とある魔術のボンゴレX世   作:メンマ46号

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第二の刺客来る!

 ツナ達がいる小萌のアパートより600m程離れた雑居ビルの屋上でステイルは傍にいる仲間と共に双眼鏡で彼らの様子を見ていた。

 

禁書目録(インデックス)に同伴していた少年二人の身元を探りました。……禁書目録(かのじょ)は?」

 

「生きてるよ。だがそうなると向こうにも魔術の使い手がいるはずだ」

 

 ステイルと会話する仲間は女性だった。腰まで届く程に長い黒髪をポニーテールにして、腰には2m以上の長さの日本刀を差している。服装はジーンズの左脚がばっさり切られ、白い半袖のTシャツは何故か脇腹の方で布を縛ってヘソだしをしているという珍妙なものだ。ステイル同様、側から見れば変人でしかない。

 

「それで神裂、あいつらの力は一体何なんだ?」

 

「それですが、少年達の情報は特に集まっていません。少なくとも二人共魔術師や異能者の類ではない……という事になるのでしょうか」

 

「何だ?もしかしてあいつらがただの高校生と中学生とでも言うつもりかい?やめてくれよ。僕はこれでも現存するルーン24字を完全に解析し、新たに6文字を開発した魔術師だ。何の力も持たない素人が裁きの炎(イノケンティウス)を退けられる程、世界は優しく作られちゃいないし、片方に至っては魔術の炎を石化させたり、裁きの炎(イノケンティウス)を掻き消したり、一瞬でルーンを全て消し去る不気味な炎を使うんだぞ?」

 

 煙草をふかしつつ、不機嫌そうに昨日の戦いについて語るステイル。魔術を打ち消す上条と魔術を凌駕する炎を使うツナの存在。あれらが一般人扱いされるならば日本はまさしく神秘の国だ。

 

「そうですね。むしろ問題なのはあれだけの戦闘能力を持っておいて、片方はただの喧嘩っ早いダメ学生扱いされ、もう片方は()()()()()()()()()()()I()D()()()()()()()()()()……という事です」

 

 この学園都市は超能力者量産機関という顔を持つ。五行機関と呼ばれる組織であり、魔術と科学に分かれているとはいえ、ステイルも神裂も事前連絡を入れてあらゆる許可を取っている。学園都市への出入り、都市内の学生に関する情報の閲覧…など多岐に渡る。

 

「情報の意図的な封鎖かな。しかも禁書目録の傷は魔術で癒したときた。神裂、この極東には他に魔術組織が実在するのかい?」

 

 二人はツナと上条は五行機関とは別の組織を味方につけていると睨んだ。他の組織が二人の情報を徹底的に消していると勘違いした。……ツナに関しては強ち勘違いとも言い切れないのだが。

 

「この街で動くとなれば、何人も五行機関のアンテナにかかるはずですが。……敵戦力は未知数、対してこちらの増援は無し。難しい展開ですね。最悪、組織的な魔術戦に発展すると仮定しましょう。ステイル、貴方のルーンは全て謎の炎による石化で無力化された、と聞いていますが」

 

「その点ばかりはあの炎の詳細が分からない以上、対策が限られてくる。今度は建物のみならず、周囲2kmに渡って結界を刻む。使用枚数は16万4000枚、時間にして60時間程で準備を終えるよ」

 

 ツナの大空の炎による調和…それに伴う石化の範囲は分からないが、ステイルはステイルなりに対策を講じていた。それは同時にもし大空の炎が2kmもの範囲をも問題にしないというのなら、ステイルは絶対にツナには勝てないという事を指しているが。

 

 そういう意味でも敵の戦力が未知数だという事実はこの二人の魔術師にとって大きな痛手だった。

 

「……楽しそうだよね」

 

 不意にステイルは600m先で談笑しているであろう上条達に視線を向けて呟いた。寂しそうに、悲しそうに。

 

「本当に楽しそうだ。あの子はいつでも楽しそうに生きている。……僕達は一体いつまでアレを引き裂き続ければ良いのかな」

 

