とある魔術のボンゴレX世   作:メンマ46号

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良くリボーンのクロスオーバーではハイパーモードの強さカッコ良さが元でツナが異様にモテたりしますが、これにはちょっと首を傾げます。

いや、ハイパーモードは確かに凄くカッコ良いです。でもそれは戦闘とかの映えるカッコ良さであって、恋愛要素に結び付くかと言うと違う気がします。

ツナの本当の魅力はハイパーモードのクールさとかじゃなくて、大空のように全てを包み込む「優しさ」にこそあると思います。実際ツナに強烈な好意を寄せるハルはツナの優しい所が一番好きな訳ですし。強さも好きな所に含まれてはいますが、所詮二の次です。

そもそもツナは上条さんと違ってモテるキャラじゃありません。低身長や運動音痴、低学力などの要素が原因で女の子に悲しいほどモテないです。臆病者のダメツナと馬鹿にされる始末です。だからこそ、その優しさを直に受けた人は男女問わず彼に惹きつけられるんです。
獄寺は忠犬、山本と炎真は親友、ハルはLOVE、ランボやイーピン、フゥ太にとっては大好きな良い兄ちゃん。

彼らは皆、沢田綱吉の優しさ、仲間を想う心に惹かれたのです。


ツナの覚悟来る!

 真夏の夜、橋の上で御坂美琴は独りで黄昏ていた。その表情は暗く、瞳はまるで死を受け入れてしまっているかのように、光を失ったものだった。

 

「どうして……こんな事になっちゃったのかな」

 

 言葉の通り、どうしてこんな事になってしまったのか。美琴の胸中はそんな後悔と苦しみでいっぱいだった。

 

 全ての始まりは幼き日、筋ジストロフィーという病にかかった人を見た事だった。全身の筋肉が少しずつ衰えていく病気。

 君の能力を応用すれば、生体電気を操る能力があればその病に侵された人を助けられるかもしれない。そんな言葉に乗っかった。

 

 苦しんでいる人達に希望の光を与える事ができれば。そう思ってDNAマップを提供した。それが間違いだった。

 最初から全て嘘だったのか、健全な研究が途中から変質してしまったのかはもう分からない。

 

 それから暫くして、忘れそうになっていた頃になって自分の軍用クローンが製造されているという噂が流れ始めた。

 それを聞いてから、いつの日か自分と同じ姿をしたクローンが現れるんじゃないかと心の何処かで怯えていた。

 

 そしてその日は来た。自分をお姉様と呼ぶ量産型の軍用クローン達。しかしその命が生み出された目的は自分達が殺される為の実験を完遂させる事。

 

 全てを知って一度は一方通行(アクセラレータ)を倒そうとした。だがすぐに絶対的な力の差を思い知らされた。絶対に勝てないと分かってしまった。だから別の方向からあの実験を潰そうと模索してきた。

 

 しかしどれだけあの実験に関連する研究所を潰してもすぐにそれらは他の研究所に引き継がれた。いくらやっても無駄だった。

 そもそも最初に気付くべきだった。この計画の予測演算に『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』が使用されている時点で学園都市全てが敵なのだと。

 

 もう……美琴がまともな方法であの実験から、一方通行(アクセラレータ)から妹達(シスターズ)を救う方法は無い。

 

 もう限界だ。誰かここから引き上げて欲しい。

 

「……て。たすけてよ……」

 

 泣きそうな声で必死に絞り出した言葉は誰にも届かない。声は小さく、周囲には誰もいない。当然だ。

 

「みゃー」

 

 妙な鳴き声が聞こえた。その鳴き声が聞こえた方に目を向けてみればそこには黒い子猫がいた。

 

(猫……?)

 

 そしてその猫の後ろには息を切らしながらもこちらを見ている二人の少年がいた。茶髪のツンツン頭と銀髪の不良だ。

 

「見つけた……」

 

「てめーが御坂美琴か」

 

 沢田綱吉。最近知り合った同年代の少年で、意図せず学園都市に来てしまい、そのままこの街に閉じ込められてしまった哀れな少年だ。

 後ろにいるのは確か風紀委員(ジャッジメント)の支部で顔写真を見た少年だ。ツナ曰く友達。彼もまたこの学園都市に何故かIDを発行されていたはずだ。まぁ、もうどうでもいいが。

 

「……何よいきなり。夜遊びの最中に人を探し回って……」

 

