13日戦争で滅びるはずだった両雄(新)   作:空社長

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大変お待たせしてしまいました。
他の二次創作に夢中となってしまい、数年更新をストップしてしまいました。

あと……次話以降もミジンコ並に更新が遅くなるので……
それでもお待ちいただけるのであれば、嬉しいです。


Episode.7【衝撃】

_C.C.(中央暦)1635年6月11日P.M.8時_

ホノルル市内ホテル

 

 パールハーバー海軍基地において北方連合国家の作り上げた戦艦と空母という最も分かりやすく最も国力を誇示しやすい存在を見せつけられた我々は、一泊するホテルへとバスに乗せられて向かう道すがら、ホノルル市内を回った。

 

 海軍基地で見た光景ほどでは無いが、それでも驚くに値する物ばかりだった。

 例えばハワイ州ホノルルという地名を持つこの地は北方連合国家の主要軍事基地がある点を除けば、1つの地方都市に過ぎないという。

 確かに我々神聖ミリシアル帝国の地方都市も同程度の発展具合だが、問題はここが彼らの本土から遠く離れた島であることだ。

 グアムにしろ、遠く離れた島にすらここまで発展させることが出来る、北方連合国家の国力の底が知れないと感じる出来事だった。

 

 ホテルに戻った後は、スクワイア国務長官より夕食会が行われるとの告知があり、我々使節団の面々はそれを待った。

 異国での初めての食事、普段文明圏外へと向かう時は「どうかまともな食事であってくれ」と願うばかりだった。

 だが、今回は遥かに格上だと今日の出来事で感じられた我々がそんな事を思う訳が無く、どんなに豪華で美味な食事が出てくるのだろうかと待ち侘びて、実際に出てきたのは期待以上の食事だった。

 

「今回のお食事メニューを考案しました料理長です。ここハワイは外国の移民が多く、それに合わせて食文化が変化していった地域でもあります。

外国人向けに食べやすくなっているため、皆さま使節団の方々にも提供させていただきました」

 

 今の我々に本土とハワイ料理の違いを比べる術は無いのだが、料理長の説明もそこそこに、とりあえず手に取ってみる事にする。

 まず目を引いたのは、前菜として、貝の一種である生カキを氷が敷き詰められた皿の上に並べられたもので、フレッシュオイスターオンザハーフシェルといって新鮮な生牡蠣をレモンやビネガー、数種類のソースで味付けして食べるものだった。

 カキの身にレモンをかけ、フォークで突き刺して恐る恐る口に入れる。

 プリっとした食感と共によく噛んで飲み込むと、さっぱりとした味わいが口の中に広がっていく。

 

「う、美味い……」

 

 フィア―ムは一瞬驚きの余り固まるが、それよりも他の味を試してみたいという興味が勝り、次はトマトソースをかけて食べてみる。

 食感は変らず、されどカキ本来のミルキーな味わいと、ソースの風味が上手く合わさり、レモンをかけたのとは違う旨味が感じられた。

 その美味しさにカキへと伸びる手は止まらず、丁寧に味わいつつも夢中になりあっという間に完食してしまう。

 周りを見渡せば、興味ある物には先走りがちのベルーノはもう次の料理に行っていた。

 

 次はポーターハウスというステーキ料理で28日間乾燥熟成された最高級品種のブラックアンガス牛が使われているという。

 焼目がしっかりと赤く付き、手に取ったナイフで切り分けると断面から肉汁が溢れてきて、食欲を誘ってくる。

 フォークを突き刺して口に入れると、真っ先に広がるのは肉汁の旨味であり、更にそれを噛むと柔らかい食感が伝わり、旨味も更に広がっていく。

 

「美味すぎる……」

 

 食欲は収まらず、これ幸いにステーキの周りには数種類のソースが置かれていた。

 躊躇無くそれをスプーンでかけて食べると、何もかけないのとではまた違った味わいが口の中で広がっていく。

 更にレタスやクレソンのサラダ、マッシュポテトも合わせて味わうと全然異なる味が感じられた。

 前者はみずみずしいサッパリとした食感が後に来る美味みを引き立たせ、後者はクリーミーな味が上手く合わさり絶妙な旨味が感じられた。

 同じステーキなのに全く飽きを感じさせない驚くべき料理にその手は止まらず、順調に腹を満たしていく。

 

(美味い……美味すぎる。食文化ですら我が国を上回っていると思えるほどに)

 

 神聖ミリシアル帝国の料理が劣っている訳ではないのだが、あまりの美味しさに劣等感を感じさせるには十分だった。

 しかし、それは北方連合国家の意図する物ではなかった。

 

(この夕食会、本当に疲れを取るためだろうか。いや確かに今日は疲れてしまったが……この程度で落ち着けるわけが無いだろうっ!)

