ありふれた錬成師と治癒師と剣士で世界最強   作:nonohoho

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生きている限り絶望とは無縁ではいられません。

絶望に抵抗し、問題点を見つけ解決、次にまた別の問題を見つけ解決…

一つ一つ問題を解決する度にハジメ達の中にあった絶望、恐怖、不安は無くなっていきます。

ハジメは香織と雫との絆を深め、自信を取り戻していきます。

そして…ハジメ達は「 」の加護の存在に気づきます。

今回はそんな感じ(=゚ω゚)ノ


第十七話 ありふれた絶望への抵抗。

ぴちょん……ぴちょん……

 

水滴が頬に当たり口の中に流れ込む感触に、ハジメは意識が徐々に覚醒していくのを感じた。

両脇には暖かく、とても柔らかい感触がある。

不思議に思いながらも、ゆっくりと目を開く。

 

(……生きてる? ……助かったの?)

 

疑問に思いながらグッと体を起こそうとして低い天井にガツッと額をぶつけた。

 

「あぐっ!?」

 

自分の作った穴は縦幅が八十センチ程度しかなかったことを今更ながらに思い出し、ハジメは、錬成して縦幅を広げるために天井に手を伸ばそうとした。

 

「…えっ…ハジメ…君…?」

突然動きだしたハジメを不安そうにみて…頬に手を添える。

 

「暖かい…ハジメ君…生きてるよね…生きてるんだよね…?」

香織は泣きながら笑顔を浮かべていた。

 

まだ…まだまだハジメと一緒に生きれる喜びに溢れていた。

たまらずハジメにキスをする香織…

 

「…ああ…香織…僕は…どうやら…生きてるみたい…かな?」

 

「…嘘…じゃないよね…嘘だったら嫌いになっちゃうよ…?これからもずっと一緒だよね…!」

 

ガツン

「痛っ!?」

 

何度も確認するがハジメが作った穴は縦幅が80cm程度なのだ。

香織は頭をぶつけてちょっと涙目だ。

 

「う…ん?…どうしたの…香織……えっ…?」

「雫ちゃん、ハジメ君が…ハジメ君が…!!」

「えっ…?ハジメ…さん…?」

 

雫は焦点の合わない目をハジメに向けると…

「ハジメさん?…嘘っ…本当…に生きてる…」

「八重樫…雫さん、多分まだ生きてる…みたい…良くわからないけど…」

雫は溢れ出る涙を止めもせずにハジメに抱きついた。

「ハジメさん、ハジメさん…良かった…良かったよ…」

 

ガツン

「痛っ」

 

何度も何度も確認するがハジメが作った穴は縦幅が80cmなのだ。

雫も頭をぶつけて涙目だ…

 

その時虹色に輝く水滴がハジメの口元に落ち…

 

「え…?魔力や傷が完全に治ってる…?」

「この綺麗な水がハジメ君を助けてくれたの…?」

「多分…害はなさそうだけど…香織、一応魔法で調べられるかな?」

「うん…ちょっと待ってー水質鑑定!」

 

香織は一般魔法の水質鑑定を使った。初級の魔法ながら液体に含まれている成分を調べられる優れものだ。

 

ハジメは香織が水質鑑定をしている間に、錬成で高さ180cm幅300cm奥行き300cmのサイズまで部屋を拡張した。

 

「ハジメ君、これ凄い水だよ…どんな怪我も魔力枯渇も状態異常も回復するみたい…」

「身体に害がないなら、香織と雫さんも、飲んでおいた方がいいね…魔力も体力も必要だ…量が少ないから…錬成で水源を探ってみるか…」

 

ハジメは調べてくれたお礼に、香織の頭を撫でてあげようとして…左腕がなくなっていた事を思い出した…。

「……………」

「…ハジメ君?…」

「そっか…左腕と右足…無くなっちゃったんだっけ…」

「「………ッ…!」」

 

