とある魔術のボンゴレX世   作:メンマ46号

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レールガンSであった鍋回です。前半はね。

原作でトマゾファミリーの回、読み返して思ったけど二世代前のヴァリアーにスカウトされる程のシャマル相手にヘッドショットかましたトマゾのマングスタの射撃の腕って実はとんでもないのでは。


隠し弾3
能力者達の鍋宴会来る!


 『学園都市』

 

 東京都西部を切り拓いて作られたこの都市では“超能力開発”が学校のカリキュラムに組み込まれており、230万の人口の約八割を占める学生達が日々『頭の開発』に取り組んでいる。

 

 これは、そんな学園都市を取り巻く、能力開発をする学生達の平凡な日常を切り取った物語である。

 

 ……たぶん。

 

****

 

 それは学園都市での夏休みのある日の事。

 

 最近できた友人の力を借りた事で絶対能力進化(レベル6シフト)計画を止め、妹達(シスターズ)を救い出した御坂美琴は友人達に色々と心配をかけてしまった事の謝罪と埋め合わせを兼ねての鍋パーティーを開く事になった。開催場所は友人の佐天涙子の宅だ。

 

 《超電磁砲(レールガン)》御坂美琴

 性別/女 年齢/14歳

 能力/電撃使い(エレクトロマスター)

 強度(レベル)/超能力者(レベル5)

 本日の食材/高級霜降り牛肉

 

 その準備の段階で先日色々と揉めた暗部組織の人間とファミレスで鉢合わせてして騒ぎを起こして追い出されたりと紆余曲折あったが、鍋パーティー自体は問題なく行える。

 

「こんにちは!」

 

「いらっしゃーい!……あれ?白井さんなんかボロボロ?」

 

「……何でもありませんの」

 

 鍋パーティーの開催場所を提供した美琴の友人の佐天涙子が美琴と黒子を迎えたのだが、やって来た二人の内、黒子だけが妙にボロボロというか黒焦げになっていた。……まぁ、先述したファミレスで色々あったのである。

 

 そんな事は置いといて、本日のイベントに欠かせないものが既に佐天の部屋に置いてあり、それを見せる為か佐天はやや大袈裟に二人の視線を部屋のテーブルへと誘導する。

 

「じゃーん!」

 

「おお!土鍋だー!!」

 

「友達から借りて来ましたー!出汁の方もバッチリですよー!」

 

 《都市伝説ハンター》佐天涙子

 性別/女 年齢/13歳

 能力/空力使い(エアロハンド)

 強度(レベル)/無能力者(レベル0)

 本日の食材/鍋の出汁

 

 友人から借りたらしい鍋を用意して準備万端。美琴は鍋の蓋を開けて久しぶりの友人達との交流に心弾ませる。

 

「こんな暑い日に鍋パーティーやるのなんて私達くらいだよねー」

 

「お姉様、鍋パーティーではなく、あくまで勉強会ですわよ?」

 

「あぁ…そっかそっか」

 

 外出に厳しい常盤台の寮監には黒子が述べた理由での外出申請を出しているのだ。実態は美琴が言う通り鍋パーティーではあるが。あまり浮かれ過ぎて後で寮監にボロが出ては目も当てられない。

 

「でも暑い時に熱いものを食べるのは身体に良いですからね」

 

 そう言って佐天の鍋の準備を手伝っているのは同じく美琴の友人である初春飾利。どうやら美琴と黒子より先に佐天の部屋に来ていたらしい。

 

「皆さん、どんな具材を持って来たんですの?」

 

「えっと、良く分かんなかったんだけど……お肉屋の人がお勧めだって言うから取り敢えず買って来た」

 

「箱……?」

 

 そう言って美琴が持参して来た紙袋から取り出したのは何段にも積み重なった木箱のお重。それを見て佐天と初春は少々驚きつつも開く。そしてその中にあった食材の色は一面赤。

 

「わぁ!箱の中から牛肉がっ!!」

 

「すっごい霜降りですぅーー!!」

 

 庶民ではまずお目にかかれないであろう高級な牛肉の山。お嬢様ならではの具材選びと言えた。

 

「え、おかしかった?」

 

「いやぁ、初めて見たんで……初春は?」

 

「私は野菜をいっぱい買って来ました!夏野菜を中心にとうもろこしやモロヘイヤ、お豆腐にきのこも!」

 

 《守護神(ゴールキーパー)》初春飾利

 性別/女 年齢/13歳

 能力/定温保存(サーマルハンド)

 強度(レベル)/低能力者(レベル1)

 本日の食材/夏野菜、きのこ、豆腐

 

