とある魔術のボンゴレX世   作:メンマ46号

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今回はBGMとしてアニメリボーンの「ツナ覚醒」を推奨します。美琴が現場に到着したシーン辺りから。


高電離気体来る!

 一方通行(アクセラレータ)は潰れた蛙のようにベシャリと音を立てて倒れる。ドバドバと鼻血が流れ、その感覚を感じ取った事で咄嗟に手で出血を抑えようとする。

 

「……ッ!!ガァァァァァァァッ!!!」

 

 痛い。痛い。殴られた顔の痛みが引かない。ジンジン響く激痛に耐えられるだけの頑強な肉体と忍耐力を彼は持ち合わせてはいない。

 故に年甲斐もなくのたうち回り、みっともなく喚く。大声で痛みを訴える。

 

「お前の力はこんなものか?まだ序の口だぞ」

 

 ツナは確信した。一方通行(アクセラレータ)は弱い。どんな攻撃も全て跳ね返して勝ってきた者が、碌な喧嘩の仕方など知っている訳がない。痛みに耐性があるはずもない。

 

「……クソが!!」

 

 ようやく痛みに慣れて覚束ない足取りで立ち上がる。冷静になれ。奴に反射が効かないのなら、こちらから攻撃すれば良いだけだ。足元のベクトルを操作して己のスピードを飛躍的に上昇させる。

 

「ハッ!遅ェンだよ!!」

 

「遅いのはお前だ」

 

 ツナの背後に回り込んでも一瞬でツナの姿は目の前から消えて、逆にツナが一方通行(アクセラレータ)の背後に回り込み、間髪入れずに頬へと拳を叩き込む。一方通行(アクセラレータ)が周囲のベクトルで速度強化をしてもツナの大空属性の炎の推進力は容易くそれを凌駕する。

 

「ガッ!!?」

 

 殴られてまたも簡単に倒れる。フラフラと揺れながらも立ち上がり、一方通行(アクセラレータ)は血走った目付きと狂った嗤い声を上げながらツナに向かって叫ぶ。

 

「面白ェ……最っ高に……面白ェぞ三下ァァァァ!!」

 

「面白いもんか……」

 

「ア?」

 

「人が死んでもおかしくないような危険な戦いが、面白いわけないだろ!!」

 

 戦いを楽しむ旨の発言をした一方通行(アクセラレータ)に対し、ツナはそれを真っ向から否定して怒鳴り散らした。己の価値観を全否定された一方通行(アクセラレータ)は絶句する。

 

 大空属性の死ぬ気の炎を纏った拳が一方通行の頬を捉えて殴り飛ばす。当然、“調和”によって反射膜は機能しない。膜そのものが自然な空気と“調和”されてしまえば機能はしない。結論、大空属性の死ぬ気の炎を反射で防ぐ事は不可能だった。

 

 この炎には自然の摂理を捻じ曲げるベクトル変換は作用せず、反射膜も空気と“調和”されて消えてしまう。ならば後は単純な実力勝負だ。

 だがしかし、格闘戦になればツナ相手に一方通行(アクセラレータ)では勝ち目など万に一つも無かった。

 

 かと言って遠距離攻撃も通用しない。鉄骨を飛ばしても真正面から砕かれるか避けられる。衝撃波を起こしてもあの炎で防がれる。一旦距離を取ろうと超速でツナから離れても、次の瞬間には既に背後に回り込まれる。

 

 痺れを切らした一方通行(アクセラレータ)は能力を利用してスピードで劣ると分かっていながらも常人では追い付く事も見切る事もできない速度で襲い掛かった。狙うは炎が出ていない胴体部分。しかしツナの動体視力もスピードも一方通行(アクセラレータ)のそれを大きく上回る。その上、碌な近接戦闘のスキルを持たず、素の腕力もない一方通行(アクセラレータ)は大振りで適当な腕の振るい方しかできない。

 

 避けてくれと言っているようなものだった。

 

 容易く一方通行(アクセラレータ)の攻撃を躱したツナはそのまま死ぬ気の炎を纏った拳でガラ空きの鳩尾へボディブローをかます。

 

「がはっ……!!」

 

「クローンだって、みんな生きているんだ。殺して良い命なんて、一つもない!ましてやこんな実験の為に……なんで殺されなきゃいけないんだ」

 

「生き……てる?」

 

(だってあいつら……人形だって……そォ、言ったじゃねェか……)

 

