ちょっと長いので無理矢理纏めた感有り。
「赫然…!!貴様らだけは絶対に許さん。我が屈辱の全てを味わわせた上で殺してやる」
「俺もお前を許さない」
ツナは冷静にアウレオルスへの怒りを述べる。向こうが感情的だからこそ、ツナは冷静に戦える余裕が少しだけ生まれた。
「お前の怒りの理由は分からなくもない。自分の手でどうしても助けたかったインデックスを俺達が先に助けたら、やり場の無い怒りを抱えてしまうのかもしれない……」
アウレオルスも
「だけど、お前がこれまでしてきた事は話が別だ」
しかし、その後の事はアウレオルス自身が選んだ道。決して許されないと分かっていながらこんな非道をした者をツナが許せるわけがない。
「例えインデックスを助ける為だとしても、それは他の人を犠牲にして良い理由にはならない!!」
能力者に魔術の詠唱をさせ、挙句姫神を八つ当たりで殺した。アウレオルスのやった事は決して許される事ではない。償わせる。殺すのではない。生きて傷付けた人達への償いをさせなくてはならない。
何処までも利己的で他者を顧みない魔術師、そして錬金術師という生物にツナはどうしようもない怒りを抱く。インデックスの記憶を蝕んだ
「動くな」
その一言でアウレオルスとツナを除く全員が一切の身動きを封じられる。まずは上条を殺すべく、アウレオルスは先程の姫神蘇生から導き出した仮説を語る。
「真説その右手、私の
この短時間で上条の右手の弱点を見破った。その事実に上条はドキリとする。
「銃をこの手に。弾丸は魔弾。用途は射出。数は一つで十二分」
アウレオルスが右手を横へ振るとその手には剣に似た形の暗器銃が出現した。
ツナはインデックスを抱えたまま上条とステイルの前に高速移動する。
「
火薬の破裂する爆発音が響く。
ツナは黒いマントを広げてインデックス、上条、ステイルを包んだ。
更にアウレオルスの左右の手に五丁ずつ剣の形をした仕込み銃が具現化され、乱射された。その全てをボンゴレ
人間の動体視力を超えていても意味はない。ツナは全て『直感』して防ぎ、躱す。魔術であろうと錬金術であろうと、それが人の手によるものならばブラッド・オブ・ボンゴレが齎す超直感で全て対処できてしまう。
「もうこんな事はやめろ!こんな事したって、いや…こんな事したらインデックスはもうお前を受け入れられなくなる!」
インデックスはツナのマントの中で上条にしがみつき、迫る魔弾に怯えながらもアウレオルスを睨む。狂ったように嗤うアウレオルスが怖かった。かつて自分の『先生』だったという男が平然と人を目的の為に使い潰し、殺している事が悍ましかった。それでもこの男を止めなければならないから決して目を逸らさない。
「貴様に何が分かる!私は彼女を救う事が全てだった!それを奪われた!何も知らぬ所で!知らぬ間に!それさえ無ければ私が救っていたはずなのだ!!」
「だからって……そんなやり方で助けて貰ったって、インデックスが喜ぶわけないだろ!他の人を犠牲にするやり方で助けられた事を後でインデックスが知ったら、インデックスは二度と心から笑えなくなる!!」
「ならば知らなければ良い!貴様らがそれを台無しにした!!」
話は平行線。ああ言えばこう言う。アウレオルスの現状は正にそれだった。自分の思い通りにいかないから、我儘で癇癪を起こして当たり散らす子供そのもの。
上条達を守る為、彼らの側を離れられないツナは遠距離攻撃を仕掛ける。右手のXグローブから死ぬ気の炎を射出する。マントの方に炎を割かねばならぬ故に
「Xカノン!」
「消えよ。少年の炎」
アウレオルスの言葉に対し、死ぬ気の炎は消えず、そのままアウレオルスに直撃し、後方へと吹っ飛ばして壁に叩き付けた。
「がはあっ!?」
(やはりだ…!コイツだけじゃない!コイツの炎にも
理屈は分からない。
それを明確に思考にする前にアウレオルスは首筋に鍼を指して思考を切り替える。
(直接仕留められんのなら、別の物を介すれば良い!!)
