ガバの修正をしようと思ったらガバが発生したRTAの続きはーじまーるよー!
前回はなーぜーか、魔王城の扉が開いていたところでしたね。お、あいてんじゃーん!
実は魔王城の正面突破は魔王との戦闘前に幾つか戦闘が挟まるのでチャート上は行う予定ではありませんでした。まさか夢魔のユディアと一緒に魔王城に入るとかチャート組める訳ないんだよなぁ……幾億と走った試走の時ですらユディアと初めて会うのは魔王を討伐してからですし。
ユディアと一緒に魔王城にくるチャートもあったのですが、夢魔族の街を経由する為に経験値得て対策であるアクセサリーを購入する必要があり、それも商人が夢魔族で購入するともれなく精力を吸い取られる訳ですね。だからそのチャートはボツにする必要があったんですね……。
ユディアが居なければ魔王城の裏口から侵入して魔王即殺するチャートだったのですが、ここでオリチャー発動! ユディアを仲間に入れて予定よりも狩りの時間を増やし、魔王城の扉破壊のボーナス経験値と事前戦闘で目標レベルまで上げる! 酔狂でこのRTAを走っていますが、試走の数だけ私には経験があるのです。
扉破壊後に登場したのは火炎公ブレザムですね。近接攻撃すると火炎属性の反撃をもらいますがコチラが死ぬ前に殺せばいいのでこのレベルでも殴り殺せます。何より勇者ルートで戦うブレザムの妻が今はいないので楽勝で勝てますねぇ!! 経験値も美味しいです!! これは勝ち申した……。敗北が知りたい。
が、ダメ!! ユディアがブレザム公を抑えましたね! なんでだろうね! お前ら仲悪いじゃん! 普段言い合いして戦闘してるクセにこういう時だけ息合わせて私を妨害するのやめてください死んでしまいます!! タイムが死ぬぅ!
いや、こんな所で再走したくないというか、魔王討伐に関してはパターン組めているのでバグとかガバが無い限り必勝なんですよ。ここに来るまでの道中の方が事故が多かったのと、時間の兼ね合いでエルフの森を焼きましたが、初期レベルでも時間さえあれば魔王は倒せます。Any%で直接魔王討伐に向かうのはそういう事ですね。
魔王城でレベルを上げようにも二人がいるからエンカウントもありません! 魔王直行です! 馬鹿野郎私は勝つぞお前!
「ククク、何やら騒がしいと思えば小さなガキではないか」
玉座に腰掛けているのが魔王様ですね。魔族生粋の魔法才能と悪逆非道を行う人類種の敵であり、戦争を拡大化させている愚か者です。魔力圧が目でわかりますね。バッシバシ威圧してきますねぇ! 真・魔王ならデバフ効果が何重にも掛かる魔力圧ですが、現在は寝起き魔王なので見た目だけです。
「ユディア、ブレザム。貴様らが叛逆を起こすとはな」
「あらぁ、新しい刺激も与えられない人に着くなんて元から言ってなかったわよ?」
「俺様はこっちの方が面白ェと思ったからだ」
「ふん、まあよい。貴様らを罰するのはそこのガキを殺してからで」
さて、魔王がコチラを本格的に威圧してきます。ウワーツヨソーダー。
現在の魔王のステータスは真・魔王に比べて8割減ですが、腐っても魔王です。コチラの装備はエルフ領地で拾った短剣と属性防御の高いエルフの布。対してあちらは装備だけはガチです。幸いな事に勇者再来イベントが発生していないので武器は弱めです。エルフの短剣よりも強いですが。
うわーもうおしまいだー。
はい。
「ガキ、貴様は勇者では無いな? なんだ、貴様は」
答える必要はありません。答えた所で意味はありません。時間の無駄です。これはRTAなんです。そして魔王は到達点ではなく、通過点なのです。
故に、会話中にバフを掛けておきましょう。肉体強化、魔力アップ、エルフ短剣にエンチャント。第二形態魔王まではノーダメで倒しますが、第二形態魔王の初撃は運も絡むのでこの程度で十分です。