 

 世界最強を信じていた者の、格上を知った時の驚き、常識外の存在を知ったショックは、北方連合国家上層部が予想する以上に深いものだった。

 しかし、そんな彼女もこれ以上に驚くべき物が待ち受けていることを知る由も無かった。

 

_C.C.1635年6月11日P.M.10時_

キャンプ・H・M・スミス インド太平洋軍司令部

 

 ホテルでの夕食会後、フィア―ムら使節団に連絡を終えたスクワイアはインド太平洋軍司令部へと訪れていた。

 遠く東方へと離れた日本・台湾・朝鮮を除いた、アメリカ本土から神聖ミリシアル帝国近海のグアム島までの範囲を管轄するインド太平洋軍は、神聖ミリシアル帝国との接触を機に、最も連携を密にしなければならない部署だった。

 

「神聖ミリシアル帝国西岸側にある地域が我々の加盟国及び同盟国である点は、既にアルパナ軍務次官を通して連絡してもらう手筈となっています」

「他の異世界各国に接する国については、私からフィアーム外交官殿に伝えています。しかし……自制できるかは各国次第と言ったところでしょう」

 

 スクワイアと話すのは、司令部付き士官の一人。

 

「……それは我々の方も同じではありますがね。バーラト、アナトリア、中華連邦含め各中立国の監視は各方面統合軍が実施しています」

「……ふむ。それで、話とは?」

 

 簡単な現在状況の意見交換を済ました後、本題へと移る。

 

「サッチャー宇宙軍大将より連絡です。

訪問予定のケネディ宇宙センターについてですが、ケープカナベラル宇宙軍基地にて宇宙軍総軍の航宙巡航艦ヨークの自動(オート)メンテナンス中にトラブル発生。

既にメンテは再開済みですが、当該艦の離陸時刻に訪問が被る可能性が高いとの事です」

「それは……分かりました。であれば……管制センタービルからの訪問にしましょうか。あそこであれば、地下駐車場からなので」

 

 超大国として旧世界にて中立諸国を威圧していた宇宙軍艦隊の露見は避けなければいけない事だった。

 使節団の一人にはバレかけていたが、それもただ武装がついた程度の認識でしかない。

 宇宙軍の真価はその高い対地能力にあり、大気圏外から落とされる弾頭は地上を焦土と化す。

 

「ありがとうございます。こちらもなるべく急いで終わらせますので」

 

_C.C.1635年6月12日A.M.8時_

北方連合国家北アメリカ合衆国連合フロリダ州

 

 翌日朝、ヒッカム空軍基地より再び高官専用機『C-37B』で発った一行の姿はフロリダ州上空の機内にあった。

 乗るのが2回目にもなると、流石にその速度や快適性に驚くのも少なくなっていた。

 宇宙軍艦隊の秘匿目的故に、ケネディ宇宙センター近隣のパトリック宇宙軍基地ではなくメルボルン・オーランド国際空港へと一行は降り立った。

 完全なる国交締結や通商条約の合意に至っていない為、使節団の訪問は完全非公開であり空港施設に入ることなく駐機場にてバスに乗り換えて、そのまま空港敷地を出ていく。

 

 地下駐車場から入ると言っても、当初は地上の道路にてケネディ宇宙センターを目指す。

 交通量の多さに驚きを隠せなかったが、使節団一行はこれでも首都ではないと答えられ、更に驚いた表情を浮かべる。

 近づくにつれて、目的地付近から幾つもの噴煙が立っているのを見て、ライドルカは疑問を投げかける。

 

「スクワイア殿、あの噴煙は一体……火災、というにはあまり緊迫感が無さ過ぎるのですが」

「ええ、火災ではありませんし、何らかの事故が起きたというわけでもありません。あれはこれから向かう目的地の役割故の現象です。

しかし、言葉で伝えても理解が難しいでしょうから、直接見た際に伝えようかと思います」

「は、はぁ……なるほど」

 

 その疑問に対する答えは保留となり、ライドルカらは悶々とする思いを抱えることになるが、すぐに分かる事になる。

 

同州ブレバード郡メリット島

ジョン・F・ケネディ宇宙技術センター

 

 この施設は1968年の打ち上げ以来運用が続けられているが、宇宙関連技術の発達や宇宙軍艦隊の創設を経て、その役割を変化、拡大していった。

 北方連合国家連合航空宇宙局(UNASA)傘下である現在、宇宙技術研究分野へとシフトしていき、軍・官用ロケットの打ち上げは隣にあるケープカナベラル宇宙軍基地での打ち上げ体制に移行していた。

 

 バスがセンター内地下道路から管制センタービル地下駐車場へと入った頃、自動メンテを終えた航宙巡航艦「ヨーク」が急ぎ出発準備へと取り掛かる。

 宇宙軍艦隊専用の離着陸場へと移動させられた後、船体が乗る射出台が斜め50度の角度まで上げられ、船体後部にはブースターが取り付けられる。

 エンジンが始動した後、ブースターに点火し射出されていき、多くが垂直に噴煙を上げる中で斜めに雲の筋を残して大気圏外へと加速していった。

 

 そして丁度同じ頃、スクワイアは使節団の方々を伴い、管制室へと入っていた。

 

「ここがこのセンターの管制室となります、お入りください」

「え、管制室ってことは機密だらけでは───」

 

 スクワイアから入室を促されるも、アルパナは神聖ミリシアル帝国軍飛行場の管制室と同様に機密資料だらけなのを予想して入室を戸惑う。

 

「───問題ありません。新聞記者なども入ったことがありますから、他国相手に見せられて困るような場所ではありません。ただし管制官の邪魔だけはやめてくださいね」

 

 スクワイアの言葉に頷くと、彼らはそこまで広くはない室内に入室していく。

 

「ではあの噴煙の答え合わせと行きましょうか、窓の外を見てください」

 

 スクワイアの一言で窓の外を見た彼らはその多くが驚愕に染まる。

 ただ一人だけを除いて。

 

(あの雲筋は一体……他の物体と違って、斜め方向に移動してる。まさか作業船……か?)

