13日戦争で滅びるはずだった両雄(新)   作:空社長

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読者の皆様が知る、地球の歴史を垂れ流すだけの話、果たして必要か……?


PS.ちなみに第二次世界大戦から史実と歴史が変わってきます。
国家説明にてお察しの方もいると思いますが……


2025/03/17/23:00現在 お気に入り171件、ありがとうございます!
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Episode.9【重なる驚き】

_C.C.(中央暦)1635年6月12日P.M.2時30分_

大統領官邸”鏡壁聖堂(ミラーカテドラル)” 来賓室

 

【初めに我が国は、最初から国として成り立っていたわけではありません】

 

 巨大なモニターに映る映像。

 そこに文字は入っておらず、大統領が身に着けているヘッドホンを通じて音声ナレーションが流されていた。

 フィアームらも当然それを身に着けており、席へと座りながらモニターを食い入るように見ていた。

 

【元居た世界で使われていた共通暦が始まって2000年余り。それ自体、人類の始祖文明から数えた年数ではありませんが、それと比べても我が国の歴史は短い】

 

 真っ黒だったモニターに、北方連合国家がいた頃のメルカトル図法の世界地図が現れる。

 

【263年前、西暦1776年。

 18世紀とも呼ぶ時代、当時はイギリス帝国が世界各地に植民地を広げていた第一次植民地帝国時代。

 北方連合国家の母体であるアメリカ合衆国は存在せず、彼らの北アメリカ大陸植民地に過ぎませんでした】

 

 18世紀イギリス帝国の領土が赤く塗られ、北アメリカ大陸にあった13植民地に焦点が当てられる。

 

【20年ほど前にあった『七年戦争』という戦いの末、イギリス帝国は強大な世界覇権と引き換えに財政難へと陥り、北アメリカ東海岸植民地13州への課税を強化。

 これが13植民地の不満へと繋がり、それがアメリカ合衆国が成立するきっかけとなるアメリカ独立革命の始まりでした】

 

 ナレーションと共に流されるのは図解図と、そして独立革命を題材に忠実に再現されて描かれた映像作品だった。

 当時の技術を忠実に再現したその映画を見ながら、アルパナとライドルカが映像に映る軍備について考察する。

 

「彼らの約250年前。見る限りではマスケット銃や騎馬を使った戦闘方式のようですが、アルパナ殿はどう思いますか?」

「……ワイバーンがいない事を除けば、今の列強レイフォルぐらいだろう。しかし……その年だけであそこまでの技術発展、なぜできる……?」

 

 列強第5位のレイフォル帝国と同等だと評するアルパナだったが、それが誘導魔光弾もどきや、天の浮舟クラスを持つ至る技術革新に驚きを隠せない。

 

【戦争開始の翌年、1776年。

 イギリス帝国の北アメリカ植民地13州はアメリカ合衆国としての独立を宣言。

 当初イギリス軍の圧倒的な軍事力に苦戦を重ねますが、民衆が次々に武器を取って大陸軍へと参加してその兵力は増え、他国の支援もあって徐々にその戦況を挽回。

 1783年にイギリス帝国から独立を勝ち取ることで、その戦争の幕は閉じました。

 当時としては稀有な「自由」と「民主主義」を掲げた新国家として出発しました】

 

 映像には畑で作物を栽培しているような農家が、商品を売って生計を立てている商人が、それぞれ武器を取って軍隊に参加する様子が映し出されていた。

 軍人程の練度も無い彼らが「自由」を求めて帝国との戦争に自分達の意志で参加する、そんな様子が映画には描かれていた。

 

「……正規の軍人ではない民衆が、正規軍を持つ相手に、戦争で勝つなんて!?」

 

 音声ナレーションが補助してくれるものの、その大きい情報量に混乱しかけながらも、フィアームはそう評した。

 

「ふむ……、この世界にはワイバーンもリンドヴルムもいないなら、銃と馬だけならそこまで金はかからないはず。

銃もそこそこ知識があれば組み立てることは容易であり、馬も牧場から借りれば可能なはずだよ。

戦列艦だけは流石にイギリスの方が圧倒的だが、兵の装備だけ見ればイギリス軍とは同等に渡り合える力を持てたようだね」

 

