前回と比べ、少し長くなったかもしれません。
2025/03/07現在 お気に入り159件、ありがとうございます!
PS.
現在、北方連合国家及び他中立国召喚後の異世界地図を作成中です。
5年前ぐらいに要望されていた地図をやっと……です。(平謝り)
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北アメリカ上空
スクワイア国務長官と神聖ミリシアル使節団一行は、フロリダ州滞在もそこそこに切り上げて、再び高官専用機『C-37B』にてメルボルン・オーランド国際空港を発つ。
この急ぎ足の行程には、通商条約の合意締結を急ぎたい連合政府の思惑もあったが、もう一つ加盟国と中立国の全国民に提供できるネットワーク・通信キャパシティを持ち合わせていない、という裏事情があった。
量子圧縮通信回線を民間向けに開放こそしたものの、それが限られたものである以上、その恩恵を享受できないものがいた。
例え数%でも膨大な人数となり国民間の対立も起きつつある中で、物珍しい光景を見ただけで襲撃するような輩が存在する可能性を考えると、
地上での長時間の移動は控えたいという心情があった。
余談だが、GPSと呼称する全地球測位衛星システムも地球よりも広大な惑星全域をカバーするには至っておらず、海上等での遭難を回避するために一部地域ではeLORAN地上電波航法システムを復活させて臨時運用しており、政府専用機にはその限られたGPSのリソースを提供する中でUNASAの打ち上げ業務はかなり急がさせられていた。
「これは……」
フロリダ州から北上する過程で、機体はやや高度を落として地上が見える高さで飛行を続けた。
彼らが見た光景の数々はその反応を一概に語ることはできないものの、凌駕する高い技術力と国力を持ちながら、国土の全てが都市化された地域ではなく、山脈や広大な森林、多くの緑を残す草原といった自然物、国民の食生活を下支えする広大な畑を保持し続けていることを意味した。
そして、ケンタッキー州、オハイオ州上空に差し掛かると、段々とビル群が目立ちはじめ、ミシガン州に入れば高層ビル群が林立する摩天楼が眼前に姿を現した。
「これ程とは……!」
「この距離からでもとてつもない高さなのが伺えますね……しかし……距離感が分からなくなってきますな……」
連合首都フィールディングU.D.。
この都市の姿を見た使節団の反応は様々だが、世界に冠たる神聖ミリシアル帝国の帝都ルーンポリスがこれに遠く及ばない事を理解した。
やがて高度をゆっくりと少しずつ落としていき、空港管制官の指示を受けて北側から進入するようにして着陸態勢へと移る。
フィールディング・ミシガン国際空港。
首都として、首都設置時に新設されてから北方連合国家各主要都市との航空路線を一手に束ねる一大航空拠点。
「あれは……あの時の!?」
そして、その隣に併設されているのは、北方連合国家北方空軍管轄のフィールディング空軍基地だった。
ゲルニカ35型を出迎えたF-15XASと同型の機体がけたたましい轟音を響かせながら離陸していくのを目にした。
自分達が乗る機体も間もなく着陸を迎えると、その空港の規模へと呆気に取られる暇も無く、再び駐機場にてバスに乗り換えて空港を後にする。
「使節団の皆様は、これより大統領官邸へと向かい、貴国が皇帝陛下と私との会談の場を設けて頂いたように、大統領との直接会談を行っていただきます」
「直接会談、ですか……」
使節団の代表であるフィアームは緊張した面持ちでその言葉を繰り返す。
「ええ。ですが、我が国の大統領は貴国の皇帝陛下とは異なり、同じ人間です。ただ選挙によって選ばれ国家権力を握っているだけの方です。そこまで気負う必要はありませんよ」
「そ、それはそうですが……」
緊張を和らげる為のスクワイアの言葉は、あまり効いていないように見えた。
それもそのはずで、事前に上司より語られた北方連合国家の国力、そしてコア魔法と同等の核兵器を同時に100発以上も発射できる能力の存在。
もし怒りを買えば、その矛先が向けられ滅亡へのカウントダウンが始まると思うと、緊張せずにはいられなかった。
話している間に大統領官邸”
空港よりバスを前後から挟む形で同行していた
ゲートの屋上には連合旗である北方連合国家の国旗を中心に加盟各国の旗がはためいていた。
ゲートを通り抜け、大統領府の各施設が入る広大な敷地内に張り巡らされた道路を走行し、やがて中心部へと辿り着く。
駐車場にてバスを降りた一行はスクワイアが先導する形で歩を進める。
「いつの間にか前と後ろを走っていた車両が見かけなくなりましたね?」
「ああ、彼らは大統領や要人を警護するための車両です。大統領であれば、建物内に入るまでは安心できませんので、警護作戦局が直接人員による警護を行います。
しかし、皆様なら要らぬ恨みを買っている者はいませんので、この敷地内に入るまでで十分ですよ」
アルパナの問いにスクワイアが答える。───が、その答えに疑問を持ったアルパナは更に質問を重ねる。
「……なぜ、安心できないのですか」
