俺、HP0なんですけど? 作:アルバティル
即死プレイを楽しむつもりだったのに、気がついたら不死キャラだった。
な、何を言ってるのか分かんねぇと思うが俺にも何を言っているのかさっぱり分かんねぇ。
恐怖の片鱗を味わったぜ……。
「さて……どうするか?」
こういう時には妹に相談するのがいいのだが、残念な事にアイツは学校の用事で今日は夕方まで帰ってこない事になっている。
俺がINしたのは午前10時なのでアイツがゲーム内に居るはずもなく、したがって俺がパーティを組みにいくという選択肢も無くなる。
STR極だし、不死身だから初っ端から一番強い東でレベラゲを行うこともできると思うが毒や、火傷等の継続ダメージ系でも邪神の温情が発揮できるのかは非常に気になる。
後、バフで最大HPを上げられて殴るとかいう選択肢もあるのでバフ無効化のデバフを常時付ける【呪われた指輪】か、スキル【呪われ体質】を獲得しておきたい。
頑張れば呪われ体質からの派生系で呪い系のスキルを大量に獲得できるので不死身な上にデバフをばら撒きまくるいやらしい奴が出来上がる。
目指すのは呪い系拳闘士でいいだろう。
「よし、決めた……東の水辺エリアに突る」
第一層の水辺エリアは他のエリアと比べるとかなりモブが強い。
ついでにボスのグレートアリゲータは間違いなしの1回層で最強の敵である。
そのため経験値もかなり良く、レベラゲ効率としては間違いなく一位だ。
そうと決まれば善は急げだ。
「はぁ、はぁっ。 マップ広すぎね?」
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『悲報、マップめっちゃ広くて移動だけでもかなりかかる』
【名無し】
お前ら、ガチでマップ広いから気を付けておけよ。
100階層合わせると多分日本列島よりも明らかに広いぞこれ
【しばぞう】
そんな広いん?
【名無し】
AGI20のキャラで30分くらい全力疾走してるのに目的地が全然見えねぇ。
【名無し】
AGI20か……短剣二本の手数スタイルか、もしくは忍者かシーフか?
【名無し】
近接格闘のAGIとSTR振りの脳筋キャラ。
【たかし】
面白いキャラメしてんな。
わざわざ剣があるのに拳で闘うのか。
【名無し】
柔術は普通に強いのは確か。
普通に殴る気なら剣使った方が強い。
【ナハト】
つ『殴り
【名無し】
『殴り呪い師』が良いらしいぞ、さっさと呪われ体質取っとけよ。
【ナハト】
素手最強は殴り呪い師で間違いないと思います。
ただ、今回はデスゲームなのでバフがつかなくなるのはかなりのデメリットですよ。
【名無し】
ナハトさんは今回も素手ですか?
【ナハト】
武器持ったら負けかな? と思ってますので。
【たかし】
ペア組んでたマイナスダメージヒーラーのあの人は今回おるの?
【ナハト】
今回も居ますよ。
一緒に北目指します。
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ナハト、確かαの方ではランキング6位かそれくらいのはずで一切の武器を持たずに素手で敵を殴り続けるという俺に結構よく似たプレイスタイルをしている。
彼女のプレイスタイルの殴り呪い師は近接戦でかなりの強さを発揮し、アンデッド以外を相手にする時にはよく使える。
俺のスタイルはこれをちょっと格闘よりに切り替えたものだ。
こうすることで単純な強さは落ちるものの、アンデッドのような呪いの効かない敵も普通に屠れるようになる。
「おお、ようやく水辺エリアに来たぞ……」
進み始めること、かれこれ45分。
いちいち移動にこれだけの時間がかかるとかなんというゲームだ……。
それだけ作り込まれているという意味ではかなり良いと思うのだが、さすがに悲しくなってくる。
「ギュルルルルッ!」
「おっと!」
俺が水辺エリアを探索しているとワニの魔物が現れた。
名前はレッサーアリゲータ、レベル4の敵キャラでありそれなりに強い。
「あ、本当に何も喰らわねぇや……」
『邪神の温情』の効果でどれだけ噛まれていようが俺には0ダメージ。
装備の耐久力が減っていくのはあるが、それ以外では痛くも痒くもない。
「そりゃぁ!」
後はワニを適当に死ぬまで殴り続ける。
一発、二発、三発、四発。
「君がッ! 死ぬまでッ! 殴るのをッ! 辞めないッ!」
「ぐ、ギュグァ……」
[パフィーン]
という効果音と共にHPが0になったワニは光となって消えていった。
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【レッサーアリゲーターを討伐しました】