 殴られた痛みとツナの一言から受けた衝撃が過去の出来事がフラッシュバックする。学園都市最強の座を狙って下剋上を仕掛けてきた馬鹿共を常に返り討ちにしながらも、それと研究者以外に人との繋がりが一方通行(アクセラレータ)には無かった。

 

 最強故に恐れられ、妬まれ、疎まれ、孤独だけが付き纏った。

 

『「最強」止まりでは君を取り巻く環境はずっとそのままなのだろうね』

 

『遠慮はいらんよ。相手は薬品とタンパク質で合成された、ただの人形なのだから』

 

 一方通行(アクセラレータ)を擁護していたものを全て壊された気がした。

 

****

 

 御坂美琴は沢田綱吉と獄寺隼人が炎を噴射して飛び立ってから暫くその場から動けなかった。

 

 止められなかった。止めなきゃいけなかった。

 

 あの一方通行(アクセラレータ)を力づくで止める。そんな事できるわけがないのに。

 それなのに止められなかったのは……あの優しい言葉に、暖かい炎に不思議と希望を感じたから。

 でもそんなものに何の根拠もない。美琴には一方通行(アクセラレータ)のベクトル操作を破る方法なんてこの世にあるとは思えなかった。

 

「みゃー」

 

 思考の渦に呑まれていると美琴は鳴き声からツナが連れて来た黒猫の存在に気付いた。学園都市最強の超能力者(レベル5)との激闘には連れて行けないのでツナは敢えて置いて行ったのだろう。

 

「……アンタ、ひょっとしてあの時の猫だったりする?」

 

 あの時…とは御坂美琴が初めて妹達(シスターズ)と遭遇した時、ミサカ9982号と出会った日の事だ。あの日も9982号は木から降りられなくなった黒猫を助けようとしていた。

 

「みゃー」

 

「ゴメンね。私には見分けがつかないや」

 

 この猫同様に妹達(シスターズ)も外見は同じだ。しかし一人一人に命がある。そして何より御坂美琴の妹なのだ。

 

「……他人任せにできない理由がある。まずは自分の気持ちと向き合わなきゃね」

 

 流石にこんな所に放置はできないので黒猫を抱き上げ、美琴はツナと獄寺が向かった次の実験が行われる場所へと走る。

 その途中、実験が行われているはずの場所から爆発が上がり、妹の救出に向かってくれたツナ達の身を案じる。

 しかし現場に辿り着いた御坂美琴が見たのは驚きの光景だった。

 

「うそ……!?」

 

 額と拳に炎を灯して一方通行(アクセラレータ)を殴り飛ばす沢田綱吉と、その沢田綱吉に殴られた事で錯乱し、一方的にぶちのめされ続ける一方通行(アクセラレータ)の姿がそこにあった。

 

 あり得ない。全ての攻撃を反射する一方通行(アクセラレータ)に攻撃を当てている事が。学園都市最強の……詰まるところ世界最強の能力者であるはずの一方通行(アクセラレータ)が圧倒され、なす術もなく殴られ続けている事が……御坂美琴には到底信じられない事だった。

 

「あいつ……あんなに強かったの?あの一方通行(アクセラレータ)を圧倒してるなんて……学園都市最強が相手なのよ?」

 

 ツナが美琴よりも強い事はもう分かっていた。だけど一方通行(アクセラレータ)に勝てるとは思ってもいなかった。

 いや、いくら一方通行(アクセラレータ)に勝てるからって、ツナが戦う必要なんて本当ならどこにも無いはずだ。むしろ学園都市を敵に回しかねない。無理矢理学園都市の生徒にされ、家に帰りたいはずのツナからすればデメリットしかないはずなのに。

 

(何の関係もない赤の他人なのに……逃げ出したって、誰も責めないのに……)

 

 見れば一方通行(アクセラレータ)の腕は暗い中、遠目から見てもボロボロだ。火傷を負っているのが分かる。それがツナの炎によるものなのは想像に難くない。

 

「本当に……あの約束を……?」

 

 呆然としながらもそのすぐ近くで妹の応急処置を施し終えて、彼女を背負いつつもツナの戦いを見ている獄寺を発見し、その視線をツナへと向けつつもそちらへ走る。獄寺の周囲には何かのパネルのようなものがある。それで己と妹の身を守っているのは何となく分かった。

 そしてこちらに気付いたツナと一瞬だけ……目が合った。

 

 駆け付けた美琴と一瞬視線が交差するものの、ツナは目の前にいる一方通行(アクセラレータ)から決して意識を逸らさない。

 

