とある魔術のボンゴレX世   作:メンマ46号

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禁書目録編、ラストです。


幻想殺し来る!

 上条当麻と沢田綱吉。並び立つ二人の主人公(ヒーロー)は『首輪』によって操られているインデックスを解放すべく、その足を一歩前へ踏み出す。

 ステイルと神裂も遅れを取らずにルーン魔術のカードと大太刀を手にインデックスを見据える。

 

「俺の右手をあの魔術に叩き込む。その為の道を作ってくれ……」

 

「分かった。あの範囲攻撃は俺達が何とかしてみせる」

 

「最悪君達は死んでも良い。だがあの子だけは絶対に救い出せ。失敗するのだけは絶対に許さないからな」

 

 インデックスを救う為に上条は右手を構え、ツナは死ぬ気の炎を纏い、ステイルはカードを手に持ち、神裂は刀の周囲にワイヤーを張り巡らせる。

 するとインデックスは即座にまた別の魔法陣を眼前に展開させる。それを見た神裂とステイルの顔色が変わる。

 

「っ!?『竜王の殺息(ドラゴン・ブレス)』!?そんなものまでっ……!!」

 

 放たれた光に対して上条が即座に右手を繰り出して打ち消しにかかる。それは直径1mものレーザーに近い。純白の光と右手が衝突すると熱した鉄板で肉を焼くような音が響く。

 痛みや熱さはないが、ホースで放水した水が壁にぶつかって弾かれるように光は幻想殺し(イマジンブレイカー)とぶつかってから四方八方へと飛び散る。

 

 ステイルの“魔女狩りの王(イノケンティウス)”のように消してもキリがない。むしろ異能を打ち消すはずの上条の右手が押されている。処理が追いつかないのだ。

 

(単純な物量だけじゃねぇ……ッ!光の一粒一粒の『質』がバラバラじゃねえか!!)

 

 もしかしたらインデックスが使っている魔術は複数のものを同時に使っているものなのかもしれない。何とかしなければ。上条が思考の渦に呑まれかけている中、魔術師が動いた。

 

「『七閃』ッ!!!」

 

 神裂の張り巡らせたワイヤーがインデックスの足元の畳をひっくり返し、彼女の顔の向く方向を上へと逸らした。それによってインデックスの『眼球』に連動する事で顔の前に展開されていた魔法陣から発せられる『竜王の殺息(ドラゴン・ブレス)』は天井を突き破って遥か上空へと続く光の柱を立てた。

 上空の雲が引き裂かれ、もしかしたらその上の人工衛星まで木っ端微塵にしたかもしれない。

 

 突き破られた天井から木片が落ちてくる事はない。しかしその代わりなのだろうか。光の柱と同じ純白の色をした綺麗な羽がヒラヒラと何十枚も落ちてきた。まるで雪のように。

 

「それは『竜王の殺息(ドラゴン・ブレス)』……。伝説にある聖ジョージのドラゴンの一撃と同義です!いかなる力があるとはいえ、人の身でまともに取り合おうと考えないで下さい!」

 

「それの破壊力はさっきの光にも劣らない…!当たればあの子を救うも何も……全てが頓挫すると思え!!」

 

 部屋一帯に舞い散る白い羽はユラユラと隙間風に揺れながら落ちる為、上条も回避の為に小刻みな動きを余儀なくされる。しかし『自動書記(ヨハネのペン)』に操られているインデックスがその隙を見逃すはずがない。直に『竜王の殺息(ドラゴン・ブレス)』を当てようと上条へと照準を合わせる。

 

「くっ……!」

 

「この羽は俺が処理する」

 

 上条の隣を強い熱気が一瞬にも満たない時間で駆け抜けた。

 

「超滑空ーーーX(イクス)ストリーム!!!」

 

 その瞬間、この狭い部屋の中で大空の炎が一帯に振り撒かれ、渦巻く。その炎の主は当然ツナだ。大空の七属性随一の推進力とこれまでの戦闘経験から得た機動力と細かな動きによって散らばる白い羽を一つ残らず死ぬ気の炎で包み込み、空気と『調和』させて空気に溶けるように消失させた。一枚足りとも接触する事なく全ての羽を無力化したのだ。

 ツナはその為の飛行コースをこの狭い部屋の中で『直感』したのだ。これこそブラッド・オブ・ボンゴレによる超直感の為せる(わざ)だろう。

 

「行け、主人公(ヒーロー)!」

 

 ツナ(大空)の激励に応え、上条当麻(ヒーロー)は突き進む。羽が全て消えた事で頭上に注意を払う必要は無い。目の前の幻想(魔術)ぶち殺す(打ち消す)事に全力を注げる。

