アタランテお母さん~聖杯戦争で子育て頑張る!~ 作:ら・ま・ミュウ
これが私のマスターだ
これは、魔術師の物語ではない
これは、人の物語ではない
これは、英雄の物語ではない
これは、私の母の物語だ
聖杯が座に干渉し、私という存在が降ろされる。
「召喚に応じ参上した。赤のアーチャーだ」
魔法陣からエーテル体を構築し、マスターのパスを繋いで現世に
「…………」
「どうした、何故出てこない?」
狐のような耳で人間にはおおよそ聞き取る事の出来ない僅かな呼吸音を感じとるアタランテは疑問に思い、マスター(パスが繋がっているので間違いないだろう)に語りかける。
「…………」
「(まさか、一般人が召喚したのか?)」
聖杯の知識により魔術知識のない人間が偶然“聖杯戦争”に紛れ込み、偶然“サーヴァント”を召喚してしまった等の事例は少ないながら補填されている。
アタランテはもしや自分も…………だとしたら、とんだ外れくじを引いた物だ、とケモ耳をしおらせる。
万能の願望器『聖杯』を求める聖杯戦争でマスターと現代に蘇った我ら
マスターが充分な魔力供給をしなければ、サーヴァントは生前の力を発揮出来ない所か存在を保てず消滅。
サーヴァントがマスターを守らなければ、マスターは他の聖杯を狙うマスターやサーヴァントに殺されてしまう。
「私にも、死してなお叶えたい願いはある…………召喚された以上、お前には協力してもらうぞ」
ケモ耳をピンと逆立て、白い布に手をかけるアタランテ。
兎にも角にもマスターの顔を拝まない事には何も始まらないと、勢いよくソレをめくりとった。
余談だが、アタランテが万能の願望器に願うのは『この世全ての子供らが、愛される世界』だ。
これから分かる通り、アタランテは子供好きである。
「…………すぅすぅ」
そして、そんな彼女を召喚しようとした魔術師は、何を思ったか本来召喚する為に用意した触媒に加え、だめ押しに
その魔術師の間違いは、その拐ってきた赤ん坊がはぐれ魔術師の、かなりの魔術回路を保有する優秀な魔術師の卵であった事
何故か首も据わらぬうちに魔術刻印を受け継ぎ、いざ召喚しようと、触媒として“赤ん坊”を扱うにはぞんざいだった事、生命の危機を感じ、自動発動した迎撃用の魔術に不意を突かれ蜂の巣になってしまった事だ。
「あ、あ、あ!赤ちゃん!!!!?」
赤のアーチャーアタランテ。彼女のマスターは如何なる