とある魔術のボンゴレX世   作:メンマ46号

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怒涛の嵐来る!

「と〜う〜ま〜!お腹減ったって言ってるんだよ!どうしてまだご飯が食べられないのかな!?」

 

「仕方ないだろ!貴女の連れ込んだ猫にひっついてたノミを駆除しなきゃいけないんだから!」

 

 昨日ツナとインデックスが御坂妹に聞いたという煙タイプの殺虫剤を使い、部屋に巣食うノミの駆除を試みた上条。しかし煙を出すタイプという事は部屋を密室にした上で暫く入れなくなる。

 そんな訳でインデックスは夕飯を食べるのが遅れてご立腹なのだ。因みに外食という選択肢はない。この暴食シスターがどれだけ家計を圧迫するか分かったものではない。

 

「だったら晩ご飯食べてからでも良かったと思うんだよ!」

 

「早めに駆除した方が良いだろ!それにまだツナが帰って来てないんだから先に食べるわけにもいかねーだろ!!」

 

 煙を出すタイプの殺虫剤という事は使用前に部屋の中をそれなりに片付け、新聞紙で家具の一部を包むなどしたり、使用後の換気や諸々の後始末を要する。それが全て終わってようやくインデックスは夕飯へとありつけるのだ。

 

 それらの事を一から懇切丁寧に説明し、上条はそもそもの原因について語る。夕飯の時間が遅くなると聞いたインデックスの目が非常にギラついている事に気付かずに。

 

「分かりましたかインデックスさん?そもそも野良猫だったスフィンクスを飼いたいって我儘言った結果、部屋にノミが散ったんですからそれくらいの我慢は……」

 

 お説教は途中から聞き飛ばし、空腹の我慢の限界を迎え、ガブリとインデックスが上条の頭部に噛み付いた。

 

「んぎゃああっ!!不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

****

 

 夕暮れの光が眩しく輝く中、一人の少年が歩道橋の階段に腰掛けていた。手に握る携帯電話の画面は真っ暗だ。

 

「くそっ!全然見つからねー!電話しようにもケータイの充電切れてやがるし……!!」

 

 ガラの悪い銀髪の少年、獄寺隼人がこの学園都市に来てから大体一日が経とうとしていた。少年はある人物を探す為にこの学園都市に来た。

 その人物は獄寺にとって生涯仕えるべきボスであり、かけがえのない親友でもある。というかツナだ。

 

(……不貞腐れても10代目は見つからねー。連絡が取れねー以上は地道に歩いて探すしかねぇ!!)

 

 この街の人間の手を借りるという選択肢は最初から無かった。件の人物はそもそもこの街の人間に拉致されたのだ。そんな奴らに近しい者達に頼るなど言語道断だ。信用できるわけがない。

 

 この街の至るところにある地図を見る限り、ここは第七学区と呼ばれる区域のようだ。リボーンから聞いたツナが身を置いているという場所も第七学区。つまりツナはこの近辺にいるはずなのだ。

 

 立ち上がり、もう一度一からこの街をしらみ潰しにツナを探す。山本達がいつこちらに来れるかは分からない。どっち道獄寺は単独でツナを探すしかないのだ。

 獄寺は街を見渡しながらツナの姿はないかと探して歩く。そして前方から来たガラの悪い男とすれ違うと同時に肩がぶつかる。獄寺はそれには気にも留めずに行こうとする。しかし向こうは違った。

 

「おうコラ、ぶつかっといて詫びも無しか」

 

 そのまま行こうとする獄寺の肩を掴み、ガンを飛ばして因縁を付ける不良。

 

「あぁ?てめーらなんかに構ってる暇はねぇんだ。とっとと失せろ」

 

 それに対して獄寺はこんな不良に微塵も興味がない事から適当にあしらおうとする。しかし狙い澄ましたかのように獄寺と不良の周囲を同じような不良が取り囲む。これは確実に狙ってやった事のようだ。わざとぶつかり、当たり屋のように因縁を付けて金をせしめようという腹だろう。

 

「場所を変えようぜ。誂え向きの場所があんだ」

 

 下手に騒ぎを起こせばツナを探すのも遅れる。獄寺は舌打ちをしながらもすぐに終わらせるべく、囲んできた不良達に付いて行く事にした。

 そして連れて来られた場所は何処かの廃工場のような空き地であった。

 

 不良達はニヤついて鉄パイプなどの廃材を手にする。しかし中には何故か素手の者もいる。

 

