13日戦争で滅びるはずだった両雄(新)   作:空社長

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お気に入りが120に到達しそうで、大変嬉しい限りです。

着陸シーンについてはあまり詳しくないので、見逃していただけると幸いです。


【追記】
2022/12/19 10:53現在、お気に入り121となりました。ありがとうございます!


Episode.5【覇者の行く先】

_C.C.(中央暦)1635年6月10日P.M.1時_

 

「全長50メートル……」

「せ、成層圏の要塞……」

 

 ここは神聖ミリシアル帝国帝都ルーンポリスにあるアルビオン城の大会議室である。

 そこに会談のために集まっていた神聖ミリシアル帝国首脳陣はスクワイアより語られた情報に驚き、軍関係者等は固まった。

 漸く復帰した者も、スクワイアから並べられた単語をただ繰り返すだけだった。

 

「アグラよ、その機体が着陸できる場所はあるのか?」

「は……え、ええ。あるとは思いますが、今すぐに決定するのは不可能です……」

 

 ミリシアル8世は僅かに目を見開いたものの、身が固まる程の驚きには値せず、微動だにすることも無く、その威厳を見せつけた。

 その様子の皇帝にアグラは動揺しつつも返答する。

 

(皇帝頼みの政治体制……か。まあ、敵対しなければ別にいい。我々が手を加えてもかつての二の舞になるだけだ)

「はい、もちろん大丈夫です。こちらも急な提案をしてしまい申し訳ありません」

 

 スクワイアはミリシアル首脳陣の様子を観察・分析を行いつつ、礼儀良く返事を返す。

 

「では、貴国……北方連合国家と国交を開設しよう。もはや貴国が強大であることは明らかだが、この世界においての繋がりがある訳では無い。今のままでは必ず諍いを起こすであろう。……なれば、仮にも世界最強たる我が国と手を結ぶ事で、万事上手くいくであろう。ぺクラスよ、あとは外務省に一任する」

 

 4000年生きてきた経験から、国家がいくら強大であっても、それだけでは全て上手くいく訳では無い。

 それはかつて世界を支配していた古の魔法帝国が、神々から滅ぼされようとしていた事からも分かりきったことだった。

 

「なるほど……それはありがたいです」

 

 スクワイアは表面には笑みを貼り付けながら、北方連合国家連合政府がこの世界との繋がりや情報を持たないことに苦慮していた事を見抜かれ、内心賞賛しながらも厄介だなと感じていた。

 

 一方でミリシアル8世の素早い決断にその他のミリシアル首脳陣は反応が遅れる。

 いくつかの閣僚が反論しようとするも、向けられた鋭い目線によって「これは決定だ」という意志を示され、従う以外には無かった。

 

 その後、国交開設の交渉は滞りなく進み、暫定的に北方連合国家の大使館をルーンポリス市内へと開設し、神聖ミリシアル帝国の大使館は使節団来訪後に開設することで決定する。

 また、官民交流に関する法整備の項目や、神聖ミリシアル帝国含む世界情勢、使節団来訪時における注意事項等の情報交換が行われた。

 

_C.C.1635年6月10日P.M.3時_

アルビオン城 皇帝の居室

 

 会談終了後、厳重な警備が行われていた居室に、スクワイアは衛兵に案内されていた。

 

(……皇帝がまさか私との個人会談を希望するとは……どういう意図だ?)