「感電死!」
ツナの頭上に落雷が落ちた。しかしそれすらもツナは直感し、落雷が落ちる前に頭上に手を向け、死ぬ気の炎を放出し、大空の炎で雷を受け止めた。そして大空の“調和”の力で雷を空気に溶かす。それをアウレオルスは忌々しそうに睨む。
アウレオルスの意識が上条からツナに向いた事で魔弾での攻撃が一旦止んだこの隙をツナは見逃さない。ナッツをマントから元の姿に戻す。
「ナッツ!」
「ガウッ!GURURU……GAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!」
ナッツが叫べば向けられた銃は全て石化して、重力に従って床に落ちた。だがナッツの“調和”の咆哮は上条とステイルにも影響を及ぼしていた。
ピクリと動く指先。ステイルと上条は金縛りが解けている事に気付いた。二人は何故…とは考えない。口より先に身体を動かす。上条はインデックスの頭を撫で、怯えを取り払い、ステイルは咄嗟に炎剣を出してアウレオルスにそれを向けた。
「!?何故…いや、消えろ炎よ!」
アウレオルスはステイルが動いた事に一瞬驚愕するも、それより先に
(やはりステイル=マグヌスの炎は消える……。だが沢田綱吉の炎は消えぬ……これは一体……っ!!)
ステイルの炎に気を取られ過ぎていた。ステイルの炎に隠れて上条がこちらに全力疾走し、距離を詰めていた。
上条を止めようとしても時既に遅し。上条の右拳がアウレオルスの横っ面を捉えた。真横に殴り飛ばされながらもアウレオルスは自分でも驚く程冷静に沢田綱吉と二人の違いを分析していた。
冷静に考えろ。あの少年は炎で雷をガードしたのだ。つまり、雷が直撃していれば死んでいたという事だ。
頬を殴られて倒れ、立ち上がる。身体の痛みはあるが心に比べれば大した事はない。それよりも沢田綱吉と
「釈然。……完全に効かぬわけではないようだな」
あの炎を使えなくする事はできないだろう。しかし直接作用させる事はできずとも、間接的に追い詰める事はできる。
アウレオルスはまた鍼を取り出して首筋に差し込んで捨てる。その様子を見てツナは眉を潜める。
あの鍼はなんだ?さっきから何故そんなものを自分の身体に刺す?何かの治療?いや、そんなのは
そんな疑問の答えはこれまでインデックスとステイルから齎された情報を元に超直感が導き出す。
(インデックスやステイルが言っていた事から考えて、奴をどうにかするには……思考を封じるしかない)
「動くなっ!!」
再び上条とステイルの身体が停止する、まずはツナを何とかしなければならないと考えたアウレオルスは二人の動きを止めて後回しにする事にした。
だがツナはそんな思惑など知った事ではない。すぐ様アウレオルスの眼前に迫り、鳩尾に強烈な一撃を加えた。アウレオルスは痛みに悶えるも、激情は消えない。焼き殺さんばかりの目でツナと上条を睨む。
「もうやめろ。インデックスだってお前の話は聞いている。記憶は取り戻せなくても新しく関係を築いていく事だってまだできるんだ」
望んだ形の再会にはならないだろう。けれどもインデックスの敵にはならずに済むのだ。今この状況、アウレオルスはインデックスの敵になろうとしてしまっている。
「こんな事を続ければインデックスはお前に恐怖し、憎む事になるかもしれない。俺はもうインデックスにそんな思いはさせたくない。大切な友達だから。それはお前だって同じなんじゃないのか?」
「黙れ!貴様らさえいなければ!!」
その言葉に反応したのか、上条の右手がパキン…と何かを打ち消す。つまり今、アウレオルスは本気で上条とツナの存在の抹消を願ったという事だ。どういうわけか
衝動的にツナに拳を振り下ろすアウレオルス。ツナは左手でアウレオルスの右拳を受け止め、右手で左手首を掴む。その瞬間、ツナの額に灯っていた死ぬ気の炎がノッキングする。直後に真っ白な冷気が周囲に広がって、彼ら全員の視界を塞いだ。
(……冷気?)