「複雑な気持ちですか?かつて、あの場所にいた貴方としては」

 

「……いつもの事だよ」

 

 

****

 

 三日後の夜、インデックスの傷が完治した事もあり、上条、ツナ、インデックスの三人は桶とシャンプーなどの石鹸類を持って銭湯に向かっていた。

 あの後、小萌は宣言通り忘れたのか、敢えて触れなかったのかは分からないが何の事情も聞かずにアパートに泊めてくれた。上条の学生寮は敵にマークされているので戻る訳にはいかなかったのでありがたかった。

 

「おっふろっ、おっふろっ、おっふっろ〜♪」

 

「なんだよ、そんなに気にしてたのか?正直匂いなんてそんな気になんねーぞ?」

 

「当麻君、そういう事じゃないと思うよ」

 

「とうまは汗かいてるのが好きな人?」

 

「そういう意味じゃねえっ!!」

 

 相変わらずデリカシーゼロの上条。ツナは軽くツッコミを入れつつも彼自身も少し楽しみではある。以前兄弟子のディーノやランボなどの居候達と銭湯に行った事を思い出す。ディーノのせいで家の風呂が壊れたのが原因ではあるが。

 頓珍漢なやり取りに苦笑しつつも三人は楽しそうに銭湯へ向かう。

 

「とうま、つな」

 

「何?」

 

「何だよ?」

 

「何でもない。用がないのに名前が呼べるって、なんか面白いかも」

 

 本当に楽しそうにしているインデックスを見て上条もツナも複雑そうな顔になる。インデックスはこんな風に心が安らげる事がこれまで無かったのだろう。だからこそインデックスは二人に対して尋常ではない程に懐いていた。

 

「ジャパニーズ・セントーにはコーヒー牛乳があるって、こもえが言ってた。コーヒー牛乳って何?カプチーノみたいなもの?」

 

「カプチーノ?」

 

 インデックスの問いかけにツナが逆に首を傾げてしまう。ツナにはそういったコーヒーやカフェオレなどの知識は殆どない。家庭教師のリボーンはエスプレッソしか飲まないし、ツナ自身そういったものには全然興味が無かった。

 

「……んなエレガントなもん、銭湯にはねえ。あんま期待を膨らませるな。んー、けどお前にゃデカい風呂は衝撃的かもな。イギリスってホテルにあるみたいな狭っ苦しいユニットバスがメジャーなんだろ?」

 

(そう言えばディーノさんも初めて銭湯に行った時はランボみたいにはしゃいでたな。イタリアの方はどんな感じなんだろ?)

 

 しかしインデックスは本当に良く分からないという感じで小さく首を傾げた。

 

「んー?その辺は良く分かんないかも。私、気付いたら日本(こっち)にいたからね。向こうの事はちょっと分からないんだよ」

 

「ふぅん、何だ。通りで日本語ペラペラなはずだぜ。ガキの頃からこっちにいたんじゃ、お前殆ど日本人じゃねーか」

 

(アレ?でもランボやフゥ太はイタリアで暮らしてたのに日本語ペラペラだよな……?イーピンは最初は中国語だったけど、最近はカタコトでも日本語も喋れるように……)

 

 5歳のランボやそれよりちょっと歳上なフゥ太は生まれもツナの家に来るまでの育ちもイタリアだ。当然、イタリア語も喋れる。そして日本に来て日本語も不自由無く喋れている。対してツナは普通の日本語でも怪しい点が多く、英語など論外。つまり言語能力に限り、フゥ太やイーピンはともかく、アホ牛と称されるランボにまでもツナは大きく劣っていた。

 

 因みに嵐の守護者兼親友の一人、獄寺は出身国のイタリア語は勿論、日本語や英語も堪能。部下がいなければへなちょこな兄弟子ディーノも同様。ボンゴレの独立暗殺部隊であるヴァリアーに至っては七ヶ国語はマスターしていなければ入隊すら出来ない。

 

(アレ!?何だか泣きたくなってきたーーー!?)