 

 たった1人。それを条件にスクワイアが面会するのは神聖ミリシアル帝国皇帝ミリシアル8世であった。

 この時ばかりはこの展開を予想していなかったスクワイアは怪訝な感情は僅かに見せた。

 

「ご苦労であった」

 

 ミリシアル8世が声を掛け、衛兵が敬礼して立ち去ると、スクワイアに目線を向ける。

 

「突然の面会、失礼した。公の場ではあまり話せぬのでな、私的の会談を希望したのだ」

「……それで、お話とは?」

「貴殿は我が国に核兵器なる兵器を使うことは無いと語ったが、本当に信じて良いのだな?」

 

 ミリシアル8世の鋭い眼光がスクワイアの目に向けられる。

 真意を確かめようとしていたことは明らかであり、スクワイアは僅かに緊張する。

 

「……もちろんです。転移前の戦争も、我が国から仕掛けたものではありませんでした。90年前の戦争では2発を投下しましたが、あれが正しかったのかは議論がわかれます。少なくとも積極的に使って世界を滅亡に導くような蛮行をすることは決して無いと誓います」

「……その目は嘘をついてるような目では無いな。失礼した」

 

 ミリシアル8世は謝罪とともに頭を下げる。

 

「……私からも質問よろしいですか?何故、我が国に古の魔法帝国を知っているか、聞かれたのですか?」

「……そうだな。これは真実を話した方が良さそうだ。貴国が古の魔法帝国と繋がっているのではないかと疑う者がいたのだ。貴国が海賊迎撃に使った兵器、余はそれに似たものを知っている。『誘導魔光弾』、古の魔法帝国が有していたものだ」

「なるほど……」

「この国は、その遺跡を解析することによって世界最強へとなった国だ。だからこそ、恐れているのだ。その為、貴国を疑う者もいたのだ。すまない」

 

 スクワイアは古の魔法帝国に対して警戒心を高めると共に、1つの決心をする。

 

「いえ、こちらとしても有意義のお話をありがとうございます。古の魔法帝国が再び姿を表すのであれば、絶対に勝たねばならないでしょう、我々も協力致します。……これ以上の長話は予定に影響が出てしまうので、これにて」

「感謝する」

 

(古の魔法帝国……思えば、核兵器の話を言った時も、その意味を聞くこと無く驚いていた……もしかしたら、都市を一つを破壊することの出来る兵器を有しているのか?)

 

 スクワイアの疑問は当たっていたが、現時点でその予測が正解なのか調べる術は存在していなかった。

 

_C.C.1635年6月10日P.M.4時_

アルビオン城 大会議室

 

 北方連合国家使節団が退室し、指定されたホテルへと向かっている中で、交渉後の帝前会議はミリシアル8世が居室から戻ってきた直後に開催された。

 北方連合国家の先導機が離着陸できる飛行場の選定や、使節団メンバーに誰を選ぶかの会議が行われていく。

 その結果、飛行場には神聖ミリシアル帝国空軍帝都防空隊が管轄するラクナイ飛行場が選ばれ、使節団メンバーは外交官1名を使節団の代表として軍務省、帝国情報局、技術研究開発局から1名ずつ出し、さらに魔帝関連技術に詳しい対魔帝対策省よりメテオス・ローグライダー大魔導師が派遣されることとなった。

 時間が経ち会議は北方連合国家に対する外交対象等級についての話となった。

 会談に出席した者、理性的な官僚は特級国家扱いを要望するが、ミリシアル至上主義者の派閥は第3文明圏扱いの3級国家、高くても1級国家までと執拗に主張した。

 結局、ミリシアル8世の鶴の一声によって特級国家扱いで収まるが、次の言葉で会場は驚愕に包まれた。

 

「余はかの国を列強に招くべきだと思われる。……いや、それだけでは無い。かの国を列強第1位へ格上げしても良いと思う」

 

 多くの者が驚愕し、1人の閣僚が反論をなげかける。

 

「……え……いや、わざわざ世界最強の座を明け渡すのですか!?」

「報告を聞いていなかったのか?あの人口、国力……そして、技術力。どれも我が国を超越するでは無いか」

「しかし……それでは」

 

 ミリシアル8世の理性的な言葉に圧倒されてもなお、反対しようとする閣僚だったが、ミリシアル8世はさらに畳み掛ける。

 

「余はこの国に蔓延る傲慢な態度を一掃するべきと考える。我らの敵は魔帝だ。今のままでは、魔帝に叶わぬことを分かっている者もいるだろう。魔帝に勝つためには、どのような手段も問わない。余はそう決めたのだ」