「がァアアアアアアッ!!」

 

 ブンブンと手を大振りに振り回しても擦りもしない。むしろそうして隙が生まれる事で次々と拳が叩き込まれていく。

 

「クソが!!ウネウネと……!ごぶァッ!?ガッ!?ぐっ!?」

 

 殴られる度に激痛が走る。それでも意識が途切れないのは間髪入れずに叩き込まれ続ける痛みが意識の暗転を阻害しているからだ。

 ここで気絶させるのでは意味がない。この男に自発的にこの実験をやめさせなければならないのだ。

 

「なンっなンだよ、その炎はァァ!!?」

 

「お前に教える必要なんて無い」

 

 死ぬ気の炎を纏ったアームハンマーが振り下ろされ、一方通行の顔面が砂利に叩きつけられる。

 

「ゴアァァ…!?ぐ、チョーシ乗ってンじゃねェぞ三下ァァ!!!」

 

 しかし一方通行もタダではやられるつもりはない。手を地面に叩きつけて、ベクトル操作で衝撃波を起こし、それと一緒に石や砂も凄まじいパワーで叩き込む。

 だがそれすらもツナは腕を振るい、死ぬ気の炎で即席の壁を作り、防ぐ。それを見た一方通行の顔に焦りと苛立ちが走る。そしてそのまま炎が一方通行に向けてぶち込まれた。

 

「アアアアアア!?あ、熱ィィィィ!!!……ごぱっ!?」

 

 死ぬ気の炎が直撃し、熱さと痛みに悶えていると顎に容赦なくアッパーカットをぶち込まれる。

 

「負けた事が無いだけで、最初から最強でも何でもなかったんじゃないのか?」

 

 ツナからすれば一方通行(アクセラレータ)なんかよりもこれまで戦ってきたXANXUSや白蘭、そして学園都市に来て出会った上条や美琴の方がずっと強いと思えた。この男が強いのは能力だけだ。

 

「そんな程度で学園都市最強を名乗っていたなんて、拍子抜けだぜ」

 

 反射という優位性が崩れてしまえば脆いものだ。筋力は禄に無いし、喧嘩の腕前も素人以下。これまでまともに殴られた事すら無い為に感じる痛みも過剰に感じてしまっている。

 

 ベクトル変換の能力が無ければ『ダメツナ』にすら力負けしてしまう程に脆弱だった。

 

「なンなンだ……なンなンだよその炎はよォォ!!」

 

「別に炎がなくてもお前に攻撃する方法はあるぞ」

 

 そう言うとツナは両腕に纏っていた死ぬ気の炎を消し、〝右手〟を握りしめて一方通行(アクセラレータ)に拳を繰り出し、触れる前に寸止めした。すると身体は言う事を聞かずにそのまま一方通行(アクセラレータ)を殴り飛ばした。

 

「「!?」」

 

 美琴は目を疑い、一方通行(アクセラレータ)は殴られた痛みと吹っ飛ばされた衝撃を受けて尚、驚愕する。ツナが一方通行(アクセラレータ)の反射を打ち破ったのはあの炎によるもので間違いないだろう。本人もその旨の発言をしているのだから。

 しかしツナは今、それを使わずに一方通行(アクセラレータ)に拳を叩き込んでみせたのだ。

 

 まるで、御坂美琴を苦しめる残酷な幻想を殺すかの如く、相応の能力(ちから)がなくては超能力者(レベル5)には勝てないというこの街の当たり前の常識を何の特別な力も使わずに打ち砕いた。

 

 ボンゴレの超直感が導き出したもう一つの反射攻略法。無意識に展開する反射用の保護膜に触れる寸前に攻撃を止める事で反射を逆に利用し、一方通行(アクセラレータ)に自ら攻撃を引き寄せさせるのだ。

 勿論簡単な事ではない。それを成すだけの修練と戦闘経験があって初めてできる事だ。ツナに限って言えば超直感がその寸止めをする判断の補助を果たしているが、その条件さえ満たせば例え無能力者(レベル0)にだってできる。

 

 ミシミシと骨が軋む音を聞きながら一方通行(アクセラレータ)はよりフラフラになって立ち上がる。

 

「チョーシ乗ってンじゃねェぞ三下ァァ!!体内の血流なり生体電気なりこっちで操作すりゃあオマエなンざ簡単にぶっ壊せンだよ!!」

 

「……」

 

 必死に手を伸ばし、何とかツナに触れようとする一方通行(アクセラレータ)。しかしツナの持つ近接格闘のスキルや戦闘経験、超直感がそれを許さない。触れさせる事すらさせずに一方通行(アクセラレータ)を殴り続ける。

 

 しかし、何を思ったのかツナは敢えて動きを止めて一方通行(アクセラレータ)に自分の肩を掴ませた。

 

「「!?」」

 

 ツナが急に止まって一方通行(アクセラレータ)が触れる事を許した光景を見て獄寺も美琴もギョッとする。

 

(触った!!これで今度こそ血を逆流させて……っ!?)