上条はアウレオルスがツナを氷漬けにしようとしたのかと思った。ツナもステイルも炎の使い手だ。ならば残ったアウレオルスの仕業のはずだと。だからこそ、白い冷気が晴れて見えた光景に絶句した。
氷漬けになっていたのはアウレオルスの両手だったのだから。
「な…!?」
「あ…あぁ…?」
どういう事だ。
「溶けよ!溶けよ!忌々しい氷よ!!」
アウレオルスが何を言っても凍り付いた両手は戻らない。氷は溶けずにその手を封じ続けている。
「アウレオルス、もうこんな事はやめろ。さもなくば……氷漬けになるのはその両手だけでは済まないぞ」
最終警告。ツナはアウレオルスにここで止まるという選択肢を与える。これから取ろうとする最終手段ははっきり言って後味の悪い結果しか齎さない。
「お前の
故に賭ける。アウレオルスの思い留まるという良心に。生きて罪を償う良心に。チャンスをやったのだ。
「ふざけるな!貴様らはここで……!!」
だがアウレオルスは耳を貸さない。焼き殺さんばかりにツナと上条を睨む。交渉は決裂した。ならば倒さねばなるまい。
「お前の
「劣勢に立たされ、負けると思ってしまえば本当に負けてしまう。違うか?」
「そして意識がなくなってしまえば
次々と
感じる。何をしても抗えない絶対的な強者の持つ威圧感を。
(敵わない…!敵うわけがない…!!こんな奴に勝てる訳がないーーーーー!!)
故に自ら敗北の烙印を押してしまった。自ら小さい勝ち筋すら潰してしまった。それを彼の表情から察し、彼の意思に関わらずやたらめったらに妙なものまで具現化してしまいかねない精神状態になってしまったと悟ったツナは一度アウレオルスの意識を奪う事にした。
気絶させるのではない。それでは何かしらの悪夢を見て、それを具現化させてしまう恐れがある。
額の死ぬ気の炎が再びノッキングする。
「いくぞ」
ツナの額でノッキングしていた死ぬ気の炎は鎮火し、Xグローブも27と刺繍された毛糸の手袋に姿を戻す。しかし次の瞬間にはツナが
「死ぬ気の零地点突破・
技の名を口にすると同時にXグローブを嵌めたツナの両手がアウレオルスの左右の二の腕を鷲掴みにする。そこからアウレオルスの身体はみるみる凍り付いていく。その氷結速度から来る恐怖はアウレオルスから思考する余裕すら奪う。
「やめろ!やめろ!やめろォォォ!!」
「アウレオルス……お前、どうしてこんな……方法なら他にも……」
「黙れ!!
そして10秒も経たぬ内にアウレオルスは全身氷漬けにされ、その意識は闇に沈んでいた。
再びツナの額に死ぬ気の炎が灯る。
「……恐ろしいね」
ステイルは冷や汗を掻いて、刺々しい巨大な氷の中に閉じ込められたアウレオルスの絶望に染まった悲惨な表情とその前に立つツナの後ろ姿を見てそう呟いた。
「つーか、氷漬けにして大丈夫なのか?このままじゃこいつ……」
「この氷でアウレオルスが凍死する事はないが、この氷は死ぬ気の炎以外の力で溶かす事はできない。例え当麻君の右手であっても」
零地点突破の氷を溶かせるのは死ぬ気の炎だけ。流石に属性は問わないが、死ぬ気の炎そのものは消せなかった
「つまり、ツナなら溶かせるんだな」
「ああ。けど溶かすのはこいつをこのビルから出してからだ。ここで出したらまた
(しかし世界の全てをシミュレートしたはずのアウレオルスの
上条の右手ならばまだ分かる。上条の
しかし異質なものとは言え、何故ツナとあの炎には一切干渉できなかったのかが分からない。恐らくアウレオルスですら最後まで分からなかったはずだ。超能力という事は理由にはならない。
(沢田綱吉、こいつは一体何者なんだ……?)