 

アルビオン城 郊外

 

 神聖ミリシアル帝国国有放送企業『世界のニュース』に属する女性アナウンサーが衛兵によって厳重に守られたアルビオン城の外から中継の準備をしていた。

 神聖ミリシアル帝国政府から発表された情報を世界に伝えるため、急ぎつつもしっかりと準備が行われ、放送時間を迎えた。

 

『世界のニュースの時間です。早速、速報です。本日、神聖ミリシアル帝国政府は、北方連合国家(ノーザン・コンドミニアム)、バーラト統一連邦共和国、アナトリア連邦、オセアニア連邦の4カ国と国交を開設することを発表致しました。その4カ国は同一の異世界からの転移国家であると公表しており、神聖ミリシアル帝国政府は異世界国家群代表として北方連合国家に対して使節団の派遣および、貿易取引の予備交渉に入ると発表しています。また……これは驚くべき情報……ですが、今後の調査次第で、北方連合国家の列強への承認、及び……列強第1位への格上げを検討する……とのことです』

 

 この発表に世界は驚愕した。

 仮にも名実ともに世界最強を自称する神聖ミリシアル帝国が、戦争の敗北などではなく、自ら列強第1位の座を明け渡すなど、信じられないことであった。

 そして、それは異世界に北方連合国家の産声が上がった瞬間でもあった。

 だが、その赤ん坊は大人の手を捻り潰すほど力強く、おぞましい力を持ち合わせていた。

 

_C.C.1635年6月11日A.M.7時_

神聖ミリシアル帝国帝都ルーンポリス北東 ラクナイ飛行場

 

 翌日早朝、北方連合国家へ派遣される使節団の姿はルーンポリス北東にある飛行場にあった。

 帝都防空隊が管轄する飛行場であり、何らかの要因でゼノスグラム空港が使用不能に陥った時に、機体を限界まで着陸させるために大きくしていたのが、今回のB-52の離発着に適していた。

 

「スクワイア殿も帰られるのですか?」

 

 滑走路の端に待機中だったゲルニカ35型の機外で、帝国外務省外交官であり使節団代表のフィアーム・ラファイエットが同乗する予定のスクワイアに話しかける。

 

「ええ。私は全権代表ではありましたが、北方連合国家の外交を司る職におりますので。大使館も暫定ではありますが稼働いたしましたし、私の部下は皆有能なので任せております」

「そうなのですね……」

 

 スクワイアの懇切丁寧な説明に、彼女は納得する。

 その傍にいた軍務省より派遣された軍務次官のアルパナ・レベッタがスクワイアに話しかける。

 

「しかし……いつ先導機は到着するのでしょうか?そろそろレーダーに映るのでは?」

「アルパナ殿、我が国の機体は全て魔力を使っておりません。魔力を前提とするレーダーであるなら、おそらく映らないでしょう」

「ははっ、そうでした」

 

 アルパナは軽く笑うが、半分冷や汗を浮かべていた。

 科学のみで神聖ミリシアル帝国を上回る技術を有することが信じきれないミリシアル人としての感覚であった。

 

 その頃、B-52『ストラトフォートレス(成層圏の要塞)』は既に中央世界上空にいた。

 飛行場への誘導機はいない。

 高空、しかも最高時速1000kmに到達する当機に追いつける機体を神聖ミリシアル帝国が持っていないと連合政府は察しており、「攻撃行為を行った場合は駐在する外交官を人質にしても構わない」、そう前置きした上で単独で飛行場に向かうと押し切っている。

 

「そろそろか……」

「位置は判明しています。しかし結構北ですね、それほど恐ろしいのですかね」

「そりゃあ、巨人機とも言える漆黒の機体だからな。さて、望遠カメラを起動するぞ」

 

