という単純で当然だが大切な構造(信念)を、
子ども時代にキチンと意識の中にとどめていただけさえすれば、それはそれで十分意味のあることだ、と思う。
石ノ森章太郎 『「仮面ライダー」は人類のために戦っているのです』より抜粋。
1
彼が初めて会った人間は死に体だった。
白い白衣を自分の血で真っ赤に染め、息も絶え絶え。
虚ろな目からは今にも完全に光が消えてしまいそうだ。
「れ、零……」
残る力を、命を振り絞って男はスイッチを押す。
制御台から外された彼はコンセント式から電池式に電源が切り替わる。
「零、聞いて、きてくれ……」
プラグを変形させて仕舞い、両面の特殊液晶ディスプレイを起動させ擬態をオンにする。
倒れる男に近づく。
「君は、命を助けるために私が作った。」
分かり切ったことを言う。
零はそう思った。
それは彼の基本プログラム、生物でいえば本能に当たるものだ。
「私のような先の無いものはいい…未来ある多くの命を救え。
たとえ気味悪がられても、感謝されなくてもだ。
人の良いも悪いも全部見て、助けるんだ。
その先に見えるものは、ただ命令に従って動くだけとは
違う景色のはずだ。」
私のようになるな。
まるで愛しいものに語り掛けるように男は続けた。
「光明寺、博士…水戸博士…申し訳ありません。
あなた達から教わった技術を悪の道に使ってしまいました。
けど最期に、00をあなた達が諦めた真なる良心を持った
ガクリと男は、零を作った海野博士は動かなくなった。
バイタル、肺活、ともに止まっている。
体温はまだ生者と変わりないが、きっとそれも今だけだ。
(
だがきっと、人間にはそれができない。)
だから良いも悪いも全部見ろと言ったのだろうか?
まだわからないけど取り合えず、動こう。
もし博士がこうなる要因になった存在が破壊活動を続けるなら、それから誰かを守るのが自分の使命だ。
それが00が、零が起動して初めて自分で思考し、導き出した結論だった。
2
「もう大丈夫だ。」
擬態をオンにしながら二人のもとに帰る零。
キラキラと目を輝かせる藤丸少年とその背後で怯えながら様子を窺うようにこちらを見るマシュ。
「兄ちゃん、ロボットだったの?」
「ああ、
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藤丸少年は自分が機械に魅せられた原点に戻っていた。
もっと昔に水戸博士が見せてくれたロボットアニメ。
「すごい!」
どんなに強大な敵にも、邪悪な野望にも、
何度膝をついても立ち上がり力の限り戦い続ける。
最後には仲間や自分のために絶対勝つと信じて鋼の機体を駆り、百熱のミサイルとレーザーの雨をかいくぐり、
ロケットパンチは音より速い。
そんな存在が、「正義は必ず勝つ」という当たり前を証明してくれたヒーローが、形を変えて現実になって目の前にいる。
藤丸少年は震えた。もしかしたらこの場に立ち会えたことをこの時だけは神に感謝したかもしれない。
「
マシュは原始的な恐怖を感じていた。
ただ力としか呼べないもの。
正義も悪も無く、義理も矜持もない。
有無を言わせず圧倒的暴力で蹂躙する絶対的強さ。
対処法はひれ伏すか殺されるしかない。
殺すための武器と殺すための技で滅ぼす。
悪なんかよりも質の悪い力。
マシュには零がそんな存在の具現化に見えた。
しかもその右半身を赤、左半身を青に塗った姿はさっきハカイダーを率いていたゼロワンにそっくりではないか。
「
人間の良い心に当たる良心回路を搭載した高機能人造人間によりモザイカの戦士を迎撃することが目的だ。」
「迎撃って戦うの?」
「おそらくはな。」
「おそらくは?」
「モザイカ計画に関するデータは閲覧する権限を与えられていない。」
「都合のいい話ですね。」
「おそらく戦いに支障をきたさないためだろう。」
そう言って零は立香に手を差し出す。
「歩きながら話そう。」
嬉しそうに零の手を握る藤丸。
藤丸少年の背中をギュッと掴んだままのマシュ。
「
「俺の電子頭脳には、さっき戦ったハカイダーの元になった戦闘用
「有り得ません。
そんな事をして圧力媒体が同期できるはずがありません。」
「マシュの言う通り。
だが、そこに両者の暗号信号を通信可能な機会ととらえさせる事でこの問題を解決できる。」
「もしかしてそれに必要なのが
「そうだ。俺はどんな悪い命令にも従う
どんなに良い命令でも拒否できる
二つの相反する性質を持ち、限りなく人間に近づいた。」
これにはこの時マシュは本日何度目かわからないが度肝を抜かれた。
ロボット工学の常識を根幹から覆す非常識な発想だ。
しかし不思議と納得だとも思った。
チェインジした後の赤青二色のボディ。
人間の心を色で表したらそうなるんじゃないか?
正義と悪との青と赤。
それよりも相反するものと言われて白と黒を連想するのは俺が一夏の
思い返せば単一世界・両極双心におけるフォンブレイバーとキカイダーにおける良心回路の働きは同じだ。
これは偶然だろうが、水戸博士も海野博士も目指した先が同じなら、みんなたどり着く先は同じということだろうか?
「だろうな。だからこそ僕の兄弟だ。
善にも悪にも染まれない中途半端な蝙蝠!!」
憎悪のこもった声がする。
見上げると何も足場がない所に貴族服の、藤丸たちと同じぐらいの少年がいる。
「あ、アレはいったい……。」
「バイタル、肺活、正常な体温検知できず。
ダーク社製の
「如何にも。僕は
けど
僕はお前と同じ、いやお前より醜悪な
そう言うと少年のマントの下から大量の黒いナニカがあふれ出る。
「こ、これって!?」
「蝙蝠?」
「!? こ、この音波は、メカニズムが、阻害される!!?」
頭を抱えてうずくまる零。その隙に少年は蝙蝠を操り
「マシュ!?」
「え? き、きゃあ!り、立香さん!」
マシュを自分の元まで連れてくる。
「返してほしければタワーの最上階まで来い!!必ずだ!」
そういうと少年はマシュと共に飛び去って行った。
ナレーション「マシュを奪われてしまった零と藤丸少年。
取り戻さんと二人が向かう頃、連れ去られたマシュが少年のアンドロイド、ゴールデンバットから聞いた真実は、
なんと人の業と陰我にまみれたものだったか。
果たして心とはなんなのか?
零は、マシュは、ゴールデンバットはその真実を見つける。
次回、infinite time キカイダー00 最終回、