 

 気付きたくなかった真実に気付いたツナはどんよりとしながらインデックスの話に耳を傾ける。

 

「あ、ううん。そういう意味じゃないんだよ。私、生まれはロンドンで聖ジョージ大聖堂の中で育ってきたらしいんだよ。どうも、こっちに来たのは一年くらい前…らしいんだね」

 

「「らしい?」」

 

 曖昧な話に上条もツナも眉を顰める。そして次にインデックスの口から放たれた一言によって冷や水を浴びたような気分になった。

 

 

「うん。こっちに来た時……一年くらい前から、記憶がなくなっちゃってるからね」

 

 

 生まれて初めて遊園地に来た子供のように笑うインデックス。彼女の笑顔を見て上条もツナも何も言えなくなった。その裏にある焦りや辛さが見て取れてしまったから。

 

「最初に路地裏で目を覚ました時は自分の事も分からなかった。だけど、とにかく逃げなきゃって思った。昨日の晩ご飯も思い出せないのに、魔術師とか、禁書目録(インデックス)とか、必要悪の教会(ネセサリウス)とか、そんな知識ばっかりぐるぐる回っててて、本当に怖かった……」

 

「……じゃあ、どうして記憶をなくしちまったかも分かんねーって訳か」

 

「そんな……」

 

 上条やツナには心理学といった記憶に関する学問の知識はないが、大方の予想は付いてしまう。記憶を失う程に頭にダメージを受けたか、心の方が耐えられない記憶を封印してしまったか。

 

「くそったれが……」

 

「酷い……」

 

 上条とツナにはある種別々の怒りが沸いていた。いや、完全に違う訳ではない。ツナはこんな女の子をそこまで酷い目に遭わせた魔術師に対する怒りを抱いた。勿論上条にもそれはあるが、それ以上にインデックスが異常に上条やツナに懐いたり、庇う理由が分かってしまったから。

 記憶を失ってから漸く巡り会えた最初の知り合いが()()()()()()()()()()()()。それだけだ。

 上条はそれを嬉しいとは思えなかった。

 

「むむ?とうま、なにか怒ってる?」

 

「怒ってねーよ」

 

「違うよ、当麻君が怒ってるのはインデックスにじゃなくて……」

 

「じゃあつなに?」

 

「いや、それも違くて……」

 

「なんか気に障ったから謝るかも。とうま、なにキレてるの?思春期ちゃん?」

 

「……その幼児体型にだけは思春期とか聞かれたくねーよな、ホント」

 

「む。何なのかなそれ。やっぱり怒ってるように見えるけど。それともあれなの?とうまは怒ってるふりして私を困らせてる?とうまのそういう所は嫌いかも」

 

 どうにもギクシャクしてきた空気をどうにかしようとツナが必死にあれこれ頭を働かせようとしてもどんどん空気が悪くなってくる。そして上条は決定的に空気を悪化させる一言を言ってしまう。

 

 

「あのな、元から好きでもねーくせにそんな台詞吐くなよな。いくら何でもお前にそこまでラブコメいた素敵イベントなんぞ期待しちゃいねーからさ」

 

 

 空気が静まり返った。

 

 流石に超直感が絡まなければ勘の鈍いツナにも分かってしまう。これは上条が悪い。

 

「とうま」

 

 インデックスは胸の前で両手を組んで、上目遣いの目尻に涙を浮かべそうな表情になって、下唇を噛み、上条の名を呼んだ。

 

「だいっきらい」

 

 頭のてっぺんを丸噛りにされた上条の断末魔が夜の学園都市に響き渡った。

 

****

 

 インデックスは一人でさっさと銭湯に向かってしまった。

 とはいえ、猫みたいに後からトボトボ来る上条とツナの姿を確認してまた少し離れて先に銭湯に近付くというやり取りを繰り返していた。

 

「さっきのは当麻君が悪いよ。ちゃんとインデックスに謝った方が……」

 

「分かってるよ……」

 

「記憶が無いのもきっと本当に辛い目に遭ってきたんだ……。もうそんな目に遭わないようにせめて俺達であの魔術師を何とかしないと。でもその前にこっちで揉めてちゃあ……」