香織と雫が言葉に詰まり…

二人で泣きながらハジメの両脇から抱きつく。

 

「ハジメ君…助けてくれてありがとう…グスっ」

「ハジメさん、守ってくれて…ありがとう…ごめんなさい…」

 

「香織、雫さん、謝るのはもう禁止だよ?…あの状況で香織と雫さんを助ける事ができて、今三人生きてられるんだから大勝利だよ!」

 

「「………!!」」

二人はハジメの身体に顔を埋め…めちゃくちゃに泣いた顔をハジメに見せたくは無かったのだ。

ハジメに見せるべき顔は、とびっきりの笑顔なのだから…

 

「…あっぐっ…くっ…」

突然ハジメが苦しみだした

ハジメは無いはずの左腕と右足に激痛を感じた。

幻肢痛というやつだ。

 

香織は回復魔法をかけたがハジメの痛みは収まる様子もない。

そして不思議な水を飲んでも幻肢痛は収まらなかった…

 

ハジメは痛みを堪えながらも錬成を使い水源を探っていく…

 

岩の間からにじみ出るこの液体を飲むと魔力も回復するようで、いくら錬成しても魔力が尽きない。

ハジメは休まず熱に浮かされたように水源を求めて錬成を繰り返した。

やがて、流れる謎の液体がポタポタからチョロチョロと明らかに量を増やし始めた頃、更に進んだところで、ハジメは遂に水源にたどり着いた。

 

「こ……れは……」

「綺麗…」

「うん…ハジメ君、この石から水がでてくるね…」

 

そこにはバスケットボールぐらいの大きさの青白く発光する鉱石が存在していた。

その鉱石は、周りの石壁に同化するように埋まっており下方へ向けて水滴を滴らせている。神秘的で美しい石だ。

アクアマリンの青をもっと濃くして発光させた感じが一番しっくりくる表現だろう。

ハジメ達は一瞬、自分達の置かれた現状を忘れて見蕩れてしまった。

 

ハジメ達は知らないが、実はその石は〝神結晶〟と呼ばれる歴史上でも最大級の秘宝で、既に遺失物と認識されている伝説の鉱物だったりする。

 

神結晶は、大地に流れる魔力が、千年という長い時をかけて偶然できた魔力溜りにより、その魔力そのものが結晶化したものだ。

直径三十センチから四十センチ位の大きさで、結晶化した後、更に数百年もの時間をかけて内包する魔力が飽和状態になると、液体となって溢れ出す。

 

その液体を〝神水〟と呼び、これを飲んだ者はどんな怪我も病も治るという。欠損部位を再生するような力はないが、飲み続ける限り寿命が尽きないと言われており、そのため不死の霊薬とも言われている。

 

ハジメはふと思い立ち、錬成でマグカップを作り不思議な水で満たす。

それを貯蔵庫にしまい、貯蔵庫内で3つ複製した後取り出した。

 

「香織、貯蔵庫内で複製したものも同じ効果あるかな?」

「わかった!調べてみる!ー水質鑑定」

………………

……………

…………

………

「ハジメ君の貯蔵庫、性能良すぎだよね…全く同じ効果があるよ…」

「成る程…香織、雫さん、今度は必要最小量を、調べてみようか?」

「「必要最小量?」」

「このサイズを持ち歩くのは大変でしょ?イザという時のために香織と雫さんも携帯してた方がいい」

 

ハジメは鉱物鑑定で、そこら中の鉱石を鑑定して、貯蔵庫に放り込む。

そして片っ端から武器を錬成して、魔力を枯渇状態にする。

 

「大さじ何杯飲めば魔力が完全回復するか、確認するから見てて?」

「うん!」

「成る程…」

 

「魔力の回復に対して傷の治りも見てみよう。」

そう言ってハジメは自分の左腕の残った部分の先端をスライスする様に切ったのだ…

 

「「!!ハジメ君(さん)!!!」」

 

血が吹き出したが、不思議な水を大さじで飲みながら必要最小量を量る。

 

