イメージとしては黒曜編のOPでの骸の場面を一方さんに置き換えた感じ。
学園都市の夜空を滑空する二つの影があった。一つは両手から橙色の炎を噴射して、それを推進力にしている。もう一つは両足から赤い炎を噴射し、同様にそれを推進力としていた。
それはXグローブを使うツナと
獄寺の足からは赤い死ぬ気の炎、嵐属性の炎が出ている。推進力がツナの大空の炎には及ばない故に出遅れ、徐々に距離が開いてはいるが、そう時間はかからずにツナに続いて現場へと到着するだろう。
美琴から次の実験が始まる場所を聞き出し、ツナは学園都市の空を滑空する。実験は20時30分から行われる。現在は20時45分。つまり既に始まっているのだ。
全力で飛び、辿り着いたのはコンテナヤード。ここの何処かで悍ましい実験が執り行われているのだ。
(ここに妹さんの一人が……)
その瞬間、大きな衝撃音が響いた。何かが壊れたかのような、土砂崩れでも起きたかのような大きな音だ。
「……あそこか!!」
その音の発生源を目指してツナは飛ぶ。
御坂妹は強い衝撃に吹き飛ばされ、血を流しながら転がる。身体中に刻まれた傷は人為的な手段で付けられたものである事は明らかだ。痛みでまともに動けず、悶える彼女を嘲笑うかのように彼女を傷付けた張本人は語り掛ける。
「オイオイ、オマエら全員繋がってンだろォ?前回の実験でネタばらししてやったンだから、少しは学習して来ィよ……」
次は何をされるのか。蹴りを入れられるか踏み付けられるのか。迫り来る痛みに対して蹲る御坂妹は本能的に目を閉じて身体を強張らせる。
しかしいつまで待ってもその衝撃は来なかった。何事かと思い、目の前に立つ相手……
「オイ、この場合は実験ってのはどうなっちまうンだ?」
「……?」
「……何故、貴方がここに?」
『実験』によるものと思われる音を頼りにこの場に辿り着いたツナが見たのは、満身創痍で血を流す御坂美琴に瓜二つの少女と、それを見下ろして高笑いする白髪で細身の男の姿だった。
その二人こそ、
「っ!よくも……!!」
ツナは倒れる御坂妹を見下ろす白髪の男が
「関係ねェ一般人なンか連れ込んでンじゃねェよ。これは秘密を知った者の口は封じるとかお決まりの展開かァ?」
「やめろ!!!」
「……何か言ったか?」
御坂妹を足蹴にする
「やめろって言ったんだ!!」
「……今何つった?やめろだァ?命乞いかァ?」
「違う!その足をどけろって言ってるんだ!!」
「……オマエ、ナニサマ?」
こんな事を言われてその通りに足をどけるのは癪なのか、
「
「……やはりお前が
「……オマエ、面白ェな。離れろねェ……。なら、ちゃンとキャッチしろよ?」
ようやく
「なっ!」
蹴り上げられた御坂妹を助けるべくツナは死ぬ気の炎の推進力を頼りに彼女の元へと高速移動。放り上げられた空中で見事に受け止めて抱き抱える。
「おー速ェ速ェ。ホントにキャッチできるとは思わなかったぜェ。褒めてやるよ」
極悪非道な
「なんて事するんだ!!下手したら死んでたかもしれないんだぞ!!」
「……だったらどォした?そもそも殺す事がこの実験の目的だっつーの」
「……!!」
ツナは
そして遅れてFシューズで飛んで来た獄寺が到着する。
「10代目!!」
「……次から次へと何なンですかァ?」
「獄寺君、御坂さんの妹さんが……」
「少し待って下さい。確かシャマルに貰った簡易的な医療キットと治療用の匣が……」
獄寺は鞄の中から応急処置の為の医療器具などを取り出そうと漁りながら御坂妹の容貌を確認する。
(こいつが
ツナも獄寺も御坂妹を助ける為に動いている。それは御坂妹にも分かった。だからこそ分からない事があった。虫の息でありながら、息も絶え絶えに御坂妹は口を開く。
「……何を、しているのですか?と、ミサカは問いかけます」
「え?」