 

 ツナの意図など知るわけがない一方通行(アクセラレータ)は今すぐにツナを殺そうと能力を発動させる。しかし違和感はすぐに現れた。

 

(まただ!ウンともスンとも言わねェ!!なンで能力が作用しねェ!?)

 

 死ぬ気の炎で腕を焼かれる寸前と同じ。血も生体電気も極自然な流れを維持し、彼の能力にちっとも左右されない。その様子を見て獄寺はその明晰な頭脳と死ぬ気の炎に関する知識によって結論を導き出した。

 

「そ、そうか……!」

 

 バミューダと戦った時の死ぬ気の到達点やラル・ミルチが未来で全身から死ぬ気の炎を出したのと同じだ。ツナは全身の細胞を死ぬ気にする事で自身の大空属性の炎を身体の内側で張り巡らせているのだ。

 それならば一方通行(アクセラレータ)の能力で血流や生体電気を操ろうとしても、大空の“調和”の力で影響を受けない。

 

 言わば死ぬ気の到達点の一歩手前という事だ。体外に死ぬ気の炎を放出こそしていないが、全身の細胞が一方通行(アクセラレータ)を倒す為に死を覚悟する事で大空の“調和”が全身に行き渡り、ベクトル変換による影響を“調和”で無力化しているのだ。

 

(クソが!!だったら先にその炎を解析して……!!)

 

 反射が通用せず、ベクトル操作そのものすら無効化する得体の知れない炎。目の前にいるチビ曰く能力じゃないらしいが、ただの炎というわけでもないはずだ。解析さえしてしまえば反射はできる。一方通行(アクセラレータ)はそう思っていた。

 

「……は?」

 

 一方通行(アクセラレータ)の能力の本質はベクトル変換ではない。それは副産物に過ぎない。反射が上手く働かないのは彼がその対象を上手く理解していないから。ならば理解してしまえばそれに合わせて能力のフィルタを組み直せば反射可能になる。

 彼の能力の真髄は解析能力。その獄寺を上回る明晰な頭脳を以ってすれば死ぬ気の炎の本質を掴む事など容易い。これが能力ではなく、生命エネルギーを圧縮したものだと理解した。

 

 だからこそ分かってしまった。どんなに死ぬ気の炎用のフィルタを組んでも大空の“調和”で反射膜を無力化されてしまえば全てが無意味なのだと。例え大空の炎を解析できたとして、その性質を変えられる訳ではない。反射膜を死ぬ気の炎を対処出来るように設定したとしても、他の属性の炎ならともかく、“調和”の特性を持つ大空属性だけは絶対に反射できない。

 

(ふざけンなよ!?こンなモン、反射しよォがねェじゃねェか!?)

 

 彼はその対象に合わせて反射を組むのであって、向こうのものを自分の反射に合わせたものに変質させる事など決してできない。いや、できたとしても“調和”によって大空属性の炎だけはそれは叶わなかっただろう。

 

 どうしようもない事が分かってしまい、固まってしまう一方通行(アクセラレータ)。ツナはそんな彼を哀れむ事もなく、ただその鳩尾にこれまでで一番重い拳を繰り出した。

 

「あ……がァ……!!」

 

 腹部に走る激痛で一方通行(アクセラレータ)は現実に引き戻され、仰向けに倒れ込む。鋭い痛みにより、腹部を手で抑えながらダラダラと尋常ではない量の汗を流している。そしてツナはトドメを刺すつもりなのか、右腕に死ぬ気の炎を溜め始める。

 

(あの炎は……反射できねェ……!!)