さて、戦闘開始ですが。もはや第一形態は語る事など無いです。
奇襲を防がせて、魔法障壁を張らせます。この魔法障壁なのですが、物理反射か魔法反射の二択でして、最初は物理攻撃奇襲を防がせたので物理反射になります。手に魔力を込めて即座に障壁を割って、更に魔法障壁を張らせます。次は魔法反射ですね。物理で割りましょう。
二度程このループをしますと、魔王が焦って距離を取ろうとしますが離れると才能にモノを言わせた魔法連打をしてくるので絶対に離れてはいけません。そのまま追います。下級魔法を使う魔王のクズですが、牽制程度なのでエンチャしたエルフ短剣で魔法を両断できます。だからエルフの森を襲撃する必要があったんですね。
先んじて下級魔法をなんでもいいので魔王へ投げつけます。そうしたら魔王様は馬鹿なので魔法障壁を貼ってくれるので、玉座から離れてくれた魔王様の顔面を障壁を割ったその腕で掴んで思いっきり床に叩きつけます。
魔王がコチラの腕を掴んできますが、それは回避しましょう。まだ魔王の筋力値に勝てないので、エルフ短剣を魔王の胸部に刺して、戦闘終了です。急いで離れましょう。
「貴様、貴様貴様きさまキサマキサマ貴様ぁ!! 人間のガキ如きが我に歯向かいおって!!」
距離をとった事で魔王様がキレていらっしゃいます。怖いですね。胸にエルフ短剣を刺したまま魔力を練っています。物凄く巨大な最上級魔法を扱うようで大変魔力を練っております。
エルフ短剣は魔力の通りが伝説武具である勇者専用剣や魔王剣を省けばトップクラスです。それが店売りしているエルフの森はやっぱり頭がおかしい。エンチャの倍率が上昇するのですが、元々の攻撃力が貧弱です。けれど、一発限りですが、魔王戦において必須になります。
魔王の胸に刺したエルフ短剣が魔王の魔力に反応して甲高い音を鳴らしてますね! 見てくださいよあのエルフの短剣! パンッパンでしょぉ? 魔王の胸を開けてみたいでしょ? いきますよー。
「喰らえ、そして絶望せよ! 貴様が歯向かった相手がどれほど偉大であるかを頭に刻みつけて死ねぇぇぇえええ!! ”カオス・オ、ガハッ」
あ^~魔王が弾ける音^~!
聞き慣れたカオス・オブ・ガハッですが、あのまま魔王固有技のカオス・オブ・テンペストとかいう闇属性なのか風属性なのかわからない複合属性増々でコチラの属性防御絶対貫くマンが発動したら私は死にます。再走でしたね! いやーコワカッタナー。
という事で第一形態魔王が終了した所で経験値が入ってきます。おいしい!! できるなら魔王第一形態をあと100回ぐらい狩りたいぐらいにおいしいです! おまえ経験値はぐれシリコンかよ! ってぐらいくれます。狩りやすいクセに、おいしい! だから魔王は一度だけしか殺せないんですね……。
自身の爆発で瓦礫に埋もれた魔王ですが、これから第二形態が始まります。始まる前に防御方面バフを掛け直しましょう。ついでに神に祈りましょう。今から瓦礫がショットガンの如く迫ってきて、喰らえばダメージ、回避すれば魔王からの攻撃というクソみたいな運ゲーが始まります。だから避けた方がリスクが高いので、マトモにダメージを貰うか防御するかの二択になるのですが、過去に四回程瓦礫が避けてくれたので祈りましょう。もう再走はいやだ再走はいやだ再走はいやだ再走はいやだ。
「――貴様を侮っていた我が悪かった。まずは謝罪をしよう」
いやぁ、瓦礫は強敵でしたね……。瓦礫クリティカルで死んだ私もいたのでハラハラしました。物理防御は現状低いので瓦礫クリティカルであっさり死ねますねぇ!!
「貴様、名はなんという」
さて、武器もなくなってしまった戦闘ですがご安心ください! 第二形態魔王もしっかりとチャートを組んできました! パターンは多かったですし、ダメージも少しだけもらいますがどのパターンでも死に至る可能性はありません!