 適当に取り繕った言葉であしらおうとした美琴に対し、獄寺は黙って『絶対能力進化(レベル6シフト)計画』の資料である紙束を取り出して美琴に見せた。

 

「ッ……!!」

 

「……もう全部知ってるんだ。『妹達(シスターズ)』の事も実験の事も『一方通行(アクセラレータ)』の事も突き止めた」

 

 知られた。あの悪夢のような実験を。残酷で非道極まりないイカレた実験の事を。よりにもよって恐らくは別件で学園都市に拉致された被害者達に。

 

「……あーあ、アンタ本当何者な訳?学園都市の生徒じゃないのに変な炎の能力持ってて、昨日私のクローンに会ったばっかでもうそこまで辿り着くなんて探偵になれるわよ」

 

 美琴はどこか達観していた。もう実験を止める術は一つしかない。けれど未だに決意が固められずにいた。それを実行する後押しがして貰えるなら少し有り難かった。

 

(チキンでヘタレでも……優しいアンタには許せないわよね。こんな計画)

 

「でもそれ持ってるって事は私の部屋に勝手に上がり込んだのよね。挙句ぬいぐるみの中まで探すなんて死刑よ死刑」

 

 ツナや獄寺から見れば美琴はDNAマップを提供した実験の協力者にしか見えないだろう。だからこの二人は自分を糾弾しにきたのだと思ったのだ。結果だけ見ればそれで正解だろう。美琴からすればいっそ誰かが責めてくれれば楽になれる。

 

「……で、アンタ達は私を心配でもしたの?私を許せないと思ったの?」

 

「心配したに決まってるじゃないか!!」

 

 美琴の予想とは裏腹に、ツナは力強く即答した。

 それを聞いて美琴は唖然とする。予想していた答えとは全く違う言葉に……ただどうしようもなく驚いた。だがすぐに表情を取り繕って目を逸らす。

 

「……う、嘘でもそう言ってくれる人がいるだけ、マシってとこかしら……ね」

 

「嘘じゃない。嘘なんかでこんな事は言わない!!」

 

 あの気弱なツナが美琴が思わずビクリとする程に大きな声で叫んだ。その気迫に美琴は少し気圧された。同時に気付いた。本当に彼は嘘を吐いていないと。

 

「短い付き合いだけど、君がこんな酷い事に手を貸すような奴じゃない事くらい知ってる!!」

 

「……」

 

 思わず、ポツリポツリと美琴は語り出す。何かを吐き出すかのように。幼き日、筋ジストロフィーの患者を見せられた事、その病気の治療の為にDNAマップを提供した事。それによって生み出されたのが妹達(シスターズ)である事。

 

 本当は誰かに真実を聞いて欲しかったのかもしれない。話しながら美琴はそう思った。

 

「あの子達、ね。平気な顔で自分達の事を『実験動物』って言うのよ。ラットやモルモット……研究の為に弄くられて用済みになったら焼却炉行き」

 

「な……」

 

「あの子達はね、『実験動物』ってのがどんなものか正しく理解してる。理解した上で自分達の事を『実験動物』って呼んでるのよ」

 

 いくらクローンでも自然にそんな答えに行き着く訳がない。思考や認識、その全てが誘導され、洗脳されてきたのだろう。己の行動、死に何も疑問を抱かぬように。刷り込み…と言った方が正しいのかもしれない。

 

「そんな状況を生んだ原因は私。だからあの子達は私の手で助け出さなきゃいけないの」

 

 最後にそう言って、美琴はツナ達の後ろに向かって歩き出す。本当の事を誰かに吐き出せたからか、少しだけ気が楽になった。以前にも似たような事があった。盛夏祭だ。あの日もこうして本音をツナに聞いて貰っていた。

 

「……どこへ行く気なの?」

 

「今夜も実験は行われる。その前に私の打てる手で『一方通行(アクセラレータ)』と決着をつけるの」

 

「できんのか?」

 

 この場で最も冷静な獄寺が冷めた口調で問う。実験資料を手にジロリと美琴を見て問いかける。

 

「この資料には真っ向からやり合えばほぼ即死。逃げに徹しても185手で詰むと書かれている。俺はお前が一方通行(アクセラレータ)とかいう奴に勝てるとは思えねー」

 

「……ええ。勝てないわね。残念だけど私じゃ逆立ちしてもアイツには歯が立たない。だけど、私にそれだけの価値が無かったら?」

 

 ツナは息を飲んだ。想定していた最悪のパターンが現実になろうとしているのだから。

 

「最初の一手で私が負けて、185手で私が死ぬって予言を覆したら……それを見た研究者達が『妹達(シスターズ)』の計画のシミュレーションを見直すとしたら?