「ビタミンたっぷりでヘルシーな感じだね」

 

 それぞれが持ち寄った食材に特に被りもなく、バランスの取れた鍋になりそうだ。その陰で黒子は彼女達の食材を見て拳を握り締めて目を光らせる。自分の選んだ食材とは被りがなく、その上でトップを取ったと確信した為だ。

 

「乙女は食事には美を追い求めるもの!この分ではわたくしが用意した食材が脚光を浴びてしまいそうですの!!」

 

「白井さん何買ったんですか?」

 

「最初は迷いましたわ。ペットショップで丸々太った鼠を手にした時はどうなる事かと……」

 

「ね、鼠…?」

 

「ペットショップって……」

 

 滅茶苦茶嬉しそうに語る黒子に引き気味な三名。ペットショップで鼠ってどういう事なのか。鍋の食材を買い求めに行ったのではないのか。黒子は力強く持参した紙袋を手に高らかに宣言する。

 

「でもぉ!!その直後閃いたんですの!!これぞお姉様に相応しい食材!!」

 

「アンタ、何買って来たのよ!?」

 

「白井さん、闇鍋じゃないんですよ!?」

 

 この鍋パーティーの趣旨を間違えていないかとみんなが不安になる中、黒子が叩き付けるかのように取り出した食材は舗装されたスッポンだった。

 

 《変態風紀委員(ジャッジメント)》白井黒子

 性別/女 年齢/13歳

 能力/空間移動(テレポート)

 強度(レベル)/大能力者(レベル4)

 本日の食材/スッポン

 

 意外な食材に三人が困惑する中、黒子はスッポンをチョイスした理由を語り出す。

 

「ぷるっぷるなコラーゲンはお姉様の瑞々しいお肌をより美しく磨き上げるのに違いありませんの!そしてコレェ!!」

 

 今度はグラスに注がれた真っ赤な液体を美琴に献上する。それを見た美琴は思わず顔を顰める。どうにも嫌な予感というか、碌でもない展開になってきた気がしてならない。

 

「な、何よコレ!?」

 

「スッポンの生き血ですの!リンゴジュースで割って飲みやすくなってますの!さぁグイッと一息に!!コレを飲めば精力…いえ、元気一杯になる事間違いなしですわ!!」

 

 ギョッとしてドン引きする美琴にスッポンの生き血(リンゴジュース割り)を勧める黒子。というかポロッと零した一言でほぼ媚薬のようなものだと白状していた。

 

「夜眠れなくなる可能性も無きにしも非ずですけれど、その時はわたくしが添い寝……」

 

 それ以上彼女の言葉は続かなかった。数秒後、佐天の部屋に電撃で黒焦げとなった白井黒子が倒れ伏すのであった。

 

「さぁーて、じゃんじゃん入れちゃおー!」

 

 黒子の変態行動はいつもの事なので、佐天も初春も気にする事なく、鍋パーティーは始まる。持ち寄った食材を次々と鍋にぶち込んでいき、よそっては舌鼓を打つ。

 

「美味しー!良い味出てるー!」

 

「スッポンって初めて食べましたけど、美味しいですね!」

 

「スッポンも美味しいけど、このお肉もサイコー!」

 

「野菜も中々いけますわよ!」

 

「結局全部美味しいって事ね!」

 

 こうして鍋パーティーをしているところを見ればやはり彼女達も普通の中学生だという事だ。学園都市では超能力の開発や研究をしているものの、これが本来あるべき形なのだ。

 

「春上さんも早く来れば良いのに」

 

「そろそろ来る頃だと思いますけど」

 

「先に始めちゃって良かったのかな?」

 

「具材ならまだまだたっぷり残ってますわよ」

 

「そうそう!ドンドン食べましょー!」

 

 そうしていると佐天の部屋のインターホンが鳴り、話題に出た人物がやって来た。春上である。

 

「遅くなってごめんなさいなのー」

 

「ああ、春上さん…」

 

「美味しそうなのー」

 

「用事というのはもう済んだんですの?」

 

「うん。先生に相談があって……」

 

「お鍋、良い感じですよ。いっぱい取っちゃいますからね!」

 

「春上さん、食材買ってきてくれた?」

 

「うどんを持って来たのー」

 

「おお!〆にピッタリだね!」

 

「さぁ、食べよ食べよー!」

 

 《大食い少女》春上衿衣

 性別/女 年齢/13歳

 能力/精神感応(テレパシー)

 強度(レベル)/異能力者(レベル2)

 本日の食材/うどん

 

