鋼殻のレギオス”The edge of Army” 作:りこぴん
ただ流石に記憶が少し曖昧......アニメは途中からオリジナル展開入っているしどうしたものか。
もし便利なサイトとかあったら教えてください。
それまでガタガタと衝撃の酷かったバスが、ようやく停止したのを感じる。
「ふわぁ......ようやく着いた」
皆が口々に無事を喜ぶ言葉に、強制的にまどろみから引き戻される。
バスの中はとても素敵な空間だった。
衝撃はあるが寒くも暑くもなく、時間に制限なくいくらでも寝ていられる。
これだったらもっと乗っていても良かったのにな。
名残惜しさを感じつつも荷物を纏め、外へと出る。
「ここが......ツェルニ」
小奇麗な街と雰囲気は、ごちゃごちゃとしたグレンダンに比べとても心地よい。
グレンダンの雰囲気もあれはあれで好きだけど、少しむさくるしくもあるんだよね。
さて、まずはこの都市の王様に会いに行かないと。
場所は......わからないけど、中心部に向かえば会えるよね。
僕は荷物を抱え、石畳で整備された道を歩き出した。
「イリスはもしかして方向音痴なのか?停留所から来たのなら、生徒会長がいる中心部はとっくに通り過ぎたぞ?」
隣を歩く、恐らく先輩――名前は、ニーナ・アントークと言うらしい。は、呆れ顔だった。
あれから王宮を探して歩き回ったもののそれらしい建物を見つけることが出来ず、当初の目的を忘れふらふら歩き回っていたところを、この先輩に声を掛けられた。
彼女が言うには、大荷物を抱えて歩き回る僕の姿を何度も見かけたらしい。二時間程度しか経ってないんだけど、偶然ってあるものだね。
「僕の住んでいた都市は王制だったから、他の都市もそういうものだと思ってて」
他の都市にいったことはないし、耳にすることも少ない。
てっきり、都市は何処も王制なんだと思っていたよ。
「あぁ、なるほど。ここツェルニは学園都市だから、生徒会長が学園を取り仕切っている。取り仕切っているといっても、王様のような権限はないがな」
「へぇ......そんな都市もあるんだね。ということは、その生徒会長が都市で一番強いの?」
てっきり強さで序列が決まっているものだと思っていたのだが、ニーナ・アントークは首を横に振った。
「いや、そんなことはないが......イリスの住んでいた都市ではそうだったのか?」
「まぁね。分かりやすいでしょ?」
陛下は王家の人間だけど......どう考えても、あの都市で一番強いのは陛下だし。
「確かにな。っと、着いたぞ。ここが生徒会室だ」
連れてこられた場所は、都市で一番高い位置にある建物だった。多少の作りの良さは見られるものの、王宮には比べるまでもない。
なるほど、これじゃ見つからないのも無理はない。
「ありがと。せっかくだから一緒に行かない?」
「あまり時間はないのだが......まぁいいか。では一緒に行こう」
正義感溢れ義理堅い人。彼女の印象はそんな感じかな。
生徒会室の扉を軽く二度叩く。遅れて、入室の許可を伝える声が中から聞こえてきた。
「失礼します」
扉を開け、中に入る。
「やぁ、ニーナ君。それと、初めて見る顔だね。君は?」
「お初にお目に掛かります。イリス=ウルルと申します」
机に肘を置き、銀髪を肩まで垂らした男。彼がこの学園の長、というわけか。武芸者じゃ無いようだけど、頭は切れそうだ。
「私は生徒会長のカリアン・ロスだ。イリス君、よろしく」
「よろしくお願いします、生徒会長」
お辞儀をすると、会長は満足げに微笑む。
「早速だが、余り時間が無くてね。挨拶にきただけという訳ではないだろう?」
手に持っていた書類の束をちらりと見て、会長は先を促した。
「はい。僕を武芸科に編入して貰いたいのです。これ、手続きの書類です」
ここに向かうバスの中で書いておいたそれを差し出す。
いくつか伏せてはあるが、正真正銘僕のだ。
「ありがとう。......ふむ、特に問題はないようだね。ほう、グレンダン出身とは。もしかしてレイフォン・アルセイフ君を知っているかい?」
会長の口から発せられた名前に、心臓がトクンと動く。その言葉が聞けただけでも、ここにきたかいがあった。
「はい。ここを選んだ理由の一部ですから」
実際は一部というか全部だけど。そこまで言う必要もないか、怪しまれたくないし。
「成程。さっきも言ったとおり書類には問題ない。ツェルニは君を歓迎するよ。ところで、グレンダン出身の武芸者ということは失礼だが実力の方は......?」
「まぁ、それなりには」
実は僕天剣授受者なんですーなんて言っても、面倒なことにしかならない。曖昧に言葉をボカす。
「素晴らしい。実はツェルニの状況は余り芳しくなくてね......君さえ良ければ、小隊に加えたいと思うのだがどうかな?」
「別に問題はありませんよ」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
トントン拍子に話が纏まりかけた所で、さっきからずっと黙っていたニーナが話に割り込んできた。
「いくらグレンダン出身だからといって、何も審査せず小隊入りさせるのはどうかと!レイフォンの例もありますし、他の生徒からも不安が......!」