 

 

こんな私にもまだ使い道が残ってるんじゃない?」

 

 御坂美琴は死ぬつもりだ。確認を取るまでもない。研究者達が見立てた計算よりも劣る結果を出した上でだ。

 

「『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』ってのの計算が間違ってたって結果を作るってのか」

 

「ええ。あの計画は私に当て馬になる程度の力はある事を前提にしている。ならもっと不出来な結果を示せば……ね。『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』の予測演算にも間違いはあるって研究者達も判断するはず。それに幸い『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』は三週間くらい前に何者かに破壊されてるの。上は面子の為に隠してるけど、再演算される心配も無いわ」

 

 少なくともこれで実験がそのまま続行されるような事態は避けられるだろう。その理屈は頭の悪いツナでも分かった。理解はした。しかし死んでも納得はできない。

 

「さ、分かったでしょ。通してくれない?」

 

 これまでずっと黙って話を聞いていたツナが震える声で言った。怒りと悲しみで拳を握り、想いを絞り出す。

 

「そんなの間違ってる……!」

 

「は?」

 

「妹さん達を救う為だからって、御坂さんが死ななきゃいけないなんて間違ってる!そんなの、俺が許さない!!」

 

 その瞬間、御坂美琴の中で何かが切れ、衝動的に電撃を放ち、獄寺の手元にあった計画書を消し炭にしていた。

 

「おま…!」

 

「じゃあ何よ?アンタには他に方法があるって言うの?何もできないビビリの癖に綺麗事や理想論で語らないで。虫酸が走るわ」

 

「だ、だったら……!力づくで押し通ってみろ!!」

 

 ツナは即座に死ぬ気丸を呑み、(ハイパー)死ぬ気モードとなって美琴の前に立つ。周囲を死ぬ気の炎が覆い、その熱気に美琴は顔をしかめ、同時にこれまでずっと逃げ腰だったツナがこんな発言をした事に少し驚いた。

 

「……!!私の邪魔をしようってんなら、この場でアンタを撃ち抜く!嫌ならそこをどきなさい!!」

 

 コインを取り出し、自身の異名であり必殺技、超電磁砲(レールガン )を撃つという脅しをかける。けれどもツナの意思は、死ぬ気は揺るがない。

 

「どくもんか。それは友達を……君を見捨てるのと同じだ」

 

「うっさいわね!私とアンタがいつ友達になったってのよ!」

 

「テメェ!さっきから黙って聞いてりゃあ、テメェの為に来た10代目に…「獄寺君、俺に任せて欲しい」10代目……」

 

 美琴の物言いにキレた獄寺が何か言い返そうとするが、ツナが腕を獄寺の前で伸ばし、それを制止する。

 両者、一歩も譲らない。ツナの意思の固さを感じ取った美琴は牽制を兼ねて電撃を飛ばす。

 

 電撃は届かない。ツナの周囲に漂う死ぬ気の炎に阻まれて、力無く消えてしまう。そのように消える電撃を目の当たりにする事で美琴はより無力感に苛まれる。

 

「……!私にはもう他に道なんてない!次は本気で撃ち抜くわよ!どきなさい!!」

 

「どかない」

 

「ふざっけんな!!なんでついさっきちょっと知っただけのアンタに邪魔されなきゃいけないのよ!?私が死ぬのは許せなくて、クローンは死んでも良いって言うつもり!?」

 

「そんな訳ない。君も妹さん達もみんな同じ命だ」

 

 何度も何度も電撃を飛ばす。その全てに死ぬ気の炎が的確にぶつけられ、空気に溶けるように消えていく。本来、炎が起こすにはあり得ない現象だがそれを気にする余裕など美琴にはない。

 

「それが分かってるなら半端な綺麗事で人の覚悟踏み躙ってんじゃないわよ!!」

 

「そんなものは覚悟とも死ぬ気とも言わない!!自分の命を諦めているだけだ!!」

 

 死ぬ気の強さとは覚悟の強さ。死ぬ気とは迷わない事、悔いない事、そして自分を信じる事。

 最初から命を捨てる事、諦める事は死ぬ気とは言わない。覚悟だなんてもっての外だ。

 

「どけって……言ってんのよーー!!」

 