 春上も合流し、彼女達の鍋パーティーは順調に進んでいく。友達と集まって大勢で食べるという行為自体が非常に楽しいものだ。

 そうやっていると決まって佐天が次々と新しい話題を出してくる。当然、その内容は学園都市内の都市伝説の類いばかりだが。

 

「そうそう!この前また新しい都市伝説が出たんですよ!」

 

「また都市伝説ですの?」

 

「その名も、空飛ぶ発火能力者(パイロキネシスト)と人間爆撃機!!こないだの夜、おでこに炎を灯した発火能力者(パイロキネシスト)が両手から炎を出してそれで空を飛んでたって噂なんですよっ!!」

 

「ゴフッ!!」

 

「お姉様?」

 

 佐天からその都市伝説を聞いた美琴は啜っていたスープを噴き出す。慌ててハンカチで吹き出した汁を拭き取りながら佐天の話に耳を傾ける。

 超心当たりある。額に炎を灯す能力者など一人しかいない。いや、発火能力者(パイロキネシスト)じゃないらしいが。

 

発火能力(パイロキネシス)で空中浮遊など……一体どれだけの火力が必要ですの……。大能力者(レベル4)でもそんな例は聞いた事がありませんの」

 

「すごいのー」

 

(ツナの奴、力を隠してるならそんなポンポン目撃されるなんて迂闊な事してんじゃないわよ……。学園都市に無理矢理連れて来られたのもそうやって飛んでるのを人に見られたからじゃないの?)

 

 黒子達の会話を聞きながら、その都市伝説の大元……というか本人について考える美琴。そんな美琴を見て黒子がある指摘をする。

 

「お姉様?お顔が赤くなってますが……?」

 

「へぁっ!?べ、別に赤くなってないわよっ!!そ、それより佐天さん、人間爆撃機っていうのはどんな都市伝説なの!?」

 

 顔の赤さを指摘された美琴は慌てて話題を逸らす。普段この手の都市伝説にあまり興味を示さない美琴の反応に気を良くした佐天はまた都市伝説を語り出す。

 

「身体中にダイナマイトを仕込んでいて、それをスキルアウト達に投げつけて纏めて病院送りにしたらしいんですよ!」

 

「ブハッ!!」

 

 またも噴き出す美琴。そちらにも心当たりがあった。どう考えてもあの実験の凍結に力を貸してくれた彼だ。飛んで来た鉄骨とかにダイナマイト投げて弾いてたもの。

 

「完全に傷害事件じゃないですか……」

 

「爆発なのー」

 

「ダイナマイトなんて野蛮な物を使いますのね……。恐らくは無能力者(レベル0)…もしくは直接攻撃が不可能な能力者でしょうが……」

 

(……良く良く考えたら獄寺君のダイナマイトもおかしくない?アレ一本であんな威力あり得ないでしょ。いやそもそもなんでそんなの持ってんのって話だけど)

 

 異常な破壊力の要因は“分解”の特徴を持つ嵐属性の死ぬ気の炎にあるのだが……当然美琴はそんなの知らない。側から見れば威力のおかしいダイナマイトでしかない。

 

 とまぁ、こんな感じで時々都市伝説の話の時に美琴が妙な反応をした事を除けば鍋パーティーは大成功に終わったと言えるだろう。

 そして帰り道、常盤台中学の学生寮に向かう美琴と黒子は満足気に笑いながら歩いていた。

 

「はぁ〜食べた食べた」

 

「暫くダイエットしなくてはなりませんの」

 

「でも楽しかったなぁ、またやりたいね勉強会!」

 

「ええ。書類を揃えるのが大変ですけれど」

 

 勉強会という名の鍋パーティーでリフレッシュできた美琴。これまで『絶対能力進化(レベル6シフト)計画』で辛い思いをした分、こうして日常に戻れたのは喜ばしい事だろう。

 

「あっ、帰宅時間…!オーバーしてないよね!?」

 

「まだ大丈夫ですわ。でも少し急いだ方がよろしいかと。例え一分でもオーバーすれば容赦のないお仕置きが……」

 

「やば……急ご!」

 

 時間を確認して門限が過ぎていない事にホッと一息。しかし油断もできないので駆け出す美琴と黒子。

 そんな中、遠方から物凄い喧騒が聞こえてきた。

 

「待てやごらあぁぁぁっ!!」

 

「そこのウニ頭は絶対殺す!見せしめに茶髪もボコる!!」

 

「ひいぃぃっ!!なんでこうなるのーー!!」

 

「獄寺とインデックスははぐれて、俺とツナだけ追われて……あぁもう不幸だぁーーーー!!」

 

 見覚えのある黒髪と茶髪のツンツン頭コンビが大勢の不良達に追い回されていた。特に黒髪へと向けられる殺意が半端ない。これに唯一対処できそうな銀髪の不良の姿は見られない。

 

「あらあら、沢田さんは幸の薄そうな顔だとは思っていましたが……風紀委員(ジャッジメント)として見過ごす事はできませんわね」

 

「アイツ、本当に自分の事じゃ死ぬ気になれないのね……」

 

「お姉様?」

 

 美琴は溜め息を吐いてから、その手に稲妻を迸らせる。これで門限に遅れて罰則決定だ。

 

「全く……退屈しないわね。この街は」

 

****

 

 ズズウゥン……!!