EXP+40
EXP40/100
アイテム【ワニの肉】
を獲得しました。
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「えーと、こいつあと2体狩ればレベルアップか……」
レベラゲをしてからボスに挑んでもいいと思うのだがさっきのワニと戦った感じではこのままでも余裕に行けると思う。
「うし、行くか!」
どこのボスもそうなのだが、1つのボスを倒せばその戦いに参加したプレイヤーはその階層の別なエリアに居るボスに挑戦する事ができないという設定がある。
要するに最初にレギオンレイドを組んで無理やり北を討伐して、上の階層でレベルを上げて2層も北を突破して、3層でレベラゲをしてから1層の他のエリアのボスを討伐する。
という手法は取ることができない。
全てのエリアのボスが討伐されればボスを討伐していないプレイヤーも上の層へと上がる事ができるようになる。
そうやって全てのエリアのボスを倒すまではボス討伐に参加したプレイヤー以外はどのような手法を用いても上の層へと登ることはできない。
ボスには6人×16人、計96人で挑むのが最大なので最初の3ボスを討伐した288人は他のプレイヤーと比べてより上の層でレベラゲができるという非常に強い特典を得ることができる。
「グルルルッ!」
「邪魔だッ!」
不死身の身体を使って全速力で俺は東を目指していく。
水辺エリアの中央、グレートアリゲーターの居る場所まで軽業スキルを活用してそのまま走り抜ける。
「はぁ……はぁ……うぇ。
やっぱりマップ広すぎだな」
俺がこうして焦っているのは他のプレイヤーから身を隠すためである。
デスゲームの中、一人だけ不死身。
問題を産むのは当たり前だ。
なんか色々と文句を言われるのは嫌だし、そういった面倒事の結果他の奴らが俺にアイテムをたかったりする可能性も十分にある。
俺はそういった面倒事は全力で避けたい。
鑑定を防ぐ隠蔽スキルや偽装スキル、もしくはそういった能力が付与されたアイテムを獲得するのは急務と言えるだろう。
そして、正体を隠す為には仮面やフードといったものも必要になる。
二層の邪神教会で販売してある【邪神の仮面】はさっさと手に入れて起きたい。
邪神の加護が付いている仮面で耐久力が無限だからだ。
他の仮面でも問題ないと言えば問題ないのだが、耐久力無限大のこの仮面は戦闘中に耐久力が0になるのを防いでくれる。
フードも耐久力無限のものが好ましいのだが、ローブ・オブ・エターナルとかそういったアイテムがあるのかどうかは知らないがどっちにせよSランクのアイテムであり、手に入れるのが10階層以降になってしまう。
こちらは適当に店売りのものを必要に応じて買っていけばいいだろう。
「お、ボスエリア発見だな……」
ボスのエリアはどこも場違いな感じのある門がポツンと立っている。
洞窟や迷宮といったエリアのボスであればかなり雰囲気のあるものになるのだが、残念な事に沼地に門があってもピンと来ない。
門に手を触れると
『ここは第一層東エリアです。
ボスに挑戦しますか?』
という画面が表示された。
「もちろんYESだ」
俺がそう答えると門がギィィッと音を立てて開いた。
中は普通に水辺エリアの続きのような場所が広がっていた。
それなら最初からボスを水辺エリアに置いとけよとも思うのだが、エリア外からボスを攻撃するなんて方法を取ることもできてしまうため、こうして隔離されているらしい。
「グルルル、グガァァァァァッ!!!」
「おおお!? かなりの迫力」
俺が門の中へと足を踏み入れると塗ったどこからともなくグレートアリゲーターが現れて大きく雄叫びをあげた。
HPバーは4本。
一番強い東エリアだけあってゲージ数がかなり多い。
取り巻きはバーサークアリゲーターのLv8が64体。
さすがレギオンレイドが前提なだけあって規模も強さもヤバい。
Lv8というのは二層の敵のレベルと同じくらいだし、ボスのバーサークアリゲーターは2層の北ボスよりも強いらしい。
「たっく……明らかに一人で倒す規模じゃ無いなぁっ!?」
「グルルル、フサガァッ!?」
まずはボスは放置で取り巻きを始末していく。
俺のHPは減らないし。
取り巻きに集中しても問題ない。
「ガルルルル、フシャァァァ!」
「うぉッ!? アシッドブレスかよ!」
アシッドブレスは相手に毒を付与するブレス系のスキルで、爬虫類系のモンスターはかなりの高確率で使ってくるのだ。
あれ!?