レイフォンの例?どういうことだろう。
実力を隠しているとか、そういうことなのかな。
会長を盗み見ると、意味ありげな視線を送ってくる。成程、別に僕もレイフォンにマイナスになるようなことを言うつもりもない。ここは黙っておこう。
「それならば、所属先は君の第十七小隊にしよう。君が直々に審査をして、不適だと判断したら入隊させなくても構わないよ。イリス君もそれでいいかな?」
「はい」
それにしても、彼女は小隊長だったのか。
重ね重ね、偶然とは恐ろしい。
渋々、といった様子で頷くニーナ。確かに僕は外見だけじゃとても強そうには見えないから、妥当な判断ってとこかな。
剄の流れを見ればだいたいの強さが分かるんだけど、そんなことができるのはこの都市じゃ彼くらいのものだろう。
「......わかりました」
「幸い学園は明後日からだ。審査や入居なんかをやっておくといい」
会長に言われて思い出す。
そういえば、まだ住むところも決めてなかったや。
「分かりました。では、失礼します」
さて、何処に住もうかな。天剣だったときに手に入れたお金が多少はあるから、衣食住はあまり問題はないだろう。贅沢は出来ないけど。
あぁ、陛下から貰ったケースも開けてみないと。
「......い、おい!聞いているのか?」
「ごめん、聞いてなかった」
しまった、考え事に夢中で何も聞いてなかった。
ニーナの方を向きながら謝ると、彼女は不満げに息を吐いた。
「まぁいい。明日、小隊の訓練の時間に審査を行いたい。問題はないか?」
「ないよ。どうせ何も決めてないし」
これから住む場所を決めて、あとは買い出し。その程度だ。
その返事に満足そうに頷くと、ニーナは僕の腕を掴んだ。
「それなら良い。じゃあ行こうか」
「え?えっと......何処へ?」
審査は明日、と言ったはず。まさか聞き間違えたなんてことはないと思うけど。
しかしニーナは、不思議そうな表情で返事をした。
「何処って、住むところを決めるのだろう?はやく探しに行かないと日が暮れてしまう」
思わずぽかんとしてしまう。
「流石に、この状態のイリスを放置して行くなんて出来ないしな」
「......用事があるって、言ってなかった?」
「部屋を決めたあとに行けばいいし、最悪明日になっても大丈夫だろう」
自分の用事より、僕の事情を優先する。
厳しそうな人だと思っていたけど、もしかしたら彼女は、僕が思ってるよりずっと優しいのかもしれない。というかお人好し。
「ありがとう。それじゃよろしく、隊長」
「ああ。それと、小隊入りは明日の結果次第だからその呼び名はまだ早いぞ?」
「まぁ、大丈夫でしょ。精一杯努力するよ」
「言ったな?期待しているからな」
ニーナは朗らかに笑うと、先導するように歩き出した。
これから新天地での生活が始まるのか。少し、楽しみだな。
彼女の後を追いかけながら、僕はこれからの生活に少し思いを馳せていた。
あれから、ニーナのお陰で割とあっさり部屋を決めることができた。
別に何処だろうと問題は無かったのだけれど、ある程度性別によって住む寮が分かれているらしい。
結局、中々にお洒落な部屋に住むことになった。
「私や明日顔合わせする小隊員の一人も近くに住んでいるから、困ったことがあったら聞くといい。それじゃ、明日は迎えに来るから忘れるなよ?」
ニーナはそう言って寮から去っていった。
何処でもいいと適当だった僕の為に、予定を潰してまで予算や安全性などをやりくりして考えてくれたのは彼女だ。そう思えば、彼女が一生懸命選んでくれたこの部屋に愛着が湧いてくる。
家具はある程度あるから良いとして、流石にベッドにはマットしか置かれていなかった。
まぁいいか、別にマットだけでも寝られるし。
少ない荷物を荷解きし、その中から陛下に貰ったケースを取り出す。
何が出てくるんだろう?少し、楽しみだな。
内心ワクワクしながら箱を開けると、中に入っていたのは何本もの錬金鋼と天剣だった時に与えられた部屋に置いてあった小物だった。
どうやら陛下は、僕があのタイミングで王宮を訪れることを知っていたらしい。
「わぁ、これ白金錬金鋼だ。それもこんなにたくさん」
それに加え、見ただけで分かる質の良さ。
流石に天剣には及ばないものの、それでもかなりのものだ。
というか陛下。女の子の秘密とか言ってたのに錬金鋼って......実用性一辺倒だよね。
そんなことを思っていたら、箱の底に何かきらめくものがあることに気づいた。
これは、ペンダント?
手にとってみれば、僕が天剣として公式の場に出るとき付けていたエンブレムが刻まれている。
裏を見れば、"貴女の為に"という意味の言葉、そして陛下の名前。
思わず胸が温かくなる。
「陛下、ありがとうございます」
誰にも聞こえないような声で呟くと、裏の文字を撫でる。
首に付ければ、まるでもともとそこにあるのが自然というようにぴたりと収まった。
......さて。それじゃ、頑張ろう。
まずは明日の審査に通るところからだ。
今日は早く寝て、万全の態勢で明日の審査に挑もう。
誤字脱字、感想等お待ちしています。