【1800年代初頭より、合衆国は西へと拡大していきます。

 その途上で欧州諸国の新大陸への干渉を拒むモンロー主義を掲げ、約40年で太平洋側の西海岸まで到達し、経済を拡大した一方で南北の経済格差が深刻化し北部は工業化を進め、南部は奴隷制依存の綿花経済に固執しました。

 1861年には奴隷制を巡る対立が南北戦争を招き、北部の合衆国は1863年の奴隷解放宣言で道義的優位を確保し、1865年には人口、工業力で上回る北部の勝利で戦争は終結しましたが、両軍・民間人合わせて90万人の死者をもたらしました】

 

「工業化が進展したことで北部は奴隷を必要としなくなり、遅れている南部は奴隷に固執し、その果てに内戦となってしまったのか」

「我が国には産業奴隷はいませんが……考えが上手く和解せず内戦が起きてしまうのは、避けていきたいですね」

 

 100万近い犠牲者を出した凄惨な内戦。

 神聖ミリシアル帝国では反乱こそあれど、国が分裂して起きるような内戦は起きた事が無く、その恐怖を身に染みて感じた。

 

【戦後、合衆国の工業化が加速し、欧州の軛なき自立した経済を持つようになり、1870年代には世界有数の工業国に成長し、

 他の欧州列強と同様に海外進出を行っていき、西太平洋に当たる地域にまで影響力を広げ、欧州の紛争と距離を置きつつも、経済力が急伸した合衆国は大国としての基盤を築きました】

 

 その音声ナレーションが語られた後、映像の雰囲気が変わり、そしてある”音楽”が流れ始めた。

 まるで魂そのものを震わせるような、憂鬱を表す分厚い雲の中にいて、最後は雲間から陽の光がゆっくりと照らしてくる、そのような音楽。

 

【独立宣言から138年後。

 1914年、暗殺という一つの悲劇からオーストリア=ハンガリー帝国はセルビアに対し、宣戦布告。

 その結果、過去構築されてきたヨーロッパの同盟網が発動し、欧州大陸とその植民地を舞台に、列強を含む当時の有力国のほとんどが中央同盟国と連合国の二つに分かれて参戦。

 人類史上初めてとなる世界大戦が勃発しました】

 

 欧州列強とその植民地も含めた、大戦の交戦国が陣営別で色分けして表記されたメルカトル図法の世界地図が表示される。

 その背景では海上を征く戦艦と思われる艦艇の回転砲塔が旋回するカラー化した映像が流れ、画面上で主砲が吹くと共に重厚な砲撃音が響き渡る。

 

「我々で言う列強国が互いに争うようなものか……戦争は文明圏内に留まっていた、国力に差がある以上はあるわけ───」

「───無いとは言えないだろうね。これは一部の者にしか知られていないけど、魔帝遺跡の解析は頭打ちとなっているのだよ。

対して、科学文明のムーは目の前の文明に進歩するポテンシャルがある以上、先進11か国会議での調和も維持されなくなってくるだろうね」

「……確かに」

 

 列強同士の戦争経験は神聖ミリシアル帝国には無い。

 強いて言えば、融和政策に切り替える前の帝国が隣国トルキア王国及び列強序列第三位のエモール王国と交戦した経験はあるものの、

 当時の軍事力は今ほど然程高くなかった。

 現状の国力で戦争となれば、泥沼となるのは容易く想像できた。

 

【第一次世界大戦にて、騎兵が颯爽と戦場を駆けるような時代は終わり、歩兵主体の射程の長い連発銃で撃ち合う戦場へと変わりました。

 それは、中央同盟国のドイツによる連合国のフランスへの侵攻に失敗したのを契機に、塹壕戦が積極活用され、両国が戦った西部戦線にて顕著に現れました。

塹壕とは、砲撃から身を護るために地面に溝を掘った陣地の事を指しますが、この大戦で両国は約700kmに及ぶ塹壕線を構築し、3年もの間前線が大きく動くことはありませんでした】

 

