石ノ森章太郎 萬画版『人造人間キカイダー』より抜粋。
1
「俺も行く。」
「駄目だ。」
このやり取りも何度目だろう?と思いながら零は首を横に振った。
「奴は間違いなく軍勢や罠。
あるいはその両方をそろえて待ち構えている。
君を連れて行くのは危険すぎる。」
零の行動基準はいかに未来ある命を守れるか。
この一点に尽きる。
「自分の身は自分で守れる!」
そう言って藤丸少年はさっきハカイダーの残骸の中から見つけ出してきたビームピストルを見せる。
「なぜだ?なぜ自ら危険に飛び込んでいく?」
「友達だから!」
「あって数時間しかたっていないのにか?」
「もちろん。」
藤丸少年のまっすぐな目を見つめる。
零には嘘発見器も搭載されており、
藤丸少年の言葉が表裏の無いものだとすぐに分かった。
(なぜだ?なぜこの少年はそこまでする?
俺の様にプログラムされてるわけでもないのに……。)
なぜ? ナゼ? 何故?
いくら考えたところで満足いく答えはなさそうだった。
(ならば……)
零はリモコン波を使い、ダーク社の車庫にアクセスした。
一台だけ
無事に残った物があった。
「零?どうしたの急に黙り込んで。」
「あれを呼んでいた。」
零が指さす方を見る。
車体からシートまで真っ黒のバイクが無人でやって来た。
古のカワサキマッハⅢ・750-SS-H2を模したそれは
「
それにまたがり、藤丸少年に手を差し出す。
「乗れ。特殊バリアで保護されるからヘルメットはいらない。」
「!? 連れてってくれるの?」
「ああ。行くぞ。」
「うん!」
黒い風になった二人はゴールデンバットが飛び去ったタワーに向けて走った。
2
「んん……?」
マシュが目を覚ますと、そこはホテルの一室の様場所だった。
(ここは、ダーク社のセントラルタワーのゲストルーム?)
とりあえず立ち上がり、辺りを見回す。
いつの間にか紫色のパーティドレスに着替えさせられてる以外は特に何もない。
「ドアが、開いてる。」
外に出ると、すべてカギがかかっていて、エレベーターだけが使える。
恐る恐る中に入ると、自動で扉が閉まり、
マシュを最上階まで運んだ。
「これは……。」
そこは展望台を兼ねた舞踏会上だった。
中は薄暗く、陰鬱なピアノが絶えず響いている。
極め付けにそこで踊っていたのは
(全部
「気に入っていただけたかな?僕の
見上げると、そこにはさっき自分を連れ去った少年が、
白いファントム・オブ・オペラのような仮面に白の貴族服。その上に黒いマントを羽織っている。
「手荒な事をしてすまないね。
こんな事は僕の流儀じゃないんだけど、
目的のために手段は選べないからね。」
「目的?」
「アイツを、キカイダー00をおびき寄せるため。」
そう言って大窓から下界を見下ろす。
マシュも寄って行って同じように見下ろした。
「本当に、助けになんて来るでしょうか?」
「来るさ。彼はそういう風にプログラムされてる。」
「私は、本社の何か実験をしてる人たちにしか期待されていません。」
「いや、期待はされてないよ。君は保存されてるだけだ。」
何でもないようにそう返す少年。
「どういう…ことですか?」
「教えて欲しいかい?だったら、一曲踊ってくれるかな?」
耳障りにならない程度に鳴っていた音楽に合わせて二人は踊った。
「あなたは、本当に
「どうしてそう思うんだい?」
「だって、その……まるで立香さんといるみたい。」
「ふっ…君が一番長く付き合った人間はダーク社の人間のはずなのに、
人間の代表として挙げるのはあの少年?」
やっぱり人間って複雑だね。
そう言って少年は踊るのをやめる。
「それは止まってるとはいえ、僕にも
仮面を外したその顔は
「れ、零さん!?」
「似ていて当り前さ。僕が零になる筈だったからさ。」
「え?」
「聞きたいかい?あんまり気持ちのいい話じゃないけど。」
そう言って彼はマシュから少し距離をとると背を向けたまま話し出した。
「僕の
「不完全?」
「ああ。ダーク社の破壊ロボットにも使われている命令コードを受信すると破壊活動を始めてしまう。」
零だったら命令と
僕の場合は人を殺してしまうこともある。
「ふざけやがって!自分で勝手に作っておいて、
いざ失敗と分かれば海野博士は僕を解体しようとしたんだ!!
