鋼殻のレギオス”The edge of Army” 作:りこぴん
元の名前のヴォルケンシュテインはレイフォンに憧れてイリスが勝手に作ったネームだとかそういう展開を考えていたのですが没になりました......
とりあえず数巻分レギオスを購入してきたのでこういったミスはなくせるよう頑張っていきたいと思います。
「レイとん聞いたよー!昨日、リーすんと抱き合ってたんでしょ!?」
翌日。
偶然か生徒会長の差金か、クラス分けはレイフォンと同じだった。
そのことに内心で喜んでいると、昼休みになると同時にこの3人娘にレイフォンごと連れ去られてしまった。
大人しそうなメイシェン・トリンデン。
キリッとした印象を受けるナルキ・ゲルニ。
とても賑やかなミィフィ・ロッテン。
ちなみにリーすんというのは僕のあだ名らしい。分かりやすくも、短くもなってない気がするけど......文字数だけ見れば増えてるし。
「あれはその......あはは」
苦笑しながら、レイフォンが助けを求めるようにこちらに視線を送ってくる。
「あぁ、あれはね。昔一度会っただけだったレイフォンにこんな所で出会えたから舞い上がっちゃってね。思わず抱きついちゃったんだよ」
嘘は言ってない......と思う。
そういう気持ちも勿論会った訳だし。抱きついたのは別の理由だけど。
「運命の再会ね!ということは、レイとんとは何かあったの!?」
目を輝かせるミィフィ。どうやら逃がしてはもらえなさそうだった。
「ううん、僕が一方的に知ってただけだよ。それで憧れていろいろ頑張って、ここまで追っかけてきたことになるのかな」
「ほぇー......。愛だね!単に愛のなせる技だね!」
「リーすんは、レイとんが好きなのか?」
一人盛り上がるミィフィを置いて、ナルキが鋭い目で尋ねてくる。
好きか嫌いかで言えば勿論好きだ。だけど......。
「好きだよ。だけど、恋愛感情かどうかはちょっと分からないかな」
「どうして?」
「んー。今まで恋をしたことがないから、かな?」
会うため、近付くためにひたすら武芸を磨いていた間はとてもそんな暇は無かったし。最も、そういう暇を見つけたい相手もいなかったけど。
その答えに、ナルキは微妙な表情でメイシェンを見た。
そして視線を受けたメイシェンは顔を赤くして俯く。
......もしかして。
「レイフォン、ちょっと耳を塞いでてくれるかな?」
意図が読めないながらも素直に耳を塞ぐレイフォン。
念のため、レイフォン以外の3人に近寄る。
「もしかして、メイシェンはレイフォンが好きなの?」
「ふぇ!?そ、それはえっと......その......」
湯気が出るんじゃないかと思えるくらい顔を赤くし、慌てふためく彼女。
これはもう、確定だね。
「安心してよ、君の恋路に立ちはだかる気はないからさ。レイフォンの近くにいたい気持ちは本物だけど、別に恋人という枠が欲しい訳じゃない」
部隊でも、何なら盾だって構わない。
ただ前に立ってレイフォンを守りたいだけだ。
「友人と恋人を取り合うなんて、僕はゴメンだしね」
そう言って3人から離れ、レイフォンの肩を叩く。
「レイフォン、もう良いよ」
「一体、何の話をしてたの?」
耳から手を離すと開口一番に尋ねられる。
「うら若きか弱い乙女達の会話を聞こうだなんて、そんな野暮はいけないよ?」
「......か弱い......」
自然に彼の口から漏れた言葉に、こちらに向けられる視線。
......うん、レイフォン。
「喧嘩なら買うよ?」
いくらレイフォンが好きだからって、怒るときは怒るんだからね。
「ご、ごめん......」
「か弱い乙女はメイシェンのこと。どうせ僕は野蛮な女ですよー」
頬を膨らませ拗ねてみせると、彼はますます慌てた表情になる。
「そ、そんなことないよ!イリスはか弱い.......かどうかは置いておいて、でもとっても可愛いから!」
声を張り上げそんなことを口走るレイフォン。
もしかして、自分が何を言っているのか分かっていないのかな。やっぱりか弱くないし周りには人もいるのにそんな大声で僕のことを可愛いだなんて全くでもええぇ......?
