アタランテお母さん~聖杯戦争で子育て頑張る!~ 作:ら・ま・ミュウ
マリーのお母さん
――我が血族は呪われている。
いや、因果と言うべきか……何れ産まれる悲願の子を授かる為に当主となる者は女でなければならない。
男であれば、殺せ。
それがサンザーラ家の絶対であった。
「やめて、その子の人生を奪わないで……」
「……裏切り者には死を」
男は死を。女は当主へ。
そして現在、サンザーラ家には当主がいない。
これが、何を意味するのか。
欠けた刻印が全てを物語る。
「……ここは、またマリーの夢の中か」
アタランテは気づくとあの工房へと来ていた。
マリーに子犬程の魔蟲が覆い被さり、夥しい数の魔法陣が起動する。
「……マリー」
赤ん坊が受ける扱いではない。
アタランテにはマリーがついこの間までこのような扱いを受けていたと思うと途端に胸が締め付けられるような錯覚を覚えた。
『そうねぇ』
背後から声がする。マリーの父親やローブの男ではない、女の声だ。
アタランテは後ろを振り向き、息を飲む。
艶やかな金髪は星屑のように煌めき、一流の彫刻師が刻んだがごとき一マイクロの狂いもない完璧な顔。世に云う絶世の美女と呼ばれる存在が此方を見ていた。……それだけが理由ではない。
その女性に抱かれたマリーにこそあった。
「何故、マリーが、其処に……」
『ここは夢の中……同じ人間がいたとして何か不思議でもある?』
「ッゥ!?話が通じるのか!」
『えぇ、』
「驚いたな。何者だ」
無駄だと分かりつつ弓の弦を引いて牽制するアタランテ。
『この子に当たってしまうわよ?』
「私をそこらの弓兵と同じにするな。例えどれだけ離れていようと貴様だけを射ぬいてみせよう」
絶世の美女はそれに呆れたように『※※※※※の血も言うほど役にたたないわね』アタランテには聞き取れない単語を挟んで―――ふわりっと、纏う気配が変わった。
『赤のバーサーカーが死に、マリーが貴女に……ギリシャ側に傾きかけているわ。私のように傾倒してしまう前に、今すぐに赤のランサーと合流しなさい。』
「意味が分からない。私ではマリーを任せるには不満と言うことか?」
アタランテには、何となくだが彼女がマリーを大切に思っているのが分かった。だからこそ、“自分一人でマリーを守り通すのが不可能で有ることを誰よりも理解しているからこそ”『聖杯を諦めて逃げろ』と言わなかった事に違和感を抱いた。
『う~ん、難しい質問ねぇ……。何が難しいって“これ”を分かち合う事って多分不可能な感覚なんだろうけど……強いて言うなら“母親”の勘かしら?』
「なっ!?」
彼女がマリーの母親
今回はそれを知る事が崩壊の条件だったのか、世界は崩れだす。
地面が落ちて暗黒へと沈んでいく。
『ちなみに、私を探そうとしても無駄よ。』
『私、この子を産んですぐに殺されてるもの』
アタランテの意識はそれを最後にブラックアウトした。
マリーのお母さん 享年20才
健康状態 死亡
魔術回路 不明
魔術刻印 無し
魔眼 不明
好きな物 マリー
嫌いな物 マリーを奪ったアイツ
マリーを産み出す為に調整された魔術世界におけるデザイナーベイビー。元々、短命で30歳ほどで寿命を迎える筈が……マリーの幸運値は母親似である。
マリーが大好き過ぎて一族を裏切った。
十代の頃、“ギルガメッシュとエルキドゥ”が召喚された亜種聖杯戦争に巻き込まれる。