鋼殻のレギオス”The edge of Army”   作:りこぴん

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遅くなって本当にすみません。
これから更新再開していこうと思いますので、もし良かったら読んでいただけると幸いです!


会議

『勝者!第十七小隊!!』

 

歓声とともにサイレンの音が鳴り響き、試合終了の声が響き渡る。

第十七小隊の二戦目は終始安定した戦いにより、当然の勝利を得ることが出来た。

強さにおいて他の追随を許さないレイフォン、そしてイリス。

この二人の力さえあれば、対抗試合で頂点を得ることなど容易い。

例え第一小隊相手でも、余裕の勝利を得ることが出来るだろう。

だから、だからこそ。

 

第十七小隊が生徒会長室に呼び出されたとき、イリスはどんなことを言われるかあらかた想像はついていた。

 

 

 

「そんな勝手なこと、受け入れられるワケがないだろう!」

 

瞳に明らかな怒りを湛え、ニーナは怒鳴り声をあげる。

 

「武芸大会は生徒が実力を高め合う場所だと私は認識している。所が、最近このような話を何度か耳にしている。"例の隊員が居る第十七小隊になら、負けても仕方がない"とね」

 

カリアンは返事を避けるように、言葉を重ねる。

 

「私としてはこれは非常に良くない傾向だと考える。このままでは、対抗試合自体の意義が薄くなってしまう可能性も十分に考えられる。だから、そこの対策を考えて欲しいと、そう言っただけだよ」

 

そういうことだったんだ。

会長は頷くと、レイフォンの方を向く。

 

「つまり、そういうことなんだ。事実、本当の実力の知られていないレイフォン君が同様の戦い方をしているのに、同じように話題に取り上げられてはいない。あくまで実力の一片を見られたイリス君だけだ」

 

武芸を学んで小隊員にまでなったのに、あからさまに手を抜いている相手に勝てない。

もしその相手が本気を出したら、こっちの小隊はあっという間にやられてしまうかもしれない。

確かに、そんな状況になったら文句も言いたくなっちゃうね。

 

「よく分かりました、確かに良くない状況だ」

「悔しいと、自分も追いつかなきゃならないと思えないのか......!」

 

ニーナが怒りをにじませた声色で呟く。

 

「すごい実力差にそう思えるのは、ニーナの凄くいい所だよ。そう思う限り、ニーナは絶対に強くなれると思う。だけど、皆が皆そう思えるわけじゃないということだね」

「武芸科としては非常に情けない話だがな」

 

控えていた武芸長が、ため息混じりに呟く。

 

「けれどだからといって、僕を出場停止にするのは流石にニーナが可哀想だし、他の小隊の人も納得しないと思います。まぁ、勝てない相手がいなくなったからラッキー、これで勝てるからいいや!って、思う人がいっぱいいるなら別ですけど」

 

そう言って武芸長の方を向くと、軽く睨まれてしまった。

流石に酷い言い方だったかな。

 

「さっきも言った通り、出場停止にする気はないよ。あってもそれは最終手段だ。ただ、余り良い方法がみつからなくてね」

 

会長の言葉に少し考える。

僕が出場していながら、他の小隊が勝てるかも知れないと思える。

 

「武器なしで戦うなんてどうだ?それか、倒しても良い小隊員の人数を決めるとか」

 

シャーニッドの声に、少し考える。

 

「いや、ダメだ。それでは目に見えて平等ではなくなる。それに、武器が無くなったことでレイフォン君、イリス君は負けると思うかい?」

「思いません」

 

珍しくレイフォンがきっぱりと答え、笑いが漏れる。

でも確かに、剄さえ封じられなきゃ戦うことに支障はない。

そのくらいならどうとでもなる、と言うとツェルニの武芸者に失礼だけれど。

 

「剄を使わない、とか?」

「仮にそれでも余裕があったとしても、武芸者として剄を使っていない人間にむかって武器を振るうことはできない」

 

ハッキリと武芸長が首を振る。

いくら強くても剄を使っていなければただの人間、僕でも戦うことは躊躇う。

とはいっても......。

その後いくつか意見があがるが、これだという意見は出ずに時間だけが過ぎていった。

 

「いいですか?」

 

案も尽き皆が黙り込んだ頃、それまで黙っていたフェリが口を開いた。

会長は珍しく驚いた表情で、先を促す。

 

「第十七小隊は人数が少ないのは他の小隊も知っていると思います。それはつまり、人数で押す作戦が有効であるということ。実際先程の相手は隊を二つに分け、片方が隊長達の足止めを行い、もう片方はイリスを狙ってきていました」

 

皆の視線が自然と僕に集まる。

確かにさっきの戦い、隊員の4割くらいが僕に向かってきていた。

けれど......。

 

「ですがあれは、本当はイリスを狙ってきていたわけではなかった。ですよね?」

「......!」

 

フェリは本当にすごい念威繰者だと、改めて思い知る。

 