……けどダーク社の社長、
プロフェッサーギルのオーダーで、
僕をダーク社の破壊部隊に改造したんだ!」
慟哭する彼に涙が流れないのは、
そう言った機能がないからか、もう枯れ果てているからか。
「ああ憎い!憎くてたまらない!!
奴らはそんな僕をこういったんだ!
まるで昼にも夜にも生きられない、
鳥とも獣ともつかない蝙蝠だと!」
そう言ってマントを翻しチェインジしたその姿は
「ゴールデンバット!
ダークが滅びた今!僕はただ知りたい!
失敗作と断じられた僕と、唯一の成功例となった零!
どちらが優れているか!」
3
ここまで書いといて、読ませといてなんだと思うかもしれないが、結構ゴールデンバットに同情するように書いてしまったかもしれない。
いや、悪気はないんだ。
俺はただのストーリーテラーである以上務めて中立でいようとしてるが、
ぶっちゃけ一回娘と甥同然に接してきた親友の息子をキカイダー00に殺されかけた身としてはキカイダー達のことを悪く書かないまでも、敵側、ゴールデンバット寄りに書いてしまうのは仕方ないと目を瞑っていただきたい。
さて話を戻そう。
零と藤丸少年だ。
「立香、本当にいいのか?」
「大丈夫!俺高いとこ平気だから!00発進!」
「了解。」
紐で藤丸少年を固定した零は両足の膝から下だけをチェインジさせラムジェットを起動し、タワーの最上階めがけて飛び上がった。
「あと7秒…5、4、3、2、今!」
両手の指をすべて変形させ、きりもみ回転しながら弾丸を発射!
「00ドライバー!!」
きれいな円刑に穿たれた穴の円に突っ込む二人。
綺麗に正円の大穴を開けながらパーティー会場に躍り出た。
「これ全部ロボット!?」
「派手なお出迎えだ。」
踊り出てきた二人にパーティードレス姿のロボットたちが殺到した。
零は飛び上がると左右の体内に独立して存在する粒子加速器で相反するエネルギーを同時に加速させ土器した瞬間交差させ、中性になったそれを撃ちだした。
『doubie energy strike』
「キカイダースパーク!!」
乱打される雷に全滅させられたロボットたち。
零は安全を確認し、藤丸少年を下すと、奥に向かった。
「待っていたよ00。僕の成功作。」
「ゴールデンバット……立香、マシュを探せ。こいつは俺が倒す。」
「分かった。兄ちゃんも気を付けて。」
立香が奥に行く。残ったのは
「なぜ立香を行かせた?」
「君との話の邪魔になるからね。」
「俺との話?」
「ああ。
「なんだ?」
「死ぬことに恐怖は?」
「無くはない。だが不思議と今はそうでもない。」
「僕もだ。」
沈黙。お互いの穏やかな視線だけが交わる。
「じゃ価値ある命は人造の仮想生命と神造の本物の生命どちらだと思う?」
「当然、本物の生命だ。」
「なぜだい?奴らは身勝手で傲慢な、我欲にまみれた生命だ。」
「真っ赤な悪意と同時に青い優しさを持つ神秘だ。」
「神秘?神秘だって?
どんな言葉で取り繕ったところで所詮奴らは輪廻転生とか死後の世界とか持ち出して死への理解から逃げる臆病者だ。
むしろ僕ら仮想生命体の方が高尚な存在に思える。」
「俺たちはバックアップがあればすぐ復活する。」
「お前は起動したばかりだからそんなことが言えるんだ!!
……すまない。らしくもなくエキサイトしてしまった。」
「構わん。だがそうなった理由ぐらい話せ。」
「ああ、テセウスの船というたとえ話を知っているかい?」
「見てくれは同じでも、部品すべてを交換したものは同じと言えるのか?というギリシャ神話に起源をもつ話だな?」
「ああ。それを知ってから僕は思うようになったんだよ。
このボディの51%以上が入れ替わる日こそが僕の最期だとね。」
「それなのになぜ明らかにお前より優れているとわかり切った俺に挑む?」
それは慢心などではなく純然たる事実。
キカイは後期型の方が高性能だ。
量産型などの例は除くが、例えば鴻上ファンデーションのライダーシステム。
正規版はユニットが六つ使えるのに対し、試作版は二つしか使えないらしい。
そんな具合に後から作る方が前作の失敗を踏まえ、その弱点を克服できるからだ。
「これは僕のプライドの問題だ。
零。お前を破壊し、僕は失敗作ではないと証明する。
そうする事で僕はようやく過去を清算できるんだ。」
過去を持たないお前には分からないだろうね。
そう言って変身の構えをとるゴールデンバット。
「だが未来はある。俺には見届けたいものがある。
正義と悪、どちらでもない混ざった心が俺に何を見せるか。
俺はそれを知りたい。」
どれだけの価値があるか分からないが、それでもやりたい。
「変身!」
「チェインジ!00!」
『mission code kikaider!』
4
「マシュ!マーシュー!どこ!?いたなら返事して!」
ビームピストルを構えたまま藤丸少年は声の限り呼び、体力の限り走った。
「マシュ!……! マシュ!」
「立香、さん?」
「!?」
泣き腫らしたらしいマシュは声に気力がなかった。
その頬が痩せこけて見えたのは薄暗い室内のせいか、
涙の跡のせいかは分からないが。
「来ないでください。」
「な、なんで?」
「私は、
マシュが人造人間?
