とある魔術のボンゴレX世   作:メンマ46号

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元々長くなったのを分けたからそこそこ早く投稿できました。


まだ見ぬ脅威来る!

 御坂美琴は目の前の光景が理解出来なかった。

 

 突如として自分達を襲って来た謎のロボット。そのロボットの出現に伴い、強烈な頭痛に悩まされ、満足に演算ができなくなった。

 そんな中、自分の窮地を救ったのは額に炎を灯し、クールな雰囲気を醸し出すツナだった。

 

 能力開発を受けていないはずの彼が何故、額と両腕に炎を灯しているのか。何故雰囲気が先程までとまるで違うのか。何故、あれだけのスピードとパワーを併せ持つ大型ロボットの突進を片腕で止められるのか。

 

 モスカの突進を片手で受け止めて微動だにしない理由はかつて10年後の未来でミルフィオーレファミリーのメローネ基地で戦った『一番槍(アラッタッコ)』の異名とミルフィオーレ随一の突破力を持つ突撃兵、デンドロ・キラムという男の雷槍(ランチャ・エレットリカ)を正面から受け止めた時と全く同じだ。

 

 (ハイパー)死ぬ気モードとなったツナ自身の脚力もあるが、右手の甲から薄く放射され、目視さえ難しい柔の炎が支えとなっているのだ。

 真後ろにいる美琴ですら、それに気付いていない。それどころではないというのもあるが、美琴が炎の余波を浴びて火傷しないよう、ツナが死ぬ気の炎を絶妙にコントロールし、熱を極限まで下げているのだ。

 

「お前の相手は俺だ」

 

 そう告げるとツナは大空属性の死ぬ気の炎を纏った右拳をモスカに叩き込み、進行を完全に止める。そして間髪入れずにモスカを抑えていた左手にも大空属性の死ぬ気の炎を纏い、左手を振り上げる。その圧倒的なパワーに押されてモスカは後方へと一気にぶっ飛ばされた。

 

「あ、あんた……その炎……」

 

「悪いが話は後だ。まずはアレを何とかする」

 

 以前の上条同様、美琴は驚愕し、疑問を抱く。

 能力者でないはずの彼が何故あんな炎を使えるのか。良く見れば額にも炎が灯っている。雰囲気も先程までとはまるで違う。

 

「行くぞ」

 

 瞬間、ツナの姿がその場から消えた。

 

「えっ!?」

 

 まるで瞬間移動のように姿を消したツナ。美琴が驚くのも当然だ。側から見ればツナは高レベルの発火能力者(パイロキネシスト)。しかし今の移動は空間移動能力者(テレポーター)にも見える。

 実際には死ぬ気の炎の推進力を使った高速移動なのだが、彼女がそんな事を知る訳もない。

 

 肝心のツナはモスカの背後に移動しており、死ぬ気の炎を纏った両手で手刀を繰り出し、モスカの両腕を一瞬で斬り落とした。

 次にモスカの外殻を成す鉄の機材一つ一つを死ぬ気の炎の熱で溶かし、取手を作って一枚ずつ丁寧に力づくで引き剥がしていく。モスカの頭部が動こうとすれば頭上に回り込んで踵落とし。

 

 モスカも黙ってやられる訳はなく、機体から銃口を展開し、ツナに霧の炎の弾丸を乱射する。ツナはその全てを躱すか、己の炎で防ぐ。躱した弾丸は特に誰かに被弾する事もなく、地面を砕く。

 

 10年後の世界ではモスカは基本的には無人で死ぬ気の炎のみを動力源としていた。しかしヴァリアーのゴーラ・モスカのように人を閉じ込めてその人の持つ死ぬ気の炎を無理矢理吸い出して動力源とするモスカもまだあるはずだ。他にも虹の代理戦争でヴェルデが搭乗して操縦するG(グリーン)・モスカなる機体まである。

 

 中に人がいれば、またリング争奪戦の時の9代目の悲劇の二の舞となる。それだけは絶対に避けなければならない。

 だからこそ、外殻を丁寧に壊し、剥がす事で中にいる人間の身を無事に、それでいてモスカを行動不能にするという解決方法を取った。

 

 その様子を信じられない目で見ていた美琴はあまりの光景に少し混乱してしまう始末だ。

 