「貴方達の行動は理解しかねます……。ミサカは、必要な機材と薬品があればボタン一つで自動生産できるんです。造り物の身体に借り物の心。単価にして18万円。在庫にして9968体も余りある……。そんなものの為に貴方達は……」
これが御坂妹に理解できない事。量産クローンである自分に実験動物として殺される事以上の価値は無いと判断し、そんな自分を助ける為にあの
それを聞いてツナは顔を俯かせる。ギリリ…と歯軋りをして、顔を上げる。その額の炎は既に鎮火しており、普段のツナとして心の底から叫ぶ。
「そんなの関係ないよ!」
「……?」
「君がどんな生まれだろうと!誰がなんと言おうと!君は俺の友達で、御坂さんの妹なんだ!!死んだら俺も御坂さんも悲しいに決まってるじゃないか!!」
別に友達となる事を拒んだわけではない。予め決められていた自分の価値を揺るがす発言が気に障ったわけでもない。
自分を当たり前のように一人の人間として、対等な友達として扱う沢田綱吉という少年に、ただどうしようもなく驚いた。
「御坂さんは君達を助ける為に……自分の命を捨てようとまでしていたんだ。君達の事が大切だから……だから、もうそんな悲しい事は言わないでよ」
昨日の昼、
(お姉様は……ミサカ達の事を、本当はどう思って……)
「獄寺君……御坂さんの妹さんをお願い。俺は……死ぬ気でこいつを止める!!」
ツナの額に再び死ぬ気の炎が灯る。その様子に御坂妹は目を見開き、
ツナが死ぬ気丸を呑まずに死ぬ気になったからだ。
死ぬ気丸を服用する事なく、極自然にツナ自身の純粋な死ぬ気と覚悟で
「……はい。10代目、ご武運を……」
故に獄寺は確信する。この戦いの結末を。
ツナが死ぬ気になるのはいつだって他の誰かの為。誰かを守る為に戦うツナは絶対に負けない事を獄寺は知っている。
そして今この場での御坂妹の治療は獄寺にしかできない。ならば獄寺はツナに任された事を全力で全うするだけだ。右腕として、守護者として、友達として。
獄寺は嵐のバックルver.Xに炎を注入し、そこからSISTEMA C.A.I.を展開した。戦いの余波から御坂妹を守る為だ。
そして晴の炎をリングに灯し、匣兵器にまたそれを注入。そうして出したのは治療用の匣兵器、
晴属性の死ぬ気の炎を灯し傷口に当てる事で、晴の特徴、“活性”により細胞組織の自然治癒力を活発にして何百倍もの早さで傷が治るという寸法だ。
(だがコイツは元々寿命が短い体細胞クローン……。その上14歳の御坂と同じくらいにまで成長させる為に多分妙な薬を投与されてるはずだ……。いくらなんでも晴の“活性”で全治させちまうのはコイツの寿命に悪影響が出ちまうだろうな……)
それから簡易医療キットを取り出しながら獄寺は御坂妹に呼びかける。
「10代目はテメェらを助ける為に命張るんだ…!死んだら許さねーぞ!!」
この一連の流れを黙って見ていた
「安いメロドラマは終わったかァ?くだらねェ……人形守る為に何必死になっちゃってンだァ?死ぬ気で止める?そンな恥ずかしい台詞良く真顔で言えるなァオイ」
「夕方、路地裏で
「アァ?アレ見たのかよオマエ。血流操作。初めてやったが中々の出来栄えだったろォ?」
人を殺しておいて出来栄えなどと言うこの男の異常性に普段ならゾッとしていただろう。だが今はそれ以上に怒りばかりが込み上げてくる。
それでも聞いておかねばならない。
「……何故、こんな実験に加担した?お前は学園都市でもトップの力を持っているんだろう?
「……前にも聞かれたなァ、まァ強いて言うなら……絶対的な力を手にする為。最強とかそンなチャチなモンじゃねェ。俺に挑もうと考える事すら許されねェ程の絶対的な力……『無敵』が欲しィーンだよ」
「無敵の力……?そんなものの為に……!?」
「……オリジナルも似たような事言ってたなァ。正義感ってヤツかァ?くだらねェ」
こんな奴に負けて御坂美琴と
(こいつにだけは……死んでも負けたくない!!)
