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「日本国召喚×アサルトリリィ -League of World in Cultalpas-」
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神聖ミリシアル帝国帝都ルーンポリス
アルビオン城
夕闇に輝く『眠らない魔都』ルーンポリス。
その中心部に聳え立つアルビオン城では報告会議が行われていた。
その報告会議の内容、先の海賊襲撃での件だった。
「間違いないのか?」
「はい。彼らの艦艇は誘導魔光弾と思われる物を発射し、海賊船舶6隻に反撃の暇を与えること無く、完封しています」
皇帝ミリシアル8世の問いに、情報局長のアルネウスが答える。
「やはり……魔帝だ……!誘導魔光弾を装備し、凄まじい速さの天の浮舟。そして、転移してきた……魔帝ならば追い出すべきと考えます!」
「そうだ!我らを上回るはずがない!上回るのは全て魔帝だ!」
フェラン東部担当外交部長を筆頭としたミリシアル至上主義者達は、現時点で実態がわかっていない北方連合国家に対して、魔帝だと決めつけ、排斥論を唱える。
その光景を見ていた多くの官僚は内心呆れるが、皇帝の眼前であるためおくびにも出さない。
「そうは言いますが、実際には不可能でしょう」
「何だと?」
その排斥論をアグラが否定すると、フェランは困惑の表情を浮かべる。
「彼らがどういう存在であれ、海賊からカン・ブリッドの市民を守ったのは紛れも無い事実です。それを排斥、追放しようとすれば、『なぜ守ってもらえたのに排斥されるのか』と疑問を持ち、帝国政府と軍への信用に関わります」
「ぐ……」
フェランはカン・ブリッド市民から非難を浴びる軍を想像し、動揺を見せる。
貴族である彼にとって一都市の市民のことはどうでもよかったが、金を貢ぐ軍への信用低下は避けなければいけない問題だった。
「しかし、実際に魔帝では無いとしても、繋がりがあるのかは証明できないのでは?」
一人の官僚の言葉でフェランが調子を取り戻す。
繋がりがあるのであれば表立って武装を見せないだろうと思う者もいたが、秘密裏に魔帝復活を支援する可能性も否定できない以上、議論は詰まる。
その空気の中で、シュミールパオが提案する。
「では、探りを入れてみるべきかと。魔帝について知っているか聞くだけでも構わないかと」
その提案に多くの官僚が頷く。
「うむ。かの国が魔帝と繋がりがある可能性は否定できぬが、潔白であればその強力な技術は魔帝に対する鋭き刃となろう。ぺクラスよ」
「はっ」
控えていた外務大臣ぺクラスが前へと出てくる。
「国交締結交渉について、委細はすべて任せる。余が話す事はあれど、口を挟むことはない」
皇帝の聖断によって帝国政府の方針は決まり、国交締結交渉への最終的な準備は速やかに行われていく。
しかし、神聖ミリシアル帝国にとって北方連合国家の実態はその予想を超えるものだった。
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カン・ブリッド市内ホテル
「これは?」
滞在するホテルを提供されたスクワイア率いる使節団は、ホテルの一室で会合を行っていた。
その終わり間際、部下から端末を渡されたことにスクワイアは疑問を持つ。
「フォスター少将から送信されたデータです。『ヒューストン』から市井の人々と、先導した艦隊の旗艦と思われる戦艦艦橋を超望遠カメラで撮影した画像です」
「隠し撮りか……まあ、相手に察知されていなければ良いが。これは……いつの写真だ」
スクワイアが端末を開くと、人々が驚いたような表情を浮かべていたことに疑問を持つ。
「海軍が迎撃の為にミサイルを発射して数秒の画像ですね」
「なるほどな……彼らはミサイルを知らないか……もしくは既知ではあるが、辿り着けないもののどちらかか」
スクワイアの結論は的を射ていたが、現時点でそれを確認する術はなかった。
そこでこの話を終わらせると、スクワイアが別の話に続けた。
「話を変えるが、あの時彼らは同じ言葉を喋っていたな」
「え、ええ。あの時は驚きましたが……何か」
その言葉を聞き、スクワイアは溜息を吐く。
部下の肩を叩くと、言葉を続ける。
「もう少し相手の事をよく見たまえ。あの時、同じ言葉を話していたのは事実だ。だが、口の動きが我々が知る発音の動きとは全く違っていた。何らかの要因が働いているだろう」
「……考え過ぎでは?」
「そうだといいが……」
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翌朝、北方連合国家代表団はホテルを出立し、カン・ブリッド空港へと向かう。
空港において神聖ミリシアル帝国政府から案内された特別機の旅客型天の浮舟"ゲルニカ"〈35型〉へと搭乗する。