得体が知れない者は本来なら即殺しておきたいが、ステイルではツナには勝てない。その上こいつがいなくなればインデックスが悲しむ。だからステイルは手出しができない。
氷漬けとなったアウレオルスを眺めるツナの脳裏に彼の怒りと悲しみ、憎悪、そして絶望に満ちた叫びがこだまする。
『
「……それでもお前は間違っていた」
死ぬ気の炎が鎮火したツナは俯きながら、拳を強く握り締め、やり場のない感情を無理矢理に吐き出すかのように声を絞り出した。
「……吸血鬼じゃなくて、同じ気持ちの人と……ステイルや神裂さん、他のインデックスと一緒にいたみんなと力を合わせてインデックスを助ける道を探せば良かったんだ……そうすれば違う未来だってあったんだ。それじゃ駄目だったのかよ……!!」
それはアウレオルスのインデックスに対する独占欲が強かったからなのか。
インデックスは悲しげに俯くツナの服の裾をきゅっと掴んだ。
****
後日、ツナは上条とインデックス、そしてステイルと共に姫神と出会ったファーストフード店にいた。
ハンバーガーをもしゃもしゃと齧りながら上条が本題に入る。
「それでアウレオルスはどうなったんだ?」
「ああ、簡単だよ。知っての通りローマ正教に引き渡し、投獄された」
これはある程度予想できていた事だ。三沢塾から出るとその外で集団で屯していたのがローマ正教だ。イギリス清教所属のステイルが話を付け、アウレオルス拘束の為に零地点突破の氷を溶かすように要求された。
心身共にズタボロでローマ正教に拘束されたアウレオルスは最後にインデックスに悲しげな瞳を向け、無言で連行された。インデックスは最後に何か語りかけようとしたが……何も言えなかった。
「いずれは刑罰も決まるだろうが、このままでは処刑を免れる事はできないだろうね。ローマ正教を裏切った上にあれだけの事をやらかしたんだ。情状酌量の余地なんて何処にもない」
アウレオルスはローマ正教を裏切り、錬金術師となり、
因みに
「
「そんなん納得できるわけねぇだろ。例えそれしか道がなかったとしたって、
上条達はアウレオルスのやらかした一連の出来事が許せないから戦った。他人の命を何とも思わない奴が許せないからこそ、逃げ出さずに戦った。しかし最後の最後で人の死を『善』と認めてしまえば上条は自分で振るった拳の罪悪感に耐えられなくなる。
「だから君は甘いんだよ。そんな理屈がまかり通るなら、そもそも死刑なんてとっくに廃止されているよ」
ツナは二人の会話……いや、上条の言葉を聞いて、とある出来事を思い出す。ツナもまた、世界を救う為に一つの命を奪ってしまった事がある。当時はそうするしかなかったとはいえ、今でももっと他に方法はなかったのかと思う。
あの出来事の事を上条が知ったら、彼はどう思うだろうか。
上条なら、あの時の白蘭にどう向き合うだろうか。アウレオルスを殺すべきではないと言ったように、白蘭を殺さずに済む道を見つけてみせたのだろうか。
「……」
因みに姫神はあの後、インデックスに『歩く教会』の効果を一部抽出したケルト十字架を貰い、それで『
何とも後味の悪い結果になったものだ。同じく零地点突破を使ったヴァリアーとのリング争奪戦も同様にどこかすっきりしないまま終息したのを覚えている。
ステイルは次の仕事があるとかで、イギリスへ帰るそうだ。またもツナと上条に殺害予告をして去っていった。その際にぎこちないながらもインデックスが「またね」と言った時、一瞬だけ嬉しそうな目をしたのが印象的だった。ステイルにはアウレオルスと違い、またいつかインデックスと共に笑い合える日が来るのだろうか。来て欲しいな。ツナはそう思った。
「さて……ツナ、インデックス。俺らも帰ろうぜ」
「うん!」
「……うん」
しかしツナの顔は暗かった。結果三沢塾でアウレオルスの犠牲にされた人達はほとんどが重傷。助からなかった者もいるし、殺された者までいた。上条が望むようなハッピーエンドとは程遠い結末だ。
アウレオルスを倒した時の後味の悪さだって残っている。リボーンがいればあいつのやった事は絶対に許されない。同情なんかするなと言われるだろう。
(……けど)
どうしてももっと良い方法はなかったのかと考えてしまう。
そして、アウレオルスとの戦いを通じて直感したある可能性がずっとツナの中で引っかかっていた。
世界的に知られているはずの学園都市と人工的な超能力の開発をツナやリボーンは知らなかった。並盛にいた時は秋であったはずの今の季節が学園都市では夏である事。
インデックス曰く、魔術は別の世界で振るわれた力の残骸を使用している。
ツナの認識との食い違い。そしてツナが
しかしその結論が
(まさか……そんな訳、ないよな?リボーンと連絡だって取れてるんだし……)
流石に突拍子がなさ過ぎる。学園都市のあるここが、アウレオルスがシミュレートしたこの世界そのものがツナや仲間達にとって異世界であるなど。
ぶっちゃけ最初、吸血殺し編は無くても良いとすら思ってたけど、ツナが異世界にいる事を自覚するには黄金錬成が都合良かったのでほぼその為に書いた章でした。
他には原作でのアウレオルスの末路がかなり悲惨だったので
黄金錬成が使えない外に出て氷を溶かし、何もできない状態でゆっくり噛み砕かせる……それがアウレオルスにとってもベターな結末かな…と。ですが、彼のやった事は決して許されないので記憶がある以上、氷から出せば処刑は免れません。……あれ?より悲惨になってね?
……
次は絶対能力進化計画編。ある意味一番書きたかった話です。前書きで言ったようにいつになるか分かりませんが。