シナリオ上、この話があった方が進行に支障がなくて済むので。
盛夏祭来る!
-8月2日
今日この日、ツナは上条とインデックスと共に三人で『盛夏祭』という常盤台中学校の文化祭のようなイベントに来ていた。上条の学生寮の隣の部屋の住人であり上条のクラスメイトである土御門元春の妹、舞夏に招待状を貰った事がきっかけである。彼女は繚乱家政女学校という学校の生徒で、今回の盛夏祭の料理を監修しているのだとか。
因みに土御門本人は来ていない。というか変態だから駄目という理由で舞夏が招待を拒否した。これは流石に本人は泣きたくなったであろう。
(そういえば、ここの寮って御坂さんの学校のだっけ……?)
「わー!良い匂いがするんだよ〜!」
「いきなり食べ物ー!?」
「インデックスさん?頼むから食べ放題だからって食堂の飯全部食うなんて暴挙はしないでくださいよ?文句言われて怒られるの俺なんだから……」
とはいえ、ツナ自身この盛夏祭で展示されている中ではさほど興味を引くものはない。造花やシュガークラフトを見せられても男子中学生にとっては何も面白くない。上条も微妙な顔をしていた。
強いて言うなら常盤台生が着用しているメイド服が自分の知り合いの女の子にも似合いそうだと思ったくらいか。
(京子ちゃんが着たらきっとかわいいだろうなぁ〜)
というか現在進行形で思っている。メイド服の常盤台生にデレデレしている訳ではないが、そんな彼女らに目もくれずに他の女の子が着用した場合を考えているのはこれはこれで滅茶苦茶失礼である。
「ん?上条じゃん」
「あ、黄泉川先生」
あのメイド服を京子が着ていたらと考え、トリップしていたツナだが、ふと周りに目を向ければ自分と上条の間にいた少女の姿が消えている事に気付いた。
「ってアレ!?インデックスがいない!?」
「えっ?本当だ!?いきなりどこ行ったアイツ!?」
上条はさっきまで知り合いらしい
「何やってんだよアイツ…!やべぇ、今頃ここのありとあらゆる場所で暴飲暴食の限りを尽くして、後で多額の請求が来るんじゃ……!?」
「そ、それは言い過ぎ……じゃないよね」
食べ放題と言えど限度があるだろう。下手をすればインデックスがこの盛夏祭で用意された食べ物を独占してイベントを滅茶苦茶にしてしまうのではないか。そうなれば上条の監督責任が問われる可能性が高い。
二人の顔が真っ青になり、別々の方向に足を進める。
「お、俺はあっちの方探してくる!ツナは向こうの方頼む!」
「う、うん!」
こうして上条とツナは二手に分かれて迷子のインデックスを探す羽目になるのであった。
「ったく、インデックスどこ行っちゃったんだ……?」
インデックスを探して常盤台中学の学生寮の中を歩き回るツナ。正直女子校の寮を一人で歩き回るなんて色んな意味で怖くてツナにはできない。さっさとインデックスを見つけて上条とも合流したい。
『他にご入札なさる方はいらっしゃいませんか?いらっしゃいませんね?ではこれで落札となりまーす!』
拡声器で大きくなった声がツナの耳に届く。そちらを見ればメイド服の常盤台生が司会を務めるオークションが開催されていた。落札者は眼鏡をかけた他校の女生徒らしく、嬉しそうに受け取っていた。
「へぇー、オークションなんかもやってるんだ。うわ、あのバッグ高そう……」
『さて、次の出品はぁ〜?次はキルグマーの文具セット!まずは100円から!』
次に出品されたのは先程のブランド物のバッグと打って変わって子供向けの可愛らしいノートや鉛筆だった。見るからにその辺のショッピングモールで売ってそうで安価なのが分かる。
(全部が全部高価なものなわけじゃないんだ……。そうだよな。外部の人の為に開くって土御門さん達も言ってたし、小学生くらいの子供達もいたから、むしろこういう商品がメインなのかも……)
耳をすませば200円、300円…と非常に安い値段での競りになっている。声の主も子供ばかりで年齢が高くても女の子のものだ。やっぱりこれは遊びに来た子供達の為に出品されたものなのだろう。
「一万円ッ!!!」
空気が静まり返った。つーか死んだ。100円単位で競われていたものがいきなり桁が二つも増えた。明らかに子供には出せない値段で勝ち取ろうとする大人気ない人物が空気を読まずに競り落としに来たのだ。
当然、たかが文具セットにそれ以上の値段を出す者が現れるわけがなく、一万円を提示した人物が競り落とした。
ターゲット層である子供を差し置いてクソみたいな事をしておきながら優雅に壇上へ上がる彼女とはツナも面識があった。先日ツナが学園都市の生徒として扱われている事などを教えて貰い、色々と世話になった
(何やってんのあの人ーーーー!!?)