 更に規模の違う電撃を飛ばしても結果は同じ。力づくで押し通る事もできない。

 

「どうしてよ!?こんなイカれた実験間違ってるって分かってるでしょ!?それをやめさせようってんじゃない!!何で止めるのよ!?」

 

「間違ってるさ。クローンだって生きてるんだ。それを能力の向上なんかの為に殺すなんて絶対に許しちゃいけない……」

 

「だったら!!」

 

「けど……君がそんな目に遭うのだって間違っている。だからどかないんだ」

 

 眉間に皺を寄せながらまっすぐに美琴を見るツナの橙色の瞳に気圧される。

 

「何を……言ってんのよ。私にはっ、今更そんな言葉をかけて貰えるような資格なんてない!!仮に…誰もが笑っていられる幸せな世界があったとしても、そこに私の居場所なんてないんだからっ!!」

 

「じゃあ、君が死んで遺された白井さん達の気持ちはどうなるんだ」

 

 黒子の名前が出た瞬間、電撃が消えた。御坂美琴の脳裏に過ぎるのは白井黒子を始めとする友人達の笑顔。これまで共に過ごした楽しかった日々。

 

「妹さん達だって、君が死んで自分達が生き残って……それで喜ぶとでも思うのか?」

 

 次に浮かんだのはこの実験で『消費』されようとしている妹達(シスターズ)。初めて出会った妹の9982号と本当の姉妹のように過ごした時間とその彼女が一方通行(アクセラレータ)に殺された瞬間が頭から離れない。

 

 アレがこの『罪』の始まりだった。

 

「君だって分かってるはずだ。こんなやり方は間違ってる。君が不幸になって、みんなを悲しませるだけだって」

 

 目頭が熱くなる。そんな事言われなくたって分かっている。けど自分にはもうこれしか取れる手段がないのだ。今までこの実験を破綻させる為にやれる事は全てやってきた。それでも実験は止まらない。全てが無駄な徒労に終わってきたのだ。学園都市そのものが敵なのだ。何をしても『実験』は揺るがない。

 

 美琴の力では一方通行(アクセラレータ)を倒す事もできない。

 

「うるさいのよアンタ……あの子達だって、私が死ねば少しは気が楽になるわよ。清々してくれるわよ。もう私が死ぬしか方法はないんだから……一人の命で一万人が助かるなら素晴らしい事でしょ?もうそれで良いじゃない。だから……そこを……」

 

「絶対にどかない」

 

 一切の迷いなく告げられた一言が引き金になったのか、美琴は全方位にフルパワーの電撃波を放電した。鉄橋全体が黒焦げになり、辺り一帯が焦土と化す。

 

 煙が晴れてそこには死ぬ気の炎を広げる事で電撃を防ぎ切ったツナが無傷で立っていた。後ろにいる獄寺や猫にも焦げ跡一つ無い。あの電撃から彼等の事をも守り切って見せたのだろう。

 

 

 

 

 勝てない。

 

 

 

 御坂美琴は超能力者(レベル5)云々のプライドなど今やどうでも良かったが、目の前にいる沢田綱吉という圧倒的強者を前に妹達(シスターズ)を救う為に死ぬ事すらできない事実にうちのめされた。

 

 膝を突き、手を地に付けて美琴は問う。

 

「どうして……どうしてアンタは私みたいな人殺しなんかの為に……」

 

 ツナの額の炎が鎮火し、元の優しげな雰囲気に戻る。

 

「違う!君は病気で苦しんでいる人を助けたかっただけじゃないか!君のその気持ちを踏み躙ってこんな最低な実験をしている奴らの方が人殺しだ!!」

 

 ツナのまっすぐで優しげな瞳を見て、美琴は息を呑む。額に炎が灯っている時よりも遥かに強い意思を感じた。

 

「君は悪くない。全然何も悪くない。みんな御坂さんの味方だから……だから、自分の命を捨てたりなんてしないでよ……!!」

 

 ツナの言葉を聞いて、御坂美琴は堰き止めていた涙を流し、泣き崩れた。

 

****

 

 泣き始めた美琴の背をさすり、彼女が泣き止み、落ち着くまでツナは黙って彼女の隣でしゃがんでいた。獄寺もまた、ツナの意思を尊重し、煙草を蒸しながらも美琴が落ち着くのを黙って待っていた。

 

 少しずつ落ち着き始め、美琴が泣き止んだ事でツナは立ち上がって本題に入る。本番はここからだ。この『絶対能力進化(レベル6シフト)計画』を止め、殺される妹達(シスターズ)を守る事が目的なのだから。