幻肢痛と本物の痛みが重なり、ハジメは実感の伴った痛みにホッとしていた…

 

二つの最大値をとった結果、魔力回復薬のビンの大きさがあれば充分な事がわかり、再び増産した。

 

貯蔵庫内では劣化などの変化が起きないため、保存には最適だった。

 

香織と雫が静かすぎるのでハジメは二人を見ると、涙ぐみながらハジメにしがみついた。

 

「バカバカバカ〜ハジメ君はもう傷ついちゃダメなんだから……!!」

「ハジメさんはもう、傷ついちゃダメなんだから…お願い…」

 

血を流すハジメを見て、二人は目の前で手足を失ったハジメの姿を思い出し、泣き出してしまった…

 

香織と雫はいきなり服を脱ぎ始めて、ハジメに裸体を晒したのであった。

 

「…えっ?あ、あの…二人とも…どうしたの…?」

ハジメが慌てた様子で二人に聞くと…

 

「ハジメ君は、これからいい思いしか、しちゃダメだよ?私も雫ちゃんもいっぱい頑張るから…」

 

香織が真剣な目をしてハジメの服を脱がし始める。

 

「私も香織と一緒にハジメさんのモノにして…私もハジメさんにいい思いをいっぱいして貰いたいの…」

 

「ハジメ君は私と雫ちゃんに生命をくれた…これからは私と雫ちゃんがハジメ君を生命と幸せをいっぱいあげるんだから…」

 

香織と雫は悲しそうにハジメの失った腕と足をみる…

 

「……正妻は香織が一番ふさわしいと思うわ…私はハジメさんと香織のそばにいられるだけでも幸せよ♡」

 

「えへへ、ありがとう、雫ちゃん。正妻の座は私だもん♡」

 

二人はハジメに優しく微笑みながらハジメに近寄り…

 

香織はハジメの失った左腕の先端を舐め始め、雫はハジメの失った右足の先端を舐め始めた…

 

ハジメは目の前の光景に目を疑っていた。

 

南陽高校の二大女神が裸で、自分の傷跡をなめている…

ハジメの理性はあっさりと吹き飛んだ…

 

そして…香織だけでなく雫もハジメの妻となったのであった…

……………

…………

………

……

絶え間ない空腹感、自分達の置かれた絶望的な状況…それらから逃れるかのように…三人は交じり合っていた。

 

時間の感覚が麻痺していた三人。〜実際には2日間〜

 

休む事なく交じり合い、今は香織といたしている最中だった…

 

その時、何気なく…ほんの思いつきでハジメは最適化のスキルを、香織に使ってみた所…何と香織に最適化がかかったのである。

 

「…あっ…ハジメ…君…今のは…?」

香織も自分の身体に起きた変化に気付いたようだ…

 

「最適化が…香織にかかった…」

「……えっ?…最適化ってハジメ君にしか…あっ…はぁ……効果なかったんじゃなかったっけ?」

 

香織は雫と交代してハジメの背中に抱きつき、柔らかいモノを押し付ける…

 

「ひょっとして、雫にも、かけられるかも…」

 

「…あっ…ん…は、ハジメさん…私にも…最適化…かけられるの?」

 

ハジメは雫と一つになった時、雫にも最適化がかけられる事を知った…

 

「ハジメさん…これが最適化の効果…なの…?…っん…だ、ダメ…は、ハジメさん、最後まで…して…」

……………

…………

………

……

「ここに落ちてから…どれくらい経ったのか、もう分からないけど希望が出てきたかな?」

「…うん!空腹感は慣れないけど…ハジメ君、最適化の能力は、今私達に使えるの?」

「…無理みたい…その…ピーしている時限定みたいで…」

「…そ、そうにゃの…?ハジメさん…」

 

雫がさっきまでの痴態を思い出しちょっと口調がおかしくなってるが…それはスルーだ。

 