テーパー翼にタマゴ型のエンジンを2発装備したその地球では見られなかった特異な形状にもスクワイアらは疑問を持つが、仮にも常識外の形であったとしても、今から国交を結びに行く相手に対しては敬意を払うのが常識だった。
機内では案内役等を勤めるミリシアル人の目もあるため、特に話をすることも無く窓から見える機外の光景──野生のワイバーンがゆったり飛行している姿──に見とれるなどして過ごした。
その後、帝都ルーンポリス郊外のゼノスグラム空港へとゲルニカが着陸。
自動車と似た魔力によって動く帝国政府専用公用車へと乗り込み、一路アルビオン城を目指した。
神聖ミリシアル帝国帝都ルーンポリス
アルビオン城
荘厳なアルビオン城へと到着した一行は、衛兵に豪華絢爛な大会議室へと通される。
そこには神聖ミリシアル帝国皇帝ミリシアル8世を始めとした帝国政府の首脳陣が待っていた。
スクワイアは威厳を感じる
「北方連合国家使節団の全権代表をつとめている北方連合国家連合政府国務長官のスクワイアと申します」
「……では、余からも名を名乗らなければならないな、神聖ミリシアル帝国皇帝ミリシアル8世である。この度の交渉は外務大臣に一任している」
「は……この度の外交担当を承りました外務大臣のペクラスです」
スクワイアは外交官として、国務長官として鍛えられた観察眼で二人を見つつも、挨拶を返す。
「こちらこそ、我が国との交渉を受け入れて下さりありがとうございます」
「では、早速交渉に移りたいと思うのですが……ところで……貴国が転移国家というのは本当でしょうか?」
「ええ、本当です。あらゆる分析を行いましたが、転移したのは紛れもない事実です」
ぺクラスはスクワイアの目を見るが、決して嘘を言っているような様子ではなかった。
その上で本来は余裕をもって相手と接するのだが、今回は魔帝との繋がりを探ることも役目に入っており、それが彼の緊張に繋がった。
魔力を持たないこと、こちらを見下す事無く真剣な目つきで臨んでいる事など、魔帝と繋がっている根拠は今のところ無かった。
しかし、役目を果たすべきなのは事実であるため、だからこそ直接尋ねるのが正解だと彼の脳が判断した。
「そうですか。……ところで単刀直入にお尋ねしますが、貴国は古の魔法帝国についてご存知で?」
「ふむ……?古の魔法帝国とは」
スクワイアにとっては突然知らない国名を聞かれ、表には出さないものの困惑した。
情報を必要としている北方連合国家にとって聞き逃す事無く、当然その国について尋ねる。
「これは失礼しました。古の魔法帝国とはかつて神話の時代に圧倒的な魔力と技術力を持って全世界を支配した文明です。光翼人のみで構成され、とても傲慢であり、神々の怒りを買い未来へと転移した国なのです」
「なるほど……もしや我が国が古の魔法帝国そのものか、つながりがあると疑っておりますか?」
「いえいえ、そんなことはありませんよ」
そういうぺクラスだったが、焦りのあまり汗が噴き出していた。
わざわざ来訪してきた交渉団に対して古の魔法帝国だと疑うのは失礼に値するからだ。
「良かったです、我々は魔力を持ちませんからね。まあ、世界を支配しているというのは半分間違いではないのですが」
「……半分?」
「この流れで我が国を紹介いたします。まずはこちらを差し上げようと思います」
スクワイアの隣にいた外交官からかなり分厚く折り畳まれた紙状の何かがぺクラスの下に渡される。
「これは……!?、この精巧な地図は一体!!」
渡された物の中身に驚き、ぺクラスは思わず固まる。
「我が国が転移した直後に惑星の地形を把握するために送り込んだ戦略偵察機による俯瞰地図です。さて、皆さんもご覧ください」
もう一枚の地図が渡され、ミリシアル8世すらもその高精度で精巧な地図には驚きを隠しきれていなかった。
転移した北方連合国家と中立国は元より、神聖ミリシアル帝国含む第一文明圏、第二文明圏、第三文明圏、さらに神聖ミリシアル帝国すらも把握していなかった惑星の裏側までその地図に記されていた。
北方連合国家と中立国の国土は青く塗られ、分かりやすく明示されていた。
「その青い枠の大陸は、我々北方連合国家と、共に転移してきた
「これほどの国土面積が……」
「では我が国の説明に入ろうと思います。我が国北方連合国家は、盟主である北アメリカ大陸連合を中心とし12ヵ国が加わった統一政体です。総人口は約22億人で、経済力の差異はありますが、全ての国が我が国と同等の技術水準を有しています。」
その言葉に、アグラを含む軍関係者は眉を顰め、戦慄する。
我が国よりも速い天の浮舟、誘導魔光弾を12ヵ国、盟主を含めれば13ヵ国の軍隊が有していることは脅威に映った。
戦力数は不明であるが、各国が誘導魔光弾を搭載可能な小型艦などの基本的な自国防衛戦力を持っていると仮定すれば、想像は容易い。