毒?
ちょ、え!?
邪神の温情って毒で貫けれるんじゃなかったけ?
そう思ってHPと状態異常、そしてログを確認してみるのだがどうやら毒や火傷、呪い、部位欠損といった継続ダメージや状態異常も防げるらしいできるらしい。
「よ、良かったぁ……死ぬかと思った」
「グルルルっ!?」
いつの間にか取り巻きに囲まれていたので軽業スキルを利用して取り巻きを引き離し、ボスの周りをぐるぐると回るようにして取り巻きを綺麗に並べてやる。
「さて、お前ら……地獄に落ちる準備は良いか?」
投げる、投げる、殴る、投げる、殴る、殴る、殴る。
1匹1匹の取り巻きをちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返すが、数が多いせいで全然減ってくれない。
【バーサークアリゲーターを討伐しました】
EXP+80
レベルが上がりました!
【バーサークアリゲーターを討伐しました】
EXP+80
EXP100/200
【バーサークアリゲーターを討伐しました】
EXP+80
EXP180/200
【バーサークアリゲーターを討伐しました】
EXP+80
レベルが上がりました!
【バーサークアリゲーターを討伐しました】
EXP+80
EXP140/300
経験値がごりごりも増えていき、レベルが上がっていく。
右からくるワニをそのままの勢いを使って左に投げ、前から来るワニを後ろに投げ。
拳と蹴りで牽制する。
【バーサークアリゲーターを討伐しました】
EXP+80
EXP220/300
【バーサークアリゲーターを討伐しました】
EXP+80
レベルが上がりました!
【バーサークアリゲーターを討伐しました】
EXP+80
EXP80/500
【バーサークアリゲーターを討伐しました】
EXP+80
EXP160/500
「あと、55体ッ!」
「グルルル、ガャァァ!」
逃げ周り、
転がり、
ボスの攻撃を避け、
確実に取り巻きの数を減らしていく。
【バーサークアリゲーターを討伐しました】
【バーサークアリゲーターを討伐しました】
【バーサークアリゲーターを討伐しました】
【バーサークアリゲーターを討伐しました】
【バーサークアリゲーターを討伐しました】
レベルが上がりました!
その度に俺のステータスが伸び、さらに次のステージへと進むことができる。
必要経験値は100から始まり、そこから10レベルに到達するまでは1.5倍して十の位を切り上げしたものとなる。
100、200、300、500、800、1200、1800、2700、4100という風に。
レベル10からは経験値の増加が緩和されていくのだが、それまでは1.5倍以上と一気に伸びにくくなって行くのだ。
だが、俺が全ての取り巻きを倒し終える頃にはレベルが8まで伸びていた。
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【シオン】性別:♂
Lv8
EXP260/2700
『ステータス』
HP:0/0
MP:85/85
STR:40
MAG:1
INT:34
DEX:34
AGI:34
VIT:0
LUK:17
『スキル』
格闘、軽業、【選択可能】
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ステータスは基礎ステータスの10%がレベルアップ時に加算される。
俺のステータスはHPとVITに1つも振り分けていない為、同レベルの人と比べるとかなり高い方だと言えるだろう。
スキルは一体何を選択するべきか。
呪われ体質で死亡確率を0にするか、隠蔽スキルで身バレを防ぐか……
「グルルルッ!」
「うぉっ!? ちょ、待てよ!
いきなり殴ってくるんじゃねぇよ!」
ワニがめんどくさいのでとりあえずここは【呪われ体質】でいいだろう。
隠蔽スキルはとりあえず放置で問題ないと思われる。
上位の鑑定でなければ自分よりレベルが1.5倍以上高いキャラを鑑定する事ができないという性質上、俺を鑑定する事のできる奴はこんな初日でレベル6まで上げた奴だけという事になる。
そんな奴は最強の廃人プレイヤーのあの変態☆紳士以外にはいないと思いたい。
「さて、ワニの王様よ……地獄に落ちる準備は良いか?」
「グルルルっ!」
殴る、殴る、殴る、殴る。
ノックバックが付いている攻撃以外は完全にスルーをしてひたすらに殴り続ける。
そうして、かれこれ開幕7時間で俺は東のエリアのボスを討伐したのだった。