ドン引きである。周囲の人達もかなり白い目で彼女を見ていた。
何であんな子供用の文具セットを一万円なんて大金を出してまで落札するのか意味が分からない。それなら自分で買った方が遥かに安く済むだろう。そもそも以前美琴にお子様趣味はどうかと思うとか言ってなかったか。
(よ、良く分かんないけど白井さんはあのキャラが好きなのかな……?御坂さんの事言えなくない?)
まだ一度しか面識のないツナには知る由もなかった。アレが御坂美琴が出品したものであるが故に黒子がこんな暴挙に出るなど。
まさか雲雀恭弥のように学校の風紀を取り締まるはずの彼女が同性に猛烈な好意を抱き、肉体関係を迫る変態である事など。
ツナには知る由もなかった。
****
変な光景を見せられて改めて学園都市の異常性を確認したツナはまたインデックスを探し始める。正直オークションにはちょっと興味はあったが、元々の持ち金が大してない上に
加えて言えばツナは優柔不断だから買うかどうか迷って結局買わずに時間だけ浪費してしまうだけなのが目に見えていた。
ある意味インデックスを探していて良かったと思いつつ、周囲に人がいない事に違和感を覚える。そしてようやく人が見つかったのでインデックスを見ていないか聞いてみる事にした。
「あのーすみません、人を探してるんですけど……って、あれ?御坂さん?」
「……なっ!?ア、アンタが何でここに!?」
どうやらツナは何処かの舞台裏らしき場所に迷い込んでしまったらしい。そこにいたのは白いドレスに身を包み、ヴァイオリンを持って演奏に臨もうとしていた御坂美琴がいたのだ。
「えっと、知り合いに招待されて……もしかしてここ、入っちゃ駄目な場所だった?」
「……そうよ。他の生徒や寮監なんかに因縁付けられる前に早く出た方が良いわよ」
しかしここで美琴の頭にある疑問が浮かんだ。
沢田綱吉がここにいるという事は彼を部屋に居候させているというあのツンツン頭の高校生もいるのではないかと美琴は思った。
「……まさかあの馬鹿も来てるわけ?」
「それって、当麻君の事だよね?一緒に来てるよ。はぐれちゃったけど」
「ハァ……あの馬鹿、人の発表を茶化しにでも来たの?慣れない衣装を笑いに来たの?」
何故美琴がそんな事を聞くのかツナには分からなかった。しかし美琴のこの誤解だけは看過できない。彼女が上条をどう思っているのかは良く分からないが、これだけは言わずにいられなかった。
「当麻君はそんな事しないよ。真剣にやってる人を馬鹿にするような事はしない。絶対に」
いつもの気弱そうでありながらもゾッとする程に真剣なツナの眼差しと言葉に美琴は思わず言葉を詰まらせた。
流石にこの場にいない人物に対して言う事ではなかったという自覚はあったのかバツが悪そうな顔をして俯く。ツナはそんな美琴が纏う雰囲気から彼女の心情を直感した。
「……もしかして御坂さん、緊張してる?」
「っ!」
なるほど。先程上条の事をあんな風に言っていたのは緊張からくるプレッシャーの捌け口が欲しかったのかもしれない。
美琴は今日会った友人達の誰もが気付かなかった美琴の本心を見抜いたツナに驚く。目が「どうして分かったのか」と物語っている。
「俺も似たような経験はあるからさ……どうしても期待が重い事ってあるよね」
ツナ自身、体育祭の棒倒しやマフィアランドでのカルカッサファミリーとの抗争など事ある毎に望んでもいない総大将の座に周りから祭り上げられてどうして良いか分からなくて逃げ出したくなる事は沢山あった。
そんなツナにある種のシンパシーを感じたのか美琴はぽつりぽつりと愚痴をこぼし始めた。