「か、香織…ちょっと、試したい事があるんだけど…」

そう言ってハジメは右手で香織を抱き寄せ、香織と再びピーする…

「んっ…な、何かな…あっ…んっ…」

ハジメは回復魔法を、香織のスキルを使って試してみると…

 

「「「使えるんだ……」」」

 

魔法適性のないハジメが香織並みの威力の回復魔法を使えてしまった…

三人ともトータスのスキルシステムそのものに若干呆れたような口調で言った。

試したい事は終わったが、香織は、最後までしなければならない!と言って最後までするのであった…

 

「という事は私の剣術もハジメさんと繋がっていれば、ハジメさんは使えるようになるのね…」

「…敵の前でピーするの…?」

ハジメの問いに答えられる者はいなかった…

 

ハジメ達は絶望の中に希望を見出していた。

 

最適化を香織と雫にかける事ができるようになり、二人のパワーアップが飛躍的なものになる事。

不思議な水を神水と呼び、その神水をいくらでも増産できる事。

貴重な鉱石を手に入れ、装備を一新出来る事。

風呂とトイレはハジメが錬成で作れるようになっている。

風呂の水が神水なのは置いておくとして…

 

そして絶望的な状況を整理する。

食料。

遥かに格上の敵。

ハジメ、香織、雫の精神状態、正気を保ち続けられるかどうか。

現在地も不明な迷宮。

 

この中で遥かに格上の敵は、ハジメの錬成と香織と雫のパワーアップで、解決出来る可能性がある。

 

格上の敵が倒せれば、探索も容易になり現在地も確認できる…

 

「最大にして克服の見通しが立たないのは、やはり食料だね…」

「うん…神水で死なないとは言え、この空腹感はおかしくなっちゃうよ…」

「そうね…トイレとお風呂はハジメさんの錬成で、解決したけど…」

 

三人は食料に関して何とか工夫出来ないか知恵を出し合ったが…やはり解決策は見出せなかった…

 

「一つだけ…解決策というか、道があるというか…方法があるけど…」

「ハジメさんが言い辛いって事は最悪の手段って事?」

「うん…倒して保管してある魔物の肉を食べる…最悪、神水があるから死なないとは思う…」

「うっ…ん、食べたくはないけど…この空腹感は神水でも解決できないもんね…」

「そうね…食料さえ何とかなれば、後は解決できなくはないわね…不本意だけど…」

 

「うん…ねえ、ハジメ君…魔物のお肉を食べる前に…お願いがあるんだけど…」

「ん?香織のお願いなら何でも聞くよ?」

「あのね…私の全て…ハジメ君に貰って欲しいんだ…全部ハジメ君のモノにして…」

「……?香織の…?貴女…身も心もハジメさんのものじゃない?」

「えっと…口と前はもうハジメ君のモノだけど…後ろはまだかな…」

「!香織…私もお願いしたいわ…」

 

「えっ…な、何で…?」

ハジメはその発想は誰の発想だろうか…と悩む。

 

「あのね…また死ぬかもしれない…でしょ?だからハジメ君と思い残すことが無いようにと思って…」

「うん…私も…全部ハジメさんのモノになりたい…」

 

二人はこれ以上、ハジメに傷ついたり苦しんだりして欲しくはなかった…が結局のところ、食料問題だけは、どうする事もできない…

ならば…香織と雫は身も心も全てハジメのモノにして欲しいと願ったのだった…

 

閉鎖された空間に三人絡み合い続けたせいで、色々なハードルが下がっていたのも事実だ。

しかし三人は、最後の思い出になるかも知れないと…今までで一番激しく、そして深く愛しあったのだった…

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

魔物の肉を食べる決断をくだしてから、まる一日愛しあっていたが、流石に空腹感には勝てず、食べる事にした…

 

ハジメは解体用の部屋を用意して魔物を貯蔵庫から取り出す。

調理は香織と雫だ。

ハジメは手伝おうにも片手片足では、それも難しく二人にやってもらう事にした。

 