 

 この戦いの中であの炎を解析したからこそ、それがどういうものか分かってしまった。分かったからこそ、どうしようもないと理解してしまった。反射のフィルタを組み直しても関係ない。保護膜が空気と“調和”されて無力化されてしまう。

 

 このままでは焼かれる。一方通行(アクセラレータ)はツナの腕で燃え盛る死ぬ気の炎に強い危機感を抱く。

 しかしツナは腕に溜めた炎を突如胡散させると諭すように一方通行(アクセラレータ)へと語りかけた。

 

「……やめだ」

 

「……!?」

 

「これ以上お前を殴っても、死んでいった妹達(シスターズ)は帰って来ない。大人しく捕まって罪を償って貰う」

 

 こいつは今何と言った。捕まえるだと。罪を償わせるだと。ふざけるな。自分が相手にしてきたのはボタン一つで作れる模造品だ。そんなものの為に何故自分が裁かれる必要がある。()()()()()()!!

 

「それからこの実験を止める方法、関係者、知っている事も洗いざらい……っ!?」

 

 力が要る。目の前のクソを黙らせ、叩き潰す力が。理りやルールすらも……全てを支配する、絶対的な力が!!!

 

「くか……くかきけこかかきくけききこかかきくここくけけけこきくかくけけこかくけきかこけききくくくききかきくこくくけくかきくこけくけくきくきくきこきかかかーーーーーーーーー!!!!!」

 

 一方通行(アクセラレータ)はこれまでやった事もない計算式を入力した。

 巨大な暴風が巻き起こる。辺り一帯の大気を全て巻き込んだかのような大規模なものだ。地球に穴が空いたような大気の渦。周囲のコンテナも簡単に舞い上げ、ツナに襲い掛かった。

 

「ぐっ!?」

 

「きゃっ!?」

 

 二人の戦いを観ていた獄寺と美琴もその衝撃波に吹き飛ばされそうになりながらも、どうにか死ぬ気の炎や能力を駆使して耐える。ここで吹き飛ばされてしまえば自分達だけでなく、満身創痍な御坂妹まで吹き飛ばされてしまう。

 

「空気、風、大気……あンじゃねェか。目の前のクソをブチ殺すタマが!!ここに!!」

 

 仰向けに倒れながらも咄嗟に行った演算による威力に興奮する。咄嗟に考え付いた事とはいえ、想像以上の破壊力だった。しかしそれが齎した結果は期待外れの一言だった。

 

「……チッ、大したダメージにもなってねェのかよ。つくづくバケモンだなァ、オマエも」

 

 ツナは暴風で巻き上げられながらも、大空の炎を周囲に振り撒いて盾を作る事で竜巻や副次的に発生した衝撃波を防いでいた。竜巻が一旦晴れれば空中で死ぬ気の炎を噴出して飛行するツナが悠然と一方通行(アクセラレータ)を見下ろしていた。

 

 近くにいた獄寺達には竜巻は直接襲い掛かる事はなく、衝撃波やそれによって飛ばされた物体等は彼のSISTEMA C.A.I.やダイナマイト、美琴の電磁波で処理が間に合っていた。

 

「……クソが」

 

 これだけの規模の攻撃すら対応されてしまう。だが反撃の糸口は掴んだ。

 反射ができず、能力も通用しないのなら、奴の炎を上回る圧倒的な力で叩き潰せば良い。

 

「……この手で大気に流れる風の『向き』を掴み取れば、世界中に流れる風の動き全てを手中に収める事ができれば……世界を滅ぼす事だって可能」

 

 学園都市最強?絶対能力者(レベル6)?無敵?そんなものはもういらない。一方通行(アクセラレータ)を止められる者など、この世界にただの一人も存在しないのだから。

 

(世界はこの手の中にある!!)

 

 ツナの方を見やれば今の暴風を警戒しているのか、明らかに一方通行(アクセラレータ)を殴り飛ばしていた先程までと様子が違う。その変化を愉快に思い、一方通行(アクセラレータ)は嗤う。

 

「……圧縮。空気を圧縮。圧縮、圧縮ねェ……。イイぜェ、愉快な事思い付いた!!もうちょっと付き合えよ!すぐにギネスに載っちまうぐれェ愉快な死体(オブジェ)にしてやるからよォォォ!!」

 

 叫びと共に新たに演算を開始する一方通行(アクセラレータ)。ツナはその橙色の瞳でジッと彼を見据える。何かを決めかねているようだ。

 再び巨大な暴風が巻き起こる。一方通行(アクセラレータ)を中心に力の渦が形成されていく。

 流石にこの規模の攻撃を見ては如何に奴を圧倒できていたとしてもツナが殺されてしまう。そう感じた美琴は青褪めた顔をしながらコインを取り出す。

 

