13日戦争で滅びるはずだった両雄(新)   作:空社長

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【追記】
11/13 19:30現在 お気に入り100に到達しました。ありがとうございます!!


Episode.3【世界最強の動揺】

_C.C.(中央暦)1635年6月7日A.M.6時_

神聖ミリシアル帝国帝都ルーンポリス

 

 『不明艦隊接近』という事態に神聖ミリシアル帝国政府は皇帝に判断を仰ぐ為、緊急帝前会議を開催する。

 開催場所に選ばれたアルビオン城の会議室では慌ただしさと共に異様な緊張感に包まれていた。

 ブリンストンが会議参加者が揃っているか見渡して確認を終えると、ミリシアル8世の方を向く。

 ミリシアル8世が頷くと、ブリンストンは早速口を開く。

 

「パイロットに詳細を説明してもらいましたが、やはり先日の正体不明機と同じ国の可能性が高いと思われます。

哨戒機が近づくと、空母と思わしき艦より機体が発艦してきました。同型機では無いようですが、エルペシオ3を上回る速度を持つ点が共通していました。幸いこの時は発砲すること無く、こちらの哨戒機と間隔を空け様子を見ていたようです」

 

 ブリンストンの話が終わると、場は沈黙に包まれる。

 

「空母にさえ、エルペシオを超える天の浮舟を搭載しているというのか……!」

 

 ある官僚は世界最強を信じていたプライドを傷つけられ、悔しさを露わにする。

 

「奴らは一体何だ!?奴らはなぜ艦隊を差し向けるのだ!交渉であれば、もっと少ない戦力だろう?」

 

 セイロス・フェラン東部担当外交部長が怒りを滲ませて激昂する。

 プライド高い彼からしてみれば、島へ向かった天の浮舟が追い回された挙句、命中はしていないが撃たれたという事実は、彼の不信感を生むには十分だった。

 

「詳細は不明ですが……やはり、島へ哨戒機を向かわせたのが要因と思われます。恐らく、我々は彼らの領域内に勝手に踏み込んでしまった……だから、追い返そうとして警告射撃を行ったと考えられます。真相は彼らに聞かねば分かりませんが」

「その対抗策とでも?なんと常識外れだ!」

 

 一部の世界最強を信じて疑わない閣僚からフェランの声に賛同の声が広がる。

 しかし、シュミールパオ・ラック軍務大臣が異論を唱える。

 

「我が国も先進11カ国会議や他国に艦隊をもって威圧しているでしょう?」

「それとは関係ないだろう!初めて接触するのであれば、向こうが礼を弁えるべきだ」

「少なくとも、相手の領域に踏み込んだのは我が国です。相手に非があろうとも、そこだけは認めて頂きたい」

 

 ラックの鋭い視線にフェランは思わず萎縮する。

 

「して、どう対応するのだ?アグラよ」

「相手に侵攻の意図が無ければ、常識に考えて臨検を行います。しかし、あの規模の艦隊には地方隊では荷が重いでしょう。ですので、カン・ブリッドに寄港中の第1魔導艦隊に対応してもらいましょう」

「カウランか……あの者なら色眼鏡を付けずに判断できるか……しかし、些か発砲行為が気になるものだな」

「陛下……現在向かってきている艦隊は、大型空母1隻、戦艦2隻、巡洋艦2隻、小型艦6隻の構成です、我が国で考えれば戦隊規模に相当する戦力です。エルペシオ3が翻弄されるほどのとてつもなく速い天の浮舟があるのです、他の技術もかなり高いと予測されます。もし対応を間違えば、痛手を被る可能性があります」

 

 ブリンストンの言葉に、ミリシアル8世は不安げに唸る。

 だが、頭の中で考えを巡らせたミリシアル8世は即座に決断した。

 

「アグラよ、助言に感謝する」

「はっ、ありがとうございます」

「第1魔導艦隊に臨検を命じよ、これは絶対だ。勝手な行動は控えよ」

「そう伝えておきます」

 