 

 死ぬ気モードが解けて普段のツナに戻ったが、本質的な雰囲気は先程から変わらない。真剣に妹達(シスターズ)を助ける為の意見を出す。ボンゴレの超直感が導き出した、ツナに示せる唯一の答えを。

 

「この実験をどうやったら完全に止められるかは分からない。けど、手掛かりが無い訳じゃない」

 

「え…?」

 

 次の瞬間、ツナはとんでもない事を口走った。普段のチキンな彼からは到底考えられないような案を。

 そして誰もが絶対に不可能だと即答するような案を。

 

 

一方通行(アクセラレータ)を力づくでも止めて、実験をやめさせる。そしてこの実験そのものを止める方法を白状させるんだ!!」

 

 

 無謀だ。相手は学園都市最強の超能力者(レベル5)。つまりは世界最強の能力者なのだ。勝てる訳がない。

 即座にそう判断した美琴は泣きながらツナを止めようと必死に叫ぶ。

 

「やめて!そんな事したって勝てっこない!アンタまで殺されちゃう!!」

 

 実際に同じ超能力者(レベル5)でも美琴とは次元が違った。

 これ以上誰も死なせたくない。ましてや、こんな自分を助けようと必死になってくれた()()を死なせるなんて絶対に駄目だ。

 

「アンタが私より強い事は分かった!でもやめて!一方通行(アクセラレータ)はそんな次元にいないのよ!世界中の軍隊を敵に回してもケロリと笑っていられるような化け物なの!!」

 

 必死に説得しようとする美琴。しかしツナも譲らない。それをやめればまた御坂妹が殺されてしまうから。

 

「それは妹さん達を見捨てる理由にはならない」

 

 これ以上、彼女達を死なせてはならない。これ以上、御坂美琴を苦しめるこの実験の存在を許してはならない。

 

「お願いっ!一万人の人間を死なせた私の罪に誰も巻き込んだりできない!!これは私一人で終わらせなきゃいけないの!!だから!!」

 

 それ以上言葉は続かなかった。泣いて止める美琴の前に立つツナの顔が異常な程に落ち着いていて、その目は慈愛に満ち溢れたものだったからだ。

 ツナは美琴の前でしゃがみ、目線を合わせて語りかける。

 

「大丈夫。俺は死なない。君も妹さんもこれ以上誰も死なせない。約束するよ」

 

 困ったように笑顔を見せて、ポン、と美琴の頭に手を乗せてからその手で彼女の涙を拭った。

 

「だから、もう泣かないで」

 

 何でも解決してくれるママはここにはいない。

 困った時だけ神頼みしても奇跡が起きる訳じゃない。

 ましてや泣き叫んでいたらそれを聞いて駆け付けてくれるヒーローなんていない。それは物語だけの存在。そう思っていた。

 

「妹さんは絶対に助け出してみせるから」

 

 ヒーローと言うにはちょっと頼りないかもしれない。その辺の不良にビビって逃げ出してしまうようなチキンだ。勉強もできず、運動もからっきし。足も短い。

 それでもとても優しい心の持ち主だ。自殺をしようとする奴がいれば助けたい一心で駆け寄り、泣いてる子供は必死であやし、敵対し、仲間を傷付けた者の命まで案じるお人好し。

 

 どうして彼の言葉はこんなにも暖かいのだ。どうして自分を見捨ててはくれないのか。

 

「……っ!」

 

 とめどなく涙が溢れてくる。泣かないでと言われたばかりなのに涙を止める事ができない。

 ツナは立ち上がり、後ろで二人のやり取りを見守っていた獄寺に呼びかける。

 

「行こう獄寺君!まずは一方通行(アクセラレータ)を何とかしないと!」




説得シーンでヴァリアー編での嵐戦のオマージュをしようかと思いましたが、目の前に獄寺本人がいるのに同じような事言うのはちょっと変だし、そもそも現時点では当時の獄寺程の深い関わりが美琴にはないので、虹の代理戦争でのバミューダとの会話を元にしました。この小説でツナがその手の説得をする相手はどちらかと言うと上条さんだろうし。

美琴へのそういう類いの説得は超電磁砲メインで書いてる人達がやってくれると期待します。

次に来て欲しいツナのファミリーは?(あくまで参考程度です)

  • 野球バカ
  • 極限バカ
  • アホ牛
  • ナッポー娘
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