 

 夜中、町内にまるで一軒家でも倒壊したかのような轟音が響き、砂煙が立ち登る。

 まさかそれが中学生の拳一つで地面にクレーターを作られた事で発生した現象だとは誰も思わないだろう。

 

「……しつこい奴らだ」

 

 砂煙の中から飛び出し、その光景を目の前で見ていた男は小脇に抱える少女二人が目を覚ます事が無いよう、細心の注意を払いながら迫る追手への対処を始める。

 

極限太陽(マキシマムキャノン)!!」

 

 振り上げられた拳から黄色く輝く炎による火柱が立った。男はそれを躱し、次の攻撃に備える。

 

「うおおおっ!!貴様だけは極限に許さーーーん!!」

 

「結局貴様などこの僕が成敗してくれるわ!!」

 

 黄色い火柱の中からまるで芝生のような生え方をした白髪の少年と彼と同じくらいの体格の眼鏡をかけた少年が飛び出してそれぞれがボクシングのスタイルで晴と森の属性の死ぬ気の炎を纏った拳を繰り出した。

 

 しかしその拳を繰り出した相手にそれは当たる事はなく、まるで蜃気楼のようにすり抜けてしまう。

 

「幻覚か!!」

 

「結局小賢しい手を!!」

 

 笹川了平と青葉紅葉は辺りを見回して敵を見つけようとする。だが時既に遅し。周囲の景色は既にハイレベルな幻覚によって歪められていた。これでは敵の発見どころか自分達の立ち位置すらまともに把握できない。

 

 二人を幻覚空間に閉じ込めた男はそのまま逃走を図る。しかしそれを邪魔する新手が出現する。

 

「させない!」

 

 右目に眼帯を付けた少女、クローム髑髏が槍を振るいながら、霧の炎によるカーテンを展開して男の行手を阻む。しかし靴から死ぬ気の炎を噴出する事で空中を自在に移動できるその男の足止めには足りない。

 男は腰に帯刀していた剣を抜き、その剣でクロームが展開した霧のカーテン(コルティーナ・ネッビア)を斬り裂いて突破した。

 その瞬間を狙って額に死ぬ気の炎を灯す少年、古里炎真が右手を男に向けて伸ばして、捕縛攻撃を仕掛ける。

 

大地の(グラヴィタ)……!!」

 

「させん」

 

 男が剣の切っ先を炎真に向けると彼の両手首に重い輪っかが現れ、直後にその輪っか同士が引き寄せ合い、手錠をかけられたかのように炎真の両手が拘束された。そしてその輪っかの重みにより、両手どころか彼の身体そのものが地面に押し付けられた。

 

「ぐっ!?」

 

(重い……!なんて重さだ!それにこの手首の腕輪は互いを強く引き寄せている……!!磁石か!?)

 

「大地の重力は貴様の腕が拘束されれば上手く制御できなくなる。その拘束具を軽くする事もできまい。周囲の仲間諸共吹き飛ばしても構わんのなら使うが良い」

 

「くっ…!」

 

 すると今度は紫色の…雲属性の炎を帯びたチェーンが伸びて来て彼を襲う。剣でそれを弾きつつも飛び上がって一応の攻撃範囲内から離脱してその下手人へと目を向ける。

 

「……貴様も来るとはな。想定内ではあるが、予定外だ」

 

 トンファーを構え、改造長ランを着込む少年。彼の事も男は良く知っていた。

 彼がここに来た理由など分かり切っている。並盛中をこよなく愛する彼が今起きている事態を知って黙っているはずがない。だからこの男が来る前に全て終わらせるつもりだった。

 

「君は並中(ウチ)の生徒誘拐の現行犯だ。()()()()、ここでグチャグチャに咬み殺す」

 

 並盛中学校風紀委員長、雲雀恭弥。ボンゴレ最強の守護者であり、今この場における最高戦力でもある。既にVG(ボンゴレギア)による形態変化(カンビオ・フォルマ)をも済ませている。