「この辺には監視カメラはねぇからよ。ここに連れ込みゃボコり放題で金もむしり放題って訳だ」

 

 向こうはリンチでもしてくるつもりか。しかし獄寺は多対一など何度も経験している。

 こうなったらツナ捜索を再開するには速攻で倒すしかない。獄寺は懐から数本のダイナマイトを取り出そうとポケットに手を入れる。

 

「俺にやらせてくれよ。丁度的になる奴が欲しかったんだ」

 

 そう言って集団の中から前に出て来るのは素手の不良。獄寺はまずこいつを片付けようとダイナマイトを出そうとし、その前に素手だった不良の掌から野球ボールサイズの炎の球が現れた。

 

「っ!?……何だそりゃ」

 

「見りゃ分かんだろ、俺は強能力(レベル3)発火能力者(パイロキネシスト)だ!!」

 

 明らかにライターなどで出した炎ではない。間違いなくあの手から出ている。かと言って死ぬ気の炎ではない。自然界に存在する普通の炎だ。

 ここで獄寺は思い出す。リボーンがツナから聞いたという情報。この学園都市がどういう所なのかを。

 

(これが人工的に開発されたっていう超能力か!!)

 

 不良は獄寺に掌を向け、能力で出した炎をまるでボールを投げつけるかのように発射した。

 だがただの炎だ。獄寺達マフィア関係者が使う死ぬ気の炎に比べれば大した事はない。速度も威力も、死ぬ気の炎に遠く及ばない。

 獄寺は能力そのものには驚きつつも、軽く身を捻るだけで飛んで来た火球を躱し、都合良くそれを利用して導火線に着火させた。そしてそのまま駆け出して発火能力者(パイロキネシスト)だという不良に向かっていく。普通の中学生とは到底思えないような速度で。 

 

「なんっ…」

 

 手前の発火能力者(パイロキネシスト)を通り抜け、更にはその後ろにいた不良達の背後にまで辿り着き、足を止める獄寺。

 

 しかし不良達の視線はそんな獄寺には向いておらず、手前にいた発火能力者(パイロキネシスト)の周囲……そこに放られた数本のダイナマイトに向けられていた。

 

「ボムスプレッズ」

 

 すれ違い様にダイナマイトを敵の周囲に放り、逃げ道を与えずに爆破する技。かつてリボーンとの強化プログラムにて身に付けたスピードと柔軟性を活かした技だ。尤も、このスピードの要因はそれだけではないのだが。

 雲雀にトンファーの回転で防御された時とは違い、それを反省点として導火線を限りなく短くし、防御する暇をも与えないように改良してある。少しでも相手に投げるのが遅れれば自滅しかねないやり方だ。

 

「は…?」

 

 周囲に散りばめられたダイナマイトを見て目を丸く、そして顔を青くする不良。獄寺は冷めた表情でタバコを咥え、お決まりの台詞で締める。

 

「果てな」

 

 ドガン、と凄まじい爆発音が響いた。

 

 不良の一人の周囲に配置されたダイナマイトが一斉爆破し、不良は爆発に包まれて気絶する。発火能力者(パイロキネシスト)という事で熱や火に耐性はあるのだが、爆発による圧力や衝撃は別だ。それらを纏めて喰らえば能力者でもひとたまりもなかった。獄寺がそんな事を知るわけもないが。

 

「躊躇なく爆破しやがった!!」

 

「テメー本当に中坊か!?なんでダイナマイトなんて持ってやがる!?」

 

「しかもなんか使い慣れてんぞコイツ!!」

 

 不良達もここで獄寺の異常性に気付く。能力の強度(レベル)云々ではなく、もっと根本的な部分が違う。気に入らない相手をボコったり、金の為の恐喝をする連中とは訳が違う。

 

「シメーだ。俺は行くぜ」

 

 不良を倒した事で獄寺はその場を去ろうと歩き出す。しかし仲間がやられてそのまま黙っている程聞き分けの良い連中ではない。獄寺を見逃すまいと彼を引き止めようとする。

 

「待てやコラ!まだ俺達が……」

 

「とっくに終わってんだよ」

 

 獄寺がそう言うと不良達はジジジ…と何かが焼ける音を聞き取る。その音が聞こえる場所へと恐る恐る目を向ける。

 

 不良達のポケットに既にダイナマイトが仕込まれていた。先の戦闘で獄寺がボムスプレッズを使用した時に一緒に仕込んでいた……奴らの仲間を一人葬ったボムスプレッズすらこの為の布石、陽動だったのだ。そしてこちらの導火線は通常の長さではあったが……もう燃え尽きようとしていた。