一方通行(アクセラレータ)!!動かないで!!」

 

 超電磁砲(レールガン)を撃つ体勢を整えて牽制しようとする。当然、ツナの行為を無にするその行動に獄寺が黙っているわけがない。

 

「テメー何やってんだ!!10代目が何の為に戦ってると……「獄寺君、だっけ?その子を連れて離れて。反射されて巻き込まれるわよ」…!!」

 

 ツナが殺される前に自分が死ねば実験は終わる。そうすればツナがこの一撃で殺される事もない。そう思って超電磁砲(レールガン)を撃とうとした。しかし美琴はここで重大な事に気付く。

 一方通行(アクセラレータ)は視線はツナへと釘付けになっており、名前を呼んだ美琴の方を見ようとすらしなかった。

 演算に夢中になっているのか、ツナ以外に興味はないのか。故に美琴の存在に気付いてすらいないのではないか。

 

 恐る恐る一方通行(アクセラレータ)の頭上を見上げればそこには超巨大な高電離気体(プラズマ)が発生し、膨張していた。

 

(何よ……コレ……)

 

 風を一点に凝縮して生み出した高電離気体(プラズマ)。この辺り一帯が簡単にまとめて消し飛ぶだろう。

 

 一方通行(アクセラレータ)はツナを潰す事と自分の能力を試す事しか頭に無い。例え美琴が超電磁砲(レールガン)を撃ったところで一瞥すらしないだろう。それで反射して美琴が死んで実験中止の命令が今下っても止まりはしないと分かってしまった。

 

(どうすれば……!?)

 

 美琴がどうにかしてあの高電離気体(プラズマ)を排除できないかと考えようとしたその時、ツナが口を開いた。

 

「御坂さん……俺を信じてくれ」

 

「……!」

 

 ツナの視線は一方通行(アクセラレータ)から外れていない。恐らく美琴が奴に向かって叫んだ事は分かっても超電磁砲(レールガン)を撃とうとしていたところは見ていないはずだ。なのに全てを見透かされていた。

 その上で信じて欲しいと言われた。

 

「獄寺君、御坂さんを頼む」

 

「……!分かりました!おい御坂!とっとと離れるぞ!!」

 

 ボスであるツナに美琴を守るように頼まれた獄寺はSISTEMA C.A.I.のシールドを前方に集めて正面からの防御のみに割きつつ、御坂妹を背負いながらも美琴の腕を引っ張る。

 

「で、でも……!!」

 

「心配いらねぇよ」

 

 美琴の不安を払拭するかのように御坂妹を背負う獄寺は告げる。何処かこの後の展開を期待するかのような表情でまっすぐにツナだけを見ていた。

 

「出るぜ……10代目の大技がな」

 

 巨大な高電離気体(プラズマ)を精製し、それをツナにぶつけるべく演算する一方通行(アクセラレータ)。それに対抗すべくツナはその高電離気体(プラズマ)と同じ程度の高さにまで自分の位置を調整し、眉間に皺を寄せて片手から浮遊する為の炎を放出しながら、両腕を前後に真っ直ぐ伸ばし、一方通行(アクセラレータ)の作る高電離気体(プラズマ)に照準を合わせて体勢を整える。

 

「オペレーションX(イクス)

 




説明

一応理屈としては一方通行の能力が先に死ぬ気の炎に干渉しています。しかし大空の炎の特性が“調和”……全体のバランスが保たれていて矛盾や綻びのない状態である為に自然の摂理を捻じ曲げるベクトル操作が効かないのです。そして大空の炎が一歩遅れて一方通行の能力に干渉し、一方通行の周囲にある保護膜を空気と調和させて消しているのです。

複数の属性なら一方通行の保護膜を破壊して攻撃できるなどの意見も出ていますが、私の考えとしてはそれより先に一方通行の能力が死ぬ気の炎に干渉する方が早いので大空以外の属性の炎は解析されてしまえば普通に反射されるというのがこの小説における設定です。
よって真正面から反射を破れる死ぬ気の炎は大空属性のみです。

例外として霧の炎や砂漠の炎を使う術士ならば炎に干渉させずに幻覚を見せるといった限定的な戦い方をすれば一方通行相手に勝機を見出すこともできるでしょう。
あとは空間移動の他にも使い手の肉体を異形のものに変質させるといった未だ謎の多い夜の炎なら可能性はあるかな……?
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