オルクスの大迷宮で得たのは4種類、エレメンタルバット8匹、ロックマウント、ミストルシーバー、カメレオントルーバ、謎の階層で得た二尾狼5匹と蹴りウサギ…全部で6種類だ。

雫の提案で全種類食べ比べて、少しでもマシな味の魔物を量産しようと言う事になった。

貯蔵庫の複製機能は、魔物の死体を複製する事は出来なかったが、ステーキ状に切り分けたら何故か複製ができた。

 

「それじゃあ、エレメンタルバット各種、ロックマウント、ミストルシーバー、カメレオントルーバ、二尾狼、蹴りウサギの順で食べよう…必ず一口食べたら神水を飲む事も忘れずにね?」

「「はい!」」

 

香織だけ後から食べるという案もあったが、生きる時も死ぬ時も一緒じゃなきゃ嫌だ…と言って譲らず、三人同時に食べる事にしたのだった。

 

「コウモリは…味が全く…モグモグ…しないね…」

「うん…味のない…ハムハム…鶏肉…かな?」

「不味くもないけど…ハムハム…美味しくもないわ…」

神水を飲み物代わりにしながら次から次へと三人は食べていく。

三人は極度の空腹からか、あっという間に全種類完食し、ようやくお腹が膨れた頃、異変が起こり始めた。

 

「あ? ――ッ!? アガァ!!!」

「え?な、何…?きゃっ、キャーー!!」

「うっ…ハッ…な、何…これ……」

 

突如全身を激しい痛みが襲った。

まるで体の内側から何かに侵食されているようなおぞましい感覚。

その痛みは、時間が経てば経つほど激しくなる。

 

「ぐぅあああっ。な、何がっ――ぐぅううっ!か、香織、雫…し、神水を飲め!」

「きゃぁぁぁぁ、か、身体が、う、うん、は、ハジメ君〜あぁぁぁ!」

「は、はい、ハジメ…さん…ぐっっっうぅぅぅ…!」

 

耐え難い痛み。自分を侵食していく何か。

ハジメ達は地面をのたうち回る。

それでも香織と雫は必死にハジメの側にいく。

幻肢痛など吹き飛ぶような遥かに激しい痛みだ。

ハジメ達はあらかじめ用意してたマグカップに入った神水を飲む。

すると痛みが引いていくが、しばらくすると再び激痛が襲う。

 

「ひぃぐがぁぁ!! なんで……なおらなぁ、あがぁぁ!」

「くぅぅぅぅ!ま、また痛みが…?どうして…あぁぁぁ!」

「ハジメさん…香織…うぁぁぁぁぁぁ!」

 

ハジメ達の体が痛みに合わせて脈動を始めた。

ドクンッ、ドクンッと体全体が脈打つ。

至る所からミシッ、メキッという音さえ聞こえてきた。

しかし次の瞬間には、体内の神水が効果をあらわし体の異常を修復していく。修復が終わると再び激痛、そして修復。

神水の効果で気絶もできない。

絶大な治癒能力がアダとなった形だ。

 

ハジメ達は絶叫を上げ地面をのたうち回り、頭を何度も壁に打ち付けながら終わりの見えない地獄を味わい続けた。

 

ハジメの右目は岩の突起にあたり潰れてしまったが、そんな痛みなど気にならない程の痛みが全身を駆け巡る…

 

それでもハジメ、香織、雫は諦めなかった。

必ず生き延びて…少しでも長く三人で生きる為に…ハジメ達は必死に抵抗し、耐えた。

すると、三人の体に変化が現れ始めた。

 

まず髪から色が抜け落ちてゆく。

許容量を超えた痛みのせいか、それとも別の原因か、日本人特有の黒髪がどんどん白くなってゆく。

 

ハジメの変化が一番顕著だった。

筋肉や骨格が徐々に太くなり、体の内側に薄らと赤黒い線が幾本か浮き出始める。

そして何より、失ったはずの左手と、右足と右目が再生され始めたのだった。

 