「一応人間との生殖は可能だそうですが、それでも種としては孤独で、私を造るまでに何十、何百もの失敗作があったそうです。」
オリジナルの
「その目的は、脳の身キカイにした
「な、何のために!?」
「子供の姿、人間が一番油断する姿のまま殺人的な力と思考力を持った兵隊を欲したから、だそうです。
けど素体を造る時点で私しか成功例がなかったから、私は何か実験に使えないか?という理由だけで保存されてただけなんです。」
ま、結局のところ実験にさえ使うつもりもなく、
せっかく造ったから、って理由だけでしょうけど。
薄暗く嗤いながらマシュは吐き捨てた。
「帰ってください、ここにいると危ないです。」
藤丸少年は、教えられたとおりにビームピストルのロックをオンにするとマシュに近づき
「マシュ。」
「なんですか?あなたは逃げて」
「先に謝る。」
「なにが」
思い切りマシュをグーで殴った。
「マシュ、痛い?」
「……いったいです。」
「怒った?」
「お、怒ったって言うか……え?」
枯れてたはずの涙が出て来た。
困惑したままマシュが続ける。
「なん、でしょうか?胸が、こう、きゅうって……。」
「友達と喧嘩した後は誰でもそうなるよ。」
そう言ってマシュの涙をぬぐう藤丸少年。
「友達と喧嘩したら泣いて、怖いと思ったら俺の後ろに隠れて、
マシュは全然普通の女の子じゃん。」
だからもう俺たちと違うなんて、寂しいこと言わないでよ。
そう言って彼は微笑んだ。
マシュの顔はくしゃくしゃとゆがんでいく。
「俺はマシュといたい。マシュはどうしたい?」
「わた、わたしも……、立香さんのそばにいたいです!」
藤丸少年に抱き着く。
藤丸少年も幼子をあやす親の様に背中をさすり、
抱き寄せるように頭をなでる。
するとその雰囲気をぶち壊すように大窓を破壊しながらゴールデンバットが飛び込んできた。
右腕はちぎられ、左の頭部、肩のアーマーはかち割れ、あちこち配線やチューブが飛び出て、人間でいう心臓の部分には大穴があいている。
「ヒッ!」
「ーーっ!!」
『こ、こうなればぁああああ!!!!!』
ゴールデンバットは藤丸少年とマシュを人質にしようと、崩れかけのボディに鞭を撃って二人に迫った。
「近づくな!!」
藤丸少年のビームピストルが火を噴く。
運よく喉の発声機能を撃ち抜いた。
思わず後ずさるゴールデンバット。
「後ずさったなゴールデンバット!」
遅れてやって来た00がスライディングで足払いを仕掛けながら躍り出る。
「兄ちゃん!」
「零さん!」
『だ、00ォオオおおおおオオお!!!!!!』
「そうだ、それがお前を倒す人類の守り手の名だ。」
がむしゃらに突っ込んでくるゴールデンバットをワンツーパンチで窓の外まで吹っ飛ばし、両腕の電磁ブレードを起動。
最後は零が、00が最も頼りとするあの技を仕掛けた!
『double slash!』
「W、斬りッ!」
バシン!カメラアイが割れ、視界を完全に失う。
続いて落下する感覚。
地面につけば自分は消える。
そう思ったゴールデンバットは無線で最後の疑問の答えを00に求めた。
『00、お前が見たかった心とはなんだ?』
『藤丸立香は善意ではなく我欲だけでマシュを助けようとした。
それはやってることは正しいが心は正しくない。
だが俺は不思議とそれが良いことだと思えた。』
だから答えを知りたかった。
そう答える零にゴールデンバットは恋を知らないお子様め!