「あ、あいつ……あんなに強かったの?その辺の不良にビビり散らしてたのに……。それにあの炎……能力の開発は受けてないんでしょ?」

 

 その上、美琴は何故か能力を使えないのにツナは使える。能力開発無しで能力を使えているという事実。美琴の中にある仮説が生まれた。

 

「あいつまさか、『原石』の能力者なの……!?」

 

 これ以外に納得のできそうな答えを彼女達は持ち合わせてはいなかった。

 

 『原石』…… 学園都市のような人工的な手段に頼る事なく超能力を発現させた天然の異能者の事を示す。彼らの能力を羨み、それに追いつこうとした者達が作り上げた技術が魔術である。

 極めて希少な存在であり、その総数は現在判明している限りで世界に50人程しかいないとされる。

 

「……佐天さんが好きな都市伝説程度にしか思ってなかったけど、まさか実在するなんて……まさか学園都市が無理にあいつをこの街に置いたのって……!?」

 

 当然、ツナは『原石』と呼ばれる能力者ではないのだが、死ぬ気の炎の事を知らない彼女が、能力開発を受けていないツナがその力を振るうところを見てしまえばそんな勘違いをしてしまうのも仕方のない話ではある。

 

 ツナの猛攻を受け、崩壊寸前のモスカ。ツナはツナでモスカと戦う内に超直感でこのモスカの構造を把握する。

 

(……中に人はいない。純粋に死ぬ気の炎のみで動いている。このまま壊しても問題は無いが……)

 

 壊し方が中途半端であればかつてのゴーラ・モスカのような暴走をしかねない。あれは意図的なものだったが、このモスカも意図的にせよ、偶然にせよ同じ事にならないと限らないのだ。

 

(ここはバーニングアクセルで一気に……!!)

 

 ナッツを呼び出そうと考えた瞬間、機体の何処かにギミックとして隠されていたらしいレーザー砲が飛び出て来た。やはりその照準は何故か能力を満足に使えないばかりか動くのも辛い状態になっている美琴に向けられている。

 そしてモスカは躊躇なく霧属性の炎による極太レーザーを発射した。

 

「ちょ…!!」

 

 美琴は電磁バリアを生成しようと手元に電気を集中させるが、やはり頭痛で演算が阻害され、上手くできない。

 

(まずい……!!)

 

 何故かは分からないがあのロボットは自分を狙っているのだ。このままではまともに防ぐ事もできずにやられる。

 

「させない」

 

 だがそのレーザーが彼女を焼く事は無かった。大空の七属性の中でも随一を誇る大空属性の炎の推進力によって美琴の前に再び高速移動したツナが割って入り、その額の炎がノッキングする。

 右手の掌と左手の甲を相手に向けて組み合わせ、四角形を作る独自の構えを取り、霧の炎のレーザーを受け止めた。いや、それどころか吸い込んでいる。

 

「死ぬ気の零地点突破・改」

 

 死ぬ気の炎の属性を問わず、それを吸収し、ツナ自身の力に変換する技。それによって霧の炎のレーザーを吸収して美琴を守ったのだ。

 そして今のレーザーは動力源だった霧の炎をほぼ全て費やしたものだったらしく、モスカはガス欠を起こし始めていた。今なら暴走の危険もなく壊せるだろう。

 

「これで終わりだ」

 

 そう判断したツナは一気にモスカとの距離を詰め、吸収した炎をありったけ注ぎ込んだ死ぬ気の炎を纏った右拳を振り下ろし、叩きつける事でモスカを粉砕した。

 機体を砕かれた事でモスカは活動を停止し、先程から絶えず鳴り響いていた高い雑音も消えた。

 

 すると苦痛で歪んでいた美琴の表情は次第に緩み、頭の痛みも引いていく。

 

「……あれ?なんか、もう平気だ」

 

 モスカの破壊と同時に美琴は頭痛が消えたようで、何事もなかったかのように立ち上がる。しかし本人も良く分かってないようでどうにもスッキリしない様子だった。

 

 ツナは彼女が無事である事を確認すると、額の死ぬ気の炎を鎮火して(ハイパー)死ぬ気モードを解く。

 

「……ふう。取り敢えず無事で良かったよ」

 