香織と雫は今までも十分魅力的な体型だったが、出るところは出て、引き締まる所は引き締まる、更に魅力的な身体に変化していた。

 

魔物の肉は人間にとって猛毒だ。

魔石という特殊な体内器官を持ち、魔力を直接体に巡らせ驚異的な身体能力を発揮する魔物。

体内を巡り変質した魔力は肉や骨にも浸透して頑丈にする。

 

この変質した魔力が人間にとって致命的なのだ。

人間の体内を侵食し、内側から細胞を破壊していくのである。

 

ハジメ達も、魔物の肉を喰っただけなら、体が崩壊して死ぬだけだっただろう。

 

しかし、それを許さない秘薬があった。

神水だ。

壊れた端からすぐに修復していく。

その結果、肉体が凄まじい速度で強靭になっていく。

壊して、治して、壊して、治す。

ハジメは男性らしく、香織と雫はより女性らしく変化していく。

その様は、あたかも転生のよう。

脆弱な人の身を捨て化生へと生まれ変わる生誕の儀式。

ハジメ達の絶叫は産声だ。

 

三人の痛みが収まりつつある中、突如頭の中に声のようなモノが響いた。

 

「〜\〜¥%○<%$€*〆^°¥+〜*」

 

何と発音してるかも分からない声の様なモノは最後に

 

「$〆€ησ」加護$%

 

僅かに加護と言う言葉だけが理解できた。

 

そして…

 

三人の頭髪はシルバーブロンドに染まっており、体には赤黒い線が数本ほど走っている。

まるで蹴りウサギや二尾狼、そして爪熊のようである。

 

ハジメ達が僅かに身動きをして、閉じられていた目がうっすらと開けられる。

 

ハジメは、自分の身体に左腕と右足の感覚がある事に気付いた。

右目の視界も戻っていたが…目を凝らしたりすると色が変わったり波のようなモノが見えたりした。

 

ハジメ達は自分が生きていること、きちんと自分の意思で手が動くことを確かめるとゆっくり起き上がった。

 

「……香織…雫…大丈夫か…?」

「う、うん…ハジメ君、大丈夫、生きてるよ…」

「ええ、ハジメさん、私も何とか大丈夫…そう」

 

ようやく目の焦点があい、お互いの姿を確認した瞬間

 

「「「う、うそーーー」」」

 

お互いの変わり果てた姿に驚愕した。

 

「か、香織と…雫…だよね…なんだか…身体のラインが更に魅力的になったような…」

褒められた二人は嬉しそうに照れていた。

しかし隠そうとはせずに、もっと見て欲しそうにしている…

 

「ハジメ君も物凄く逞しくなったみたい…」

「うん…ハジメさん…もますます素敵に…」

 

三人とも、この3日間一度も服を着ていないので裸だ。

 

なので変化がとてもよくわかる。

 

お互いの変化に驚いたが、三人が三人とも、ますます魅力的になった姿にお互い見惚れていた。

 

香織と雫はハジメの失われた筈の腕と足をみて驚喜したようで、すぐに抱きついてきた。

 

三人とも飢餓感がなくなり、久しぶりになんの苦痛も感じない。

 

それどころか妙に体が軽く、力が全身に漲っている気がする。

 

ハジメ達はお互いの無事を喜び暫くの間、抱き合いながら、笑い合っていた…

 

落ちついてからお互いの変化を確認すると、ハジメは腕や腹を見ると明らかに筋肉が発達している。

身長も伸びていた。

以前のハジメの身長は165cmだったのだが、現在は188cmになっていた。

 

香織は雫と同じくらいの身長になっていた。

雫は身長に変化は見られなかったが、二人に共通していたのは女性らしさの超強化だった。

胸の膨らみは香織と雫はCカップだったが今ではDカップにアップしていた。

腰のくびれのラインは更に魅力的になっていた。

 