 

「ーーー警告、第六章第十三節。新たな敵兵を確認。戦闘思考を変更。戦場の検索を開始……現状、最も難度の高い敵兵の認識を更新。『上条当麻』から『沢田綱吉』へ変更。結論、『沢田綱吉』の破壊を最優先します」

 

「させねぇよ。お前だってそんなの望んじゃいねぇだろ」

 

 その時には既に上条はインデックスの目の前へと迫っていた。魔法陣の照準はツナに向いているがその眼前には上条の右手が迫っている。

 光の羽は覚悟の炎によって全て消え去った。目の前にはたった一つの想いすら利用され、糸で操られる一人の少女。

 

 なら、後はその少女を解放するだけだ。

 

(この物語(せかい)が、神様(アンタ)の作った奇跡(システム)の通りに動いてるってんなら……!!)

 

「まずは、その幻想をぶち殺す!!」

 

 突き出した右手がインデックスの眼前に展開された魔法陣を破壊する。そのままの勢いを保って上条の右手はインデックスの顔に触れる。その瞬間、幻想殺し(イマジンブレイカー)が更に何かを破壊した。

 

「ーーー警、こく。最終……章。第、零ーーー……。『 首 輪、』致命的な、破壊……再生、不可……消」

 

 ブツン、とインデックスの口から発せられた声は……『自動書記(ヨハネのペン)』の声は消えた。

 光の柱も、魔法陣も消えた。

 突き破られた天井から差し込む月明かりが倒れるインデックスを抱き留める上条を照らす。

 

 月明かりに照らされる中、インデックスはゆっくりと目蓋を開いた。

 

「……とうま?」

 

 この日、上条当麻達は邪悪な幻想を殺し、インデックスを『救った』。

 

****

 

 -7月27日。

 

「やっきにっく、やっきにっく、やっきにく〜♪」

 

 ツナが学園都市にやって来てから約一週間を迎えようとしていた。

 学園都市の第七学区にて昼間からルンルン気分でスキップをしながら進む白い修道服を来たシスターの後ろを黒いツンツン頭の少年と茶色のツンツン頭の少年がゆっくりと着いて行く。

 

 二人の少年、上条当麻と沢田綱吉は上条が左手で持つ九枚程の手紙をツナが隣から覗き込む形で読んでいた。

 差出人の名は、ステイル=マグヌス。

 

『親愛なる上条当麻と沢田綱吉へ。』

 

 のっけから心にも思っていない挨拶、むしろこれは嫌味から始まる文章だった。これには上条もツナも微妙な顔をする。

 

『挨拶は無駄なので省かせて貰うよ。全くよくもやってくれたなこの野郎とでも言いたい所だけど、その個人的な思いの丈をぶつけてしまうと世界中の木々を残らず切り倒しても紙が足りなくなるのでやめておくよこの野郎』

 

(滅茶苦茶この野郎って書かれてるーーー!!インデックスを縛ってた魔術を壊すのはステイルも同意してたのに!?)

 

 一応は共闘して共にインデックスを救ったというのに手紙越しのこの態度。恐らく顔を合わせれば容赦なくまた炎の魔術をぶつけてくるのではないだろうか。

 もしかしたら自分(ステイル)ではなく、上条とツナが彼女を救った事が彼としては腹立たしいのかもしれない。いや、もしかしたらあの場で彼はほぼ何も出来なかったという事も影響しているのだろう。

 しかもその後に続く七枚の便箋、つまり計八枚の手紙は似たような内容で上条とツナに対する罵倒や罵声ばかりがつらつらと並べられていた。

 

(なんでこんなボロクソに言われてんの俺達ーーー!?)

 

 見てみれば隣の上条も果てしなく微妙な顔をしている。いや、よく見れば若干キレてる。ここまで言われ放題ならステイルは手紙を途中で破り捨てられても文句は言えないだろう。多分。

 

『取り敢えず、必要最低限の礼儀として、()()()()()()()君達にはあの子と、それを取り巻く環境について説明しておく。あの後貸し借りとか言われても困るしね。次に君達と会う時は敵対する時と決めているから。

 上条当麻の右手だけでは不安なので、君達が寝ている間に魔術師(ぼくたち)もあの子にかけられた魔術の後遺症なんかを調べてみたけど、問題はなさそうだ。上のイギリス清教の下した判断は、表向きなら『首輪』の外れたあの子を大至急連れ戻すようにって感じだけど、実際には様子見というのが正しいかな。僕個人としては、一瞬一秒でもあの子の側に君達がいる事は許せないんだけど』

 