「……今のアルフォード大統領ではないのですが───、第2代大統領エルンド・スクワイア───私の父親ですが、敷地内に入った後に狙撃を受けて命を落としています」
「えっ───!?」
その言葉に使節団の誰もが目を見開いてスクワイアを驚いた表情で見る。
その驚きを予期していたスクワイアはそのまま言葉を続ける。
「……銃社会のこの国ではあり得ることですよ。この国がアメリカ合衆国という国であった時も、大統領が凶弾に斃れて命を落としています。
───ああ、私への危害については心配しなくて大丈夫ですよ、父の補佐官だった男の犯行ですし、個人間の約束を破ったというのが犯行動機なので」
「……それを話しても良かったのですか?」
「波乱の初代大統領から誰もやりたがらず継承順位で選ばれたのが老齢だった父ですし、私もそこそこの大人だった時期。
当時こそ悲しみましたが、だいぶ前の話ですので今は何とも思いません」
スクワイアの話に納得したのかは分からないが、一行は沈黙したまま歩を進める。
そのまま目的の場所に辿り着き、スクワイアは再び口を開く。
「先ほどは憂鬱な話をして申し訳ありません。ここが大統領官邸
「……
その言葉と共に目に映った光景に、一行は目を見開いて驚きの余り立ち止まる。
そこには豪華絢爛な建築物でもない、一見すると普通の高層ビルがあった。
しかし、その建物の外装は中の様子を映さずまるで
(ガラスは光の反射で映すことはあると聞くがこれは……)
(これほど綺麗に輪郭もはっきりと私たちを映し出すのか……綺麗だな)
豪華さとは違った、全周ガラス張りの機能美がフィアームらを魅了した。
「では、入りましょうか。大統領がお待ちですので」
スクワイアがそう言うと、右手首にある時計ではない
「スクワイア殿、それは?」
「これは簡単に言えば鍵ですね、セキュリティシステムに私の指紋と網膜情報を登録していて、その情報が入ったこの認証バンドを近づけることで解錠される仕組みになっています。
保険の為に言っておくと、このバンドが私の手首から離れれば全ての機能がロックされるため、他人は使う事が出来ない仕様となっています」
科学の分野に疎いフィアーム、アルパナ、ライドルカといった面々は凄いシステムとしか理解できなかったが、ベルーノとメテオスは目を剥かんばかりに見開いて驚きを露わにした。
「な、な、なんて凄い技術なんだ!体の情報を読み取って自分と他人の違いを区別できるなんて!!」
「……ふむ……これは、魔帝のある遺物でそんな機能を聞いたことがある……その時の我々は理解できなかったが、これの事か……」
バンドの認証が完了し、ドアは自動で開き入室を促す。
それに従い、一行は官邸内へと足を踏み入れる。
「はるばる遠くから来訪頂き、感謝します。フィアーム外交官」
それを出迎えたのは、官邸の主でもあるアルフォード大統領だった。
「
「!、これは……大統領閣下。お出迎え感謝します」
アルフォードから握手を求められ、フィアームは緊張の余り精彩さに欠けるも、しっかりと握手に応える。
「既にご紹介にあったと思いますが、この『ミラーカテドラル』は大統領官邸として私が政治を行う場でもあり、生活の場でもあります。
当然、来賓室も設けておりますので、そこで
しかし、生活の場と言いましたが、数日前まで私はこの場にはいなかったのですよ」
「……?それはなぜでしょうか?」
アルフォードの期待した通り、アルパナが問いを向けてくる。
「転移前、我が国が三大陸合州国との戦争状態にあった事は既に聞き及んでいるかと思いますが、この建物は避難できる機能は備わっていません。
無論、最近の戦争では戦争指導者を狙う事はかなりハイリスクな手段ではあるのですが、戦争において『絶対』も『完璧』も無い事はご存じでしょう。
そのような
無論、地下であろうと事故が起きる可能性が絶対に無いとは言い切れませんが、その安全性を少しでも上げることはできます」
「なるほど……」
ライドルカは納得したように頷き、アルパナは今後の帝国における戦争時にてそうした施設の必要性を考え唸るなどの反応を見せる。
そうして彼らは来賓室に入り、会談は始まった。
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大統領官邸”
「───我が国を列強に?」
フィアームの口から語られた内容に、アルフォードは困惑を示す。
地球においては世界規模で影響力のある国々を指すものの明確な定義付けはされておらず、その後二大超大国の出現によって事実上意味無いものとされていた。
「ええ。政府内でまだ検討中の内容ですが───、
まず、この世界においては第一文明圏、第二文明圏、第三文明圏、そしてそれ以外の文明圏外という地域分けがされています。
この3つの文明圏において国力が大きく、絶大な影響力を持つ国が列強に数えられているのです。
国力に関して言えば、貴国は当然として同じく転移してきた国々も列強に指名できるのですが、異世界国家群代表としてひとまず貴国を列強入りさせると考えています」
「ええ、それが妥当かと思います」
「そして、列強となった国には2年に1度開催される『先進11か国会議』へ常時参加する
形式的には
アルフォードはわずかに思案するが、再び口を開く。
