのーー!?)
英語が苦手である上条でもインデックスという単語の意味を知っていたが、日本語すら危うく、英語が苦手どころか論外なツナは言葉の意味すら分からず困惑する。
「うーん、禁書目録って事なんだけど…あ!魔法名なら「あーもういいや、先にお前の話を聞こう。名前は?」」
「あ、沢田綱吉です。さっきは助けてくれて、ありがとうございました」
「うん。君は凄え良い人だ」
ただ自己紹介と一緒に先程のお礼を言っただけなのに、ここまで持ち上げられるのは変な気分だ。
「で、何でお前はウチのベランダに?」
「……実は俺も良く分からなくて」
ツナはどうして良いのか分からず、近くに頼れる
「……で、その匣を開けてみたら光って気付いたらベランダにいた…と」
「……はい」
自分で語っておきながら訳が分からない。死ぬ気の炎や匣兵器などの事を知らない一般人に話しても下らない妄言と一蹴されるのが目に見えている。
しかし上条…否、この街の人間は違った。
「何だろうな?その匣。
「え?」
何と上条は真剣にこんな馬鹿げた話を聞いて考えてくれているのだ。これにはツナも驚きを隠せずに思わず身を乗り出して聞いてしまう。
「し、信じてくれるんですか!?こんな話!」
「そりゃそうだろ。その手の超能力なんてこの“学園都市”じゃ珍しくも何ともないからな。…って、もしかしてお前学園都市の外から来たのか?」
「学園都市……?」
まだツナーーー沢田綱吉は気付いていない。今彼がいるのは彼の知る世界ではない事に。彼にとって全くの未知なる場所ーーー異世界である事に。
ちょっとリボーンともう一名が上手く書けてないかな…?
一応この後の流れ的には神裂戦の後にリボーンと連絡が取れてインデックスの記憶を消さなくて良い事が分かったり、ツナのファインプレーで上条さんが記憶喪失にならなかったり、一方通行と妹達の話では上条さんではなくツナが戦ったり…とか考えてます。そう至る経緯は全然考えてないけど。というか一方通行とツナを絡ませたいだけ。
因みにその場合美琴はツナに惚れるルートになるけど、私はツナ京が大好きです。
獄寺や山本が来るのは一方通行と戦った後かな…?