あまりの伸び幅にびっくりです。
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ガブリアスがガラル地方に存在する。
俺の決意を揺るがしたその言葉は、仲間たちにも大きな波紋を生んだ。
俺たちフライゴンにとって、ガブリアスは恐怖以外の何物でもない。人間がゴキブリに嫌悪を抱くように、猫を見たネズミが一目散に逃げ出すように。潜在的に恐怖が刷り込まれている。それはフライゴンである俺にとっても例外ではなく、見えない何かに後ろから首筋を優しく撫でられたような悪寒が全身を突き抜けた。しかし、“それだけ”でもあった。他の仲間のように阿鼻叫喚とまでは陥っていない。元々人間だった俺は、ガブリアスに対する苦手意識が薄いからだろうか。そう思うと、先程まで感じていた絶望も、少しずつ和らいでいく。そうだ、例えガブリアスが居ようとも、やるしかない。人間にとって価値のあるフライゴンになる。それだけが、俺に残された唯一の希望なのだから。元々ピアノ線だったモノが、裁縫糸になっただけのこと。ならば俺はそれを切らぬように手繰り寄せていくのみ。そんな時、仲間のうちのある個体が声を発する。
『まぁでも、
その呟きに、周りはうんうんと同調を始めた。
『そうだよなぁ。
『
『捕まえられた子たちも可哀想ね。
途端に漂う、負の雰囲気。トレーナーの手持ちに比べ遥かに発達した、野生で生きていく為に必要な闘争本能の欠片もない発言が、次から次へと飛び出す。特に最後のメスは、いつかトレーナーに愛されるようなフライゴンになりたいと、瞳を輝かせながら己の夢を語っていたというのに。誰一人として、反対の声はあがらない。負けている、闘う前から、負けている。
──否、コイツらは、
闘争本能の枯れた野生に、生きる資格などない。刻一刻と変化する環境に適応できず、他の生物に淘汰され、何の爪痕も残さず、自然現象の一つとしてその一生を終える。ふざけるな。そんなの、俺は絶対ごめんだ。
──
そうやって“死ぬ”ぐらいなら、精一杯足掻いて、醜く“死にたい”。そんな結末は、絶対に許容しない。
俺の中の、『フライゴン』としての本能が叫ぶ。そしてその言葉は、必然のように口から零れた。
『──本当に、それでいいのかよ』
俺の呟きに、仲間達のざわめきが止む。
『“勝てない”って諦めて、“しょうがない”って受け入れて、みんな本当にそれでいいのかよ』
『どうしたんだよ。だって相手はあのガブ』
『だからなんだよ、相手は同じポケモンだろ?なんでそんなにビクビクしなきゃいけないんだよ!堂々としてればいいだろ!?ガブリアスがなんだって、見つけたら倒してやるんだって、そんぐらいの気持ちでいればいいじゃないか!!』
『お前……何言ってるんだ?』
俺の必死の叫びも、仲間たちには響かない。それどころか、おかしなものを見るような目で俺を見ている。どうして。どうして伝わらない。そんな風に
『いや、
全てはこの言葉で終了。それが彼らにとっての当たり前だというように。頭がおかしい奴だなというように。仲間たちは俺を
拳を握り、歯を食いしばる。生まれた溝は、あまりにも深すぎた。根底が違う、意識が違う。ここにいても、俺は“死んだまま生きるだけ”だ。
ならば。
『───ってやる』
『ん?』
『──やってやる、俺がガブリアスを、完膚なきまでにぶっ倒してやるッ!!!』
誰もやらないのなら。俺がやる。
“ガブリアスを倒せるフライゴン”に、俺はなる。あんなサメ野郎がなんだ。ちょっと俺より種族値と特性と技が優秀なだけじゃないか。やる、絶対にやってやる。俺の価値をコイツらに、トレーナーに認めさせてやる。
そんな俺の宣言を聞いて、仲間たちは。
『ブフッ、クッハハハハハハハハハ!!』
声を上げて、
『倒す?ガブリアスを?ハハハハ!面白すぎるだろそのジョーク!!』
『おう!頑張れよ!俺は応援してるからなー!』
『待って、本当に、お腹、痛いっ、フフフフ!』
誰一人として、本気にしている者など居ない。それでいい。そこがお前たちの限界だ。大人しくそこで
『……
『やめておけ。そんな幻、本気で叶うと思っているのか?』
『違いますよ。叶えるんです、自分の手で』
お世話になりました、と頭を下げ、俺は群れを離れた。それから数時間ほど飛び続け、俺は森の中へと着地した。ここならば、群れとばったり再会して気まずい、なんてこともないだろう。
さて、ガブリアスを倒すと言ったわけだが。
──え、マジでどうしよう。
ここにいくまでの道すがら、正直に言って本気で後悔していた。いや、割とマジで。相手はガブリアス。格上も格上だ。相手は両手で数えられるほどしかいない、選ばれし
だがまぁ、目指すべき場所が間違っているというわけでもない。トレーナーにとって価値のあるフライゴンになる。その上で仮想敵をガブリアスに設定することは、悪いことではないはずだ。だが果たして、どうすればあのガブリアスに勝てるのだろうか。
最初はひたすらにそれを考える日々だった。考え続けて、数日が経った。答えは出ない。技を強化する?体を鍛える?どうあがいても、勝てるビジョンは浮かばなかった。そんな俺が、数日間をかけて出した結論。
──いやなんかまぁ頑張るしかないんじゃね?