「……そうよ。期待が重いのよ。決まった以上はやるけど、ヴァイオリンだってみんなの前で壇上に立って演奏できる程上手い自信も無いし、それなのに黒子も初春さんも佐天さんも寮監までドンドンハードル上げていくのよ。どこかでミスの一つでもしたら、私が恥かくだけじゃ済まないの。みんなガッカリする。
それを聞いてツナは少し己を恥じた。山本の自殺騒動の時とある意味近い。ツナの言う期待の重さと美琴の言う期待の重さは似てるかもしれないが、美琴のそれとの向き合い方はツナとは比べ物にならない正しい向き合い方だったからだ。
「……俺は御坂さんと違ってダメな奴だから、御坂さんがプレッシャーを感じてるのが分かっても実際に御坂さんの感じてるプレッシャーがどんなものかは分からない」
「ダメな奴って……そこまで自分を卑下しなくても良いんじゃないの?」
「あははは……」
乾いた笑いしか返せない。
「俺は御坂さんと違って決まった以上はやるとか、失敗したらどうしようとか、知り合いがいるから緊張しちゃうとか、そんな凄い事した事も思った事もなくて、むしろ真っ先に逃げる方法なんて考えちゃうくらいで……死ぬ時になって後悔しちゃうような情けない奴なんだ……。どうせこうなるなら死ぬ気になってやっておけば良かったって……こんな事で死ぬの勿体ないなって……」
「話が飛躍し過ぎじゃない?死ぬ時がどうとかって」
自然に死ぬ気弾を撃たれた時の事を語ってしまったが、これは出す言葉を間違えた。今回は美琴が寄せられた期待の重さに悩んでいるのであって、山本が自殺しようとした時とは違うのだ。
「へ、変な事言ってごめん!俺じゃ大した事言えないけど、その…頑張って!」
かける言葉を間違えた事に気付いたツナは美琴に謝り、応援の言葉を告げてからその場を去ろうとする。
「待ちなさいよ」
呼び止められて振り向けば美琴はどこかスッキリとした表情をしていた。
「ありがとね。気持ちを分かってくれる奴がいるだけで、大分楽になったわ。本音を吐き出せたし何とかなりそう」
そしてツナが行こうとした方へと指を向け、そこから左を曲がるようにジェスチャーする。
「舞台裏の出口はそっちよ。他の人に見つからないようにね。色々と面倒な奴多いから」
「あ、うん。ありがとね御坂さん!じゃ!」
去って行くツナの後ろ姿を見ながら美琴は自分で言った通り、のしかかっていたプレッシャーが胡散して気持ち的にはかなり楽になっているのを実感していた。緊張も大分
「死ぬ気でやる……ね。ヴァイオリンには全然結び付かない熱血系じゃない」
でもツナが言った感じで気合いを入れるスタイルの方が美琴には合っているのかもしれない。ちょっとそう思った。
今なら、自分なりにベストな演奏ができそうだ。
****
美琴と別れた後、ツナは本来の目的であるインデックス捜索を続けていた。結局インデックスの事を聞きそびれてしまった。あんなにも緊張していた美琴がインデックスを見かけてもそれを覚えているとは思えないが。
彼女が行きそうな場所で思い当たるのは食べ放題をしているらしい食堂くらいだが……。
「って、そうだ!パンフレット貰ったんだからこれで食堂の場所確認すれば良かったじゃん!」
超直感があっても変な所でそれが役に立たないツナはようやくインデックスを探す上での最適解に辿り着いたのだった。
一方その頃上条もまた迷子になったインデックスを探して常盤台の学生寮の中を彷徨い歩いていた。しかし闇雲に探してもあの無駄に行動力があってウロチョロする暴食シスターは捕まらない。ならばまず目撃証言を得なければ。
そう思い、上条は近くにいる偶々目に付いた
「あのー、すみません……」
「あらぁ?何かし……ら……」
上条が話しかけた常盤台生は上条を視界に入れた途端、目を丸くして黙り込んでしまった。やはり箱入りお嬢様にそこらの男が気安く話しかけるのは不味かったかと思いつつも、良く見れば周りに人は彼女しかいないので、まずは彼女にインデックスを見ていないか聞くしかない。