「……名乗らんか。まあ、それも良い。
名もなき勇者よ。貴様の事は覚えておいてやろう。我を本気にさせた事を。そして勇者として辱めることなく、殺してやろう」
さて、第二形態魔王の初手はバフから開始します。初手以外はバフを掛けていれば「純粋な肉体で勝負せよ」とか言って自分はバフ掛けてる癖にコチラのバフ解除をしてくるクソの魔王ですが、初手だけはバフ固定です。
そして次はコチラのバフを見て解除をしてくるのですが、このバフは瓦礫対策のバフで魔王対策ではありません。先程のレベルアップのお陰で第二形態魔王も、ギリギリ勝てるレベルにはなっています。
第二形態魔王解体ショーのはじまりや!
強大な魔力の余波がユディアとブレザムの肌を突き刺す。目も開けていられない程の余波に冷や汗が吹き出る。これが自身が仕えていた王の本当の力であると即座に理解出来た。
対して人族の少女には何も感じない。先程まであった魔力による強化すら今は無く、ただ純然たる人間の少女がそこに在るだけである。
凶悪とも言える魔力の暴を振るう魔王に対して少女はちっぽけな存在であった。
けれども少女は悠然とその場に立っていた。受けている魔力圧もユディア達とは比べ物にならないというのに。
「……なんじゃ、勇者襲撃の報を聞き、急いで飛んできたというのに。単なる戯れではないか」
ユディア達の側に現れたのは獣人族に伝わる和装を着崩して肌を露出させている花魁風の美女である。金色の髪の上には三角形の獣耳が生え、自身が狐の獣人である事を在々と証明する。人族に紛れる為に隠す必要もなく晒された尻尾の数は九つ。
「あら、ハクメン。貴女ってそんなに魔王様にご執心だったかしら?」
「彼奴が勇者にでも負ければ我ら獣人族が戦火に見舞われるじゃろう」
ユディアの誂うような口調も扇を広げて口元を隠しながら否定する。その細い瞳はユディアに向く事もなく鋭く戦いを睨めつける。
魔王の攻撃を辛うじて捌いている人族の少女は所々に傷を作り、対して魔王はその肉体に負った傷は既に癒えている。圧倒的だという戦況にハクメンは落胆する。
けれど、ふと違和感が脳裏を過ぎる。
なぜ、少女は立っていられる? 見た所、魔法による強化は行われていない。人の身である筈なのに、魔王の攻撃を辛うじて捌いている。膂力の差も、生物としての格も何もかもが劣っているというのに。勝負は一瞬でつかなかった。
「のう、ユディア。どうせアレはお主が連れてきたのじゃろう? 誰じゃ?」
「さぁ? 私も知らないわぁ。ただ魔族領にいて、面白そうだからついてきただけ」
ハクメンの脳が静かに思考する。
勇者、という訳ではないだろう。人類の希望というには装備が整えられていない。そこらの少女と大差無い。
英雄、という訳ではないだろう。人類の至宝というには無謀が過ぎる。そこらの少女が子供たちの御山の大将を相手取るとは訳が違う。
けれど何も持っていない少女は確かにその場に在った。絶対的な強者を前にして、立っていた。
違和感の正体などわからない。誰ともわからない。現実からの推察も、不明瞭だ。
魔王に相対する少女を見る。魔王からの攻撃を捌く。防御ではない。最小限の動きで、最低限の怪我で、最高の結果を求め、そして与えられた。
武術を修めている。人族に伝わる、武器を主体とした物ではない。あの動きは肉体強度が勝る者が他者を圧倒する為の武術……その改変だろうか。節々に見える動きがハクメンの記憶を過ぎり、そして獣人族に伝わる武術の一つへと行き着く。
何故? と疑問が生じると同時に少女が人族である事を再度確認する。少なくとも獣人の出ではない。けれど、その少女は確かにその武術を行使していた。差異は確かにある。人の身に合うように調整されたのだろう。ならば少女には師が存在する。その師が獣人である可能性は、無い。獣人族と人族には埋まらない溝がある。
それより以前。武術の開祖と共に、であるのならば納得できる。けれども獣人族でも自身以外は使わなくなった武術の一端である。人族の集落でも、街であろうとその名残などは無かった。それに、修めるにしても少女の年齢にはありえない程の研鑽である。