 爆発の恐怖を前に彼らは演算をする余裕すら失っていた。

 

「ピックポケットボム」

 

 それぞれが喰らったのはたった一本のダイナマイトによる爆撃。しかし正に至近距離での爆発である故に防ぐ事もできず、能力者達は能力の開発すらしていない『普通の人間(マフィア)』に敗れた。

 

 

 

「ったく、余計な時間食っちまった……」

 

 尋ね人(ツナ)が見つからない上、面倒な輩に絡まれてイラついて半ば自棄になっているのか、それとも単にニコチンが欲しいのか、獄寺は未成年にも関わらずタバコを咥えたまま、慣れた手付きでライターを使い、火を付けて喫煙を始めた。

 

 しかし今戦った相手がこの街の科学力で人工的な超能力を身に付けた能力者らしい。レベルがどうとか言っていたが、恐らくあいつらは弱い部類に入る連中のはずだ。恐らくツナが戦ったという魔術師の方が強いのだろう。

 リボーンに聞いた話ではツナは魔術師とはそれなりの頻度で戦ったらしいが、能力者とは特に絡む事もなかったらしい。

 

 獄寺が戦った能力者は大した事はなかったが、この街の最高位の能力者とやらの力量はまだ分からない。最悪そいつらを敵に回す事も考慮しなければならないというのに。

 

「……何なんだこの街は……」

 

 超能力が開発されているのに、悪用を防ぐ為の規律がないと思われる程に治安も悪く、何より世界を越えて人間を拉致している。滅茶苦茶な事ばかりだ。

 

 そうして考えながら歩いているとすぐ近くから聴き慣れた……しかし暫く耳にしていなかった声が聞こえてきた。

 

『そんなーー!!』

 

 叫びが聞こえたと同時に振り返る。今更聴き間違うわけがない。ましては自分はあの方の右腕なのだ。

 

「今の声は……10代目!?」

 

 すぐ近くだ。10代目がすぐ近くでピンチに陥っている。ならば真っ先に駆けつけてそのトラブルを解決する事が右腕である自分の務めだ。

 獄寺は例の叫び声が聞こえた方向へと全速力で走り出した。

 

****

 

 ツナは黒猫を抱き抱えて、近くの公園のベンチに座り込み、御坂妹……妹達(シスターズ)について考えていた。

 

 あの後、ツナは御坂妹達に何をやっていたのか説明を求めた。しかし彼女達はそれを拒否。何を聞いても実験、事件性は無いの一点張りだった。

 

『本実験に貴方を巻き込んでしまった事は重ねて謝罪しましょう。と、ミサカは頭を下げます。では猫をお願いします』

 

 そう言って御坂妹達はそのまま去って行った。

 

 御坂美琴の体細胞クローン、妹達(シスターズ)。口頭で簡潔に説明されただけだったが、何かとんでもない事態が起きているのは間違いない。何よりクローンが量産されて実験と称して殺害されているのだ。そしてそれを自分達で回収し、証拠の隠滅を図る。どう見ても異常だ。

 

 クローン同士の殺し合いとも考えられたが、ツナの中にある超直感がそれを否定する。御坂妹の一人は悪意を持った第三者に殺されたのだと。

 

(御坂さんは……何をどこまで知ってるんだ?)

 

 昨日から御坂妹を前にしてもその存在そのものには驚いてはいなかった。つまりクローンが作られている事は知っていたはずだ。

 

 妹に関する事でやたらピリピリしていたのも、御坂妹の行動一つ一つに過敏に反応していたのも、妹達(シスターズ)の言う『実験』が関係しているのではないか?

 

 とにかく、自分だけでどうにかできそうな問題ではない。ツナは上条に相談しようと携帯電話を取り出す。しかし電話番号の登録リストで上条の名前を見つけてから思い留まる。

 

 クローンの問題なんていくらなんでもそう人にポンポン話して良い内容ではない。

 

 上条を信用していないわけではない。しかしいくら共に死線を掻い潜った仲でも簡単に話して良い内容ではない。それが自分ではなく、他人の秘密なら尚更だ。美琴も言い触らされて良い気分はしないだろう。

 もしも相談相手が上条ではなく、並盛にいる仲間達の誰かなら、ツナから見ての話は別だったかもしれないが。

 

 御坂美琴が巨大な悪意に晒されている事だけは間違いないのだ。

 

「とにかく、御坂さんに話を聞いてみないと……」

 