神聖ミリシアル帝国東部

カン・ブリッド軍港司令部

 

「噂のとてつもなく速い天の浮舟を持つ国か……これは気が重いな」

 

 そう不満げに話すのは、第1魔導艦隊司令、レッタル・カウラン海軍中将である。

 

「ええ。しかし、被害は出ていないとはいえ発砲するとは……なんとも野蛮げな国家ですね」

「そこはまだ分からないだろう。何より、我々は彼らのことを全く知らないからな」

「……そうですな」

 

 カウランはかの国を悪く言う参謀を諌める。

 

「ひとまず出港準備だ。彼らの艦隊が着くまで一日以上ある、焦らなくていい」

 

_C.C.1635年6月7日P.M.1時_

北方連合国家海軍第17空母打撃群

旗艦「ジェシー・V・スペンス」

 

「インド太平洋軍司令部から伝達です。約20隻ほどの艦隊が港を離れこちらへと向かっているのをSR-72が捉えたとの事です」

 

 ハワイ諸島より西に約1500kmの海域。

 戦略偵察機が敵の動向を監視しているのには訳があり、現在北方連合国家はGPS衛星及び通信衛星の打ち上げを優先しており、偵察衛星に関しては一基も打ち上げられていなかった。

 

「力には力か……まあ当然だな」

 

 司令官室にいたフォスターはその報告を受けて独り言のように呟くと、すぐに命令を発した。

 

「陣形を再編成、戦艦2隻を本艦の前に移動し、駆逐艦及び巡航艦は本艦側方及び後方に移動させろ」

「了解しました。少将はどうされますか?」

「指揮所に移動する。相手も動きだしたということは、洋上で臨検かもな」

 

 ファスターは乱れていた制服を整え、司令官室から出て、空母戦闘指揮所(CDC)に移動を始めた。

 

_C.C.1635年6月7日P.M.3時_

神聖ミリシアル帝国第1魔導艦隊

旗艦ミスリル級魔導戦艦「カレドヴルフ」

 

「は?魔力探知レーダーに反応が無い?」

「はい。もうすぐ探知できるはずなのですが全く……」

 

 その時、カレドヴルフ艦内では1種の異常事態が起こっていた。

 彼らが使う魔力探知レーダーに映るはずの影が全く映っていなかった。

 当然、カウランは故障を疑った。

 

「故障では無いのか?」

「そんなことありません!点検したばっかりです!……何より友軍艦艇の反応は全て映っているのです。おかしいと思いませんか?」

 

 カウランは驚きを隠せなかった。

 全ての物がこのレーダーに映ると常識として思っていたために、そのショックは大きかった。

 

 そして、目視圏内に入っても魔力探知レーダーには何も映ってはいなかった。

 魔力探知レーダーはその名の通り、魔力を有する物を探知する物であり、近距離なら人が有する魔力反応さえ探知することができていた。

 しかし、この機に及んで探知できていない事が意味するのは一つだけだった。

 

「まさか……彼らは魔力を有していない……?一体、何なんだ?」

 

 自分達の常識を超えた存在、これから臨検を行う国家にカウランは恐怖に似た感情を持った。

 やがて第1魔導艦隊と第17空母打撃群は互いがはっきりと見える距離まで近づき、半ば呆然としているカウランに参謀が話しかける。

 

「司令、呼びかけを行ってはいかがですか?」

「……そうだな、拡声魔法機をくれ」

 

《前方にいる艦隊に告げる。我々は神聖ミリシアル帝国海軍第1魔導艦隊だ、臨検を行うため、直ちに停船せよ。また、所属も明らかにせよ。繰りかえす、直ちに停船し、所属を明らかにせよ。応じない場合は、攻撃も辞さない》

 

「司令……脅してよろしいのでしょうか?」

「ここで攻撃するような輩であれば、呼びかけを行う前から攻撃しているはずだ。それに、我々は列強だ。引き下がっていては話にならん」

 

 そう言い切るカウランだったが、内心憔悴しており、冷や汗が止まっていなかった。

 

(頼む、従ってくれ)