スクワイアが一旦言葉を切ると、体の横幅に匹敵する板状の物体を机の上に置き、カタカタと音を立てて叩く。
現代人から見れば、ノートパソコンのキーボードを打ち込んでるような操作だったが、そこに画面は無かった。
6秒程でコンソールを打ち込むと、何かが宙に投影されていく。
「こ、これは……!?」
そこには球体状のホログラムが浮かび、それはスクワイアが操作していた情報端末から投影されたものだとわかる。
この見たことも無い投影方法に神聖ミリシアル帝国首脳陣は再び驚き、動揺した。
「我が国において使われる……何と言いましょうか、何もない空間に映像を投影することのできる装置です。これは我が国がいた前の世界の地形図です。同様に青く塗られているのは、我が国の国土です」
「こんな技術が……では、もう一つの赤いのは?」
「……我々北方連合国家はこのように前の世界にて世界をほぼ二分していた超大国です。そして、かの国は
「そして我々は転移前、かの国との戦争を引き起こしてしまった。その上、都市一つを破壊する事のできる核兵器を互いに何百発も発射する核戦争の勃発寸前だったのです」
「……!?」
都市一つを破壊することのできる核兵器。
その言葉に、首脳陣の誰もがラヴァーナル帝国が用いていた核兵器に匹敵するコア魔法を脳裏に浮かべる。
アグラはそれを脳裏に浮かべながら冷や汗を垂らす。
(……痛い目を見るなんてものではない……明らかな軍事超大国、戦争すればこちらが滅ぼされる……!)
想像を絶する転移前の状況で、思わず固まっていたミリシアル8世は漸く我に返るとスクワイアに尋ねる。
「その兵器、我が国に使う事はあるまいな?」
真剣な眼差しでスクワイアの目を射貫くが、内心では驚きと動揺、そして恐怖が蔓延り、それを表に出さぬよう必死に隠していた。
「無論、ありません。元々前の世界では『相互確証破壊』と言われる、どちらかが先制核攻撃を行った時、もう一方も確実に報復を行う戦略の元で運用されておりました。我々が核兵器を使うのは相手が核兵器を持っているか、こちらの怒りを買う行為を行った場合に限られます」
「そうか……それは安心した」
スクワイアの言葉に、ミリシアル8世はホッとした表情を浮かべるが、内心は違った。
互いが核を保有して威嚇し合う『相互確証破壊』の戦略は末恐ろしい物に思えたのだった。
「では、ひとまず休憩といたします」
神聖ミリシアル帝国側の進行役の一声で休憩へと入り、北方連合国家の代表団は別室へと移動する。
神聖ミリシアル帝国の首脳陣も別の会議室へと移動するが、直後ざわめきが広がった。
「明らかな超大国ではないか!」
一人の閣僚が声を荒上げる。
大国であることは予想していたが、22億人もの人口を有する国など予想だにしていなかった。
「ただの見栄っ張りではないのか……?彼らの国内を見ないと信じきれん…」
もう一人の閣僚は現実を否定するような発言を繰り出した。
世界第一位のプライドは酷く傷ついてはいたものの、北方連合国家国内の状況を見ないことには信用できない者は少なくなかった。
「それでは、後ほど使節団の派遣を要請してみましょう」
ぺクラスは彼ら閣僚の言葉に応じた。
スクワイアの言葉を目の前で受けていたぺクラスは当然衝撃を受けていたが、やはり外務大臣の重責にある立場ため、すぐに立ち直っていた。
「我が国は貴国への使節団派遣を希望します」
休憩が終わり、会談が再開して早々にぺクラスが発言する。
それはあくまで簡易的な要請に等しかったが、北方連合国家の国内状況を知りたいミリシアル8世も許可していた。
そして、それをスクワイアや北方連合国家連合政府は想定していた。
「ええ、もちろん構いません」
「え……調整しなくて大丈夫なのですか?」
スクワイアがあっさりと承諾したことに、ぺクラスは心底驚いていた。
「問題ありません。我が国が貴国に来訪するだけでは手に入れる情報に限りがあるのは当然です。ならば、貴国が要請するのを見越しておくのが重要かと」
「ありがとうございます……ところで移動手段についてですが、やはり艦隊での派遣がよろしいでしょうか?」
「いえ、我が国は早急に国際社会の舞台へと登壇することを望んでいますので、飛行機で速やかに来訪されるのを希望します」
神聖ミリシアル帝国側にざわめきが走った。
「それならば……ゲルニカがあるか」
「しかし、どこに」
「お待ちください、その際の先導機も用意しております」
スクワイアがそのざわめきを遮るように話すと、一旦収まる。
「しかし、その機体を予め着陸できる飛行場が求められます。ですので、今から機体の情報を言います」
「全長約50メートル、全幅約60メートル。機体名称はB-52。別名────
────成層圏の要塞です」
■次回予告
Episode.5【覇者の行く先】