異世界救済RTA   作:猫毛布

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くそでかレベルアップ君すき


いまこっちの事チラチラ見てただろ

LEVEL UP!!

 

 Any%ならそろそろ終盤のRTAはーじまーるよー。

 エルフの森は強敵でしたね。必要以上エルフを狩ると掌握する寸前にフェメールが叛逆しだすので火災で死ぬ分と殺す分の調整が必要だったんですね(n敗)。

 必要以下だった場合はエルフ老害会がなーぜーかー発足しだすので掌握に時間が掛かります。具体的に言うと60年ぐらい掛かります。エルフの時間間隔狂いすぎぃ!

 だいたいここで走者の5割が脱落します。脱落した後も通しはしますが、掌握チャートは使えないのでリカバリーをしながらエルフを抹消、しようね! 救済エンドどこ……ここ……?

 滅亡エンドはラストに伝説の竜種が待ち受けているので大変ですが、もはや竜種とはツーカーの仲です。なので滅亡エンドを走る時は連続四回攻撃で殺してくるのやめちくり~。

 

 さて、エルフの森を焼いた後にもまだまだすることはあります。とりあえず目的としては魔王城の踏破です。このレベルで行けるのか? と疑問に思われるかと思います。確かに通常では魔王幹部を四体みんな倒す必要があり、その経験値を足しても魔王には届きません。しかし、魔王は現在寝起きです。便利な設定、寝起きなのです!

 通常魔王と比べて強さは3割減! 真・魔王と比べれば8割減の破格の弱さです! しかし開始当初はレベルが足りない。だからエルフの森を焼く必要があったんですね……。

 勇者ルートでは真・魔王と戦うのが必須となり、聖人ルートではそもそも魔王の攻撃を回避しながら会話するだけなので、この事を知るまで中々掛かりましたよ……。お の れ 魔 王 !

 

 魔王城へと向かうまで倍速しても時間がありますので、

 

 みーなーさーまーのためにー……

 

 このようなー……

 

 動画は準備できなかったので掌握ルートで仲間になる人達の説明をしておこうと思います。

 

 まずはエルフのフェメールですね。エルフなので貧乳です。当たり前だよなぁ!!

 性格は生真面目ですね。融通が効かないと言えばそうですが、期限さえ設ければ命令を遂行するので前回は殺さずに逃した訳ですね。ちなみにエルフ救済ルートではフェメールが上司になるのですが、クソクソ&クソの命令しかしてこないのでストレスが貯まるので、やめようね!

 前回の戦闘では魔法を使わせてませんでしたが、魔法のスペックはエルフの癖にクソザコナメクジなので見ないであげてください。やめろぉ! 他のエルフなら大魔法を四発以上打っても余裕なのに一発打ったらガス欠するような能力値を見るんじゃない!!

 彼女が特筆しているのはその器用さです。この時代のエルフ魔法で強化魔法を扱えるのは彼女だけなんですよ。基本的に近接攻撃をしない種族なのでフェメール自身も苦肉の策なんですけどね。

 エルフの癖に近接特化のフェメールですが、強化魔法を使用後は単独で人族国家の軍を相手出来るほど燃費と性能がいいです。だから叛逆させてはいけないんですね……(4敗)

 叛逆ルートで戦う狂化フェメールはその時点なら悠々と倒せるスペックですが、自分と周りのレベルに差がありすぎて即座に対処しないと軍が崩壊します。もうフェメール一人でいいんじゃないかな?

 

 次に魔族サイドですね。ご存知四天王の皆様です。

 特筆して言うべきは獣人族を統べているハクメンと夢魔族のユディアですね。

 他二人は力によって種族と統べている火炎公のブレザムと全であり一の群であるトーンズ。魔王を殺せばこの二人は従ってくれますが、ハクメンとユディアは別で従わせる必要があり、何度繰り返してもこの二人には悩まされます。

 

 ユディアは気付いたら従ってくれているのですが、問題はコチラの夢を覗いてくる事なんですよね。対策はしているのですが、ユディアは竜種の血が僅かに入っているので時空間魔法を齧っていて平行世界を無意識で観測しています。ユディアは気付いてないですが。コチラの脳内を平行世界と一緒に読み取られると発狂必至だから……(再走回数)。

 何よりユディアは仲間にしていれば安心です。彼女は一度主と仰いでくれるとずっと裏切らないのでとても良いです。どこかのクソ狐も見習ってほしいですね!

 夢魔特有のエッチな姿もポイント高いです。ソレ以上脱いだら発禁じゃねぇか! ってなるボンテージと紫白色の髪、お腹の淫紋もよきよきのよきです。ノンケ兄貴もこれには大満足ですよ。

 さらに彼女はこの見た目でエッチなお姉さんみたいな言動ですが、良妻なのです。コチラの精気を奪ってくるだけで良妻賢母なんですよ。精気は奪われますが……。

 戦闘スペックに関しては魔法はだいたい使えますし、近接技術はクソ雑魚ですが竜種の血が入っているので油断していると手痛い反撃をもらいます。そんな油断はしませんけどね(1敗)

 因みにこの先、魔王と戦うまでに彼女と会ったならデスエンカです。魔王は倒せますが彼女は倒せません。ユディアは対策しないと死ぬってはっきりわかんだね……。

 おとなしくリセットするか、我らの父にお祈りしましょう。そもそも会わない事を祈りましょう。ここで祈祷力が試されます……このRTAリセポイント多い……多くない?