そんなもんただの一目惚れだ。
と思ったがまだ起動したてのラーニング中か、
と思い最後にメールで
『キカイダー00。見事な勝負だった。』
とだけ送り、意識を手放した。
5
カメラの倍率を上げ、完全にゴールデンバットが地面に激突し、バラバラになったのを確認し、零は二人を連れてタワーを下りた。
「立香さん、零さん。助けてくれてありがとうございました。」
「礼には及ばない。俺は俺の使命を果たしただけだ。」
「兄ちゃんは正義のヒーローだもんね!」
藤丸少年が笑顔で言うと
「立香ー!立香!リーツーカー!居たら返事してー!立香!」
少し離れたところから彼を呼ぶ声がする。
「あ、母さん!おーい!ここだよー!」
藤丸少年が元気よく手を上げると遠くか藤丸夫人が駆け寄ってきた。
「ああ立香!よかった無事なのね!」
藤丸夫人はマシュごと藤丸少年を抱きしめた。
「マシュも無事だよ!」
「ええ!ええそうね!……え?」
息子の無事を喜びすぎて気付かなかったが、紫髪の利発そうな女の子が立香としっかりと手を握ってるではないか。
この時、藤丸夫人はついにこの時が来たか、と思った。
よくは知らないが、藤丸博士は、藤丸立香の父親は昔はそれはそれはすごい大恋愛をしてさんざん周りに迷惑をかけまくったらしい。
(もし息子にその遺伝子が受け継がれてるなら……。)
それだけが藤丸夫人の心配だった。
そんな息子がついに女の子を連れてきた。
「えっと、マシュちゃん?」
「は、はい?」
「おうちは、どこ?」
「ここですが、見ての通り壊れました。」
「え? そ、そう。ごめんなさい遠慮のない質問だったわ。」
「い、いえ。」
「それと、ご両親は?」
「……いません。」
この時、藤丸夫人の天使と悪魔が囁いた。
「なんてこと!幸い立香と仲もいいようだし家においてあげましょう。」
「なんてタイミングのいい!それに親も居ないなら好都合だわ。立香の許嫁にしましょう!」
極力悪魔の方の声を無視しながら
「マシュちゃん、あなたが良ければだけど、家に来ないかしら?」
「え?」
「立香と仲良くなってるみたいだしどうかしら?」
「いいん、ですか?」
「もちろん!マシュ一緒なら俺も嬉しいよ!」
「では、お邪魔させていただきます。」
「よろしくねマシュ!兄ちゃんはどうする?」
零に振り替える三人。零は両腕を交差させ
「チェインジ。00。」
『mission code kikaider』
変身した零はブラックスワンを呼びだすと三人に背を向けた。
「待って兄ちゃん!」
「零さん!」
彼は振り返らない。そのままバイクにまたがる。
「キカイダー!」
そう呼ばれると振り返り、こういった。
「立香、マシュ。幸せになれ。そうなって初めて俺が戦った意味がある。」
エンジンをふかす。黒バイクに乗った二色のヒーローはたちまち小さくなっていく。
三人は見えくなるまで見送った。
6
「なるほど、これでようやく腑に落ちたわ。」
ポリーはノートを鉄製のトレーに投げ入れると、残り六冊もそこに置き、マッチで火をつけた。
読みながら飲んでいた安酒を染み込ませておいたのですぐ燃えるだろう。
「だからこそあの事件につながったのね。」
ポリーは一人つぶやく。あの事件ももう三年前か。
ポリーは椅子に座りなおすと。ただ天井を見つめながらあの事件を回想した。
自作予告。
ゼイビアックスと仮面ライダーたちとの戦いから20年。
網島ケイタの息子、網島敬一は風都市立、花風中学校に通う一年生。
エレン「アメリカから来ました!エレン・アキヤマです!」
転校生で幼馴染のエレンや仲間たちと共にそこそこの日々を謳歌していた。
しかし
ジロー「網島敬一。織斑の系譜は、僕たちが断ち切る!」
零「チェインジ!00!」
突如襲い掛かる
玲次郎「俺は
網島敬一。俺たちの仲間になってくれ。」
時を同じくして現れる織斑の血を引く超能力集団、少年同盟。
果たして彼らの運命は!?
infinite time キカイダーvsイナズマン
the end of infinite DORAGON KNIGHT in 明日未来
制作決定!