「俺の炎は……お前みたいな奴から友達を守る為にあるんだ」
「はァ?」
「力が欲しいが為に人を殺した事を……その為に倒される事を、後悔しろ!!」
「……」
できる訳がない。
分かり切った結果を前に
前方数m先にいたツナの姿が一瞬にして消え、気付けば目の前に迫っていた。
「………ア?」
そして次の瞬間、
****
殴り飛ばされた
仰向けに倒れている事で夜空に浮かぶ三日月が見える。
(月……?何で月なンて見てンだァ?俺が仰向けになってるからか?じゃあ俺はなンで地べたに寝転がってンだァ……!?)
いやそれより何故あいつが自分を見下ろしている?何故五体満足で立っている。
(痛ェ……痛ェ!?だと!?)
激痛の走る鼻の辺りに手を触れるとドバドバと流れる鼻血が自分の手にベットリと着いている事を確認し、我に返った。
「なンだこりゃあああっ!!!?」
(ぶっ飛ばされたのか!?俺が!!?あり得ねェ!それなら奴の腕の方が折れてるはすだ!!俺に触れる事さえ!!)
一方でツナもまた怪訝な顔をしていた。美琴からは
だが結果はその攻撃はアッサリと
(反射を無意識に切っちまったって事かァ?いや、それもあり得ねェ!他に集中してたならともかく、ただ反射するだけだった
ぐらりと揺れながら立ち上がり、
「面白ェ……畜生、イイぜ!最っ高に良いね!!愉快に素敵に決まっちまったぞ!オマエはァァ!!」
足を地に叩き付けると足元の砂利が衝撃波と共に超高速でツナに向かって飛んで来た。
ツナは反射的に飛び上がって砂利も衝撃波も紙一重で躱した。直後、背後にあったコンテナが木っ端微塵に砕け散った。大空属性の炎の推進力がなければ超直感による先読みを以ってしても避けるのは難しかっただろう。
「あんな動作でこんな威力を……!?」
「余所見してンなァ!!!」
華奢な身体からは考えられない跳躍力でツナの頭上に出現した
振り下ろされた腕から放たれるのは先程のものに劣らない程の衝撃波とパワー。ツナは咄嗟に左手を翳して死ぬ気の炎で盾を作る事でそれを正面から防ぎ、耐える。
そして
「……どォいう能力だァ?オマエは
「死ぬ気の炎は能力じゃない」
何から何まで訳の分からない事だらけだ。全ての攻撃を跳ね返すと聞いたのに最初の一撃はまともに食らって過剰に痛がり、その体格からはあり得ないパワーでの攻撃を繰り出す。仮にこいつが死ぬ気化したとしてもこんなパワーを出せるとは思えない。
何もかもがちぐはぐ過ぎる。
(こいつの能力は一体……?)
ただ何でもかんでも跳ね返すだけの能力ではない事くらいは予想していたが、分からない事だらけだ。
「クカカカッ!!良いね!良いねェ!
「!?」
次々と飛んでくる鉄材を躱すが地面に墜落する度に礫が飛び散り、ツナの注意を散漫にする。それからも死ぬ気の炎の推進力でそれらを躱す。下手に移動すれば獄寺と御坂妹の方へ流れ弾が飛ぶ可能性だってある。SISTEMA C.A.I.の防御があるとはいえ、それが二人に攻撃が飛んでも良い理由にはならない。
「ぐっ!!」
礫の一つがツナの側頭部を掠める。そしてそれによって生まれた隙を
「くそっ!!」
しかしツナは鉄の雨が迫る上空に向けて死ぬ気の炎を両腕で振り撒き、盾の役割を作ると同時にその鉄を破壊する。死ぬ気の炎を纏った手刀ならば鉄を切断する事も容易だ。
「…っ!危ない!」
砕いて弾いた鉄材の一つが
だがまるで
「な!?」
「……危ない、だァ?オマエは状況分かってンのかァ!?何処に敵を心配する馬鹿がいンだ?ふざけてンのかオマエ」
驚愕するツナ。しかし
「オマエ、目の前にいるのが“最強”だって事が理解できてねェのか?その俺相手に危ないだァ?……マジでナニサマのつもりだ?」
「……」
「そんなに死にてェなら望み通り愉快な
「コンテナの中身は小麦粉みてェだな」
「それがどうした」
「今日は良い感じに無風みてェだし、ひょっとすると危険かもしれねェなァ……!!」
地面の砂利に先程の線路同様に足の爪先で軽く触れる。それだけで彼の背後にあるコンテナの一つが先程の御坂妹以上に空高く打ち上がった。
「……粉塵爆発って知ってるかァ?」