 

 カウランが内心祈っている最中、第17空母打撃群は減速を行っていきつつ、拡声器によって返答がされた。

 

《……こちら北方連合国家(ノーザン・コンドミニアム)海軍第17空母打撃群。貴艦隊の臨検を受け入れる》

 

北方連合国家(ノーザン・コンドミニアム)……?聞いたことがない国名だ……一体なんだ?」

「それを明らかにするために、臨検を行うのでしょう?」

「……そうだな」

 

 その後、「カレドヴルフ」は「ジェシー・V・スペンス」に接舷し、カウラン中将自ら臨検に赴いた。

 

「これは……凄いな」

「第17空母打撃群旗艦、ジェシー・V・スペンスへようこそ」

 

 広大な甲板上へと着いたカウランらは多くの戦闘機が並ぶ光景に感嘆する。

 その横で案内役を任された士官に会議室へと案内され、カウランらはスクワイアらの出迎えを受ける。

 

「ようこそお越しくださいました。私、この使節団の全権代表をつとめております北方連合国家連合政府閣僚の国務長官のスクワイアと申します」

「……神聖ミリシアル帝国第1魔導艦隊のカウランです。失礼ながら、訪問の目的をお尋ねしたい」

 

 カウランの言葉にスクワイア以外の外交官が思わず固まってしまう。

 スクワイアも()()()()()()()()()()()()()ことに内心驚きつつも、答える。

 

「目的は国交締結です。しかし、信じてもらえないかもしれませんが、我が国は別世界から転移してきたのです。途方に暮れている中で、偶然あなた方の存在を知り、ここに赴いた次第です」

 

 スクワイアの「転移」という言葉に、カウランらは驚きを隠せなかった。

 だが、カウランにはそれ以上に気になる部分が一つだけあった。

 

「偶然……もしやあの正体不明機は貴国のですか?」

「ええ。あなた方の機体が我が国の防空識別圏に進入したために、追い払うしかなかったのです」

「なるほど……」

 

 カウランは防空識別圏という言葉自体知らなかったが、その字の意味を考えて納得する。

 だが、カウランに付き添う参謀は不満げだった。

 

「しかし、報告によれば撃ってきたではないか!」

「あれは呼びかけを行う手段が無かった為の仕方ない行為でした。あなた方も通信ができない機体が領空侵犯してきた場合は警告射撃ぐらいは行うでしょう?」

 

 スクワイアの返答に参謀は言葉に詰まり唸るしかなかった。

 

「そういう事情がありましたか……これは失礼しました」

「いえ、突然転移してきた知らない島に偵察を向かわせるのは当然かと思います。発砲はやりすぎであると、我が国の大統領も認識しております」

「そうですか、それでは本国に通信を行いますので、少しお待ちください」

 

 そう言い残し、カウランは下船する。

 互いの立場の違いはあれど、神聖ミリシアル帝国と北方連合国家の初の会談は終わり、カウランにとっては警戒心は残っているものの礼を弁えて話せる者達ということで、比較的好印象に映った。

 

神聖ミリシアル帝国 アルビオン城

 

「陛下のご推察は正解でした。彼らが自ら転移国家だと明言しました」

 

 開口一番にブリンストンが告げる。

 その発言に、会議室内が大きくどよめいた。

 

「ムーも確か……」

「しかし、あれはおとぎ話ではないのか!」

「実は本当らしい。だが、本当に二か国目の転移国家が現れるとは」

 

 会議室の面々は口々に相談し合ったり、驚いたりする等、その反応は様々だった。

 そうしてざわめきが大きくなる前に、宰相が「静まれよ、陛下の御前であるぞ」と発したことで、急に静かとなった。

 

「彼らは北方連合国家(ノーザン・コンドミニアム)と国名を明かし、国交締結を望んでいるそうです。また、先日の正体不明機の件は、”呼びかける手段が無かった為に、やむえず警告射撃を行った”と理由を明かしております」

「ほう……なるほどな」

 