 

 ツナは説教をしているつもりはあまり無いが、上条は歳下に噛み付かれた後、また別の歳下に諭される形で説教を受けているという結構精神的に辛い状況に立っていた。いつものように「不幸だ…」とでも呟きたくなるものだが、そんな気にすらなれない。

 

「でも実際どうすんだ?インデックスを日本のどっかにあるイギリスの教会に連れて行ったらあいつはそのままロンドンの本部に飛ぶって事になるけど。そしたらもう俺達の出番なんてねぇぞ。そうしなきゃ、延々と魔術師に追われる事になるし、あいつの後を追ってイギリスまで飛ぶのも違えだろ?」

 

「う…。確かにそれっきりになりそうだな。でもここまで来たらそれだけで終わるのも何だかなぁ……」

 

 上条に今後インデックスにしてやれる事を大まかに説明されるとツナは考え込む。ツナはインデックスが魔術師に狙われる根本を解決しないと気が済まないのだろう。今後一切、彼女が傷付くような事にならないように解決したいのだろう。本当にお人好しな奴だと心から思う。

 

 上条からすれば背負っている問題はインデックスの事だけではない。ツナもまた訳も分からず見知らぬ土地である学園都市にやって来たのだ。しかも詳しい話を聞けば死ぬ気の炎やら、世界最大のマフィアの次期ボス最有力候補だという。そんな人間が本当にただの偶然でこの街に突然来るだろうか。

 

 学園都市には碌でもない奴らがいる事を上条は知っている。この街の闇を知っている。ツナの死ぬ気の炎というエネルギーを狙ったのか、それともマフィア、ボンゴレファミリーのボス候補そのものを狙ったのか。それは分からないが、まず間違いなくツナは学園都市の闇によってこの街へ拉致されたのだと上条は推測していた。匣兵器とやらもマフィアから情報を盗めばこの街の科学力を以ってすれば製作可能だろう。そこに空間移動能力者の力をどうにかして組み込めばツナの話と辻褄も合う。

 

 上条からすればツナもインデックスも住んでる世界、立ってる場所、生きてる次元、何もかもが違う人間。

 

 上条は科学(ESP)の世界に住んでいて、インデックスは魔術(オカルト)の世界に生きていて、ツナは裏社会(マフィア)の世界で過ごしている。

 

 本当にバラバラの世界。陸と海と空みたいに決して交わり合わない。超能力も魔術も死ぬ気の炎も……あるべき場所が違う。

 

「あれ?」

 

「ん?」

 

 不意にツナも上条も素っ頓狂な声を出した。

 現在午後八時。まだ人がそこら中にいるはずの時間帯なのに、辺りは森のように酷く静まり返っている。

 思えばインデックスと三人で歩いていた時から誰ともすれ違っていない。

 

 周囲を確認しても車道には車の一台も走らず、そこら辺にある大手のデパートには誰も出入りしていない。

 

 

「ステイルが人払いのルーンを刻んでいるだけですよ」

 

 

 突如として聞こえた女性の声。二人はそれまで気付けなかった。超直感を待つツナでさえも、気付けなかった。

 

 その女は物陰に隠れていた訳ではない。背後から忍び寄った訳でもない。10m先の車道のど真ん中に悠然と立っていた。

 

「この一帯にいる人に『何故かここには近付こうと思わない』ように集中を逸らしているだけです。多くの人は建物の中でしょう。ご心配はなさらずに」

 

 コイツはヤバイ。

 

 超直感も何も関係無く、悟ったツナは指に嵌めていたVG(ボンゴレギア)の上にXグローブを装着し、死ぬ気丸を飲んで額に死ぬ気の炎を灯す事で(ハイパー)死ぬ気モードになった。

 上条も目の前の女の危険性を理解しているのか、右拳を握り締める。

 

 女は上条に目を向けて口を開く。

 

「神浄の討魔、ですか。良い真名です」




ツナの当て字が思い付かなかったのでこの場ではスルー。何か良いのあったら教えて下さい。
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