 雲雀は目の前の敵を咬み殺すべく、両手に持ったトンファーに雲属性の炎を纏う。

 

(流石に今ここで雲雀恭弥をも相手取るのは手こずるな……。山本武と他のシモンファミリー達、何よりリボーンが合流する前に一度帰還するか)

 

 今の自分なら負けはしないだろう。しかし必ず勝てるとも言えない。それ程までに強く、不確定要素が多過ぎる相手なのだ。雲雀恭弥という男は。そこに雲雀に次ぐ実力を持つ山本武や他のシモンファミリーの実力者達、更にリボーンまで加われば敗北は必至。

 

 いや、雲雀が今ここにいる他の面子と共闘を良しとすればそれだけで勝ち目が無くなる。それがどれだけあり得ない事であろうとも。

 故にここは撤退する。既に標的は捕らえたのだから。

 

極限太陽(マキシマムキャノン)!!!」

 

 そう考えているとやかましい声と共に凄まじい衝撃が走り、近くの空間が砕け散る。空間の亀裂からは晴の炎と森の炎の火の粉が見え、そこから了平と紅葉が出て来た。

 

「結局、僕の前では幻覚空間など無意味なのだ」

 

「極限に脆い空間だったぞ!」

 

「……貴様ら、どうやってあの空間を脱出した?」

 

「「無論、この拳で打ち砕いた!!!」」

 

 ツナが未来でのチョイスでトリカブトの幻覚空間をX BURNERで無理矢理吹き飛ばしたのと同じ理屈だ。

 紅葉が持ち前の超視力で幻覚の揺らぎなどから幻覚空間におけるキラースポットを見つけ、了平が晴の“活性”による筋力強化をされた拳圧でそこを的確に破壊した。勿論紅葉も森の炎を纏った拳を繰り出し、殴りながら幻覚空間のキラースポットを切り刻んだ。そうして二人で力を合わせて幻覚空間を物理的に吹き飛ばして脱出したのだ。

 

 言葉にすれば簡単だが、死ぬ気の炎ありきとはいえ、拳でそれを成し遂げる事がどれだけ非常識かは語るまでもない。

 

「……途轍もない馬鹿が二人揃えば無茶苦茶を当然のようにやってのけるわけか」

 

 男の言う通り、途轍もなく馬鹿な方法で幻覚空間を脱出したと言えるだろう。それでできてしまうのだから何とも反応に困る。

 

「結局こいつのような真正馬鹿と僕を一緒にしてくれるな!」

 

「それは俺の台詞だ!眼鏡をかけている癖に極限に頭の悪いお前と一緒にされたくはない!!」

 

「……」

 

 言い争いを始めた馬鹿二人は放っておく事にした。それよりも問題なのは何と言っても雲雀恭弥だ。やはり撤退が最も賢い選択だろう。男は己の持つリングに視線を向ける。そのリングには亡者が悲鳴を上げているかのような顔が装飾されているという特徴があった。

 

 男の右手の中指に嵌められているのはレア度五つ星と言われるこの世に六つしか存在しない霧属性最高峰のリング、ヘルリングの一つだ。

 

「……()()逃げるのかい?」

 

 雲雀は敵を挑発する。しかしここでそんな安い挑発に乗る相手でもなかった。

 

「……学園都市で待っているぞ。ボンゴレの守護者達よ」

 

 そう言うと男はヘルリングから藍色の死ぬ気の炎…霧の炎を出し、即座に匣兵器に注入した。器用にも捕らえた少女二人を抱えながら。

 

 その瞬間、真っ白い光に包まれて男は小脇に揃って抱えた栗色の髪の少女とポニーテールの少女と共にその場から消えていなくなった。その光目掛けて雲雀がチェーンを伸ばしても遅い。

 すぐ様連れて行かれた二人の身を案じてクロームは二人の名前を叫ぶ。

 

「京子ちゃん!ハルちゃん!」

 

 そして少女達を連れて男が消えた直後、笹川了平の怒声が響き渡った。

 

「京子を……京子を返せえぇぇぇぇっ!!!」




美琴は佐天さんの部屋でクッキー作りはしてません。ツナはお礼で貰ったデパ地下の高級クッキーに対して「手作りが良い」なんて文句は言わないので。


ちょっと思った事。

骸という強大な敵を前に太刀打ちできず、戦う手段もなく、それでも「沈黙の掟(オメルタ)」を貫いたフゥ太。
垣根という強大な敵を前に太刀打ちできずとも戦う手段はある。それでも理由はどうあれあっさり仲間の情報をゲロったフレ/ンダ。
10歳に満たない男の子と女子高生(多分)でこの差よ。
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