「あの、イリス?顔が赤いけど大丈夫?」
「うるさい、誰のせいだと思ってるんだ!」
繰り出したパンチは掌で受け止められてしまう。
くっ、この......天剣授受者イリス・ヴォルフシュテイン・ウルルの本気を見せてやる!
「どうみても恋の旅路のライバルどころか、ラスボスにしか見えないんだが」
「だよねぇー」
「うぅ......」
激しく攻防を繰り広げる横で三人がそんなことを言っていることなど、僕達は知る由もなかった。
放課後、訓練の時間になり練武館に向かうと、中にはニーナ、そしてレイフォンしかいなかった。
「いつもこんなに集まり悪いの?」
「......うん。シャーニッド先輩は遅刻して来ることが多くて、フェリ先輩は......」
明らかに機嫌の悪いニーナに聞こえないよう、小声でレイフォンと話す。
成程、真面目なニーナが怒るのも無理はないね。
「一先ず訓練を始める。イリスはハーレイと共にまずは自分用の錬金鋼の製作を。レイフォンは私と訓練だ」
不機嫌そうな声色を隠そうともせずに告げる。
これは、今日の訓練は厳しいものになりそうだね。最も僕はまだ訓練に参加したことはないけど。
「自分専用の錬金鋼なんて楽しみだな。じゃあレイフォン、また後で」
ごめんねレイフォン。
助けを求める視線を見なかったことに、ハーレイの先導に従い訓練室へと入る。
様々な機械が鎮座する中、彼は早速機材の準備をし始めた。
「イリスはどういう武器を使うの?」
武器か......。
技術を盗み身に付けてきた過去から基本的にどんな武器でも扱うことは出来る。
しかし通常の錬金鋼じゃ1つ、せいぜい2つくらいの変化が限界らしい。
天剣と同じ......いや、きっと無理だよね。
あんな奇抜な武器、ほかに使ってる人見たことないし。
とすると剣か......でも、槍も使ってみたいな。
「いくつかサンプルを持ってきたんだ。良かったら使ってみてよ」
中々決まらない僕を見かねてハーレイがいくつかのサンプルを見せてくれた。
わぁ......結構細かく設定できるんだ。見ていてちょっと楽しい。
「とりあえず剣をベースにして、色々試してみたいな」
「わかった。満足できるまで付き合うよ」
やっぱり、いつも自分が使っている武器がいいよね。使い慣れない武器じゃ事故もあるし。
それから目が怖いハーレイとともに寸法や握り心地、細かな調整などが終わる頃にはすっかり日も傾いてしまっていた。
訓練場に戻ってきた頃にはほぼ訓練も終了し、遅れてきたのだろうシャーニッドと、随分と疲れた様子のレイフォンがベンチに座っていた。
フェリは、我関せずといった様子で別のベンチに座り本を読んでいる。
「やぁ。随分といじめられたみたいだね」
「イリス......酷いよ、僕を見捨てるなんて」
「そう言われてもね。仕方ないじゃないか、ハーレイ先輩が盛り上がって中々終わらなかったんだよ」
恨めしそうなレイフォンの様子から察するに、随分と扱かれたらしい。
「二人共、随分仲良くなってるなぁ」
会話を交わす僕達の様子に、不思議そうな様子でシャーニッドが声を上げる。
「シャーニッド......いや、シャーニッド先輩。やっぱり同郷だと話も合ってね」
「なるほどな。グレンダンってのは随分と遠くにあるみたいだしなぁ。.....あぁあと、シャーニッドでいいぜ。可愛いお嬢さんに呼ばれるなら本望だし、先輩って柄でもない」
「それはありがとう。正直、上下関係には疎くてさ」
陛下みたいに明らかなトップなら未だしも、年が上というだけで口調を変えなきゃならないのが良くわからないんだよね。
実力で区分しているならまだわかるんだけど。
孤児院の院長があまりそういう所に無頓着というか、気にしている余裕がなかったのも大きかったのかもしれない。
「イリス、ちょっといいか?」