「お取り込み中すみません、実は一緒に来た連れとはぐれてしまって……こーんなちっこくて、白い修道服の女の子なんですけど見ていませんか?」
金髪の常盤台生は暫く上条を呆然と見ていながらも話は聞いていたようで、何故か俯いてから上条の質問に答える。
「……ごめんなさい。見ていないわぁ」
「そうですか。じゃあ食堂が何処か教えて貰えませんか?多分そこにいるとは思うんですが、パンフレットをもう一人の連れが持ってて……」
「それなら、そこの階段を降りてから……」
常盤台の生徒に食堂の場所を聞いた上条はその助言に従ってそこに向かう。すると既にツナがインデックスと合流していた。
「当麻君!インデックス見つけたよ!食堂にいた!」
「とうまー!どこ行ってたのー?」
「お!ツナ、見つけたのか!つーかインデックス、普通それはこっちの台詞だからな?お前はどうしてそう勝手に知らない所をウロチョロするわけ?」
「む!何かなその言い方!私はまいかのお料理を食べに行っただけだもん!」
「なんで匂いだけで辿り着けるの……」
相変わらず食欲が最優先なインデックスに呆れていると、それは耳に届いた。
「ん?」
ヴァイオリンの優雅な音色が心地良く聴こえてきた。
****
盛夏祭の日程が終わり、帰り道にてツナは上条とインデックスに盛夏祭で見聞きした出来事について話していた。勿論、美琴が期待の重さに押し潰されそうになっていた事は伏せておいたが。
因みにインデックスは聞いてない。お持ち帰りしたスイーツを歩きながらドカ食いしている。
「へぇ、ツナお前またビリビリに会ったのか。変な因縁付けられなかったか?」
「真っ先に聞く事それなの!?当麻君はいつも御坂さんとどういう会話してるの!?…って、そっか。喧嘩売られてるんだっけ……」
「そ。お前だって他人事じゃないからな?死ぬ気モード見られてるし、お前も勝負しろーって一緒に追い回されたんだから」
上条としては美琴と鉢合わせしなくて珍しくラッキーと思っているのかもしれない。
「んじゃあのヴァイオリンの演奏はビリビリのだったのか。いつものガサツなとこからは想像できねーな。なんつーかちゃんとお嬢様してるっつーか……」
散々な言われようである。上条から見た美琴はやたらめったらに喧嘩を売ってくるガラの悪い中学生程度の認識故だろう。
しかしツナはあの演奏を聴いて全く別の事を思った。人前で弾ける程上手くないと自分で言っていたが、そんな事はない。
「俺、ヴァイオリンの事は良く分からないけど、聴いていて分かったんだ」
碌にヴァイオリンの演奏など聴いた事のないツナでも心惹かれる演奏だった。もう一度聴きたいと思えるくらいには。
「みんなが御坂さんに期待したくなる気持ちが」
上条さんの場合は怒鳴られる事で緊張を吹き飛ばしたけど、ツナの場合は美琴の心情を察して自然な流れでのメンタルケアかな…と。
ランボがいればハチャメチャな内容にできたんだけどなぁ……。
上条さんが並盛町に行ったらどんな不幸に遭うと思う?
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雲雀さんに咬み殺される
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ポイズンクッキングの餌食
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ラッキースケベで通報される
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爆発オチ