異世界救済RTA   作:猫毛布

1 / 6
RTAの皮を被ってる一次創作です。
RTAは初投稿です。
何かアレばTwitterとかもありますので、ください。
よろしくお願いします。


まずはエルフの森を焼きます

 異世界救済RTAはーじまーるよー!!

 はい、よーいすたーと。

 先駆者を探した所、この世界での走者がなーぜーか、居なかったので私が世界一位です……。

 レギュレーションは都合上、記憶の継承有り、経験値継承無しで計測開始はいつものスタート地点に立った瞬間から!

 今回は王道を往く聖人ルートや勇者ルートでは無く、異世界掌握エンドを目指します! これも全てタイムの為……卑怯とは言うまいな……。

 

 まずは目を覚ませばいつもの森なのでそこらに落ちている木の棒をなるべく早く取得します。時間的に少し余裕はありますが転生者よろしくな「ここは……どこだ?」なんて思考は必要ねぇんだよ!(二敗)

 木の棒を素早く取得したのには理由がありまして、まずは木の棒の状態を確認します。葉が付いていない状態の木の棒を拾ったなら祈祷タイムですが今回は運良く葉が4つも付いている良個体なのでこのまま進みます! 3つ以上付くまで再走してるから当たり前だよなぁ!

 さて、ここで戦闘チュートリアルです。目の前に出てきたいつもの猪くんですね。実はこの猪くん、正式名称ストレングス・ボアなのですが、ここの位置ではこの個体以外が出てきません。この異世界を体験したことのある聡明な諸兄はご存知でしょうが、森の奥では経験値効率もドロップもクソ雑魚で不意打ちの如く突進してくるストレンクソ・ボアです。けれどここは森の入り口に近い場所であり、普通は出てきません。やっぱりクソじゃないか!!

 その猪くんですが、現在のレベルでは普通勝てません。素手なら装甲を抜くことも出来ずに倒されてしまいます。聖者ルートや勇者ルートでは負けイベントですが、今回のチャートは掌握エンドへ向かう為に無駄な経験値はありません。初期レベルを少しでも取得したいので倒します。

 

 魔法について、お話します。

 みんな「魔法」って、知ってるかな?

 魔法っていうのは例えば生命力を消費して発動するとか、或いは魔力を世界に支払って発動することを「魔法」というんだ。

 重要なのはこの生命力という点ですね! 実はこれ代用出来ます! 諸兄は覚えているだろうか、魔法剣を初めて使ったあの時の感覚を。検証した結果、あれも魔法剣にある魔力を代用して魔法を起動しているわけですね。杖や魔導書とかはまた別なので、その時になればお話しましょう。

 今は目の前に迫っている猪くんを対処しなくてはいけません。

 代用出来る。生命力。記憶継承あり。あっ(察し

 

 木の棒を構えて記憶にある呪文を唱えましょう! 木の棒の生命力では属性魔法は打てませんが硬化などの呪文は唱えられます! 突進してくる猪くんに向けて硬化した枝を突き立てて、横に避ければあとは勝手に猪くんが木にぶつかって死にます!

 

LEVEL UP!!

 

 経験値効率クソのストレングソ・クソでも初期状態での経験値は膨大です! これでこの辺りの敵は素手で対処可能になりました! だから木の棒を拾っておく必要があったんですね。

 何度も言うようにこのイベントは半分負けイベントでこのままここに突っ立っていると女騎士さんであるリンダさんが来ますが、女なんて必要ねぇんだよ!! ということで急いでこの場所から脱出します!

 

「君! 大丈夫か!?」

 

 はい! 無理でした!! 見つかってしまいました! お前ポケ○ントレーナーかよ!! 目があった瞬間に駆け寄ってくるんじゃねぇよ!

 明らかなロスですが、これ以降ノーミスの可能性もあるので通します。

 さて本当はかなーり後の方で登場する女騎士であるリンダさんですが、この時点ではガッチガチに武器と防具を固められた厨キャラです。諸兄の中にもお世話になった人も多いと思います。私はこのRTAをし始めてから嫌いになってきました……。

 レベル補正は無いものの、中盤の店売りレベルでの武器防具はこの時点でうまテイストです。邪道である賊王ルートではひん剥いて防具を売りさばけば初期資金としては十分ですし、奴隷商に売り飛ばせば市民権を買い取れるぐらいにはお金が手に入りますし、リンダさん自身が貴族出身なので実家に脅しを掛ければ無料で爵位と嫁も手に入りますが残念なことにこの時点で彼女に勝つことは辛いです……。勝てなくはありませんが、再走回数も増えるし経験値も美味しくないので見送りです。

 

「ここは危険な森だ。よければ私が」

「結構です」

「しかしだな」

「結構です」

「なら、森の入り口まで案内させてくれ」

 

 安定を取るならリンダさんと一緒に街に行くのですが、残念ながらこれは世界掌握チャートなので街に向かう必要もねぇんだよ! リンダさんが物凄く顔を顰めますが、彼女も任務で来てますので森の入り口で即座に離れればロスもありません。これはロスじゃない、イイネ?