そうや、とりあえず頑張って、強くなるしかない。それしかないのだ。種族値はもう仕方ない。個体値も仕方ない。捕まえてもらって王冠でも使ってもらおうそうしよう。俺に残された希望、それはただ一つだけ。
努力値だ。
ゲームシステムでは、各パラメータ毎に252まで、総じて510まで降ることができる努力値。だがこの世界に、そんな数値的限界があるのだろうか?努力でパラメータを上げることが許されるこのポケモン世界で、限界を超えた努力をし続ければ。上限だって、いつかは超えられるかもしれない。
だから俺は強くなろう。勝つために、努力をしよう。辛くても、苦しくても、ただ我武者羅に、直向きに。愚直でも、醜くとも、運命に抗い続けよう。
俺はこの日、改めて誓った。
▼
さて、改めて自分の目的を再確認したわけだが、果たしてここからどうするべきか。“強くなる”ということは決まっていても、どうすれば強くなれる?努力をするにしても、ただ闇雲に努力し続けることに意味はない。方向性を定めることが何よりも優先すべきことだ。その為にまずは、
ポケモンとして生活し続けてわかったことは、ゲームとしてプレイするポケモンとは、勝手が全く違うということだ。俗に言えば、
例を挙げると、まずは技。ポケモンは技を使用することで相手に攻撃する事ができ、四つまで技を覚える事ができる。
──
覚えようと思えば幾つでも覚える事ができるし、技を使わなくとも殴る蹴るの攻撃は可能である。そして技の威力も、ゲームとは違う。考えてみて欲しい。ヒトカゲの放つ『かえんほうしゃ』と、リザードンの放つ『かえんほうしゃ』の威力は、
次に特性だが、これはこの世界において特性は
では、
──解。
そう、この世界では
そうであるならば、
こればかりは仮説の域を出ないが、かなり信憑性は高い筈だ。自分自身が実験台となって確認するしかない。これらを踏まえた上で、自分自身の育成の方向性を考える。その為に、自分を客観視してみた。
俺は間違いなく、同族たちに比べて
『うーん再厳選不可避!ww』
草生えたわ。わかってはいたが、なかなかのクズ個体だな俺。だが嘆いてもしょうがない。個体値は拾ってくれたトレーナーに王冠を使ってもらうしかない。足りない分は努力で補う。そう誓ったじゃないか。とにかく方向性は決まった。この個体値を最大限に活かす為、高速物理アタッカーを目指す。努力値は……あるのかはわからないが、攻撃素早さを中心に振ることにしよう。無論、システムの定めた限界なんぞ超えて。体力防御特攻特防方面もしっかりと育てていく。そして覚える技だが。
『格闘技だな』
『かくとう』タイプの技を中心に覚えていこうと思う。正直火を吐けとか口から波動出せとか言われても出来る気がしない。それならばまだ見た目でわかりやすい『かくとう』技を覚える方が遥かに建設的だろう。それに『かくとう』技を覚えれば、憎き『こおり』タイプに抜群が取れるようになる。そんな意味でもかくとう技を覚えるのは必然と言えた。
『っし!じゃあ修行開始だ!』
覚えたい技もあるし、手に入れたい特性もある。とりあえず、自分に出来ることを、少しずつやっていこう。
こうして俺の、ガブリアスを倒すための修行が始まった。
次回から、修行編に入ります。
今はまだ可愛いフライゴンですね()