「彼らは通信手段である私を封じに来ていました。イリスと戦ったのは、その動きに気づいたイリスが彼らと出会うように動いたためです」

「それは本当か!?」

「気付いたのは偶然だけどね」

 

ニーナと共に敵に遭遇したとき、人数が少ないことに気づいた。

でもフラッグを防衛しているシャーニッドや、フェリの監視網に引っかかる様子もない。

少ない人数での防衛だったから、フェリは多くの端子をフラッグ周辺に撒いてもらっていた。

もしそれが相手に気づかれていたら......それに、相手はやたらと視界を撹乱させてきてたし。

それでその場をレイフォンとニーナに任せて探っていたら、読みが当たっただけだ。

 

「今後、他の隊も同様の作戦を使ってくる可能性もあります。ならば、護衛を付けたところでそこまで可笑しくは映らない」

「なるほど。つまり僕がフェリを守ればいいんだね?」

 

僕の言葉にフェリは頷いた。

 

「確かにそれなら、戦場から少し離れたところに居ることになるから戦闘には余り関われない。フェリを倒すことを諦めれば僕を戦力上無視することも出来るしね。それなら僕のせいで勝った、なんて事も言われないと思う。ただ、ニーナ達の負担が大きくなっちゃうけど......」

 

しかしニーナは、大きく頷いてくれた。

 

「任せろ。私だってイリスやレイフォンに追いつく為に一生懸命に訓練をしている。決してイリスのワンマンチームではないことを見せてやる」

「ま、ニーナが暴走しそうになったときは任せてくれ」

 

やる気満々といった様子のニーナに、シャーニッドは肩をすくめて苦笑する。

 

「ありがと。僕としても十七小隊が僕だけのチームなんて言われるのは気に入らないと思ってたんだ。という訳だけど会長......どうですか?」

 

会長はちらりと武芸長に目をやり、武芸長が頷くのを見て視線を戻した。

 

「では、申し訳ないがそうしてくれるかい?フェリをよろしく頼むよ」

「任せてください。針剄の一本も通しませんよ」

 

そうして僕は、次の武芸大会からフェリの護衛をすることになった。

 

 

 

「すまないイリス。私が不甲斐ないばかりに」

 

話し合いが終わり生徒会室を出ると、開口一番にニーナが謝ってきた。

でも......特に謝られるようなことあったっけ?

 

「なんのこと?」

「私がもっと強ければ、イリスの強さが目立たずにこんな事態にはならなかった。イリスは十分すぎるほど加減してくれていたというのに......」

「あぁ、なるほど。これはニーナの落ち度じゃないよ、汚染獣との戦いを見られたことと、僕の戦い方がどう見られるかを理解していなかった僕の落ち度だ」

「しかし......」

「ていっ」

「っ!?」

 

肩を落とし姿勢の低くなったニーナの額を思いっきりデコピンする。

結構強くやったからね、仰け反るとまではいかないけれどニーナは普段の姿勢まで戻される。

 

「そうやって何でも背負うのはニーナの悪いところだよ。もうちょっと適当に行かなきゃ。僕なんて、今日の対抗戦勝利のお祝いに何食べようかなー、なんて考えてるのに」

 

そう言っておどけて見せると、ニーナはようやく笑顔を見せてくれた。

 

「それなんだけどよ」

 

と、それまで後ろでレイフォンと話していたシャーニッドが声を上げる。

 

「レイフォンがイリスちゃんの家でやりたいってよ。手料理が食べてみたいんだと」

「ええっ!?」

 

レイフォンが初めて聞いた、といわんばかりの表情で驚く。

十中八九シャーニッドの思いつきだろうけど......。

 

「僕の部屋かー、まぁ良いよ。よし、じゃあ今日は僕が皆に料理を振舞ってあげるよ」

「おお、いいねぇ。良かったな、レイフォン!」

「僕、何も言ってないんですけど......」

 

ぽりぽりと困ったように頬を掻くその姿が面白くて、思わず笑いがこぼれてしまう。

 

「ふふ。じゃあレイフォンの希望に沿って、まずは買出しに行こうか」

「イ、イリスまで......」

 

料理なんて久々にするなぁ、何を作ろうか。

と、ニーナが心配そうな表情でこっちを向いているのに気づく。

 

「ニーナ、どうしたの?」

「いや......イリスが料理を作っている姿が余り想像できなくてな」

「む」

「確かに、既製品で済ませてしまっていそうな雰囲気を感じますね」

「フェリまで......」

 

黙って話を聞いていたフェリまで、そう続ける。

第十七小隊の女性陣からの僕の評価は散々らしい。

 

「むー、見てなよ。僕がみんなのあっと驚くような料理を作ってあげるからさ」

 

頭の中でメニューと、必要な食材を組み立ててゆく。

それにしても、本当に久しぶりだなぁ。なんだか、楽しくなってきちゃったよ。

心配そうな二人をよそに、イリスは楽しそうに考えに耽るのだった。

 

 

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