その後も3人で雑談を交わしていると、休憩を終えたらしいニーナが戻ってきていた。
「ん。なに?」
「お前の実力について、少しな」
ニーナは微かに目を伏せた。
「.......私の実力では、お前の実力を測る事は出来なかった。何も言うな、自分の実力は自分が一番分かっている」
口を開こうとすると、ニーナに制される。
そんなことないと思うんだけどな。ニーナは少し、力の出し方を知らないだけで。
「お前の対抗試合でも役割にも関わってくるから聞いておきたいんだ。次の対抗試合の相手、お前ならどの程度戦える?」
真剣な表情で尋ねられる。
とは言っても、さっきの待ち時間にハーレイに紙束で見せてもらった程度の情報しかない。
でもそうだな。
「ハーレイに貰った紙面通りなら、まぁ問題ないよ」
「問題ない、とは?」
「一人で全員相手に出来るくらいは」
シャーニッドが口笛を吹く。それを目線だけで咎め、ニーナは再びこっちに向き直った。
「......そうか、わかった。それでは次の対抗試合、イリスの役割はフェリの護衛とする」
「え?それは......!」
そう声を上げるレイフォン。
念威繰者の護衛ならそれなりに重要だと思うんだけど、どうかしたのかな。
そう思っているとシャーニッドが、対抗試合の内容を教えてくれた。
攻撃と守備に別れフラッグを狙う試合の、今回は攻撃側。
勝利条件はフラッグを倒すか敵の小隊長を倒すことで、敗北条件はその逆。小隊長、つまりニーナが倒されることかフラッグを倒せず時間切れになることらしい。
確かにそんな試合で遠くにいる念威繰者を狙うことなんて、ほとんどないね。
「レイフォン。イリスはまだ入って日も浅く、十分な連携の練習も取れていない。実戦になれば連携の悪さがそのまま敗北につながる可能性もある」
ニーナがそういっても、レイフォンの表情は微妙なまま。
当然だ。それはあくまで、実力が拮抗している試合の場合、今回においては適応されない。
だからきっと、本当の理由は。
「それに、イリスの加入、そして強さは予想外のものだった。もし今回の試合、イリス抜きで勝利することが出来ないなら、この先の試合で勝利し続けることなど出来るはずがない」
やっぱり。
対抗試合は戦争じゃない。例え僕の力のみで勝利し続けても、それはチームにとってなんの利益にもならない。いずれ小隊自体が潰れてしまうだろう、といった所かな。
勝つならあくまで小隊として。ニーナの思想、僕は好きだよ。
レイフォンも納得したのか、それ以上は何も言わなかった。
「他に何もないなら、今日の訓練は終了とする。シャーニッド!次は遅刻してくるなよ」
「へいへい」
「なんだそのやる気のない返事は!だいたい上級生であるお前が......」
怒るニーナを流すシャーニッド。あれじゃ、効果は無さそうだ。
「レイフォン。あぁは言ったけど、もし僕の力が必要になったらいつでも呼びかけてね。必ず助けに行くからさ」
「......うん。頼りにしてるよ」
ニーナの作戦に背いてしまうことになるけど、その時はその時だ。
彼女には申し訳ないけど、僕にとっては対抗試合よりもレイフォンのほうがよほど大切だしね。
「でも......そんなことにはならないよ」
レイフォンは呟くように続ける。どう言う意味だろう?
しかしいつもの柔らかな雰囲気とは違う決意の篭った眼差しに、それ以上言葉の意味を尋ねることはできなかった。
「それなら安心だね。じゃあ僕達も帰ろうか」
「そうだね」
とりあえずそう返し、その場はお開きとなった。
僕がその言葉の真意を知るのは5日後――――対抗試合の当日になってのことだった。
対抗試合まで進むといったがあれは嘘です。
ごめんなさい、ちょっとここで一息させておきたくて......。
次は少し日数が飛び、対抗試合の日からスタートする予定です。