「っ!!」
コンテナが別のコンテナに落下し、火花が散る。その瞬間、そのコンテナの中にあった溢れた小麦粉に引火して大爆発を起こした。
黒煙と爆炎が周囲を覆う。その中を
「あーあ、死ぬかと思ったァ。酸素奪われるとこっちも辛いンだっつの。こりゃ核を撃っても大丈夫ってキャッチコピーはアウトかなァ?」
そんな呟きの直後、黒煙と爆炎の中から凄まじいスピードでそこを突き抜け、脱出した人影が出てきた。言うまでもなくツナである。爆発を死ぬ気の炎で防ぎ、爆発による酸欠に陥る前に炎を噴射させて爆発の中から上空へと脱出した。
顔は黒煙で少し汚れたが特に傷は見当たらない。
「……ススが付いただけで無傷かよ」
ツナは
「獄寺君!爆発が起きたけど、そっちは大丈夫か!!」
「問題ありません!10代目こそご無事ですか!?」
「ああ!もっと激しくなるかもしれない!SISTEMA C.A.I.は可能な限り維持してくれ!」
仲間を心配する余裕まであるときた。本当に簡単には壊れないオモチャが目の前に現れたらしい。
ツナの方もこれまでの戦い、先程の鉄材の雨で一つ分かった事がある。
(それを起点に能力を発動しているのか……?)
学園都市の能力は一人につき一系統。それが上条や小萌に聞いた能力開発の詳細の一つだ。どんなに多彩な事ができても結局は一つの能力に集約するという事だ。
「……」
ツナは試しに今適当に拾った石ころを一つ
「そうか。そういう能力か」
「ア?」
「あらゆる力の向きを自在に操る。それがお前の能力だな?反射というのもお前に向けられた攻撃の向きを正反対に変えていたんだな。正確には身体の周囲にその能力を作動させる結晶のようなものを纏っている」
「……初見でソレを見抜くとは驚いたぜェ。そこのクローン共は一万回殺されても全然分かンねェのによ。そう、俺の能力はベクトル操作。運動量、熱量、電気量……あらゆるもののベクトルを保護膜に触れただけで感知・変換する」
(あのパワーはそういう事か……。こいつ自身のものじゃなく、そこにある物を全て集約してぶつけて来ていたのか)
「随分と余裕があるんだな。態々自分から能力の詳細を話すとは」
「なァに、ちょっとしたご褒美って奴だ。この
最初の一撃。死ぬ気の炎を纏った攻撃は跳ね返せてはいなかった。その理由は恐らくあの膜をツナの炎が……
(そうか。そういう事だったのか……)
ブラッド・オブ・ボンゴレの超直感が全てをツナに悟らせた。
死ぬ気の炎は魔術にも通用した。大空の“調和”が作用したのだ。ならば超能力にだって通じる可能性は充分にある。そもそも上条当麻の
(あの能力を発動させる膜を、俺の炎が空気と“調和”させたんだ!)
「特別に教えてやったンだ。ちょっとは頑張って生き延びろよ?その分愉快な
シューティングゲームと言わんばかりに次々と飛ばされて来る解体された線路の数々。ツナはその全てをXグローブと死ぬ気の炎による高速飛行で躱しながら距離を詰めていく。
だがそれは
全ての鉄材を躱して互いに正面に向き合う位置にツナが着地し、
「好きな方の手に触れろ!それだけで血の流れを!生体電気の流れを!逆流させて死ねるからよォ!!!」
互いの距離が詰まり、
(グローブ越しなら安全とでも思ったかァ!?今すぐ生体電気を……!!)
しかしすぐに違和感に気付く。殴られた時と同じだ。何故こいつは反射されずに俺の腕を掴める。
「ア?」
死ぬ気の炎を纏った状態でツナは
「……ッ!!ウッ、ギィヤアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?」
熱い。熱い。手が焼ける。熱量が反射できない。高熱が直に
しばらく
しかしもうそこにツナはいなかった。
「!?」
「お前はこれまでどれだけの人を傷付けた?」
既に背後にはツナが回り込んでおり、その右手で
「今度はお前がぶっ飛ばされる番だ」
そう言うとツナは大空の炎を纏った拳を再び
一方さんの格を落とさないように戦闘を組み立てるのが結構難しい。というか上手くできてないかも。
初期プロットじゃタコ殴りにする気だったけど、それじゃあなぁ。