 

 

 森の入り口まで少し時間があるのでリンダさんの話を無視しながらリンダさんの話をしましょう。

 リンダ・ローゲルト。職業騎士の女の人です。物理攻撃に特化していて、防御面もそこそこ高いです。そしてなんといってもクリティカルの確率! 上位に食い込む人です! 他は運極振りしてる運ゲー占い師や公式チート姫ですね! 戦闘面のみを考えれば総合順位でも上位に入るでしょう。伊達に勇者チャートでは終盤近くまで一緒に旅をしてませんね。斧を持たせて蛮族させると安定する稀有な存在ですが、王道を往く魔法剣を持たせれば中盤まで無双し続けますねぇ!! 残念なことに速度が遅いのでこのRTA中では仲間になるのはコレっきりです。

 彼女の髪は赤髪ですが、通し練習中に王家古文書を開いて確認したのですが王家との繋がりはありませんでした。まあ王家を見ればわかりますが、このおっぱいで王家は無理でしょ(畏怖)

 お姫様が何度か妬ましく見ていたのが懐かしいですね。まあその貧乳お姫様も今回会うのは最低限なのですが……。

 

「よし、ここまでくれば大丈夫だろう」

「ありがとうございます」

「……本当に大丈夫か?」

「では」

「あ、おい!」

 

 急いで逃げましょう! これ以上話をすれば、彼女のことなのでコチラを掴んででも止めてきます! 今の腕力値や敏捷値を考えれば逃げ切れないのでさっさと逃げましょう。敏捷ワースト5位には負ける訳ねぇよなぁ!!

 イレギュラーなこともありようやく森を抜けましたが、ここから街に向かうのではなく西へ進みましょう。食料などはそこらにある魔物が落としますし、野営をする暇も無いのでさっさと移動する必要があります。安定を取る為に移動途中の狩りで武器をドロップする必要もありますが、祈祷力でカバーしましょう!

 

 

 

 オイィィィィイイイイッス!! どうもぉ~私でぇ~す!

 まぁ今は、目的地周辺ですけども、えー……武器のドロップは、何一つ……ありませんでした……!

 再走も視野に入れながらようやく到着したのはエルフが住む森ですね。普通に入っても幻影魔法で誤魔化しているので入れませんが、危険時にはその幻影魔法が解けて人間種でも顔パスって理由、が出来ます。

 

 だからエルフの森を焼く必要があったんですね!!

 

 ここの木は魔力も生命力も大量に溜め込んだモノが多いので、代用して火炎呪文を唱えましょう!

 安心してください! エルフの森が焼けるだけです!!

 いい感じに火が広がればエルフの村に入って必要なモノを取得したりするのでその間暫く時間がありますので、エルフの森を焼く理由について、お話します。

 まず特筆すべきモノはエルフの特産品ですね。魔法付与がされているモノが多いです。ぶっちゃけ普通に来るのは勇者チャートでは中盤初期なのでエルフ産の武器は必要ないですし、防具もしょっぱいですが今の段階ではうま味です!

 じゃあ「もっと武器のいいドワーフ村襲撃したら?」と言われると思いますが、ドワーフ種はこの時点で攻めても攻略するのが難しいです。何度かした事もありますが、残念な事に経験値もまず味で住んでる所も鉱山地帯という事もあって火攻めができません。少しレベルと武器を揃えて虐殺するのもいいですが、相手の防具が硬すぎてリターンの少ない祈祷になります。

 他にも多数の選択肢があったんですが、人族はそもそもの経験値が不味いのと武器も知れてます。竜種は負け確定しているので攻めれません。魔族は遠すぎる。だからエルフの森を焼く必要があったんですね。

 これでも検証に114514回は各生活圏を襲撃してたので、たぶんこれが一番早いです。

 

LEVEL UP!!

 

 さて、焼き死んだ者の経験値も入ったので本格的にエルフの森を襲撃しましょう。こちらは素手ですが、エルフは混乱状態から始まるのは検証済みですので、さっさと小剣を拾って取捨選択をしながら殺しましょう。ではイクゾー! デッデッデデデデッ!!(カーンッ!)