「700km!?そんな長さになるまで築いたのか!?」

「恐らくは、騎兵で背後を取る、または囲まれないようにするために、お互いに競いあったのではないかね」

「確かに、騎兵と比べては守りに徹した歩兵程、動きようがありませんからね」

 

【塹壕戦では、前線を1m前進させるために数百人が犠牲になる戦闘が起き、一度の会戦で10万人以上の犠牲を出した戦いもありました。

さらに、この大戦ではあらゆる軍事技術が進歩を見せており、より敵軍に危害を与えるために、大砲、化学兵器、機関銃、航空機が発達していきました。

そして、特筆するべきなのは戦車の誕生です。

塹壕の突破を目的としたそれは歩兵にとって脅威となり、各国は戦車開発に邁進していきました】

 

 映像にて塹壕戦で戦う兵士の数々、砲撃を行う大砲の姿、化学兵器に体を侵された兵士の写真、戦車が戦場を重々しく進む姿が写真となって彼らの目に映る。

 

「10万人……小都市に匹敵する人数が一度に……」

「戦争技術は実戦によって進歩に繋がるのは本当のようですね、……しかし───」

「これが戦車ですか……確かにこれを戦場で目にしたら逃げたくなるのも分かりますね」

 

 戦場の凄惨さを目にして、進歩した技術が夥しい犠牲を生む事を理解して、彼らの口数は少なくなる。

 

【1917年、中立国として連合国を支援していたアメリカ合衆国は、ドイツの無制限潜水艦作戦により第一次世界大戦へと参戦。

 一方で東部戦線を担当していたロシア帝国は、国力を過度に超えた戦争の結果、戦争の重圧から革命運動で帝政が倒れる事態にまで発展。

 後の『ソヴィエト連邦』の母体となる組織が権力を奪い、中央同盟国との戦争から離脱しました】

 

【1918年には中央同盟国は敗退し、連合国へと降伏。

4年もの歳月がかかった大戦が国力の総てを投じる総力戦となり、兵士・民間人含めた1600万人以上が死亡。

翌年のパリ講和会議によりドイツには戦争責任を理由に巨額の戦争賠償が強いられる等、戦勝国が優先された講和条約に多くの人々が不満を抱く結果となりました】

 

「せ、1600万人……!?」

「人が聡明足りえない何よりの証拠か……」

 

 異世界諸国が経験したことの無い、膨大な犠牲者数を生む戦争の存在。

 あったとすれば、神話の時代にあった古の魔法帝国とインフィドラグーンとの絶滅戦争に他ならないだろう。

 

【第一次世界大戦による災厄を目の当たりにしたことで、1920年に初の国際平和機構である国際連盟の設立など、平和協調への努力が行われてきました。

 しかし、国際連盟提唱国であるアメリカの不参加と諸大国の脱退により国際連盟は機能せず、講和会議から20年後に再び世界大戦が引き起こされる事となりました】

 

「その行為を反省し、国際平和機構を作る事は流石と評価しなければなりませんが───」

「再び起きる、というのが気になる所ですね」

 

 そこで映像は終わり、アルフォードが声をかけてくる。

 

「一度休憩を挟みたいと思います。次の映像は午後からでお願いします」

「!?、待ってくれ。確か……あと119年後だろう。我々が見た今までの歴史と比べれば、半分にも満たないはずだが」

 

 歴史を知らない彼らからしてみれば、当然の反応であった。

 しかし、アルフォードは少し思案した後、適切な返答を返す。

 

「第一次世界大戦は、次なる大戦である第二次世界大戦の秩序を作り出す大戦でもありました。

そして、第二次世界大戦は……なぜ北方連合国家という連合国家が形成される事となったのか、なぜ超大国同士が戦争を行う羽目となったのか、その根源でもあるからです。

そして、描かれるエピソードも濃密と言えるでしょう。そこまでの情報量を休憩なしで抱えきれる自身があるのでしたら、構いませんが───」

 

 アルフォードはフィアームへと目配りをする。

 

「わ、分かりました。では、休憩へと行きましょう」




こっそりと召喚後の異世界地図、出しておきますね……
一部の国が映っておりませんが、それは後程ということで。


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