「参加、以外の選択肢はありませんね。これは予想に過ぎませんが、貴国が先進11か国会議のホスト国ということは、恐らく貴国含む文明圏が第一文明圏と判断するとして、我が国……いえその中心である北アメリカ合衆国連合含めた南北アメリカ大陸だけでも一文明圏の広さに匹敵します。初回はまず我々の存在を世界に知らしめることとしましょう」
「……その予想は当たっています。
現在5か国ある列強の内、我が国はその序列1位を頂く国であり、序列第3位のエモール王国と共に第1文明圏に属しています。
第一文明圏、いわゆる我が国がある大陸ですが、かつてはミリシエント大陸と呼ばれていましたが、今は「中央世界」としての名称で呼ばれています。
貴国が現れた時点で、中央と呼べるかは疑問ですが」
フィアームは乾いた笑いを浮かべて、自国を皮肉る。
そんな彼女にアルフォードは見かねて言葉を告げる。
「お言葉ですが、世界の中心とは国力によって決まるものではありませんよ。
確かに、我々の世界でかつてイギリス帝国と呼ばれていた国から我が国へ経済力のトップが移り変わった時、世界市場の中心も我が国へと移りました。
その理由としては、彼らが大きな戦争の直接遂行国であり我が国がその支援を行う国であったからこそ、我が国は金を借りる側から、金を貸す側へと転じていました。
ですが、かの国はその後も金融政策において名前が上がることに事欠かない国であり、一時世界覇権を握った伝統的な力は今も保持され続けております。
貴国がどのくらいの期間、世界のトップを走っているのかは知り得ませんが、その伝統ある力まで壊してしまっては問題でしょう。
まして、我が国はこの世界の経済機構をあまり知らない、最初から出しゃばるのは礼儀が無いと言えるでしょう。
それに……ここには我が国が知らない、不思議な技術があるようで」
フィアームは彼の気遣いに感謝すると共に、彼の語った言葉の数々を自国へと当て嵌めようとしてみる。
すると、不思議な技術という言葉には、魔法、魔力といった言葉が当てはまるように思えた。
「やはり、魔力や魔法を持たない、というのは本当のようですね?」
「───ええ。私どもがいた世界、『地球』は科学のみで作り上げた文明です。
おとぎ話や神話でそれが語られる事はありますが、あくまで大昔の人間が考えたものであり、大昔の人間が作り上げた遺跡の数々も昔の人間であれば魔法としか思えないでしょうが、今の我々の見識なら分析できます。
『十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない』とまでは言いませんが、我が国はそれに手が触れられる域にまでは到達してしまっています。
とはいえ、本当の魔法とは比べ物になりませんが」
「……なるほど」
フィアームの半ば信じられない表情ではあるものの、納得する。
彼女の説明が一区切りつき、アルフォードは口を開く。
「私からはまず、貴国の魔法関連技術への技術投資、及び貴国が求める貿易品目について、後者は入手が困難なものでなければ、両者ともその準備は出来ています。
───という旨を宣言させて頂きます」
「!?」
アルフォードの宣言から数秒経たずして、使節団一行が一様にして驚きの表情を浮かべた。
その表情からは、準備が早すぎるという思いが捉えられた。
「勝たねばならないでしょう、古の魔法帝国に。世界最強の座を手に入れ、その座に胡坐をついて奢っていましたか?
しかし、仮にそうだとして、新参者の我が国が貴国に説教は致しません。
人間とは時折進歩を怠るもの、故に地球では長年同じ国が世界トップの座にいることは無く、列強の座から下剋上のように蹴り落され、そのまま滅亡の道を歩むこととなった国も存在しました」
「怠っていたわけではない。しかし……世界最強というプライドで他国を見る目が濁っているのは事実。『我々には叶わない』とばかりに蔑視の目を向ける者でさえ、私の属する対魔帝対策省にいる」
自身を顧みたメテオスが申し訳なさそうな表情をしながら語った現状。
しかし、アルフォードはそれを指摘せず、同じ言葉を二度も語った。
「国の違う人間が他国の人間を説教などしては、それは上位関係が出来たも同然でしょう。
ですから、我が国が貴国を説教することは一切ありません。……故に自身の行為は自身で顧みることをおすすめします」
「話が脱線してしまいましたが、技術投資、貿易品目については準備が出来ております。
しかし、その詳細については外交での話し合いに留まらず、実務者同士での話し合いとなるでしょう」
「……ありがとうございます。ここには各分野の専門家もおりますから、彼らを通じて様々な分野へと話が通るでしょう」
通商条約の大枠合意がなされ、アルフォードとフィアームは互いに席を立って握手を交わす。
それが終わると、フィアームは席を離れようとするが、アルフォードはそのまま着席を促す。
「最後に、貴国には今まで我が国の技術、軍事力、文化の一端をお見せしてきました。
では、残るとすれば何かと問われれば、私は歴史と答えます。
ということで、貴国には我が国、そして私共がいた地球という世界の歴史をお見せします。
映像をご覧ください」