「ってそうだ!あんた、あの炎の事、詳しく説明しなさい!!」

 

「え!?えっと…その……」

 

 早速美琴はツナに突っかかり、ツナは慌てて何か言い訳をしようとするが、その前に二人はある事象を目にする。

 

 破壊されたモスカの機体から藍色のエネルギー、つまり霧属性の死ぬ気の炎が噴き出て来たのだ。

 

「!?今度は何!?」

 

 美琴の疑問の言葉に答える気は無いと言わんばかりに霧の炎はモスカを包み込み、空気に溶けるようにモスカの残骸の姿を消していく。その光景にツナは見覚えがあった。

 

(これって……術士の仕業!?)

 

 骸などの術士がその場を穏便に去る際に己の行方を掴ませない為に幻覚で己の姿を消して追跡を防ぐ常套手段だ。(ハイパー)死ぬ気モードならば超直感も相まってその幻覚を見破り、隠蔽を防ぐ事もできたかもしれないが、既に死ぬ気モードを解いてしまったツナにそれはできず、モスカの姿が消え、実際にこの場から失くなるのを見ている事しかできなかった。

 

****

 

「で、説明してくれるかしら?あの炎の能力について」

 

「え、え〜と…その……」

 

 胡散臭いものを見る目で美琴はツナに問い質す。それは勿論ツナの死ぬ気の炎についてだ。モスカの方はどうやら美琴を狙っていたと判断しているようで、関連性を聞かれる事は無かった。

 

「うう……」

 

「あんたって『原石』の能力者なのよね?学園都市に引き留められたのもそれが原因じゃない」

 

(なんか変な勘違いされてるーーー!?『原石』って何ーーー!?)

 

 意味の分からない専門用語を出されても答えられない。この街の超能力だって大して知らないのに。返答に困っていると美琴は嘆息しつつも、詰問をやめる。

 

「……ま、もうそんなの良いわ。あんたの能力が何であれ、結果的には助けて貰ったんだし」

 

 美琴は助けて貰ったから…と死ぬ気の炎について追及するのをやめたようだ。しかしあのモスカの狙いは本当に美琴だったのか疑問が残る。本当に美琴を狙っていたならツナがいるタイミングで死ぬ気の炎を動力源とするモスカを起動するのはどう考えても悪手だろう。モスカを知っているのなら、ツナの事だって知っているはずだ。ご丁寧に霧属性の炎の“構築”による隠蔽工作までしているくらいなのだ。

 これを踏まえるとむしろ敢えてツナの実力を見る為に用意されたように思える。

 

「そんな事より!あんた、私と勝負しなさい!!」

 

 美琴はツナの思考を遮ってビシッと人差し指を突き出してツナに宣戦布告。数秒間ツナは何を言われたのか理解できずに固まっていた。

 

「………んなーーーー!?」

 

「この頃張り合いある相手がいなかったのよね……。『原石』のあんたの炎とこの街で開発した私の電撃、どっちが強いか勝負といこうじゃない!」

 

「な、なんでそうなるのーーー!?」

 

 どうやらツナの死ぬ気の炎と戦闘力に目を付けたようで、美琴は好戦的な笑みを浮かべて身体に帯電させながらジリジリとツナににじり寄っていく。モスカとの戦いで行動不能になった憂さ晴らしも兼ねているのかもしれない。

 

「ちょ、待って!俺全然強くなんかないし、さっきのだってぐ、偶然?色々跳ね返っちゃっただけで……!!」

 

「嘘が下手くそね…!そんな言い訳が通じると本気で思ってるのかしら?それとも二重人格なんて言うつもり?」

 

 美琴は戦闘時と180度違うツナの様子に訝しみつつも本質的には普段と死ぬ気の時に何も変わりない事を何となく見抜いていた。

 どうやってこれを回避しようかと足りない頭を最大限稼働させてツナは必死に逃げようとする。が、美琴は逃す気は無いようで、より電撃を強くして迫る。

 だが天はツナを見捨てはしなかった。()()()を連れて来てくれたのだ。

 

「お!やっぱりツナじゃねーか。街の中は一通り見れたか?」

 

「あ!当麻君!」

 

「あ、あんたは……!」

 