 

 次にハクメンですが……。

 なんで等速に戻す必要があるんですかね?

 

「あらぁ? こんな所に人間がいるなんて不思議ねぇ」

 

 はい。思わずFワードを吐き出したくなる状態ですねェ! ユディアじゃん、なんでこんな魔王領の端で会うんですかね? やめてください死んでしまいます。

 ちゃんとレベリングついでに対策必要な夢魔族とはエンカしない所から入ったんですけど……。

 気まぐれこい! 気まぐれこい! お前、私は知ってるんだぞ! 魔王失脚狙ってるって知ってるから! 今はやめて! 助けてくださいお願いします! なんでもしますから!

 

「……ふ~ん、貴女、とってもいい匂いだわ。殺さないでいたら楽しい事になりそう♪」

 

 ペッ! あまちゃんが!

 やっぱり我らが父に願うのが一番だってハッキリわかんだね……。乳にも祈りたい。祈りたくない?

 因みに現時点で戦闘になった場合、彼女の行動は完全ランダムでこっちの状況見えてんのかよってぐらい弱点付いてくるので祈りましょう。何千回戦っても彼女のパターンは組めませんでした……。

 このまま立ち去りましょう。逃げるんだよぉ!

 

「あらぁ。お姉さんも一緒に着いていくわ。魔族も沢山いて危ないし」

 

 お前が一番怖い定期。

 このクスクス笑って背中におっぱい押し付けてくる夢魔のお姉さんですが、戦闘には参加してくれません! 見てるだけです! 本当に危険になっても手助けせずに死んだ場合「この程度だったのねぇ」って言って立ち去るので本当に面白半分で着いてくるだけです。

 (あとお姉さんっていう年齢じゃ)ないです。

 

「何か言ったかしらぁ?」

 

 ヒェッ……。

 ここから先のガバを今清算したと思えばむしろチャート通りだから……。じゃけん、魔王を討伐しましょうねぇ……。

 

 


 

 本当に、最初は単なる好奇心であった。

 夢魔族の長となり、魔王に仕えているユディアは退屈こそが死に至る病であると自覚していた。こうして公務を部下に押し付けて魔族領を散歩するのも半ば日課になった。勿論、同じく夢魔である部下達もユディアの公務に手を付けることはないので、帰れば積み上がった書類がユディアを待っているのもまたユディアにとっては退屈を潰す刺激となった。

 そんな散歩中に見つけたのは人族の少女であった。

 珍しい、と最初は思った。同時に何故? と疑問にも思った。そして湧き出たのは好奇心である。

 少なくとも、人族の少女になど負けはしない魔獣達が徘徊する魔族領であるが、その少女は当然の如く歩いていた。

 知った道を歩くように、ただ一直線に目的地へと向かっていた。その目的地が魔王城である事はすぐにユディアは理解した。同時に彼女が人族に勇者と呼ばれる存在なのでは? それとも自殺志願の英雄志願か。どちらにせよ、少女は魔族領においては異物であった。

 

 だから、声を掛けたのは好奇心に負けたからだ。殺す事など容易い、とも感じた少女であるけれど、どこか違和感はあった。

 少女には”匂い”と表現したけれど、正確に言うならばそれは雰囲気である。自殺志願という訳ではない。英雄になろうとしている訳でもない。そして勇者と呼ぶべきでもない。なぜか懐かしさも感じる雰囲気であった。ユディアには理解できない、初めての感覚であった。

 好奇心が更に擽られる。一緒に着いていけば面白い事になるであろう事も即座に理解出来た。何をするかが楽しみになった。退屈な日常が覆されると期待もした。

 

 

 この少女を殺す事が容易いと感じたユディアであるが、その感想は一気に払拭される。

 少女らしからぬ技術。判断力。膂力。少ない魔力の効率的な運用。戦闘において自身と対等……いいや、戦闘狂である火炎公ブレザムと同等だろうか。

 あらゆる手を用いれば勝てるが、それは辛勝と呼ぶべき勝利であろう。最初に感じていた完勝とは程遠い。

 なるほど、歪である。歪だからこそ、面白い。

 ユディアは内心を隠しながら少女へと抱きついて戯けてみせる。この少女を食べてみたい本能と見ていたい好奇心がせめぎ合う。それも魔王と戦うまでであろうが。魔王に負けた少女は自身が貰い受けてじっくりと嬲ればいい。

 それまではこの少女の思うがままに進ませてみよう。

 

 魔王城へと迷うことなく到着したのは少女はユディアにとってやはり歪であった。見ず知らずの土地であるというのに、見知った庭を散歩するように、或いは帰路につくが如く魔王城へと到着した。その道中でユディアによる妨害もそこそこにした筈であるが、全くそれを意に介さずに到着したのである。