 以前、土御門の妹である舞夏から招待状を貰って上条とインデックスと共に常盤台中学の盛夏祭に行った事がある。それは常盤台の学生寮で行われた。つまりあの寮に美琴は住んでいるという事だ。

 まずはもう一度あそこに行き、美琴に直接を話を聞かねばなるまい。まさかこんな理由でもう一度行く事になるとは思わなかったが。

 

(でも常盤台って女子校だよな……。招待されたわけでもないのにそんなとこの寮に行くのってやっぱ不味いよな……)

 

 何か口実が必要だが、思い付かない。……行きながら考える事にしよう。

 そうして歩き出したツナの服の襟を掴んだ者がいた。そしてその者はそのまま強い腕力で強引に服を引っ張り、ツナを路地裏へと引き摺り込んだ。

 

「いっ!?」

 

「カモはっけ〜ん」

 

 ツナは路地裏に引き摺り込まれるとそのまま壁に叩き付けられた。

 ニヤニヤと笑うガラの悪い男がツナをカモ呼ばわりしている時点でカツアゲの類いなのは間違いない。そして四人程いた不良の中の二人がツナの顔を見て何かに気付く。

 

「おっ?てめーはこないだのビビリじゃねぇか」

 

「なら今度こそボコらせて貰うぜ。猫の餌代くらいは持ってるみてーだしな」

 

(また不良に絡まれたーー!!しかもこんなタイミングで!?)

 

 彼らの内二人は以前ツナが学園都市に来た日にツナに絡んできて美琴に撃退された不良である。学園都市ではスキルアウトと呼称すると上条に聞いたが、そんな事は今は関係ない。

 不良は怖いし、ボコられるのは普通に嫌だし、何より今は彼らに構ってる暇などないのだ。

 ツナは人相こそ悪いが彼らの中ではそこそこ良識を持ち合わせてそうだと直感した金髪の不良に何とか見逃して貰えないかと視線を向ける。金髪の不良は何となくツナの気持ちを汲み取ったのか、少々気不味そうに哀れむ表情をツナに向ける。しかし彼には態々ツナの肩を持つ理由などない。

 

「あー、お前…運が悪かったな」

 

「そんなーーー!!」

 

 泣きながらこの後に訪れるであろうボコられる未来を想像してしまうツナ。こんな時になっても自発的には死ぬ気になれない。死ぬ気弾を撃ち込めば話は別だが、ここにリボーンはいない。

 

 だが、ツナに救いの手を差し伸べる者はいた。

 

「テメェら、10代目に何してやがる!果てろォ!!」

 

「へ!?」

 

「ぶ!」

 

「どわっ!?」

 

 蝋燭サイズの小さなダイナマイトが不良達の顔の横まで投げ付けられた。それに気付いた次の瞬間にはダイナマイトはそれぞれ爆発し、不良達を揃って同じ方向に吹っ飛ばした。

 不良達を襲うダイナマイトはここで終わらない。不良達が吹っ飛び、一塊に積み重なった先に通常サイズのダイナマイトが無数に落ちてきて、導火線もほぼ燃え尽きる寸前であった。

 

「2倍ボム」

 

 そして不良達を大爆発が呑み込んだ。

 

『うぎゃああああああっ!!?』

 

「ダイナマイト……」

 

 この爆撃はまずチビボムで不良達を吹き飛ばす事でツナの安全を確保した上で行われたものだ。ツナの知る中でこんな事ができる者は一人しかいない。

 

「ケッ、10代目に無礼を働きやがって。死んで詫びろ」

 

 爆煙が視界を覆う。故に爆撃の犯人の姿は確認できないが、直前に聞こえた声とダイナマイトを使った戦法でそれが誰なのかはツナには既に分かっていた。

 

 間違いない。この男は今ツナが一番頼りたかった仲間達の一人だ。

 

「それよりもご無事ですか、10代目!!」

 

「き、君は……!」

 

「はい!この獄寺隼人!10代目の右腕として参上仕りました!!」

 

 煙が晴れれば頼れる仲間(ファミリー)がそこにはいた。




Q.妙に色々と描写された金髪の不良って?

A.浜面。

Q.ここで登場させた意味は?

A.特にない。強いて言えば不憫枠としてダイナマイトの餌食にしたかった。五体満足で生きてるからヘーキヘーキ。

Q.この後彼らは?

A.放置。

獄寺に関しては死ぬ気の炎やボンゴレギアよりも初期からのダイナマイトでの戦闘を最初に書きたかったのでそこそこ満足。
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