 

 


 

 

 それは唐突にやってきた。

 白い黄色の肌に草臥れた衣服。火炎に照りかえる黒の髪が熱でふわりと持ち上がり、黒の瞳が火炎を映し出した。年若い、人族の少女であった。少女と呼べる年齢でありながらソレは確かにこの地獄で君臨していた。

 手に持ったのはエルフの里で作られる変哲もない短剣。美しい刀身を赤で汚し、汚れを振り払うように手首を返し短剣を弄んだ。

 確かにエルフ達にとってソレは敵であった。火炎に包まれる里も恐らくこの敵の行動である事は容易に想像できた。それを証明するように敵は次々にエルフ達を殺した。刺して、掻っ切って、斬り伏せた。その動きに無駄という無駄はない。外見にそぐわない技量。けれども長命な種族ではない。確かにそれは人族の少女であった。

 

「なんだ、貴様は……」

 

 エルフの問いかけに、少女は答えない。ただ問いかけてきたエルフを見て、少しばかり目を細めて、微笑んで短剣を構えた。

 一歩、二歩と距離を測るように緩やかに足を進め、自身の速度が最も乗るであろう距離で踏み込んで急速にエルフとの距離を縮めた。

 弓で対処するには遅すぎ、近すぎる。踏み込みを見たエルフは腰に備えていた短剣を抜いて迫っていた短剣を防ぐ。近くに寄れば少女がどれほど幼いかを判断できた。エルフの換算ではなく、人間として幼い少女である。

 同時にその理解を覆すが如くの連撃がエルフを襲う。

 防いだと思えば足が踏まれそうになる。足を避ければバランスを崩した所を押されて反撃に転じれない。けれど人族の少女の膂力など――。

 

「フェメールはやっぱり甘いな」

「ッ!?」

 

 少女の声がエルフの耳を揺らす。少女らしい可愛らしく小さな声であったけれど、その声はたしかにエルフの耳に届いた。

 自身の名前を言い当てられた。人族のように名乗りを上げた訳ではない。何よりこれは正式な場の決闘ではない。だからこそ少女がフェメールの名を知れる道理などありえない。

 その驚愕は一瞬の隙となった。否、隙など必要なかったのかもしれない。少女にとってはただの児戯であったようにフェメールの短剣は中程から折られた。同じ――いいや、フェメールの短剣の方が丈夫であるというのに、ただ力任せに、叩き折られた。

 轟々と燃え盛る火炎の音。木々の弾ける音。エルフ達の叫びと泣き声。周りの音達よりも小さく折れた刀身が草地に落ちた音がフェメールを支配する。

 拙い、と咄嗟に判断出来たのはフェメール自身がエルフの戦士として熟達していたからだろう。けれどその判断する時間すら遅い。少女の蹴りが腹部を捉え、少女の蹴りらしからぬ衝撃がフェメールを吹き飛ばし、まだ燃えていなかった家屋の壁を突き破った。

 肺にあった空気が押し出され、胃の中がひっくり返る。立とうとしても力が入らない。けれど、今立たねば自身は死ぬだろう。あの人の形をした魔物に殺される。

 

「あぁっぁぁああああああ!!」

 

 叫び、自らを鼓舞して力を入れる。全身に魔力を通わせて無理に身体を活性化させる。けれども、それは無意味だ。

 フェメールが突き破った壁の穴に影が差し込む。黒い髪を揺らし、少女はフェメールを見下した。

 その瞳は様々な感情が内包されていた。少なくとも勝利を手にした者の瞳ではない。感嘆も、歓喜も、狂気も、嗜虐も、愉悦も。家畜を殺すような哀れみもない。

 黒の瞳はどこまでも底が見えない闇であった。

 

「もう立てない。そういう風に蹴ったから」

 

 まるでそれが当然であるように語りかける少女であるが、フェメールはそれを否定するように全身に力を入れて立とうとする。通わせた魔力が抜けていく。力が思ったように入らない。

 死んだ。自身は死んでしまうだろう。けれどフェメールにはまだする事がある。

 

「なぜ、我々を襲った……?」

「時間稼ぎだっけ? 他のエルフを避難所に向かわせる為に必死だね」

 

 少女は何かを思い出すように口を開き、フェメールは息を飲み込んだ。この魔物は自身の心を読むことができるのだろう。ならば、自身はどうすればいい。村の皆を守る為に。エルフの未来を守る為にはどうすればいい。

 

「避難所はここから東の洞窟かな」

「待て! 私はどうなってもいい! だから村の皆は助けてくれ!」

「ん? 今なんでもするって言ったよね?」

 

 少女はその言葉が聞きたかったと言わんばかりに笑みを浮かべる。けれどその瞳は変わらず喜悦に緩む事はない。ただ口元に笑みを浮かべるだけの、仮面のような笑みが貼り付ける。

 

「じゃあ残ったエルフ達を纏めてもらおうかな。四日もあれば貴女は出来るよ」

「四日……。しかし長老達が――」

「はい」

 

 少女が自身の衣服を弄り、取り出して転がしたのは指輪であった。このエルフを司る者が持つべき指輪であり、受け継がれていた物であり、証であった。

 少女は顔に笑みを貼り付ける。次は有無を言わせないように、口を開く。

 

「エルフを掌握しろ。四日後に見に来る」

 

 フェメールは答える事ができない。いいや、了承以外の答えは種族としての死である事は容易に想像が出来た。

 けれど終ぞフェメールは燃え盛る森へと踵を返した少女に声を掛ける事など出来ずに、意識が沈んでいった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。