 知っていた、とユディアは思えない。少なくとも情報統制によって人族領地では魔王城がどこにあるかなど明確にわかるわけもない。運任せ、というには迷いが無さすぎていた。知っていたにしろ情報はどこから得たのか不明のままだ。他の魔族領地で知ったのか? 否である。少女の行動の一部始終をユディアは監視していた。抱きついていた、或いはじゃれついていたと言い換えてもいいが。

 それでも少女は迷う事なく魔王城へと到着した。黒い瞳で巨大な門を見上げ、少女は一呼吸する。

 

「開けてあげましょうか?」

「……必要ない」

 

 少女には――人の身には大きすぎる金属製の扉である。ユディアはこれが特定の魔力反応によって開閉する事は知っている。少女は知らない事実である。

 故にユディアは少女がこの扉を如何にして開くかが楽しみで仕方がなかった。もしも魔力反応で開くのならば、少女は誰かの子なのであろう。それにしては何もかもが歪であるが。

 少女は扉から三歩下がり、その場でステップを踏む。身体が跳ね、少女の髪がふわりと舞う。瞬間ユディアの口が笑みに染まった。笑うしかなかった。

 少女の身には有り余る魔力が脚へと集中していくのが外からでもわかる。轟々と耳鳴りになるほどの風が少女の脚に纏わりつく。単なる魔力量の多さではない。精錬された純度も、洗練された術式も、選択された方法も。何もかもが度を越していた。

 

 ユディアの肌を余波とも呼べる風が撫で、風が一瞬だけ止んだ。音も、置き去りにされた。

 右足を軸にグルリと反転した少女の肉体から左脚が槍の刺突の如く突き出された。巨大で分厚い金属扉が泣き喚き、その顔が拉げる。破城槌でも何度も突き当てねば歪みもしない金属扉が少女の蹴りにより穿たれた。

 金属扉はギィギィと啜り泣いているが、少女は蹴り出した左足を接地させ、右足で更に踏み込む。整えられた石畳に亀裂が入り、練り上げられた魔力が少女の身体を疾走る。僅かばかり肉体から漏れ出した魔力の飛沫が少女の肩から散っていく。魔力により淡く光る両の掌底が門へと突き出される。

 金属扉は誇りを捨て、その役割を放棄した。身の丈通りの蝶番を引き千切り、宙へとその身を踊らせて、金属塊は埃を巻き上げて、存在を叫びながら墜落した。

 

 ユディアは笑顔を引き攣らせた。

 完勝できる? 辛勝になるかもしれない? 何を世迷い言を口にしていたのだ。こんな怪物をマトモに相手取るなど血に酔った戦闘狂のする事だ。

 少女を見れば、扉を突き破る前後での変化はない。まだ余力を残している。当然だ。この少女は今から魔王を討伐しようとしているのだ。扉を開いて限界などありえない。

 故に、惜しい。この少女が魔王に殺されるなど惜しい。

 故に、見たい。この少女が魔王に勝つ瞬間を見たい。

 故に、欲しい。この少女をどうしても自分だけの物にしたい。

 

「おぉん! なんだぁ! テメェ! 侵入者か!」

 

 そんなユディアの欲望の邪魔をするように火炎が少女の目の前に降り立った。轟々と燃え盛る焔の髪を揺らし、歯を剥き出しにして凶暴な目で少女を見下す。少女は火炎公を見上げた。視線を逸らす事はない。その必要性すら無いことをユディアは理解していた。

 

 自身よりも弱い存在の威嚇になぜ怯えなくてはならない?

 

「ブレザム公、やめておきなさい。貴方でも死ぬわよ」

「ユディア、テメェ! 俺様が負けるって言うのか!?」

「負けるのならいいけれど、死ぬと言ってるのよ」

 

 ブレザムはその一言にギロリと少女を見下す。少女は意に介さず、ただ成り行きを見ているだけであるが、その視線はやはりブレザムの瞳へ向けられていた。

 ユディアにとってはこんな所で少女を消耗させたくはない一心である。当然、ブレザム如きには負けはしないだろうが、その後に魔王と戦うとなれば不利になるであろう事は明白である。

 

「……テメェ、魔王のヤツを裏切るつもりか」

「私が自由なのはいつもの事でしょう?」

「死ぬぞ」

「死なないわよ」

 

 短いやり取りであった。それほど会話のない……というよりはユディアがブレザムを怒らせるので会話の少ない二人であるが、長い時を生きている仲である。よく怒らせるが。

 ブレザムは盛大に溜め息を吐き出した。ガリガリと髪を掻いて踵を返す。

 

「わぁーったよ。魔王の元へ案内してやる」

「あら、いいのかしら? 弱火公にでもなったのかしら?」

「うっせぇ淫売! 元々テメェが言い出した事だろ!」

「もう、そうかっかしないでよ。火だけに、ってね」

「ぶっ殺すぞ!」

「いやん! 助けて!」

 

 先程の雰囲気など霧散させるように戯けて少女の背へと隠れたユディアに髪の炎を猛らせて怒りを露わにするブレザム。

 そんな二人を見ながら少女は目を細めて、歩みを進めた。


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