 文章の節々に毒が混じっている事が気になるが、ひとまずツナはホッとする。イギリス清教がインデックスを連れ戻すとなればまた同じように彼女に『首輪』を付けるだろう。

 

『教会が用意した自動書記(ヨハネのペン)とはいえ、あの子は10万3000冊の魔導書を用いて魔術を使った。そして自動書記(ヨハネのペン)が破壊された今、あの子は自分の意思で魔術を使えるかどうか。もし仮に自動書記(ヨハネのペン)を失った事で『あの子の魔力が回復した』のなら、僕達も態勢を整えないといけない。

 まぁ、魔力の回復なんてあり得ないとは思うけど、注意するに越した事はないって所だね。10万3000冊を自在に操る『魔神』ってのはそれぐらいの危険があるって事かな。

 因みにこれは別に諦めてあの子を君達に譲るという意味ではないよ?僕達は情報を集め然るべき装備を整え次第、再びあの子の奪還に挑むつもりだ。寝首をかくのは趣味じゃないので、首は良く洗って待っているように』

 

(さらっと殺害予告されたーーー!!)

 

『最後に、沢田綱吉へ。

 イギリス清教では上条当麻よりも君の方が危険視されていると伝えておく。何でなんて思うなよ?異能の力を打ち消す右手を持つだけの上条当麻と何から何まで得体の知れない炎を自在に操り、神裂相手に無傷で渡り合える君、どちらが警戒されるかなんて明らかだろう?

 

 P.S.

 それとこの手紙は読み終わると同時に爆発するようにしておいた。真相を究明したとはいえ、「賭け」を強行した罰だ。その自慢の右手か両手、指一本ぐらい吹き飛ばしておきたまえ』

 

 手紙の最後にはステイルお得意のルーン文字が刻まれていた。

 瞬間、クラッカーみたいな破裂音と共に小規模の爆発が巻き起こる。さながらツナの守護者である獄寺のダイナマイト一本程度の威力だが、人に大怪我させるには普通に充分な威力だ。

 

「んなーーー!?」

 

「……あっの、野郎〜〜!!」

 

 爆発の衝撃でツナは後方にぶっ飛び、背中をアスファルトに打ち付ける。上条は咄嗟に右手を出して爆発を打ち消すが、ステイルに対する怒りで顔を歪ませていた。

 

 上条は仰向けに倒れたツナに手を差し伸べ、ツナもまたそれを掴んで起き上がる。そもそも今回の「賭け」はステイルも同意して臨んだはずだが。

 

「起きたらステイルも神裂さんもいなくなってて、手紙が残されてたと思ったらこれかぁ……」

 

「あの野郎……本っ当にムカつくな……!!」

 

 右拳を握り締めて手紙の残りカス…というより燃えカスを睨む上条。数秒してから二人揃って溜め息を吐いた。

 

「つなー!とうまー!早く早くーー!!」

 

 すると先にスキップしながら進んでいたインデックスがはしゃぎながら戻って来た。早く焼肉が食べたいのか、それとも三人で食べるのが楽しみなのか。それは分からないが彼女の笑顔を見て思う。

 

「……守れて良かった」

 

「……だな」

 

 まだ魔術師達との因縁の全てにケリが着いた訳ではない。それでもインデックスは笑って生きていく事が出来るようにはなった。今はただそれだけで良い。

 

「だけどよ、ツナ……」

 

「うん……」

 

 問題はインデックスのシスターらしからぬ暴食具合だ。彼女の食欲は並のフードファイターを凌駕しており、いくら食べ放題の焼肉と言えど出禁や追加料金の請求などの金銭トラブルが考えられる。だがそれでも彼女は絶対に遠慮などしないだろう。彼女は食欲に忠実だ。貪欲なまでに。それはこの一週間で良く分かった。

 

(多分バジル君やらうじさんより食べるよな……。インデックスのお腹ってどうなってんだろう……?てゆーか、俺も当麻君に負担かけちゃってるよな……?)

 

(これから二人養っていくって事になるよな……?ツナはともかく、インデックスの食費はヤバいぞ……!!上条家の家計はどうなっちまうんだ……!!!)

 

 となると少しでも費用を浮かすべく、上条とツナは食事を自粛しなくてはならないかもしれない。折角の焼肉なのに。

 二人は溜め息を吐いて口を揃えて言った。

 

「「……不幸だ」」

 

 学園都市の空の下、嘆く少年達の姿があった。しかし、呟きの内容とは正反対に、彼らの表情は清々しいものだった。




Q.何故上条さんを記憶喪失にしなかったの?

A.上条さんが嘘吐いても超直感持ってるツナは見抜いちゃうので、後腐れなく元の世界に帰れなくなる。
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