全ての条件を無視して、少女は確かに在った。それが現実というのならば、ハクメンは受け入れよう。だが、そこまでなのだ。いくら武術を極めようが、隔絶された肉体の差には手が届かない。
「その腕、貰うぞ」
魔王の低い声が響き、振るう剣が少女の右腕を切断した。赤い液体を撒き散らしながら飛来する腕を少女は見る事なく、戦うべき魔王へと視線を向けている。
深い黒の瞳は絶望などしていない。何かに希望を見出している訳ではない。ただまるで
二の腕の半ばから切断された腕を衣服の端で縛り上げ、これ以上の出血を強引に少女は止めた。魔王はそれを見るだけの余裕が確かにあった。
「惜しいな。我が配下にならぬか? そうすれば貴様はここで死なず、腕もユディアに治療させよう」
「……」
「ああ、惜しい。この戦いを終わらせなくてはならない。実に、惜しい。人族の少女よ。貴様は我を封印した勇者に匹敵する敵であった」
既に勝敗は決したように語る魔王に少女は答えない。細く、長く息を吸い込んで、大きく吐き出した。肉体が淡く光る。魔力による発光である事は魔王ではなくともわかる。それが少女が未だに諦めていない事を示している事も。
故に魔王は呆れ果てる。未だに立ち向かう少女の気概は買おう。けれども魔法による強化は自身が解除するので無意味である。そんな事を一度で学ばなかった少女に呆れてしまう。知性を持った人族ではない、目の前にいるのは絶望の象徴へと歯向かう獣でしかない。
魔王は手を払う。その所作だけで全ての強化は解除される。魔力の余波が砂埃を巻き上げて、少女をもう一度絶望へと落とす。そこから勧誘しても遅くはない。それでも聴かぬというのならば、殺せばよい。魔王はそう思考する。自身と相手の力量を正しく見極めた結果である。
「のう、ユディア。今一度聴くが、アレはなんじゃ?」
「人族の少女でしょう?」
「なら、何故アレは儂しか知らぬ筈の
それはハクメンが積み上げた研鑽の頂きであった。魔法の効果で肉体を強化するのではなく、魔力を全身に流動させ、練り上げた魔力を攻撃と共にぶつけ、練り上げた魔力により相手の攻撃を防ぐ、理論上攻防一体の技法であった。
理論上でしかない技法。未だハクメンですら届かない頂きに少女は立っている。百数歳であるハクメンよりも、遥かな研鑽の頂きに少女は立っていた。
「クク、ハハハハ!! 良いな、やはり貴様はよい! 来るがいい! 名も知らぬ勇者よ! 我が貴様を絶望させてやる!」
「……おやすみなさい、――――」
少女の口から小さく吐き出された言葉は確かに魔王の耳に届いていた。驚愕する。言葉を吐き出したからではない。自身の真名など数千年は聴かなかったというのに、少女は口にした。
少女の姿が消える。距離の開いた魔王の前へと一瞬で到達し、左拳が構えられている。魔力の飛沫が少女の節々から舞い散った。
同時に少女の左拳が発光する。淡い光全てを集めて、術式が展開され、完成する。
流動していた魔力を打撃と共に魔法へと昇華させ、対魔法防壁も対物理防壁も無視する極一の頂き。
魔王の腹部に少女の拳が当たる。魔王のマントが突き抜けた魔力により舞い上がり、紅蓮が魔王の背中に咲き誇る。
「、おぉ、おぉ……これが貴様の本気か」
「…………」
「我との戦いは、楽しかったか? 我はお前に死を、感じさせたか?」
「……ええ。楽しかったわ。次はお互い本気で戦いましょう、――――」
それが叶わない再戦の約束である事は魔王ではなくともすぐに理解できた。けれども魔王はそれで納得して、笑みを浮かべて膝を付いた。
少女は魔王の身体を容易く抱え上げ、玉座へと
右腕はない。年端もいかぬ人族。傷だらけの少女。人族の子供であっても容易く勝負をしかけるであろう存在に魔族の三人は跪く。立ち向かう事などない。それほど愚かなのは人族の子供だけでよい。
「手厚く埋葬して」
「御意に」
以前の魔王を受け取ったブレザムは少女の命令を聞き入れた。魔王のマントを剥ぎ取り、切り飛ばされた右腕を隠すように羽織った少女は玉座へと腰掛けた。
「ハクメン、私が何かを知りたがっていたわね。
私はこの時より魔王よ」
それは絶対的な力を持つ者の総称である。それは魔族という存在の王である。それは正しく世界を掌握しうる存在の名であった。
魔王は微笑みながら玉座から三人を見下ろした。