 ミリシアル帝国は納得した反応を見せる。

 ブリンストンが告げた内容はどれも正当性があり、この時点でミリシアル8世の警戒度は数段階下がっていた。

 それと共に、新たな疑問が浮かび上がったのも事実であった。

 

「それと、これはカウラン中将の推測に過ぎないのですが、彼らは魔力を持たない可能性があります。一つは魔法通信を行わなかったこと、もう一つはミスリル級の魔力探知レーダーに艦はおろか人の影すら映らなかった事から、答えを導きました」

 

 この答えには流石のミリシアル8世も驚くしかなかった。

 それと共に魔力を持たずして成長した高度な文明に興味が湧いていた。

 

「陛下、いかが致しますか?」

 

 ぺクラスがミリシアル8世に対応を尋ねる。

 外務大臣の職にある彼は重責が課されることが容易に想像できたため、いち早く行動を起こしていた。

 

「うむ。ぺクラスよ、国交締結交渉の準備をせよ。カン・ブリッドにて受け入れ、ここルーンポリスで行うのだ。そしてフリーマンよ、情報局による情報収集も実行せよ」

「「ははっ」」

 

 ぺクラス外務大臣と、アルネウス・フリーマン帝国情報局長に指示を出して会議は終わりを告げる。

 

 2日後、第17空母打撃群がカン・ブリッド沖合に姿を現す。

 「ジェシー・V・スペンス」では大きすぎて軍港に入りきらないために、使節団は艦載ヘリを使ってクインシー級巡航艦「ヒューストン」へと乗り換えて入港を果たす。

 

 その時、カン・ブリッド軍港管理局の魔力探知レーダーが6隻の海賊船を捉える。

 既に主力たる第1魔導艦隊が入港された隙を突かれており、数少ない地方隊が迎撃するしかない有様だった。

 海賊船は地方隊の巡洋艦よりも脆弱な魔導砲艦ではあるが、強制接舷されて乗りこまれた場合が危険視されており、上陸された場合はもっと凶悪だった。

 

「くっそ、こんな時に」

 

 地方隊の艦長が愚痴を吐く中、「ヒューストン」の拡声器が向けられる。

 

《こちら、北方連合国家(ノーザン・コンドミニアム)海軍。6隻の船舶が近づいているが、対応してもよいだろうか》

「ああ、構わん!!」

 

 艦長は肺から吐き出せるだけの大声を出して伝える。

 

《了解した、旗艦に伝える》

 

「まさか、港前で戦闘するとはな。エリオット、カーティス・ウィルバーに伝達、攻撃を開始せよ」

 

 フォスター少将の命令は即座にシャイロー級2隻に伝達され、2隻は転回して戦闘行動を開始する。

 両艦は三つのVLSを開口させると、おびただしい量の白煙と共に筒を吐き出した。

 計六発の対艦ミサイルは、意思があるかのように海賊船各艦に目標を定め、あっという間に距離を詰めていく。

 それに対し海賊側が行ったのは回避ではなく、困惑であった。

 大きな爆発が6個同時に起き、煙が晴れた時には海賊船は海の藻屑と化していた。

 

「バカな……!あれはまさしく、誘導魔光弾そのものではないか!!」

 

 ライドルカ・オリフェント情報局員が驚愕の余り大声を出す。 

 普段は第三文明圏担当ではあるが、たまたま帰国していてカン・ブリッドに派遣された彼はそのミサイル攻撃の光景に遭遇していた。

 そして、驚いていたのは魔力探知レーダーから海賊船6隻の反応が消失したことを確認したカン・ブリッド軍港管理局の職員らも同じであり、職務を何とか遂行しようとするも、誘導魔光弾そっくりの攻撃に半ば呆然とする職員が多かった。

 彼らの脳裏にある誘導魔光弾、それは神聖ミリシアル帝国が未だ保有できておらず、この世界をかつて恐怖で支配していた(いにしえ)の魔法帝国が保有していたものであった。




■次回予告

Episode.4【会談】

旧世界においての覇権国家と現世界の覇権国家は国交を締結する。
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