「僕達の体どうなったんだろう…?なんか妙な感覚があるし……」

「うん…変な感覚だけど妙に力が湧いてくるような…」

「!ステータスプレート見てみたらどうかしら?」

「すっかり忘れていた…早速見てみよう!」

 

すっかり存在を忘れていたステータスプレートを探してポケットを探る。

服はきちんと畳まれていた。

香織の奥様レベルは高い…

 

「何か久しぶりに服を見たね…」

「そ、そうね…ここにいる限り必要ないけど…ねっ!ハジメさん…」

そう言いながら幸せそうにハジメを見る二人。

 

ハジメは、今香織と雫を抱いたら軽く2、3日抱き続ける自信があったので、必死に堪えてステータスプレートを見る。

 

体の異常について何か分かるかもしれない。

 

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南雲ハジメ 18歳 男 レベル:10

天職:錬成師    職業:冒険者 青

筋力:400

体力:400

耐性:400

敏捷:400

魔力:400

魔耐:400

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+鉱物系探査][+精密錬成][+複製錬成][+圧縮錬成][+高速錬成][+複製錬成][+自動錬成][+イメージ補強力上昇][+消費魔力減少][+鉱物系融合][+鉱物系分離][+鉱物系分解][+貯蔵庫][+貯蔵庫内複製][+貯蔵庫容量増加][+震動波砕][+震動波砕道具付与][+震動波砕効果範囲拡大]・魔力操作・胃酸強化・魔力視・気配感知・魔力感知・威圧・纏雷・纏氷・纏光・纏闇・纏風・纏火・纏水・纏地・気配遮断・再生[+超速再生]・天歩[+空力][+縮地]・高速魔力回復・眷族通話(香織、雫)・減速加速門・最適化・言語理解・「 」の加護

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南雲香織 18歳 女 レベル:15

天職:治癒師    職業:冒険者 青

筋力:300

体力:300

耐性:300

敏捷:300

魔力:500

魔耐:500

技能:回復魔法[+回復効果上昇][+回復速度上昇] ][+イメージ補強力上昇][+浸透看破][+範囲回復効果上昇]・光魔法適性[+発動速度上昇][+効果上昇][+持続時間上昇]・魔力操作・胃酸強化・魔力視・気配感知・魔力感知・威圧・纏氷・纏雷・纏光・纏闇・纏風・纏火・纏水・纏地・気配遮断・再生・天歩[+空力][+縮地]・高速魔力回復・眷族通話(ハジメ、雫)・言語理解・「 」の加護

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南雲雫 18歳 女 レベル:15

天職:剣士    職業:冒険者 青

筋力: 420

体力: 420

耐性: 300

敏捷: 500

魔力: 400

魔耐: 400

技能:剣術[+抜刀速度上昇][+斬撃威力上昇][+斬撃速度上昇][+命中精度上昇][+弱点看破]・先読・気配感知・隠業・魔力操作・胃酸強化・魔力視・魔力感知・威圧・纏雷・纏氷・纏光・纏闇・纏風・纏火・纏水・纏地・気配遮断・再生・天歩[+空力][+縮地]・高速魔力回復・眷族通話(ハジメ、香織)・言語理解・「 」の加護

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「「「……何これ…?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 




魔物の試食会ご苦労様でした(=゚ω゚)ノ

エレメンタルバット

同じ種族でありながら個体ごとに8種類の中から一つの属性を持っています。
これから得たのが…
纏氷、纏雷、纏光、纏闇、纏地、纏水、纏火、纏風です。

ハジメの最適化によって簡単に派生技能がつくのでハジメ達は属性攻撃に対してほぼ無敵になります。

ロックマウントは、
威圧

ミストルシーバーは
再生、高速魔力回復

カメレオントルーバは
魔力視、気配感知、気配遮断、魔力感知

二尾狼は
纏雷、眷族通話

蹴りウサギは
天歩
です。
纏雷は重複したので、統合されました。
重複したスキルは統合されます。

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