 

 メテオスのみが先ほど航宙巡航艦「ヨーク」が射出された際の雲筋に注目して、疑問を抱いていた。

 

(……他もわざと話題にしようとはしていない。話にはしない方がいいか)

 

 そして、窓の外の光景。

 そこには大きな円柱状の物体(ロケット)が幾つも存在しており、その物体の下部から火を吹いて噴煙を上げて高速で打ちあがる光景があった。

 さらに、同様の物体が打ちあがった角度のまま、下部ノズルとスラスターで速度を調整して戻ってくる光景もそこにはあった。

 

「なんですかこれは!!魔光呪発式空気圧縮放射エンジンの応用だとしても、垂直に打ち上げるなんてとんでもない大出力が必要になるじゃないですか!しかも……しかもですよ!垂直に安定して着陸できるなんて、とんでもない制御技術だ……誤ったら墜落不可避では無いですか……」

 

 技官であるベルーノは窓に貼り付かんばかりに近づいて、物体の動くを正確に捉えようとじっと見る。

 そうしてあまりの高性能な技術に青い顔をしながら大きく驚いていた。

 軌道エレベーターとはまた違ったインパクトが彼らに衝撃を与えていた。

 

「あくまであなた方が誘導魔光弾と呼ぶ、ミサイル技術の応用ではあります。宇宙へと物・人を送り届ける技術の一端、我々の持つ宇宙往還ロケットです」

「……往還……つまり行って戻ってくる事が出来るロケット……ですか」

 

 アルパナは衝撃を受けつつもその言葉から意味を予想する。

 

「ええ。ですが、初めから我々がその技術を持っていた訳ではありません。初めは推進ロケットを使い捨てるロケットから、それでも実験の中で多くの事故が起きてそのパイロットらが犠牲となった事も起きています。その果てに我々はここまで辿り着いています」

「なるほど……」

 

 ベルーノはその言葉の裏で犠牲が出たことで踏みとどまらず、進歩へと向かっていく彼らの行動に感嘆していた。

 

「とはいえここがゴールではありません。まだ人が乗るには至っておらず、管制室(ここ)で無人ロケットを制御して、損傷した軌道エレベーターの代わりに宇宙へと物を送り届けているのです」

 

 スクワイアの言う通り管制室にいる人員らは自分たちの喧騒に呑まれて互いの声すら聞き取りにくくなっているが、しっかりと聞き取ることができればヘッドセットを付けた一人一人がロケット一つ一つを制御しているのがわかる。

 

「LG-08便、離陸」

「LK-27便、輸送完了。着陸ルート選定します」

「LG-33便、着陸フェイズ開始。制御へと移ります」

 

「ところで、疑問に思っていたのですが……このロケットと言い、軌道エレベーターと言い、何を運んでいるのですか?」

 

 フィアームがスクワイアに尋ねた事、それは誰もが疑問に思っていたことだった。

 

「宇宙で活動する者の日用品を除くのであれば……我々が人工衛星と呼ぶ星を周回する小さな星でしょう。

宇宙から観測する事により今後の天気を予測する気象衛星、宇宙から見ることで地図を描くことが出来る測量衛星、地図と私が持つ端末を連携させることで自分の現在地を計る事が出来るGPS衛星、そして敵の情報や敵の動きを監視する、偵察・監視衛星などが用途に上げられますね」

 

 その用途を聞いただけで、彼らの脳裏にある物が浮かぶ。

 特に対魔帝対策省所属のメテオス、技術研究部門たるベルーノ等がその特徴を明確に捉えていた。

 

(───僕の星ではないかっ……)

 

 栄えある偉業としてでは無く、通常の事務作業のように事務的に我々の手が届かない未知の領域、宇宙へとロケットを打ち上げていく。

 それは我々が見学している間ですら10体打ち上げているのを確認できた。

 

 北方連合国家の技術力がどこまであるのか想像することは難しいが───

 我々神聖ミリシアル帝国が知らない概念の数々、それらを当然のように運用しているという点で、大きく凌駕するという事がはっきりと認識できた瞬間だった。

 

(本当に……とんでもない国に来てしまったな……)

 

 彼らはサプライズの数々にそう感想を抱くしか無かった。




料理の細かい描写は他の小説の影響とだけ言っておきます。
間違っている場合はそっと指摘していただけるとありがたいです
何とかこれでいいかな?と調べて書いたので…
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