 第一文明圏ミルキー王国との国境沿いを飛行した後、B-52は進路を真西へと変えていた。

 機長と副操縦士が忠実に任務を遂行しながら会話し、機長は望遠カメラを起動する。

 カメラを通じて、コクピットの正面モニター及び航法士と副操縦士の専用モニターに飛行場の映像が表示される。

 

「よし、データ通りだ。このまま降下して着陸する」

 

 漆黒に塗られた巨大な翼は朝日に照らされながら降下を開始。

 飛行場の対空監視所からも見えるほどに目立ち、使節団メンバーはその姿を視認した途端、その大きさに驚く者ばかりであった。

 

 やがてB-52は着陸態勢へと入る。

 ターボファンエンジンの回転数を少しずつ下げていき、ランディングギアを下げてタイヤが滑走路に接地した瞬間、機体に振動が響く。

 そして、全てのタイヤが接地するとブレーキをかけて速度を急激に下げていく。

 速度が落ち着いたところで徐行へと入ると、滑走路の奥で旋回し今着陸してきた方向に機首を向けて、ゲルニカ35型と並列に並ぶ。

 

「……大きい」

 

 青い顔をしながらも、フィアームは思わずそう呟く。

 

「そんなことより……!プロペラが無い……!ファンのようなものがあるということは、おそらく空気の取り入れ口があるのだろう……。まさか、魔光呪発式空気圧縮放射エンジンを搭載しているのか……」

 

 アルパナがB-52のエンジン部分を見て驚愕しており、その隣にいた技術研究開発局から派遣されたベルーノ・ジルロン開発室長は翼を見て驚愕していた。

 

「後退翼ではないか!……あれは翼端が超音速に達する気流に触れない為に考えられた翼型だ!……ということは、音速に到達するのか?」

「……失礼ですが……この機体の速度はどのくらいでしょうか?差し支えなければ教えていただけますでしょうか?」

 

 ベル―ノの発言に半ば驚きつつも冷静さを保っていた帝国情報局より派遣されたライドルカがスクワイアに尋ねる。

 

「ああ……公的に発表されてる数値であれば。確か……最高時速は約1100kmですね」

 

 スクワイアは携えていたバッグから黒い板状の物体(タブレット)を取り出し、少し操作した後にそう答える。

 

「それと、先ほどアルパナ軍務次官が話していたエンジンですが、あれはターボファンエンジンと言って、ジェットエンジンの一種です。おそらくその魔光呪発式空気圧縮放射エンジンはジェットエンジンの事を指しているのと思われます」

「なるほど……」

 

 ライドルカは手帳を取り出してそれをメモする一方で、アルパナとベル―ノは再び驚いていた。

 

「ふむ……」

「ん?……どうしましたか?メテオス殿」

 

 対魔帝対策省より派遣されたメテオスは1人ぼやくと、フィアームより声をかけられる。

 

「いや、私が解析に関わっていた大型爆撃機に似ていると思ってね。その大型爆撃機はなんと、コア魔法を搭載する為のものでね。もしかしたら、この機体もコア魔法……核兵器を搭載する為の機体なのではないかと」

「それは……」

 

 メテオスの言葉は的を射ていた。

 B-52()()()()()、かつての第一次・第二次冷戦期、そして今も北方連合国家戦略空軍の核攻撃戦力に数えられる機体であった。

 そんなことは露知らず、ただ恐ろしさだけを抱いた。

 そして、ベルーノとアルパナの喧騒の中でもその会話を聞き逃す事の無かったスクワイアはわざと聞いていない振りをしつつも、フィアームに声をかける。

 

「互いの調整も終わったようなので、出発いたしましょう。予定通り、我々の機体が先導致します」

 

 ゲルニカ35型に、スクワイアが先に乗り込み、それにフィアーム率いる使節団が続いていく。

 そして、B-52はターボファンエンジンを吹かして飛び立ち、ゲルニカ35型もそれに続いて離陸した。




■次回予告

Episode.6【来訪】
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