 遠くからツナを発見したらしい補習帰りの上条がにこやかに鞄片手に近寄って来たのだ。ツナは上条に助けて貰おうと考え、美琴は上条を見つけるとますます好戦的な表情になる。その明晰な頭脳がこれまでツナに聞いた断片的な話からツナと上条の関係性を導き出したのだ。

 

「た、助けて当麻君!」

 

「助けてって……何か困ってんのか?」

 

「まさかあんたもここに来るとはね、ここが会ったが100年目よ!」

 

「おま……ビリビリ中学生!」

 

「だから私の名前は御坂美琴だっつってんでしょうが!いい加減覚えろ!!」

 

 初っ端から失礼な呼び名を使われた美琴は出会い頭に電撃を繰り出し、上条は咄嗟に右手でそれを打ち消した。美琴はそれを見て舌打ちする。

 

「相変わらず忌々しいわね!けど、まさかこいつを部屋に置いてるお人好しがあんただったとはね。丁度良いわ!こいつと一緒にあんたも勝負よ勝負!」

 

「またそれかよ!?……つーか、何でツナまで?……まさかお前ビリビリの前で死ぬ気モードになったんでせうか!?」

 

「色々あって……てゆーかどうしよう!?このままじゃ俺達……!!」

 

「と、とにかく逃げるぞツナ!特売に間に合わねえ!!」

 

「う、うん!」

 

「逃がさないわよ!二人纏めて黒焦げにしてやるわ!!」

 

 こんな時に頼りたい風紀委員(ジャッジメント)はこの電撃娘(ビリビリ)を止める為にここに来てはくれない。来たところで止められる可能性は限りなく低いが。

 飛来してくる電撃の槍から逃げながら上条とツナは走り出す。当然、あの言葉を叫びながら。

 

「「不幸だあぁぁぁっ!!」」

 

 特売には間に合わなかったそうな。

 

 因みにその日の夜、ツナにも学園都市による奨学金が出る事を知った上条は家計的な理由で泣いて喜んだとか。

 

****

 

 ビリビリと電撃を放つ美琴から逃げる上条とツナの様子を遠目から見ていた者達がいた。その内の一人は先程までツナを観察していた人物だった。

 

「……アレがボンゴレ10代目沢田綱吉。いやぁ、強いぜい。超能力者(レベル5)でもあの第三位程度じゃ相手にならないかもにゃー。直接戦いたくはないぜい。俺じゃ瞬殺されちまう」

 

「……当然だ。ボンゴレ…奴の強さは俺の方が良く知っている」

 

「さっすが、()()()()()()の言う事は違うにゃー」

 

 一人は金髪にグラサンのアロハシャツという不良全開の胡散臭い格好をした少年。その隣に立つツナを観察していた人物ーーー黒髪の少年は手元にある匣兵器を見て感慨深そうに口を開く。

 

「しかしモスカを匣兵器にしてしまうとはな。多少の情報と機体を提供しただけでこんな物を造り上げるこの街の科学力は大したものだ」

 

(……とはいえ、流石に解体する事を目的としたボンゴレの攻撃を受けては使い物にならなくなったがな)

 

 金髪の少年はポケットから黒髪の少年に借りたと思われるリングを一つ取り出すと指に嵌めて力を込める。しかし何も起こらない。

 

「つってもお前らにしか意味はねーけどな。俺は何度やっても指輪に炎なんて出せねーぜい。指輪の種類を何度変えてもな。『覚悟』は負けてねーつもりだが、やっぱ生まれた世界が違うからかにゃー?」

 

「だからこそ、あのお方はこのプランを立てたのだろう。お前達に炎が灯せるのなら、ボンゴレを呼び寄せる意味は無い」

 

 グラサンの男は死ぬ気の炎を灯す為のリングをもう一人の男に返すと興味深そうにツナに再び視線を向ける。

 

「けど、いずれ奴とその守護者には捕獲命令が下るんだろ?一回…いや、もう一人を含めると二回も負けたのにできるのか疑問だにゃー」

 

「……奴らに敗れたのは俺であって俺ではない。奴に敗れた『俺』は、仕えるべき神を間違えたのだからな」

 

 黒髪の少年はそう言って、腰に下げた剣に手を添えた。




次回から吸血殺し編。一応ね。
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